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2011(Tue) 09/27

大学時代回想25 男と男の約束…そして告白へ(54)

財前History … Comments(54)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

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11/09/25 大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ(コメント 25)
11/09/21 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし  (コメント 30)
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント 78)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想09 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想08 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想07 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想06 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想05 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想04 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想03 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想02 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想01 一楽木工  (コメント24)








 




 青柳が突然家に来てかれこれ2時間が経過していた。

 彼は延々とギター部で如何に自分が凄い存在か、そしてギター部というものの活動が如何に素晴らしいものであるかを2時間も話し続けている。

 私はそれを酒を飲みながらゆっくりと聞いている…。いや。聞いているというよりも聞かざるを得ないと言うのが正解か。「大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ」で書いたとおり、私には青柳に対する負い目がある。

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 指揮者を辞め、ギター部を辞めた尻拭いをしたのが青柳だ。

 本音を言えば「どうでもいいんだよ青柳。ギター部の話しなんて。興味ないんだ俺は…」と言いたい。もちろん言いたい。しかしそれは禁句だ。

 もちろんそんなルールは私たち二人の間にはないが、これはマナーという奴で…

 そういうものなのだ。

 恐れなければならないのはこの先の展開だ。この先、青柳が泥酔してしまうと…コイツは歯止めが効かなくなる。暴走…というか、そういう類の事をしてしまう奴なのだ。最悪は殴り合いにまで発展しかねないため私の中にも緊張が走る。

 よくわからないが青柳はなぜか一方的に私をライバル視しており(これについては未だに私もよく理由がわからないのだが…)、何かにつけて自分が優位である事を証明しようとするのだ。

 もちろん私はいつもそれを許容しているのだが、酔っ払ってしまうとそれがエスカレートし、私も許容しきれない所まで来てしまうのである…。そうなると青柳はかなり逆上するのでそれが怖い。

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青柳「あ~イライラするぜ!

財前「え…」

青柳「それでよ~。俺も4年だからギター部としては引退になっちまうんだけどよ」

財前「ああ」

青柳「やっぱ俺がいないとダメなんだよなあ。若い奴が全然ダメでよ」

財前「そうか」

青柳「あいつらまったく練習しねえし、俺に敬意を払わねえし」

財前「そんな事ないんじゃないか? 俺が見たところ真面目そうな連中に見えたけどな」

青柳「真面目じゃダメなんだよ!!」

財前「え?」

青柳「熱いもんがねえんだよアイツらはよ。熱いもんが」

財前「あ…ああ」

青柳「まあお前よりはマシだけどよ。ギター部から逃げたお前よりはな」

財前「いや…だから俺は逃げたんじゃなくて元々クラシックギターをやる気は…」

青柳「指揮者だったろお前は! 指揮者っていえば最高権力者だぞ!? 最低野郎だよ。おまえはよ。それから逃げるなんて本当に最低野郎だよな」

財前「ハハハ。かもな(笑)」

青柳「笑い事じゃねえだろうが!!」

財前「おまえ何が気に入らないんだ?ギター部辞めたなんてもうかれこれ2年以上も前の話だし、おまえが指揮者としてうまくやったんだろ?」

青柳「ああ。そうだよ。俺がやったさ。俺が完璧に指揮者を努めてやったよ」

財前「じゃあそれでいいじゃん」

青柳「おまえのそのギター部に対する軽い気持ちが俺はムカついてるんだよ」

財前「そんな事言ったってしょうがないだろ。俺は他にやりたいことがあったんだよ」

青柳「ああ。知ってるよ。バイクとか女だろ!?」

財前「まあな」

青柳「リョウとかいう無職の野郎と毎日街にナンパに出かけて楽しかったのかよ。それでお前の人生の身になったのか?ああ?」

財前「さあ。どうなんだろうな」

青柳「なんだよそれ」

財前「そんなんどうだっていいじゃないか。おまえはおまえでギター部で最高だったんだろ?」

青柳「もちろんだ」

財前「じゃあそれでいいじゃん。なんで俺のナンパとかリョウさんが関係あるんだ?」

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青柳「おまえが辞めたからだよ。おまえがギター部を辞めたから…」

財前「おまえ一体俺にどうして欲しいんだよ…」

青柳「なんつ~かさ。結局そういう熱い…というか熱いモノをもった奴が今の後輩にいねえんだよな」

財前「なんだそれ」

青柳「まあいいや。この話はもういい。」

財前「…」





青柳「実は俺もギター部引退したからバイクの免許をな…その…取ろうと思ってるんだよ」

財前「何!?おまえバイクの免許取るの?」

青柳「おうよ」

財前「急にどうしたんだ?」

青柳「なんか楽しそうだなと思ってよ」

財前「バイクが?」

青柳「ああ。それにお前とか敬助とかとツーリングとかもしてみたくなってな」

財前「そりゃあいいな」

青柳「もちろん大型まで取るぜ」

財前「そうか。でも中型免許で充分だぞ?」

青柳「俺は中途半端なのは嫌いなんだよ!

財前「…。でもお前車は普通免許なんじゃないの?」

青柳「まあな」

財前「だったらそっちも大型にしなきゃ…」

青柳「そっちはいいんだよ!!」

財前「そ…そうか」

青柳「要はハーレーに乗りてえんだよ。俺は」

財前「ハーレー…すげえな! 俺の憧れだよそれ」



財前「男の中の男でなければ乗ってはいけないモノだからな…」

青柳「ガハハそうだろそうだろ?羨ましいか?ん?」

財前「いいなあ」

青柳「まさに俺にピッタリのバイクよ。俺のためにあるようなものだな。アイツは」

財前「…ていうかおまえまだ免許持ってないんだろ?」

青柳「もちろんこれからだ」

財前「じゃあ威張るなよ…」





 私は彼の気持ちをなんとなく理解していた。

 時折見せる彼の素顔と言動。これが全てを物語っていた。要は彼も彼なりの理想の大学生活というのがあって、それはギター部に所属していたために出来なかったのである。

 もちろん彼はギター部で活動したことを後悔などしていない。指揮者として最高の事をやったのだろう。だが
、彼は指揮者だ。2年生の後半から3年生の終わりまで…彼の大学生活をほぼギター部に捧げたはずだ。 

 なぜならおわかりのように指揮者は演奏者とは違い唯一無二の存在だ。

 野球部で言えば監督。

 ゆえに休むことは許されない。代わりがいないのだ。

 それゆえ通常ではバイトすらできない役職なのである。彼はそれをやり遂げた。

 やり遂げた。


 だが…同時に犠牲にするものも当然あった。

 それは自由で方便な大学生活である。

 もちろんバイクの免許など取得する時間はなかっただろう。女性交流も犠牲にする部分はあっただろう。

 そう。人間なにもかも…というわけにはいかない。

 何かを成すという事は何かを犠牲にする…という事なのである。

 つまり彼はギター部で栄光を手にし、後輩の尊敬、名誉を勝ち得たが、逆に私がやっていたような街へナンパへ出かけて女性との交流を持つことや、ここでは書けないような…危ない橋は渡っていない。

 それゆえタマにこうして私の家に遊びに来ては私の行動をチェックし、そしてその憤りをぶつけているのである。


 それは4年生になってさらに顕著になっている。

 恐らくこれは…ギター部という後ろ盾がなくなったからだと思う。

 彼は引退したのだ。

 引退すると誰もが過去の人となる。

 それまでは絶大な権力と力を誇っていても、世代交代でバトンを渡してしまうと、ある意味では一般人になってしまうわけだ。それがギター部で最近行われた。

 まあこんなのはどこにでもある当たり前の話だし、高校の部活でもそう、会社でもそうだ。

 そして世の中的に見れば大した話ではない。なぜならこれはギター部という小さな枠内だけの話であり、世間にはまったく何の影響も及ぼさない出来事だから。

 だが彼にとってはそれが寂しかったのかもしれない。彼はギター部の指揮者、権力者という座から今、ひとりの一大学生へ戻ったのである。

 元々失うものなど何もない私とは違うのだろう。

 それが形として現れたのがハーレーに乗ることだったのかもしれない。









 そして青柳の言いたいことを全て聞いた後…

 今日は…話が珍しく女性関係の話題へと展開していった。

 青柳は女性関係で様々トラウマがあり…あまり女性関係の話を自分からしない奴なのだが…




青柳「それでよ」

財前「ん?」

青柳「おまえ今彼女はいないのかよ」

財前「いないな」

青柳「か~~。情けねえなあ。ナンパしてるとか言っておいてそれかよ。なんだよそれ」

財前「彼女というのはナンパとは違うからな」

青柳「ほう。まだナンパの女で寂しさを紛らわせてるのか?」

財前「いや…もうリョウさんが職についたからさ。それ以降やってないよ」

青柳「なんだそれ。おまえリョウって奴がいなきゃなんもできないのかよ」

財前「どうだろうね。リョウさんと一緒にナンパには行ってたけど、女を口説く時にリョウさんに助けてもらってた訳でもないからさ」

青柳「でもまえはリョウって奴がいねえとナンパできねえんだろ?」

財前「まあな(笑)。どっちかというと俺はリョウさんが好きなだけで、ナンパはそれほどだったのかもなあ…。要はリョウさんとナンパに行くのが楽しかったんだよ」

青柳「なんだそりゃあ」

財前「なんつうか。あんな格好いい人初めて会ったしなあ。行動すべてに色気があるっていうかさ」

青柳「ホモかよおまえ(笑)」

財前「実は最初俺もちょっとそうかな…って思ったんだけど違うな(笑)」

青柳「気色悪いやつだな」

財前「要は一緒にいて刺激を受けるんだよね。アドレナリンがドバドバ出るって言うかさ」

青柳「ただの不良のフリーターだろ?」

財前「あの頃はな。今は違う。とにかく凄い人なんだよ」

青柳「そんな凄い奴とは思えんがねえ」

財前「まあお前は自分が一番のナルシスト野郎だからわからんよ」

青柳「俺はナルシストじゃねえよ」

財前「おまえは自分を中心に地球が回ってるって思い込んでるタイプじゃないか」

青柳「おまえ俺の事をそんな風に思ってたのか!?」

財前「悪いけどさ。他のやつに聞いても全員そうって思ってるはずだぞ?俺が正直にお前に言ってるだけで」

青柳「そんな事はねえよ」

財前「みんな口に出して言わないだけだよ」





青柳「まあそんな話はどうでもいいんだよ。それより俺よ…好きな娘が今いるんだよ」

財前「ほう…」

青柳「でもさ…今俺達4年だろ?時間がねえじゃん。つきあってもすぐ離れ離れになるかもだしさ。」

財前「そうだな~」

青柳「だからどうしようかと思ってよ…」

財前「え?それもしかして俺に相談してんの?お前が?」

青柳「そうだよ」

財前「珍しい事もあるもんだな(笑)」

青柳「何かアドバイスはあるか!?」

財前「そんな事言われたってわからないよ。とりあえずその子の写真有る?」

青柳「ああ。あるぜ…ほら」

財前「どれどれ」






















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財前「これ無理じゃん。Impossibleだ」

青柳「はああ!?なんでだよ」

財前「これおまえあれじゃん。おまえが1年の時からずっと片思いの娘じゃんか」

青柳「そうだよ」

財前「だいたいなんでギター部で一番人気のある女の子をなんでワザワザ狙うかねえ」

青柳「そりゃかわいいからな」

財前「ギター部から一歩出ればそうでもないぞ?」

青柳「そんな事はねえ!」

財前「まあ思い出と一緒に過ごした時間が相乗効果でなんとやらって奴でな。まあ今のおまえにはわからんだろうけど」

青柳「なんだよそれ」

財前「いい加減諦めろよ…。しつこいのは嫌われるんだぞ」

青柳「おまえに言われたかねえよ。それにお前だって…1年の時にストーカー呼ばわりされたチズエとかいう奴を未だに好きなんだろ?」

財前「それとこれとは違うぞ。チズエさんは特別なんだよ。おまえのような不純な動機とは違うんだ」

青柳「なんじゃそりゃ」

財前「俺は彼女を自分から諦めたんだよ。あれ以降はほとんど接触してないし」



青柳「まあそんな話はいいんだよ。やっぱ大学にいる間に自分の気持ちにケリを付けたくてな」

財前「ふむ…なるほど」

青柳「どうすればいい?」

財前「そりゃ告白すればいいんじゃないか?」

青柳「そんな事はわかっとるわ」

財前「そうだよね…」

青柳「問題はどうやってするかだ」

財前「告白を?」

青柳「そうだ」

財前「まじでする気なのか…」

青柳「おうよ」

財前「この3年で完全に答えは出てるぞ…」

青柳「出てねえ!」

財前「でもなあ…さすがに1年からずっと3年間追いかけ続けてるわけだろ? しかもギター部でおまえをずっと見てきてるわけだろ?彼女は」

青柳「まあな」

財前「そりゃ脈はねえよ」

青柳「はああ!?ずっと一緒にいたからこそ俺の酸いも甘いも見てるんだろアイツは」

財前「あ~~ぁ…。悪いな柳。俺の戦法というのはさ。そもそも初対面とかつきあいが浅い子に対して練りに練っているものでな…長い付き合いの女友達に対しては発動しないんだわ」

青柳「は?よくわからん」

財前「ほら。ナンパとかで培ったテクニックだから一撃必殺なの。わかる?ちょっと隙を見せた所にガブリンチョするって事なのよ」

青柳「??」

財前「だから自分の素性を知られすぎていると無理なの。酔わせれられないし勘違いさせられない」

青柳「簡単に言ってくれ」

財前「ああ。簡単に言うとだな。強い光を人に当てると眩しくて目をつぶるだろ?」

青柳「ああ」

財前「その間に財布を盗む…みたいな感じ?要はフラッシュ的な戦法なんだな」

青柳「う~ん。まだよくわからんな~例えば?」

財前「例えばさ。普段行かないような場所やレストランに行って、女性が普段男からは聞かないような甘いセルフを吐く。これで少し擬似世界?というか普段と違う世界を見せる。そういう世界を見せて惑わせて、そのままの流れで求愛して勢いでヤッちゃうわけさ」

青柳「うひょおお」

財前「これのポイントは如何に現実離れというか…現実逃避のシチュエーションを作るかって所にあるわけだ」

青柳「ふむふむ」

財前「例えばリョウさんは存在自体が現実離れしてるから、女はすぐ参っちゃうんだよ」

青柳「ほおお」

財前「つまりやっぱり日常生活を見せちゃうとダメなんだな。あくまでも日常から逸脱してなきゃいけない。だからみんなクラブや怪しい店でナンパをする奴が集まるのさ」

青柳「なるほどなあ」

財前「俺とかは存在自体でそんな事できないから雰囲気や言葉でそういう状況、キャラを作るしかないわけだ」

青柳「ふむふむ」

財前「しかしこれはだな。友達には一切通用しない」

青柳「!?」

財前「相手をあまり知らないから酔うわけで…おまえと3年も一緒にいる娘に使ってもまったく効果はない」

青柳「な…なんでなんだ!?」

財前「だってお前…その娘おまえがアプローチしても今まで音沙汰なしだったんだろ?」

青柳「まあアプローチと行っても食事に誘うとかくらいだけどな。」

財前「全部断られたんだろ?」

青柳「断られたというか相手が忙しくていつもスケジュールが合わなくてな」

財前「それは断られたと同意なんだよ」

青柳「…」

財前「つまりもうおまえの事は知り尽くしてて、門前払いって事だよ。そういう女を現実逃避させて酔わせるのは容易な事じゃない。諦めることだな」

青柳「…」

財前「まあ旅行に行ければなんとかなる可能性はあるが…それも叶わぬ願いだしなあ…」

青柳「飯すら無理だからな…」






青柳「でも他に好きな奴はいねえんだよ。何か手はないのか?」

財前「まあないでもないけどな」

青柳「なんだ?なんだ!?」

財前「酒に酔わせてそのまま勢いで…とかさ…」

青柳「バカヤロウ!そんな事できるかよ。俺は愛されたいんだよ。無理矢理は性に合わねえ」

財前「ああ…。すまんすまん。おまえは俺と違ってSE●が目的じゃないんだったな(笑)」

青柳「そうだ」

財前「だったら尚更無理だな。」

青柳「…」

財前「ていうかおまえさ。その娘とSE●したくないの?」

青柳「…まずは愛しあってからだ。そもそもそういう行為は愛しあう者同士がする物だろうが!!」

財前「か~。バカかおまえは。愛し合うのとSE●はまるで別のものだよ」

青柳「何!?」

財前「ヤリタイからヤル。それは欲望に従ってるだけじゃないか。女だって30超えたらヤリたくて仕方がなくなるんだぜ!?その頃は男より欲望が上がるって知ってる?」

青柳「そんな事はない。あの子に限ってそんな事は…」

財前「愛だ恋だと抜かしたって所詮は僕らアニマルなんです」



青柳「…」

財前「そもそも子供を産む年頃にはDNAが作用してSE●したくてしたくてたまらなくなる。それが人間なんだよ」

青柳「そりゃ昔の話だろ?」

財前「あ~。おまえそういう本能的な事を利用せずにどうやって相手を落とすわけ?おまえイケメンじゃないんだぞ」

青柳「イケメンじゃなくても心はバッチリだぜ…」

財前「…ああ。そうかもな。でも愛されるのは諦めろ。な?この3年で答えは出てる」

青柳「ううう~…。」

財前「それでもやるってのなら止めはしないが…」

青柳「むむむむ…」





























青柳「俺はやるぞ~!!」

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財前「え…!?」

青柳「決めた!俺は決めた。今から理恵の家に行く!!」

財前「!?」

青柳「幸い理恵の家はおまえの家から近い。おまえも一緒に付いて来てくれるよな!」

財前「ちょ…待て…なんで家に行くの?」

青柳「直接告白しに行くに決まってんだろうが!!」

財前「ちょ…」

青柳「フェイス・トゥ・フェイスだ。当たって砕けろ作戦だ」

財前「えええ!?」

青柳「おまえも来いよ。そして俺の生き様を見届ける証人になってくれ」

財前「おい。待て柳。おまえ酔ってるんだよ。な?酔ってるんだ。馬鹿な真似はやめろ」

青柳「うるせえ!もう決めたんだよ俺は。俺はやる。俺はやる男なんだ。俺はやれる!!」



 …

 恐れていたことが起きてしまった。

 彼はこういう暴走癖があり、いつも行き詰まるとこうなってしまう。だがいつもは吉野山でダッシュで突撃とかパンツ一生でその辺をダッシュとかその位で住んでいたのだが今回は彼の3年間片思いのギター部の同級生の理恵の家に突撃とかシャレにならない。

 そもそもコイツなにもわかってない。

 青柳だけ行くなら別に止めはしないが、私も一緒に来いとか正気とは思えない。


 私はそもそもギター部とはなんの関係もない人間なんだぞ…。そんなのが理恵の家に青柳と乗り込んだとかいう事実が学校に広まったらそれこそ笑いものである。ただでさえストーカーなんてあらぬ疑いをかけられているのに、それがさらに…

 とにかく私は青柳を止めた。

 それはやめておけと。


 作戦ならちゃんと考えてやると。



 だから今は待てと止めた。


 だが彼は少し落ち着いたものの、まだ何か物足りないみたいだった。





 それもそのはず。彼は知っての通り情熱型の人間だ。一度情熱に火が灯るとなかなか消すことはできない。今は彼の理恵への「告白するぞ!」という気持ちが荒ぶっている状態。

 これを沈めるのは…容易ではない。


青柳「ふ~…ふ~…」

財前「青柳。ちょっと牛丼でも食いに行くか。な?腹減っただろう。酒ばっかりじゃ胃に悪いしな。ハハハ…(笑)」

青柳「その後理恵の家に行くぞ」

財前「いや…それは…とにかく落ち着けよ…な?」

青柳「…」







青柳「そういやよ…」

財前「ん?」

青柳「おまえ今彼女いないっつったよな?」

財前「ああ」

青柳「好きな子はいるのか?」



 お…。これは話題を理恵から逸らすチャンス到来か!?」



財前「あ…ああ。いるよ」

青柳「ほうほうほうほう!? で?どんなやつだ?どこの誰だ?」

財前「いや…ひとつ後輩なんだけどさ。」

青柳「ほうほうほうほう!? 後輩ですと!? 同じ研究室か!?」

財前「いや…研究室は違う。けど隣の研究室だ。亜美っていう娘なんだけどね」

青柳「写真はあるか」

財前「ああ。あるよ」



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青柳「へ~。おまえにしちゃあ。落ち着いた娘を選んだモノだな」

財前「まあな(笑)」

青柳「とうとうチズエは諦めたか」

財前「諦めてないぞ?」

青柳「何!?」

財前「事実上不可能だから忘れてるだけだ。チャンスがあれば行く」

青柳「そんなチャンスねえよw」

財前「うるせえ。おまえも理恵にはノーチャンスだろうが」

青柳「まだ俺の方がチャンスあるわ!」

財前「まあ理恵の話はいいや。とにかくこの亜美って娘はワンダーな娘でさ。一緒に旅行に行ったり、何度もこっちが好きのサインを送ってるのに一向に振り向いてくれないし、なんお素振りも見せてくれないんだ」

青柳「おまえバカだな。それを振られるって言うんだよ」

財前「バカな事を言うな! 振られてるわけがないだろうが。まだ告白してないんだよ」

青柳「バカヤロウ。それを言ったら俺も理恵に告白してないわ」

財前「あのなあ…俺は旅行も行ってるし、食事も行ってるんだぞ?危うくスッピンまで拝める所まで行ってるんだぞ?おまえとは違うの」

青柳「…」

財前「とにかくあの子は男との経験がない分ガードが手厳しくてな…。」

青柳「おまえさっきさ。お得意の非現実なシチュエーションを作ってって奴言ってたじゃん。それすればいいんじゃないのか?」

財前「ああ…それがだな…。問題があるんだよ」

青柳「なんだ?」

財前「俺がそういうシチュエーションを作ろうとしてもな…あの娘の方が不思議ちゃんというか…ワンダーすぎて非現実的なシチュエーションに持ち込めないんだよ」

青柳「何?」

財前「いつも俺のほうがあっちの…亜美さんワールドに入ってしまう…orz」

青柳「そういう事もあるんだな」

財前「まさにありゃあブラックホールだな。となると下半身の方もさぞかし名器に違いない」

青柳「…」

財前「やっぱさ。暗黙の了解ってあるじゃん?例えば飯に男と二人で言ったらそれは友達以上の関係になりたい事を望んでるって事だとか、映画に誘うってことはアレだからだとか、旅行に行くってことは…とか」

青柳「まああるわな」

財前「あの子はなんか…そういうのがないんだよなあ。ただ付いて来てるだけっぽい所もあるし…かと言ってそうでもない部分、計算してる部分も見え隠れする時があったりして…意味分からん。俺の誘いに乗ってるとも取れるし、やんわり断ってるとも取れるんだよ」

青柳「なるほどな…」

財前「だから正直今は距離を置いているところなんだ」

青柳「距離をおいてる?」

財前「ああ。3週間前に一緒に4人で旅行に行ってからまったく会ってないし話してもない。連絡も取ってないし」

青柳「マジか」

財前「一つの賭けだな。俺が接触しなかったら亜美さんの方から接触してきてくれるかもしれないしさ」

青柳「でも3週間接触なかったんだろ?亜美の方からも」

財前「まあな」

青柳「おまえ自分の事になるとさっぱり理解できてないな。そりゃあおまえ脈ナシなんじゃねえかw」

財前「そ…そんなことはないお!」

青柳「ヨッシャわかったわかった。俺が一発で答えを出す方法を教えてやるよ」

財前「何!?まじで?そんな方法があるのか?」

青柳「あるある。なぁに。簡単なことだ。単におまえがな?その亜美って奴にな?」

財前「うんうん」



































青柳「告白すりゃあいいんじゃねえか。今すぐ」

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財前「え?」

青柳「今すぐ電話して告白すれば答えが出るじゃねえか。」

財前「アホか!俺はおまえとは違うんだよ。慎重に慎重に暖めてきてる恋なんだぞ?」

青柳「おまえさっき友達への作戦は持ってないって言っただろ。そんなに一緒にいるなら、もうお互い新鮮味はなくなってきてるんじゃないのか!?」

財前「…」

青柳「友達だろうがもう。おまえらは。知り合いじゃねえだろう」

財前「ま…まあ」

青柳「じゃあ男なら告白しろ。ほら。電話で。今すぐだ」

財前「ちょっと待て…ちょっとまてよ…なんでこんな展開になるんだ!? おかしいだろ。なんかおかしいぞこれ」

青柳「ガハハ。何がおかしいんだよ。おまえさっき非現実がどうとか言ってたじゃないか。普通じゃない方法だから良いんだろ」

財前「…」

青柳「別にいま告白しようがしまいが結果は同じだろうが」

財前「ま…まあ…」

青柳「じゃあ告白しろ。今すぐだ」

財前「ええええ!?」

青柳「おまえが亜美に今電話で告白したら、その後、俺も理恵に電話で告白する。男と男の約束だ。今日を二人の記念日にしようぜ。男と男の記念日に」

財前「え…」

青柳「二人の新友が同日に二人の女に告白する。格好良いとは思わないか?それに俺も大学最高の思い出になりそうだしよ」

財前「…」

青柳「大学生活腐ってもあと1年ないんだぜ。俺とお前で一個くらいドデカイ思い出を作らないとな」

財前「しかし…」

青柳「今日こうやって友達として飲んでるのもお互い何かの縁だしよ。やろうぜ」

財前「…」



 …


 なぜか…

 なぜかわからないが青柳のこのセリフは胸に響いた。


 こんな話の流れで電話で亜美さんに告白…あり得ないことだ。そもそも私は電話などで告白をしたことがない。電話でするなんて失礼だと思っていたから。

 しかしだ。今日のこの状況は何かが違った。

 むしろ会いに行くほうが不可能だ。私の隣りに今いるのは青柳だ。電話でしないと言ったら「じゃあ亜美の家に行くか!?」とか言い出しかねない。それ以外にも「じゃあ理恵の家に行こうぜ」とかも言い出しかねない。


 この状況を総合的に判断して… ある意味ベストな選択は


 ・そもそもどちらも告白しない


 だった。しかし…


 ・二人で電話で女に告白する


 この選択も悪く無いと思う自分がいた。

 確かに悪くない選択だ。そもそもこのままズルズル行ってもお互い何もないまま終わるだけ。そして大学を卒業して一生会えぬ関係になるだけ。


 それならば…いっその事告白して粉砕した方が楽になるのではないか。

 今ならなんか…できそうな気がする。

 一人じゃできないけど青柳もするって言ってるんだから勢いでできそうな気がする。


 これを利用しない手はないのでは…


 そういう甘いささやきが胸でコダマしているのだ。



 確かに悪い話ではない。




 私が告白すれば青柳も告白するという…。この事実がある事で何かこう…私一人の時よりも背中をスッと押してくれてるような安心感がある。何か。

 この感覚…久しく忘れていたような気がする。
 

 そうだ。そもそも私はナンパが本流の初見殺しじゃないか。


 友達になってしまった女性に対する有効な作戦は持ち合わせていない。

 いや。むしろ今までロクな事がなかった。





 そう考えると…この話…悪く無い話だ。










 これが若気の至りなのかどうかはわからない。だが私は決心した。

 この話に乗ろうと。





 私は青柳に確認した。




 「私が亜美さんに告白したらおまえも告白するんだな?」…と。




 彼は深く頷いた。





 なぜかわからない。なぜかわからないが、これから生きて帰ってこれる望みのないアフガニスタンの戦場に出るような気分になっていた。

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 俺たちは行くのだ。次の舞台へ…








 そう心に決めると私の行動は素早かった。







 サッと携帯電話を手に取り電話帳から




 亜美…を選択




 ここで心臓の高鳴りは最高潮に達するも屈しない。屈する訳にはいかない。

 もはやトランス状態の私に「やめとけやめとけ」という心の悪魔の必死の叫びは届かず…






 そのままボタンをプッシュ。





 しばらくの静寂が辺りを包んだ後…








 電話のベルが鳴った




















 トゥルルルルル  トゥルルルルッル














 もう死にそうだ…。緊張して死にそうだ…。



 私は青柳の顔を見た。彼も必死に私の方を真剣な表情で見ている…。その辺にある何の変哲もないオヤジ顔だが、今はやけに青柳の顔が頼もしく見えた。

 

 トゥルルルルルル  トゥルルルルルル



 また亜美さんの電話を呼ぶ出す音がなる。

 ひょっとしてお風呂に入っているのではなかろうか…。そんな気もした。通常の精神状態ならそれを望むかもしれない。

 だが今の私はそれを望んではいなかった。

 なぜなら決心したのだ。今。ここで。今。すぐ告白しようと。


 今ここで決心したのだ。


 次の機会はない。今この瞬間でなければ私は告白できない。




 今しかないのだ。今しか…
























 そして…



















 ガチャ…





























亜美「もしもし?」

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 3週間ぶりの亜美さんの声…。まるで天使の囁きだった。








 
 亜美さんが電話に出たら私は何を言おうか事前に決めていた。

 それはこれまで散々苦渋を舐めさせられた不思議ちゃんワールドに引き込まれないための防衛策。


 そう。会話をしないことだ。余計な会話をしないことだ。

 通常の女性になら有効なこの方法が亜美さんには逆効果。逆に盾を構えられてしまう。





 攻めるなら彼女が盾を構えていない時に攻めるべきなのだ。





 それはいつか。




 決まっている。それは彼女が電話に出た瞬間。







 そう。今だ。今。すぐ。今。











 今言うのだ。





















 私は亜美さんにダイレクトに言葉を吐いた















































財前「亜美さん…実は俺…


















































ずっと君の事、好きだったんだ


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2011(Sat) 09/24

大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ(27)

財前History … Comments(27)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
11/09/21 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし  (コメント 30)
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント 78)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)












 ギター部に入った時、私はなぜか注目された。

 理由はわからないが、恐らく応援団だったという事実と、そこを1ヶ月で辞めてきたというのがギター部の面々にとっては非常に物珍しかったようだ。

 その上に、私は応援団の命令で強制で坊主頭にされていたので、それも影響していたのかもしれない。

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 まあ無理もない。


 真面目なクラシックギターオーケストラ部に応援団上がりの身長185cmの坊主頭が入ってきた。


 これで目立つなという方が無理な話である。

 
 実はこの時、私も周りを見渡した時に違和感を感じてはいた。ギター部という印象とは、かけはなれた人ばかりなのだ。皆それほどオシャレではないし、非常に真面目な感じの青年、女性が多い。

 どちらかというとこう…古いというか…

 しかしまあギターといえば引き語りもあるわけだからそういうもんなんだろうとこの時は勝手に自分で思い込んで、とりあえず入部に関する話を聞く事にした。

 あくまでも私の目的はギターが弾けるようになるという一点であり、ギター部自体の活動についてはまったく興味はない。ギターをうまく教えてくれるかどうか。それが重要だった。


ギター部「やあ。ギター部に入りたいのかい?」

財前「そうです」

ギター部「まず最初に言っておくけどさ。俺たちは真面目にギターを弾く部なんだ。サークルとは違う。わかるかい?」

財前「どういう事ですか?」

ギター部「サークルというのは遊びさ。遊び。好きなコトやってるだけで何の責任もないだろ?でも俺たち農友会は違う。ちゃんと学校から部費が出てるからそれなりの事はしないといけない。」

財前「それなりの事というと?」

ギター部「12月に定期演奏会があるんだ。俺たちの最大のイベントはそれさ。そこで観客を楽しませること。それで東京農業大学の宣伝にもなるし、学校も部費を払っているという面目が立つわけさ。だからそのためにも12月の演奏会はキッチリとした演奏をしなければならない」

財前「なるほど」

ギター部「簡単に言うと12月の定期演奏会と11月の文化祭の演奏が2大イベントになるかな」

財前「年に2回ですか。それ以外の時はどうしてるんです?」

ギター部「もちろん練習さ。」

財前「なるほど」

ギター部「まあ普段の日はバイトとか勉強が忙しければ練習も休んでいいし、部室に来る必要もないけど、定期演奏会や文化祭前は来れる日は毎日必ず来なければならないよ」

財前「ふむふむ」

ギター部「その辺りの規律があるっていうのがサークルとの違いかな」

財前「なるほど。学校の宣伝のために活動しているのがギター部であると」

ギター部「そうだね。だから自己満足のサークルとは違うのさ。」



財前「ふ~む…という事は…ギターサークルに入るよりはギターの上達も早いんですかね」

ギター部「そりゃあ練習時間が違うからね」

財前「バッチリですね。ギターがうまく弾けるようになりたいからギター部にしたんですよ」

ギター部「そうなんだ。ギターは部費で購入している分が何本もあるから基本的にはそれを使っていいよ」

財前「え?そうなんですか?」

ギター部「そこがサークルと違うところさ」

財前「なるほど…」

ギター部「とりあえず体験で入部してみなよ。丁度さ、低音のパートの人が欲しかったところでさ。君、背が高いから調度良かったんだよね」

財前「低音のパート?」

ギター部「まあオーケストラだからね。それぞれのパートがあつのさ。主旋律を弾く人は小さいギターを使って中音は中のギター。そして低音は大きいギターを使うのさ」

財前「へ~。ギターの大きさって均一じゃなかったんですね」

ギター部「クラシックギターはそうだね」

財前「じゃあとりあえず体験入部します」

ギター部「いいね。じゃあそうしなよ」



 これは当時大学1年生の6月の話である。

 要はこのギター部というのはオーケストラのギター部でサークルとは活動内容が違う。なぜなら学校から部費の一部を貰っているので、学校の宣伝をどこかでしなければならないため、11月の文化祭の時と12月の定期演奏楓一般の人に演奏を聴かせるのだという。

 特に12月は重要で大きなホールを貸しきって演奏会をやるらしい。

 
 気になったのは反しの節々に「サークルとは違う」という言葉を入れていたこと。そこまで強調するものなのか?と個人的には思っていたが、この時はそこまで気にならなかった。

 つまりそれだけ真面目にしてるんだなあと勝手に思い込んでいた。


 私はとりあえず体験入部をし、部室のギター部の面々に挨拶をした。

 皆良い人だ。応援団の話をすると「大変だったね~」「応援団なんて辞めて正解だよ」と言ってくれる。

 私は大学に入って初めて何かやさしさに触れたような気がして安心感を得た。

 そして思ったのだった。ここギター部は良いところだなあ…と。


 しかし一人だけ…まるで何年もギター部に居座っているようなオーラを醸し出し、既にギターをなぜかうまく弾きこなしている男が部室の隅にいた。

 見るからに中年。気難しそうな性格をしている人なのはわかった。

 恐らくギター部のキャプテン…か何かではないだろうか。存在感が半端ない。とりあえず新入りの私はその主に挨拶をしておく必要があると思い、その主に挨拶をする。


財前「あ…あの…ギター部に体験することになった財前ですけど…」




青柳「ん…」

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青柳「誰だ?おまえ…」

財前「は…はじめまして!」

青柳「ん? …ああ…。何だ?おまえ新入りか」

財前「は…はい。まだ体験入部ですけど」

青柳「ガハハ。そうかそうか。いやあ。新しい仲間が増えるのはいい事だ。絶対気にいるぜ!?この部。いい人ばっかだしよ」

財前「そうですかw」

青柳「で?名前はなんていうんだ」

財前「財前です」

青柳「へ~。どこ出身なんだお前」

財前「徳島県です」

青柳「徳島か~行った事ねえなあ。俺は埼玉だな」

財前「ほうほう」

青柳「それと俺は青柳ってんだ。まあ今後ともよろしく頼むよ」

財前「こ…こちらこそよろしくお願いします」



財前「ギターうまいですね。今度よろしければ教えて下さい」

青柳「ん?ああ。ガハハ。まあ俺も毎日練習してっからよ。ちょっとはマシになったかな」





 …

 …や…やべえ。

 この人とんでもない威圧感じゃねえか。きっとギター部キャプテンに違いないな…。
 
 まあとりあえず挨拶しておいたし…大丈夫だろう。




 その後私は、明らかに1年生であろうという集団の方に向かい、色々と話しを聞くことにした。
 
 どうやら応援団とは違い、この4月に入部した1年生がギター部は15人もいるらしい。

 そしてその内の半分以上が女性という素晴らしい環境。

 この時再び応援団を辞めてよかったと心から感じた。やっぱりあんな所にいるもんじゃない。


 ただひとつ気になっているのは女性が多い割には綺麗な人がいない事だった。

 少なくとも今日見た部員の中に「かわいい」「彼女にしたい」と感じた女性は一人もいなかった。まあこの部分は少々残念ではあったが、そもそもギター部に入った理由はギターが弾けるようになって女性を口説くという目的なので気にならなかった。

 そもそも大学全体レベルで言えば東京農大には数千人も学生がいるのである。

 特に拘る必要もなかった。


 という事はギター部の部室にこれ以上いる必要はない。

 まあとりあえず今日のところは挨拶も済ませたし…帰るか。




 と思って出口の扉に手をかけた時だった。










青柳「おうおうおう。おまえなんだ?もう帰るのか!?」

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財前「え…」

青柳「せっかく来たんだしもうちょっと部室にいろよ。もし何だったらギターもそこにあるし弾いてみればどうよ」

財前「は…はぁ」

青柳「なに。今日アルバイトとか?」

財前「い…いえ。アルバイトはまだやってません」

青柳「じゃあいいじゃん。もうちょっと遊んでいけよ部室で」

財前「は…はぁ…わかりました」

 

 …

 なんという威圧感…。だがキャプテンに言われたら仕方ない。

 だがギターを弾くにも弾き方をしらないので… それにギターを弾けっていっても、ギターケースにはなんか個人的シールとかステッカーとか貼ってあって明らかに誰かの私物っぽい雰囲気。

 明らかに共有のギターとかじゃない。
 
 勝手に弾いてはいけない雰囲気が漂ってるのだが…。それに今日来たばかりなので友達もいないし、正直座ってるだけは苦痛なんですが…。

 1年生に話しかけようにもなんか…雰囲気的に暗そうな人が多くて何か話しかけづらいというか…なんかもっとアホっぽい奴はいないのだろうか。

 でも青柳キャプテンの言うことに逆らって帰るのもどうかと思うので、とりあえず部室の端に正座して座っていると…





 「ちぃ~~す」



 という挨拶と共になんかとんでもない奴が部室にやってきた。

 なんとその男…赤髪のロンゲ。

 それでいて顔は結構イケメン。

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 これは…私が当初イメージしていたギター部…というかギターサークルにいそうなお兄さんな感じの男である。
 
 私はこの時淡い期待をした。

 おまえ…ギター部であってくれ。そして1年生であってくれ…。


 コイツとならいきなり打ち解けて友達になれそうな気がする!


 

 …



 そして



 どうやら私の予感は的中したようだ。奴は調子よく先輩にペコペコ頭を下げて挨拶したあと、1年生と思われる集団のグループの方に入っていった。見るに1年生は奴とタメ語で話している。そして奴は先輩とは敬語で話している…。

 つまり確定である…。奴は1年生。そしてギター部であると。

  
 だが私の方もあの集団の中に飛び込むのは気が引けた。何しろ私は今日入った新入りである。いきなり彼らのところへ行って「やあ。よろしく~」と言うのも変な話だし、「あ。僕も1年生なんですけど友達になりません?」っていうのも変な話だ。

 と言ってこのまま帰ろうとすると青柳キャプテンにまた怒られるし…。


 …というわけで

 とりあえずタイミングを待つことにしたのだが、チャンスは意外と早く訪れた。どうやらあの赤髪の男…1年生の集団と最初は調子よく話していたが、すぐに話題が尽きたらしくなぜか今ぼっちになってる。

 一人ぼっちになってる…。


 まあ無理もない。そもそも見るからにあの真面目そうな軍団と赤髪の奴は人種が違うし、話も合うわけがないと思う…。


 そんな風に観察していると私は奴と目が合った。

 途端に奴の目が輝き出す。


赤髪「あれ?あれ?お兄さん新入り?」

財前「え…ええ。そうです」

赤髪「ちょ…デケエなw 身長高すぎない?」

財前「そうですかね…」

赤髪「ああ。敬語はいいよ。俺も1年だから」

財前「おお。そうなの?よろしくw」(知ってたけど)

赤髪「うわぁ。なんかうれしいなあw ギター部で初めて気が合いそうな人に会ったよ」

財前「そう?」 

赤髪「俺は敬助ていうんだ。よろしくな」

財前「よろしく」

敬助「それとさ。聞いたよ~。君応援団に入ってたんだって?」

財前「ああ…まあ… でもなんで知ってるの?」

敬助「いや。あそこの1年の奴らに聞いたよ」

財前「聞いてたのかw」

敬助「なんか君さ。怖がられてたよ~。あそこの奴らに」

財前「え?なんで?」

敬助「そんなん普通に考えたらそうじゃんw 坊主でその身長だろ? それに応援団上がりってww ヤバいっしょ」

財前「…確かにww」

敬助「まあ俺も同じようなもんだけどさ~。どうもギター部の面々とは馴染めなくてね~」

財前「その髪じゃあなあ…」

敬助「だよな~w どっちかというとギターサークルのノリなんだよね。俺って」

財前「じゃあそっち行けばいいじゃん」

敬助「まあ様子見てからかな。サークルなんていつでも入れるし。やろうと思えば掛け持ちでもいいしね」

財前「なるほど」

敬助「色々経験したほうがいいでしょ。大学生活楽しまないとさ。応援団も良い経験になったでしょ?w」

財前「おお!君わかってるねえ。そりゃもう金払ってでも経験したほうがいいぞ応援団」

敬助「まじで?何するのよ応援団って」

財前「腕立てして応援するだけ」

敬助「ギャハハハハ。なんだそれ無茶苦茶面白いじゃん。ギャグだなww」

財前「真面目にやってる人もいるからギャグじゃないけどw」

敬助「ほう?じゃあ実際どうだったの? 楽しかったの?応援団って」

財前「実は…かくかくしかじかで…」





財前「応援団…。アリかナシかでいうと…」

敬助「うんうん」

財前「ナシだな」

敬助「ギャハハハ。おまえ面白いな」

敬助「しかしすげえな!腕立て1000回とか今時やってる奴いるのかww」

財前「口で言うのは簡単だけど地獄なんてもんじゃないぞ!?」

敬助「ギャハハハ。そりゃそうだ。俺にはできそうにないや」



 なぜかわからないが、赤髪の敬助とはいきなり意気投合した。

 コイツ…良いやつだ。

 しかも驚くべきことにコイツ…結構イケメンだなあとは思っていたが、それもそのはず。生粋の東京人で、なんと子供時代…「さわやか3組」という番組に出演していたタレントでもあったのだ。

 さわやか3組というのは恐らくほとんどの読者が知ってると思うが、NHKの教育番組の15分枠の番組。学校で見たりした人もいるのではないだろうか?

 1987年4月~2009年3月まで放送されている。

 

 どうやら芸能関係の仕事をしていたのは子役時代だけだったらしいが、まさかタレントだったとは驚きである…。通りで整った顔をしているわけだ…。

 しかし…

 これだから東京は素晴らしい。これだから大学は素晴らしい。

 ちなみに赤髪の敬助とは今だに交友関係があり、今でも東京出張時にたまに飲むし、結婚式に呼ぶ呼ばれるの仲だったりする。

 そんなこんなで

 私たちの話はギター部の部室で最高に話が盛り上がっていたのだが…

 




 そんな私たちがうるさすぎたのか、ここで青柳キャプテンが…





















青柳「おまえらウルせえよ。お前らの声で俺のギターの音が聞こえづらいだろうが!」

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 恐ろしくドスの利いた声。


 …

 あたりの空気がピリッと引き締まり、シーンと静まり返る。


 ヤバ… 少し話が弾みすぎたか…

 私の背中にとっさに緊張感が走った

 さすがに青柳さんを怒らせるのはヤバい… 

 しかし赤髪の敬助がこの時とんでもない行動に出た。


 なんとキャプテン青柳さんに向かってとんでもない暴言を吐いたのだ








敬助「うるっせえよ。大してデカイ声じゃないだろうが」

青柳「ああ!? こっちは練習してんだよ」

敬助「部室でしゃべっちゃいけないって規定はないだろ?」

青柳「くだらねえおしゃべりする所じゃねえんだよ」

敬助「頭が固い奴だなあ」

青柳「ああ!?」

財前「お…おい…おい敬助」

敬助「ん?」

財前「マズイだろ…」

敬助「何が?」

財前「なんでおまえ先輩にタメ口なのよ」

敬助「!?」

財前「青柳さんにタメ口はさすがにマズイだろ…」

敬助「あ。ギャハハハ。おまえ知らないの?」

財前「!?」

敬助「コイツ1年だぜ?」

財前「え?」

敬助「こいつこんな老けてるけど1年なんだよw」

財前「…」













































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工エエェェ(´д`)ェェエエ工

















財前「え…ちょっと待て。この人1年生なの!?」

敬助「そうそう。みんな勘違いするんだよなw」

青柳「…」

財前「お…驚かせやがって…」

青柳「俺は別におまえに先輩だなんて言った覚えはねえぞ?」

財前「いやあ。正直最初OBかと思ったよ。30代後半とかの」

青柳「そんな老けてねえだろ!」

財前「いやいや。老けてるというか、OBって言っても違和感ないレベルってだけ」

青柳「うるせえよ」

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財前「でもなんでそんなギターうまいの? 昔からやってた?」

青柳「いや。始めたのはここに入ってからだ」

財前「じゃあ1ヶ月やそこらで弾けるようになったの?!」

青柳「まだまだだけどな」

財前「なんだギターって1ヶ月でそんなうまくなれるのか。じゃあ俺も練習がんばろうかな」

青柳「真面目に練習すればだぞ」





敬助「コイツ毎日弾いてるからなw 普通は短期間でこんなうまくならないぞ」

財前「そうか。敬助。おまえはどうなの?」

敬助「え?俺?まだギターに触ったことすらないわ」

財前「なるほどw」






 そんな感じでギター部1日目が終わる。

 なんとも…応援団と比べるとなんと楽な雰囲気だろうか。こうやって県外の人や東京の人と気軽におしゃべるができるだけで「大学に来て良かった~」という気になる。

 何しろ徳島県の人とは発音から言葉遣いから考え方から全然違うから凄い新鮮。

 なるほど~。これが大学生活というものなのか~。



 私とギター部とのファーストインプレッションは非常に良かった。

 未来は希望に満ち溢れていた。

 この楽しい雰囲気でギターも自然とうまくなり、彼女もできて、友達もできていけば言うことは何も無い。これぞキャンパスライフ。これぞ大学生活だと思った。


























 そして

 数週間後…
 
 私はいよいよギターの練習を開始することになった。先輩方が私に与えてくれたギターはバスギターというもので、普通のギターよりも一回り大きいものだった。

 そして私は低音パートというグループに分けられた。

 低音パート担当の先輩は女性のマチコ先輩。

 私はギターのことに関しては素人で無知だったため、私の体が大きいから大きいギターなのかな?と最初は思ったのだが、私と同じサイズのギターを女性も弾いてたりするし、明らかに背の小さい人も同じ大きいギターを持ってたりもしたので、その点だけが不思議だった。

 

 先輩が説明をする


マチコ先輩「さあ。皆さん。いよいよギターの練習です。私たちのグループはバスグループ。主に低音を担当するパートです。オーケストラで言うとオーボエ、ベース、ドラムなどの担当ですね。じゃあ最初にドレミファソラシドと弾いてみましょう。よく見ていてくださいね。ここがドです。」

財前「ほうほう…。ここがドか。」

マチコ先輩「そしてここがレです。ここがミ。私の指の形をよく見て下さい。こうやって弦を押さえます。ハイ。いいですか?じゃあドレミと弾いてみましょう。さんはいっ!」



 ド…レ…ミ…



 とりあえず音が出た。しかし非常に小さい音だがこれは…



マチコ先輩「はいはい。財前くん。弾き方が違うよ?バスギターの弦は親指で弾くのです。」

財前「え?親指?」

マチコ先輩「そうですよ。バスギターは親指以外使ってはいけません」

財前「親指だけ…?」



 ここで大きな疑問が湧き上がった。


 一応私もギター演奏を見たことがあるから知っているのだが、ギターというものは普通ピックというものを使って弾くのではないだろうか? 親指そのままで弾くとか聞いたこともないんだが…

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財前「ギターはピックを使って弾くのではないのですか?」

マチコ先輩「ああ。それはエレキギターとか普通のギターはそうだよ」

財前「そうですよね」

マチコ「それは自分で一人で演奏したりだとか引き語りしたりだとかはそうだね。でもこれはクラシックギターだし、私たちがやるのはオーケストラだからそういう一人でやれる演奏じゃないのよ」

財前「え?」

マチコ「私たちは低音担当なので低音だけを弾きます。主旋律はファースト、セカンドと呼ばれるパートが担当。和音はプライム、そして重低音はまた別のパートが担当しているの。だから私たちは全てが合わさってひとつの音楽を演奏するのよ」

財前「えええ!? 俺は…一人で弾き語りとかしたいんですけど。」

マチコ「それはギターが違うし趣旨も違うわね。その場合は自分でギターを買って家で練習するといいよ」

財前「…」

マチコ「あ~実はそういう人多いんだよね。みんな勘違いして入ってくる。でもオーケストラも楽しいんだよ!?」


財前「わかりました。これってバスギターが弾けるようになったら普通のギターも弾けるようになるんですかね」

マチコ「う~ん。どうだろう。少しはマシかもね」

財前「…」





 …これは正直衝撃だった。

 ギターを親指だけで弾くとか正気の沙汰とは思えない。

 ギター部というのは合奏を主にしているというのは聞いていたが、まさか一つ一つのパートが単音を演奏してひとつの音を作るだなんて思いもしなかった。

 コレって言わば…

 ギターの良さを消してるということになるんじゃ…


 一人で演奏できて歌えるというのがギターの魅力なんじゃないの!?

 

 実際そうだった。

 ドレミファソラシドの練習が終わると次は曲の音楽の練習に入り、ドソラシドとかそういう単音を弾くだけに終始。それが各パート練習した後に合奏で合わせてみたのだが…

 なんか全然盛り上がらない…。

 そして1年生を除いて、2年生3年生がお手本を見せてくれるということになった。


 当然今の2年生3年生は去年の定期演奏会を経験してるわけで曲も出来上がってるし、キチンと曲を演奏することができる。そして私たちも初めてギター部のオーケストラの演奏を聴けるという事でかなりテンションがあがった。


 確かにひとつひとつの音はショボイ。

 しかし全てが集まれば…すべてが集まれば凄いんじゃないだろうか!!


 そんな期待を胸に先輩の演奏を聞いた。






 これについては文章では表現しきれないのでYOUTUBEから動画を拾ってきた。

 実際のギター部のオーケストラ演奏というのはこういう感じである。

 

 私はこれを聞いて衝撃を受けた。

 いや。衝撃なんてものじゃない。物凄いショックだった。


 え…何これ…の世界。

 そこには私の求めていたギターの形はなかった。私からすると何の魅力も感じない音色だったのだ。合奏、オーケストラになっても変わらない。まったく何も感じなかった。

 もちろん勘違いしないで欲しい。これは私個人の感想だ。

 私を除いたギター部の部員たちは先輩の素晴らしい演奏に感動していたし、先輩の凄い演奏を聞いて自分も頑張ろうと3年間、4年間もギター部で演奏し続ける人の方が多い。 

 つまり素晴らしいのだ。


 しかし私にはその良さがわからなかったというだけの話。

 なぜか。

 それはもうお分かりになるだろうと思う。

 この演奏にナンパな匂いがするだろうか? 女の危険な匂いがするだろうか?


 まったくない。

 要は女が欲しいからギターをするわけであって、私はこんな事にかまけてる暇はないのだ。


 …

 私はふと青柳を見てみた。…彼は先輩たちのギターの音色に泥酔している…。酔っている。目がトロンだ。

 やつとは話をしても無駄だ…。私は瞬時に悟った。 
 

 次に私は敬助を見てみた。

 一応奴も真面目に聞いているが、音色に酔ってはいない感じだ。
 
 近くによって敬助に聞いてみる。


財前「な…なあ。おまえ。この演奏聞いて正直な所どう思った?」

敬助「ん…ああ」

財前「俺は正直…ちょっと間違えたかなって思ったんだけどさ」

敬助「え?何を?」

財前「いや…この部に入ったことを…」

敬助「ぶwww」

財前「悪いが正直何の魅力も感じない。曲も知らないし…眠いし」

敬助「奇遇だな財前」

財前「ん!?」

敬助「俺もまったく同じ考えだwwww」

財前「やはりwwwww」

敬助「これ全然ロックじゃねえじゃんw」

財前「おまえロックしたくて入ったのかよここ」

敬助「いや…なんつうか。もっとこう…ノリノリ?っていうか」

財前「ああ…わかるよ…」



 そんな話をしている内に先輩の演奏が終わり、1年生からは大きな拍手が巻き上がる。
 
 パチパチパチパチ


 青柳なんかは感動しきりで


青柳「あの旋律やばくねえか!? さすが先輩だよなあ。最高の演奏だったよ><」 

他1年生一同「そうだよな! 俺もああいう風に演奏できるようになりたいなあ」

財前、敬助「…」



 何度も言うが私はギターのオーケストラを否定しているわけでもないし、ギター部を否定しているわけでもない。これはこれでアリだと思うし今でも素晴らしいものだと思っている。

 単に私の思っているギターとは違っただけなのだ。

 だから私はやらない。それだけの事である。





 …




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 それから私はあまりギター部には顔を出さなくなった。

 当然である。魅力を感じないから。

 それに練習しても親指でギターを弾く練習をしてもまったく意味が無いから…。だが家にはちゃんとギターを買った。もちろんクラシックギターではなく普通のギターだ。
 
 長渕剛とかその辺が使っているギターである。

 一応ギター部の練習で基礎はなんとなくわかっていたので、本を買ってとりあえず家で練習をした。

 だが、先輩も言っているようにここはサークルではない。

 ずっと部活に顔を出さないと先輩から電話がかかってくるのがギター部だった。一応部活なので…


 先輩から呼び出されるのだ。たまには練習にこいと。


 正直練習にはコレっつっつポッチも魅力を感じてなかったのだが、部室に行くことで青柳や敬助、他の1年生とも会えるので、とりあえず飲み会の約束とかそういうのをするために部室に顔を出していた。

 ギター部の練習はやる気はなかったが、1年生とかと飲むのは楽しかったのである。


 とりあえずこの数ヶ月の間になぜか
 
 青柳、そして敬助、それと公斗という奴と親しくなり、かなりの頻度で私の家で酒を飲む仲となっていたのだ。

 まあ別にギター部に行かなくても電話で彼らを呼べばいいだけなのだが

 とりあえずたまにはギター部に顔を出さないとバツが悪いし、練習と言ってもオーケストラの合奏練習。弾いたふりをしておけばOKという感じだったので…とりあえず的な感じで練習にはたまに顔を出していた。

 そしてギター部に在籍し、まともに練習しないまま月日は過ぎ、時は11月になり文化祭が始まり、そして12月になり定期演奏会が始まった。

 まあこの辺りは大学回想では

 07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
 07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
 05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)


 に書いてる生活をしているだけ。つまり女性の尻を追っかけながらリョウさんとナンパに行く日々を送っていたのだから…ギターなんてまともに練習しているわけがないのはおわかりになると思う。

 実際は2週間に1回とかそのレベルでしか部室には行ってない。

 だからバスパートのギターとかまったく弾けるようになってない。

 だが私は1年生だったので無問題だった。


 そもそもバスパートの人間は私だけではない。同じ旋律を弾く人間が5人も6人もいるのである。別に私が弾けなくても彼らが演奏をすれば何ら問題はなく合奏はできる。

 私は弾く…フリをしているだけである

 弾けないのだから当然だ。


 そして

 そのまま文化祭、定期演奏会に突入。この文化祭と定期演奏会というのがギター部にとっての目的みたいなもので、ギター部の存続理由はこの2つのためにあると言っても過言ではない。

 何しろ東京農業大学の文化祭というのは別名「収穫祭」と言って、農大で育てた野菜や牛、研究成果などを一般の方々に販売したり、公開したりするのでかなりの人が来る。

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 特に目玉が豚の一匹丸焼き…みたいな屋台である。

 その人達にギター部はひとつのブースを構えて演奏を聞いてもらう。

 そして定期演奏会はチケットを一般層に販売し、大きなホールを借り切る。そしてギター部のみでそのお客さんに対してギター演奏をして差し上げるのだ。これはある意味、東京農業大学の宣伝でもあるので部費がでる理由にもなっている。

 なぜ部室にもロクに行かず、演奏もできない私がなぜギター部に所属していたのか。

 なぜ辞めてなかったのか。

 その理由はここにあった。

 基本的に大学の文化祭、収穫祭というのは高校生や中学生の頃とは違い、全員参加ではない。

 基本的に3年生からの研究室、そして1年生2年生に関しては農友会と呼ばれる部活か大きなサークルに入っていないと参加できない。

 そう。誰でも参加できるわけではないのである。


 私の見積もりでは半分以上の学生は収穫祭に参加しないと思う。

 大学というのはそういうものなのである。

 自分で何か行動してないと本当にイベントも何もなく終わってしまう。これはあまりにも勿体無いのだが、実際そうなのだから仕方が無い。どこにも所属してなければ収穫祭に来る理由がないのだ。

 それはまあ…客として来るというのもアリだが、東京農大の学生が客として参加するというのは少し違うと思う。どうせなら運営側として参加したいという気持ちがあるはずだ。


 そんなわけでとりあえずはギター部に参加しておけば一応農友会という名目の元で文化祭で大きい顔ができるわけである。

 ハッキリ言うとこれがキッカケで他大学や一般人の女性と知り合うこともできるわけだ。

 なぜなら農大生目当てに東京農大の収穫祭に来る高校生や…他大学の女子学生も結構いたりするから。

 
 実際収穫祭では女子高校生とちょっと良い思いをさせてもらって…この展開は美味しすぎるとしか言い様がなかった。
 

 しかしだ。

 しかしだ。

 確かに収穫祭で一般の女子高生と仲良くなりおいしい思いをしたものの、実際これって…リョウさんと一緒にナンパに行っても同じことができるわけで、別に収穫祭でなければできない事でもない。

 もちろん収穫祭に運営側として参加できるなら…もしかして「チズエさんとも…」という下心もあるにはあったのだが、残念ながら「チズエ」さんは収穫祭自体に参加しておらず、これは完全に無駄骨に終わる。


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 こうなると唯一の優位性はギター部の演奏を一般の方に聴いてもらって喜んでもらうという事だったのだが…


 正直言って延べ人数にしてギター部の演奏を聞きに来た人数は数十人。

 数十人である。
 



 もちろん私はこの人数を否定しているわけではない。これはこれで良いと思う。

 しかしだ。私としては少ないと思ったのだ。

 
 私はギター部に入って収穫祭も定期演奏会もまだ経験してなかった。だから何らかの期待は持っていたのだ。先輩が口癖のように「文化祭と定期演奏会がギター部の活躍の場所だから!感動するよ!」と言ったからどんなモノかと期待しすぎていた所もあったのかもしれない。

 収穫祭に来た客は数十人。

 少し私はこの人数には疑問を持った。


 そしてその後の12月…定期演奏会が開催された。

 これはギター部の単独開催だ。ホールを借りきってチケットを買って貰って一般人に来てもらう。



 しかし…

 そのホールに来たのは同じく数十人だった。

 多分20人か30人くらいだったと思う。

 そして…ほとんどがOBであり知り合いだ…。


 
 これって宣伝になってるんだろうか?

 冷静に考えると疑問だ。


 だが1年生も、他の2年生、3年生も凄くテンションが上がっていた。打ち上げの飲み会でも「俺たちはやったぞ~~!!」「今年の定期演奏会は最高だったな!!」なんて感じで盛り上がっている。

 感動しまくってる。

 
 何度も言うがもちろん私はこのギター部の活動を否定するわけではない。素晴らしいと思う。

 しかし私にとっては違った。ベクトル自体が違った。

 明らかにおかしかった。これは敬助も同じ疑問を抱いていた。


 少なくとも私には自己満足にしか見えなかった。

 確かに定期演奏会で一般の人に音楽を聴かせる…という事で目的は達成しているのかもしれない。確かに大学の宣伝にもなるし、東京農業大学に対する良いイメージ作りにも役立っただろう。

 だからこそ学校からも部費が出ている。


 だが果たしてこれで宣伝になっているのだろうか?

 例えばこの時代にはまだインターネットはそれほど発達しておらず、Youtubeもニコニコ動画もなかった。だからこの時にはできなかったのだが、もし演奏をビデオカメラで取って今Youtubeで上げれば…

 少し宣伝すれば再生数は100を超えるはずだ。


 ある意味ではこの時点で定期演奏会を見た人数に勝つことになる。宣伝としてはこちらの方が効果的な手法となる。


 また当時思ったのだが、農友会というのが大学のイメージ作りに必要な団体であるのであれば、OBしか客の来ない定期演奏会をするのではなく老人ホームで演奏してはどうかと思った。

 ソッチの方がよほど大学の宣伝にもなるし良いイメージを地域に与えるのではないか。


 皆が定期演奏会の成功の満足感と高揚感に浸っていて「飲み会」をしている中…私はそんな事を考えていた。


 だが、もちろん老人ホームで弾こう!なんて提案するつもりはない。

 そもそもギター部はこれで辞めるつもりだったからだ。
 
 収穫祭も定期演奏会も経験したし、もはややり残したことはない。私としては2年生になったら「チズエ」さんが所属しているスキーサークルに入るつもりだったからだ。


 大学生活というのは人生に1度しか無い最良の時である。


 無駄な時間を費やしている暇など無いのだ。


 
 そんなわけでスキーサークルに入ろうとしたのだがここで問題が起こった…。

 今は12月…。知っての通り私たちギター部は定期演奏会を終えたので新入生が入ってくる4月まで目立った活動はない。言わば休息期間であるのだが、逆に言うと私たちは2年生になる準備の期間を与えてもらっているとも言える。

 ちょっと考えて欲しい。

 私たちの部活はギターオーケストラだ。オーケストラ。

 つまり演奏者だけではなく指揮者というのがいる。

 歴代東京農業大学の指揮者というのは学生が努めてきた。

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 指揮者は2年生の指揮者と3年生の指揮者がいる。もちろん3年生の指揮者がメインだが、指揮者はそれほどすぐには育たないので2年生の間に指揮者を選定し、1年間の修業を経て3年生の指揮者になるのだ。

 ゆえに私たちは来年2年生になるという事でギター部の指揮者を決めようという話になった。

 これは非常に重大な会議で厳格な投票の元で指揮者が選ばれる。

 
 もちろん一部の変わり者以外は指揮者などやりたくはない。

 当然である。みんなギターが弾きたくてこのギター部に入ってきているのだから。

 誰がギターではなく指揮棒を振る指揮者になろうと思うだろうか。ここは音楽大学ではないのだ。指揮者になったからと言って就職に有利になるわけでもなければ、学校から良い成績を与えてくれるわけでもない。

 ゆえに音楽やオーケストラが本当に好きな人でないと指揮者などできない。


 それを選ぶ会議がこの会議だ。


 投票は1年生だけの投票によって行われる。

 当然多数決だ。一番票が多かった者は問答無用で指揮者にならなければならない。

 もちろん希望者がいれば別だが、希望者などいるわけもなかった。

 私的には「ギターがうまい青柳がすればいいのでは?」と思っていたので家で飲んでいる時などに何度か青柳に「おまえやれば?」とか言ったりもしたのだが、どうやら青柳は「俺が演奏をやめたらギター部の演奏が軽くなるだろ」という理由で演奏者に留まりたいようだった。

 
 …

 この時…私は読みがあまりにも甘かった。

 
 私はギター部の練習にほとんど顔を出していないしギターが下手だ。正直…敬助と遊んでいたことしかほとんどギター部の活動らしい活動をした記憶はない。

 だから私が指揮者に選出されることなんてありっこないって思ってた。

 そんな事は起こるはずがないと考えてもいなかった。


 そりゃあそうである。まともな頭をしていれば私を指揮者に選んだりはしない。



 だってどう考えても真面目に練習するわけがないし、指揮もまともにするわけがない。






 あり得ないのだ。いや。あり得てはいけないのだ。私が指揮者に選ばれるなど。









 だいたい他の部活の奴らからも言われていたのだ。


 もう敬助とか財前がギター部にいるだけで笑えてくるって。そもそもおまえらが真面目にあの演奏をしているだけでギャグでしか無いって。だって明らかに人種が違うから…

 
 そう言われていたのだ。

 考えてみて欲しい。敬助はロン毛で赤毛。そして私もこの時は坊主ではなく、この6ヶ月で髪は伸びロンゲでパーマで茶髪だった。


 それがこういう中に入って座ってギターを演奏していたのた。

 

 あり得ない。おかしい。明らかに浮く。人種が違う。絶対浮くに決まってるじゃないか。私と敬助とか…。

 実際雰囲気はこんな感じだったから想像つくと思う。

 そりゃ他の人は笑うと思う。実際に結構話題になってて…他の部活からも「ギター部にいる赤毛と茶毛のロンゲ二人がギャグだ」って有名だった。珍しくてわざわざ見に来るヤツらすらいた。

 まあそれはそれで楽しかったのだが、実際私はストーカー事件で名前は結構売れてたし話題は不要。それにこれ以上真面目なギターをやるのは苦痛だった。

 いや…具体的には真面目にやってない。そもそも弾けてない。ギターを空弾きというか…ほぼエアーギターに近かったから。どうでも良いのだこんな演奏など。ギターで合奏などなんの意義も感じない。

 だから私は早く辞めたかったのだ。

 ギター部を。 

 スキーサークルとかで早くハっちゃけたかったのだ。

 真面目なことなど望んでないのだ。大学は遊ぶところなのだ。社会人になって遊べなくなる前に全てを経験しておくところなのだ。

 立ち止まっている暇など無い。真面目にギター部などでかまけてる暇など無いのだ。




 わかっていた。


 そんな事は私も敬助もわかっていた。



 もちろん…


 この投票で指揮者などに選ばれなければその計画はスムーズだっただろう。





 しかしあろう事かこの会議で私が指揮者に選出されてしまったのだ!!







 そう。私に投票があったのである。











 理由はわからない。さっぱりわからない。

 だがこの1票をバカヤロウの敬助がギャグで入れたことは間違いない。それは良い。そんな事では指揮者にならないから。しかし他の人は指揮者を「勉学に励むこと」を理由に辞退した。

 本来指揮者の事態は許可されないのだが、運が悪い事に選ばれた人たちは特待生であり、成績が低下すると奨学金が打ち切られる…という大義の理由があったため特別に許された。

 そうなると次の矛先は私である。

 私は大学の成績はもちろんトップレベルではないので奨学金目当てに勉強をするという理由がない…。

 そうなると途端にみんな「指揮者は財前」という声が高くなる。

 理由は「面白そうだから」とか「今までにない指揮者が見れそう」とか「ギター部を楽しくしてくれそう」とかそういう理由だったと思う。

 アホばかりとはまさにこの事である。


 これを見ていた先輩たちは「財前が選ばれたんだから財前が指揮者だな」とか勝手なことを言っていたので私はハッキリと言った。私は指揮者などやるつもりはないと。

 ていうかヤル気がないと。

 でもまあ前で指揮棒を振るだけ?ならやらないでもないと。

 
 そもそも練習には相変わらず参加するつもりはなかったし、真面目にクラシックを演奏する気もなかったのだから。

 指揮者というのは部に一人しかいない。演奏者というのはたくさんいる。つまり代わりがいる。指揮者は代わりが効かない。この時点で考えればわかるはずだ。指揮者は練習には基本的に毎日参加しなければならない。演奏者のように休めない。代わりがいないのだから。

 練習に毎日参加しなければならないとか愚の骨頂である。

 それにギター部のことを本当に愛し、曲の編曲までしなければならない。


 無理だ…。そもそも私はギター部を愛してはいないのだから。



 そんなの私にできるわけがないだろう…ていうか練習に毎日来るわけがないだろう…。


 もちろんそんな事はギター部の部員もわかっていたと思う。だが恐らく…指揮者をやりたくないという気持ちから、とりあえず私に決めておけば後はなんとかなるだろうと思ったのだろう。財前も心変わりして指揮者を真面目にやるかもしれないと思ったのだろう。



 …


 だがこの流れは止まらず私は指揮者に選出された。

 たった1票で。

 もちろん私は真面目にやる気はなかった。こんな1票で指揮者にされるなんて酷すぎるとしか言い様がない。だが逆に考えるとほとんど練習に参加してなかった私を指揮者にする…という事は

 つまり彼らにもそれなりの覚悟があってのことなのだろう。私はそう勝手に理解していた。

  


 …



 しかしこれがとんでもない事態を招く結果となる。

 なんと指揮者というのは前で指揮棒を振るだけの存在ではなかった。なんと週に1回…指揮者学校というのに通わなかればならないという話を先輩より聞かされたのだ。

 そしてそれは部費で指導費を支払っているのでサボるのは許されないとのことだった。

 冗談じゃない。

 私はこの当時リョウさんの影響でバイクの免許を所得している最中であり、指揮者学校などに行っている暇はなかったのだ。

 だいたい部活動で絶対に休んではいけないとかあり得ない。


 これは仕事か!? 仕事なのか!? 

 それに馬鹿らしくなってくる。もし私が指揮者を一所懸命したとしよう。1000人とか10000人を相手に演奏をするというのなら力も入るだろう。しかし現実はどうだ。

 実際には収穫祭でちょこっと一般人数十人の前で演奏するのと、定期演奏会で数十人のOBに演奏するだけ。


 これだけのために私の貴重な時間を1週間に1度も潰すのか!?


 あり得ない。あり得ない暴挙だ。大義名分がない。モチベーションがない。



 もちろん何度も言わせてもらうが、ギター部の活動を否定するわけではない。彼らは素晴らしいと思う。

 だが私は違う。それだけなのだ。


 そもそもギターに対するイメージからして彼らとは違うのだから相容れるわけがない。



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 …


 結局この後私がどうなったかは…お察しの通りである。

 指揮者学校よりもバイクの免許を優先したので…1ヶ月後にすぐに問題になり、私のためにギター部で会議が開かれた。

 そこで私はハッキリと言った。

 「これだけ縛られるのなら指揮者などやる気はない」と。


 だが2年生の先輩、3年生の先輩は必死に私を説得した。いや…説得したというよりも私を何か…犯人というか悪者扱いをして問いただしている…というのが正解かもしれない。

 この時の同級生…1年生の悲痛な冷たい…何か汚いものでも見る目で私を見ていた光景は未だに忘れる事はできない。

 彼らの心の声が聞こえてくるようだった。


 「なんでコイツ指揮者に選ばれたのに真面目にやらないの?」
 「部費で指揮者学校の経費が出てるのよ!?なんでサボるの?馬鹿なの!?」
 「こんなバカでも指揮者してくれないと私たちの誰かが指揮者しなきゃならなくなるからな」
 「こいつ無茶苦茶でしょ。指揮者に選ばれたら少しは改心して真面目にすると思ってたわ」

 
 悲痛だった。あまりにも悲痛だった。

 そしてなぜか敬助も悲痛だった。

 なぜなら彼は私に1票を入れた張本人であり、彼自身もかなり欝で参っていたのだ(笑)


 もちろん私もギター部の人たちの気持ちはわかる。

 そもそものギター部に対する気持ちが違うからだ。私は初めて3年、2年生の演奏を聞いた時からギター部の活動に対してまったく興味がなかった。そもそも演奏にも感動しなかったし、自分がそうなりたいとも思わなかった。それに収穫祭や定期演奏会に対しても意義を感じなかった。自己満足にしか見えなかったのだ。

 だが他の1年生は先輩の音楽に感動し、ギター部の定期演奏会にも誇りを持っていた。

 ゆえに彼らはギター部を自分たちの大学生活の青春と捉え、真面目に大切に思っていたのだと思う。



 だから私に腹が立ったのだろう。私を許せなかったのだろう。

 でも私を選んだ時点でそれは…叶わぬ願いというのがなぜわからなかったのか。

 それは彼ら自身が指揮者ではなく、演奏者でありたいという事を望んだことに甘えがあったのかもしれない。




 この事態は長引き、遂には私の家に引退した4年生、OBまでもがやってくる事態となった。

 この時様々な事を聞かされた。


 「東京農業大学ギター部の長い歴史の中でこんなにふざけた指揮者は初めてだ」から始まり「おまえには指揮者に選ばれたという責任感はないのか」という事まで…

 30代の年のOBに延々とギター部の素晴らしさを聞かされ、意義を話された。

 これ…応援団の時と同じである。

 延々と自分はダメ人間だという事を聞かされ、それを脱出するには頑張るしか無いだろう!みたいな事を聞かされる。

 明らかに余計なお世話だった。なんだこの糞な説教は。ギター部に入って演奏したから良い人間になれるとでも言うのだろうか?

 あり得ない。そんな事はない。

 私には高校時代に青春し忘れた人たちが今必死にそれを取り戻そうと部活動に打ちこんでいる様にしか見えなかった。

 不必要だ。私にそれは不必要だ。

 東京に私は4年間しかいない。大学は4年間しか無い。こんな事をしてる場合ではないのだ。


 OB、4先生に私はそれを話した。

 とにかく勘弁してくれと。ギターはギターでも私はアコースティックやエレキの方をしたいわけで、ポンポンと単音を親指で弾いてる場合じゃないんだと。それにやりたいことが他にいっぱいあるんだと。

 OB、4年生はキレそうになりながらも、コレ以上は時間の無駄だと思ったのか…


 わかったよ。このろくでなし野郎が


 という捨て台詞と共に帰っていった。


 だが…

 その後、この会議は3回以上開催された。

 開催理由は当然「財前の件について」という議題で…。そうそれほど指揮者というのは大切なポジションであり、それほど指揮者というのはギター部にとって重要な存在なのである。

 だからそんな重要な役に私を置くのがまちがいだと何度も…


 毎週私を攻めるだけの会議が繰り返された。

 これに遂に敬助は耐えられなくなり彼はギター部を辞めた。なぜなら彼は私の良き理解者でもあり、ギター部の活動に疑問を持っているひとりでもあったからだ。彼も私が責められるのを見て苦しかったのだろう。彼も私と同じで部活動を真面目にする気はなく、ただそれを利用してギャグやネタ的に生活を楽しみたいだけだったのだ。

 今のギター部は彼にとってそういう場所ではなくなっていた。それだけの話だ。

 そして

 肝心の私はこの時、丁度バイクの中型免許が取得完了し、400CCのドラッグスターを購入。

 バイク(ドラッグスター)のローンを払うためにバイトをしなければならなくなったので、焼肉屋で働くこととなっていた。ゆえに指揮者などさらにやってる場合ではない…。

 バイトをしなければならない。

 それに散々部活で「おまえは社会で通用しない」とか言われていたが、いざアルバイトをしてみると社会人の人たちに厳格に指導されサボるどころではない。こっちの方がよほど厳しい。だが金を貰ってると思うと納得してそれに従うことができる。

 アルバイトは楽しかった。それはまだ知らない社会だったから。


 こうなると私には時間がない。



 結局ギター部は辞めさせてもらった。

 本当はもっと早く辞めさせて欲しかったのだが、指揮者というのはそれだけ誰もがやりたくない役職だったためかなり長引いてしまった。


 もちろん辞められたのはもう一つの理由がある。



 それは新しい指揮者の目処が立ったからだ。



 そう…



 ここで…



 次期指揮者と決定したのが…





 というより




 次期指揮者として…



























 どうやら俺の出番のようだな…

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 と指揮者を自ら立候補したのが…青柳だったのである。



 











 これが未だに私が青柳に頭が上がらない理由でもあり、彼が私の家に来た時、彼がどうしても私に嫌味を言ってしまう理由だ。

 彼はギター部を信じており、ギター部の道は正しい道だったと確信ている。それが間違っているなどあってはならない事だ。

 反面私はそれとは正反対の意見だ。続けなくて本当に良かったと思っている。

 そもそも続けていたら今の私はないだろうから。



 だが青柳にとって私はひとつの指標でもある。私は彼よりも不幸せでなければならないのである。

 それを証明することが彼…すなわち青柳の道が正しかったことを証明する事になるのだ。



 私は青柳がそれを意識的に望んでいる事は薄々とはわかっていた。これは辞めた敬助も同じだ。

 ゆえに青柳と酒を一緒に飲むと私と敬助は青柳をフォローし、彼を褒める機会が多くなる。


 「青柳おまえスゲエなあ」、「俺たちはやっぱダメ人間だよ」という事を彼の前で言う。そうするだけで青柳は機嫌がよくなり、3人で美味しいお酒が飲めるのだ。

 まあ人生ってそういうものだ。それが一番うまく行くのだから。これは暗黙の了解ってものだ。

 会社に入ったらそれを過度にならない程度に上司の前ですれば良い。それだけのことだ。

 

 実際そう思っているし、青柳がやってくれて本当に私は助かったのだから。感謝しているのだ。















 という事でこの件に関する話は終わり。

 また次回からは話は彼が家に来た所まで戻ります。






























今日の1曲 耳かきの唄 長渕剛






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Borderlands 字幕付き動画UP中  
 「買わないなら見ろ!」無理やりシリーズ化

 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフル Only Part1
 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフルOnly Part39new
 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフルOnly Part38

 ・マイリスト
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January February March April May June July August September October November December
2011(Wed) 09/21

大学時代回想23 強く儚い ろくでなし(31)

財前History … Comments(31)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
11/09/18 大学時代回想24 進めば地獄、泣けばチンピラ
11/09/15 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント --)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)






 


 世田谷区桜ヶ丘。

 大学に入って3年。

 ずっと同じアパートに住んでいる。今、私の学部である農学部はこの場所にはない。厚木にキャンパスが移動したからだ。厚木はここから電車で1時間以上かかるので常識的に考えれば引っ越したほうが良い。

 だが私はこの場所を移動しなかった。なぜならこの部屋には数えきれないほどの思い出があるからである。私の大学生活の全てが詰まっており、今更この場所を引っ越すことなどできない。

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 それに農学部と畜産学部以外は相変わらずキャンパスは世田谷区桜ヶ丘にあり、この部屋は学校から歩いて5分の距離に位置しているため、この3年間の間にできた多くの友達が今だにこの家に遊びに来る。

 移動できるはずがなかった。


 だが時折激しい寂しさに襲われるのも確かだ。

 それはやはり彼女がいないからであろう。

 リョウさんと活発に活動していた頃は毎日がナンパやアクションの連続で息つく暇もなく時が流れていた。寂しさなどはそれほど感じなかった。むしろ家にいる時が唯一の休息場所だったとも言える。だが今は違う。私も4年生になり、リョウさんも昔のような遊びをする事はない。

 厚木の研究室に行く…家に帰る…厚木の研究室に行く…家に帰る

 日々の生活はこれの連続であった。

 亜美さんとも…まだ数週間の間だけだが距離を置いている。


 里沙とノリは相変わらず良い感じなので、ノリも私の家に立ち寄る機会が減っている。


 もしかしたら

 …少し寂しいのかもしれない。


 こんな時は友達を家に呼んで酒を呑むか、馬鹿騒ぎするのが一番なのだが、事前にアポを取っていないとそう簡単に友達が家に来てくれることはない。なぜなら皆…家は遠いのである。埼玉、横浜、果ては群馬から通っている人たちもいるのだから…。


 それにしても

 この感情は何なんだろう。



 好きな女性には見向きもされず、他の新たな女性に手を出す勇気もない。家で何をしようにも何をしていいのかよくわからない。反面、友達はなぜか自分のお膳立てで幸せになっている。

 やりきれない思いでPlayStationを起動するが、気持ちが乗らない状態でゲームをしても面白くはない。


 このまま寝てしまおうか。

 いや…寝たらまた朝になり、また同じ日々が繰り返されるだけだ。


 …


 こんな時…救ってくれるのはバイクである。

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 家にいても何も変わらない。

 何か…今の私には非現実が必要だ。

 私は家の外に置いてあるドラッグスターのカバーを取り、エンジンをかけて夜の道へと飛び出した。



 なんなんだろうか。この感情は。

 無性に腹が立ってくる。なぜかはわからない。苛々するのだ。

 なぜ自分は幸せではないのかという事に腹が立つ。

 多分これは彼女がいないからだ。きっとそうだ。

 それはつまり直接的に言うとなぜ「亜美さんはつきあってくれないのか」という事になるのだが、そう考えるのは脳が拒否する。あまりにも幼稚な考え方だからだ。

 そしてバイクで80キロ、100キロとスピードを出していると、いつも思う。

 このまま壁に激突したら俺死ぬよな?…と。

 これは四方を鉄とガラスで覆われている車とは違い、バイク乗りなら常に考えることだ。転ければ死ぬと直感的にわかるのだから当然だ。目の前を100キロ超のスピードで車が走っているのだから当然といえば当然だ。

 バイクに乗っているとき…それはつまり死というモノを身近に感じられるという事でもある。

 死は今すぐ目の前にあるのだ。

 そんな状態なのだが、不思議と自分が今おかしい思考状態にあるとは思わない。

 だがいつもこの状態は私を戒めてくれる。バイクに乗ると全てを忘れられるのである。

 恐らく危険状態に常にあるため脳内麻薬が出まくっているのだろうと思う。

 
 私が今ここでハンドル操作を間違えて死んだとしよう。もちろん家族を含め多くの人が悲しむだろう。しかしそれで何か世の中が変わるかといえばまったくそんな事はない。別に何も変わらない。

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 次にこう考えてみる。

 じゃあもし私がこの先生きて行くとして…亜美さんと相思相愛の仲になったとしよう。別に誰も喜びはしないだろう。私が喜ぶだけだ。そしてそれで何か世の中が変わるといえばまったく変わらない。何ら変化はない。

 つまりそういう事なのだ。

 そんな事は別にどうだって良いことなのである。

 なんせ自分は世界の人口から考えると69億分の1に過ぎないのだから。

 
 バカみたいな話だが、バイクに乗ると不思議とこういった思考になり、スッと気持ちが楽になる。

 「あ。別にいいんじゃん。別に。」

 という考えになり、そのまま成り行きに任せて生きていけばいいという結論に達するわけだ。



 もちろん今、こういった考えを文章で読むと可笑しい。馬鹿だ。普通に考えて。

 でも成人になりたての男にとって、たまにはこういった考えをする事も大事なのである。感受性が高い時期なのだから。

 普通に生活をしていると、どうしても小さい殻に閉じこもってしまう。

 例えば私で言うと、ここ数ヶ月は亜美さんの事と、大学の事しか考えてなかった。物凄くチッポケな世界である。その世界に登場人物は恐らく30人もいないだろう。

 だが実際には69億人の世界があるわけで…


 と考えるとスッと楽になるのだ。

 これは頭でわかっていても実行するのは難しい。


 今日最愛の女性に振られたとしよう。かなりショックを受けたとしよう

 そして自分にこう言い聞かせたとしよう。

 「なあに。大丈夫さ。女は世界に39億人もいるのだから。」

 もちろんこんな事…頭ではわかっている。だが実際そう簡単に割り切ることはできない。人間、なかなかそういう世界は見ることができず、どうしても「明日教室で会ったらどうしよう…」とかそういうチッポケな世界の心配をする。

 どうしてもそうなってしまう。

 だがバイクに乗って猛スピードで突っ走るとそれらは全て解決する。


 そんなチッポケな考えは死という現実の前には無意味だからである。

 自分でもわかっているのだ。もし、この先走っている道路に小さい子石があったら… それでスリップしたら…私は死ぬのだから。そこには理由などはなく、ただあるのは運のみ。運だけなのである。

 実際それで死ぬ人もいる。世の中そういう風に理不尽にできているのである。


 不思議なものだ。
 
 気持ちが楽になると急に食欲が湧いてくる。



 寂しい男とバイク。


 
 この2つの要素が合わさって腹が減ったとなれば行くところは決まっている。


 
 ラーメンである。


 ここでパスタとか定食とかいう選択肢はあり得ない。


 ラーメン以外にはあり得ないのだ。



 現在21時30分。となれば行くところは決まっている。


 東京都世田谷区羽根木。
 
 つまり下北沢周辺。


 ラーメン「なんでんかんでん」である。



 もう何回リョウさんと来たかわからないラーメン屋だが飽きるということはない。やはり偉大なのだ。

 ラーメンが出されると…さっきまで「このまま死のうかな…」なんて思ってたのに「やっぱ生きてるって最高だな」ってなる。

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 さっきまで猛スピードで走ってたための極度の緊張、そして風の風圧、そして寒さ、バイクでこの店に来たという高揚感。これらがコンボとなって合わさってラーメンがさらに美味しく感じるのだ。

 そして「なんでんかんでん」に来る客を見てさらに安堵感を得るのだ。そこにはチャラチャラした奴などはいない。誰を見ても真剣にラーメンを食べている。サラリーマン…学生…その辺のオヤジ。

 なんて素晴らしい世の中なのか。


 そう。女などいらないのだ!!

 
 この一杯のラーメンがあれば!


 …


 なんか今思えばバカ丸出しなのだが、そういう年齢だったんだからしょうがない。

 

 



 そして…

 とりあえずこれで明日からまた吹っ切れた感じで日々を過ごすことができる事を確信し、家路につく。


 また寂しい気持ちが自分を襲う。

 大学生活があと少しで終わってしまうのに彼女がいない寂しさと焦りが襲う。

 だが今はさっきまでの自分とは違う。

 「そもそもおまえ、好きな子を彼女にできた試しがないじゃないかw」

 なんてツッコミを自分自身に入れる余裕が今はある。

 だいたい彼女なんていなくたって良いのである。人と比べるからダメなのだ。飯が3食食える。それで充分なのだから。


 行く宛のない行きと違い、帰りは早い。

 特に下北沢から桜ヶ丘など30分もかからずに着いてしまう距離だ。家の近辺に来たあたりでスッとエンジンを止めギアニュートラルで家の前まで走る。一応このバイク…マフラーを改造してあるので音がうるさく夜は住民の迷惑になるのだ。

 そしてギアニュートラルで家の前を照らした時、家の前に妙な人影がある事に気づいた。





 まさか…

















 亜美さん!?


   080201i093tu8yt589th.png

















 そう直感したのだ。まさか亜美さんが私の家へ来るとは!?

 …だが違った。


 そこに立ってたのは青柳だった。

 青柳は木ではなくて私の友人だ。私が過去に所属していたギター部で最も力を持ってる実力者で、彼とは1年生の時から仲良くしている。また彼の家は埼玉にあるため学校から2時間半近くかかる。それゆえよく私の家を寝床として利用していたのである。

 ギター部の実力者とは言ってもイケメン、ビジュアル系…というタイプではなく、どちらかというと「さだまさし」「井上陽水」系。

 なんていうか…職人系の古い時代の男である。結構思ったことをズバズバ言うのが特徴で、少し自分に酔う所がありナルシストも入っているタイプ。

 彼は私がギター部を突然辞めたことを根に持っており、最近はそれほど姿を見せなかったのだが… 

c_s1314099319_10.jpg


青柳「おう。久しぶりだな」

財前「ああ。どうしたの?」

青柳「いやあ。泊めてもらおうと思っておまえを待ってたんだよ」

財前「そうかそうか。でもおまえ俺が帰ってこなかったらどうするつもりだったんだ?」

青柳「そしたら別の奴の家に泊まるつもりだったよ。俺友達は他にも一杯いるからさ」

財前「そ…そうか」

青柳「まあ飲みながら話そうぜ。今日は」

財前「OKOK」



 そしてお互い部屋の中に入り、青柳が買ってきた酒を飲みながら昔話に花を咲かせる。

 話を聞いていると彼はどうやら研究室で嫌なことがあったらしい。こっちの事はおかまいなしに自分の話だけを延々としている。もしかすると…その愚痴を私に聞いて欲しかったのかもしれない。


青柳「それで?おまえ彼女できたのかよ」

財前「いや。できてないな」

青柳「なんだよそれ。おまえギター部辞めてから全然冴えない男になったよな~」

財前「そ…そうか?」

青柳「ギター部に入ってた頃はおまえ光り輝いてたよ」

財前「そんな事ないと思うぞ(笑)」

青柳「まあ勝手に辞めた奴がどうなろうと知ったこっちゃあないけどさ」

財前「…」

青柳「まあ今は俺が完璧にやってるから安心しろよ」

財前「そうか」

青柳「おまえもギター部にいれば最高の経験ができたし、人間的にも成長したのになあ」

財前「ああ…」

青柳「俺は凄い成長したよ。あれから。本当に人間的にも成長したと実感してるもん」

財前「そうだな…」

青柳「ギター部もいつの間にか俺が中心になってさ。いや~参っちゃってさ」

財前「…」




 そこから延々と青柳のギター部についての自慢話を聞かされた。

 まあこんな事を言うのも何だが、私は今、ギター部に一切の興味はない。何の未練もないし、またそこに行きたいとも思わない。ただ、入ってよかったとは思ってる。今だにギター部時代の友人が何人かいるからだ。ギター部に入ってなかったら彼らと会うことはなかったのだから。青柳もその内の一人である。


 だが私には青柳に責められるべき理由があった。

 青柳が私を攻めたいのもわかる。


 それは私がギター部を辞めた理由があまりにも自分勝手過ぎたからだ。

 それは大学2年生の時だったが、言わば私はまだ青く若かった。そして田舎者だった…。


 そうとしか言えない。

1136480671_f.jpg


 過去の話に遡るが、私は大学に入った時に舞い上がっていた。それは徳島のド田舎からいきなり首都の東京に来たからだ。「どんな事が起こるんだろう!?」その期待の連続だった。

 だってここは東京。毎日がエキサイティングな日々になるのは間違いないのだから。

 しかしそれが思わぬ落とし穴にハマることになる。

 あまりにも東京を高貴な街だと思い過ぎていた私は、既に入学式の時点で現実を現実と認識できていなかった。まるで…夢の街にいるような感覚だったのだ。それゆえ全学生の中で5人しか入らない応援団の勧誘に見事に引っかかり、東京の大学に来たのになぜか学ランを来て大声を張り上げている始末。

 まさに非現実だ。大学に来て学ランを着てるとかもう…考えられないアホである。

 「俺たちこそが至高だ! 俺たちこそが最高なのだ」

 みたいな訳なわからない言葉に洗脳され、右も左もわからない内に抱き込まれてしまっていたのである…。そして5月のGWになった瞬間にバスに監禁され、そのまま目隠しをされてどこかわからない場所へと連れて行かれる。

 ホテルにつくとそれまで優しかった先輩の態度が一変し、鬼に変わる。そして逃げないようにと財布と鍵をホテルの金庫に入れられ… 腕立て1000回とか3時間マラソンとかそういう体をイジメ抜く精神修行を延々と1週間やらされたのだ。

 こういう場合、唯一の救いは食事なのだが、実はその食事こそが地獄。

 「応援団は至高だ!! 釜の飯は一粒たりとも残してはならない!!」

 なんていう訳のわからない理由で釜の飯を全部食わされた。もちろんこれはお茶碗とかそういうレベルの話ではない。そのホテルにある釜の飯を全てという意味だ。

 つまり食べ物を粗末にしてはいけないという考え方をそのまま実践している形。

 ホテルにある釜だ。釜の飯を全部平らげなくてはならないのだ。

 
 人間の食べられる量を明らかに超えていた。

 まさしく地獄絵図とはこの事である。

 
 もちろんそんなものがいきなり腹に入るわけもなく、皆トイレで吐いていた。3食すべて吐いている者もいた。その後は声出し。

 外に出されて「あの海の向こうにいる者たちに俺たちの誇りの声を聞かせるんだ!」


 なんて訳のわからない理由で声出しを延々とさされた。

 そもそも海の向こうとかここから目で見える範囲でも島なんてないし、街もない。そんな向こうまで声が聞こえるわけがないじゃないか。だいたいこの海…太平洋じゃないのか?

 ハッキリ言って体を壊しに行ったようなものだった。

 
 だがこの時、私は実は応援団をやめようとは思ってはいなかった。確かに地獄のような光景でキツかったが、元々マゾ的な性格を持っており「まあこれはこれで良いかな」なんて風にも思っていたのである。

 なぜならこれは非現実な光景。

 もしかしたら、こういう事を4年間続けると貴重な経験になるのではないか…。なんか凄い人間になれるのではないか。

 そう考えていた。


 しかしその考えは覆される。

 なんとよくよく観察するとこんなキツいシゴキをされているのは1年生だけで、2年生はそれほどシゴキを受けてないし、3年生は1年生をシゴクだけ。4年生にいたっては神みたいな存在に君臨しており、合宿場に来ても遊んでいるだけである。

 つまりこんな非現実的な事を強いられるのは1年生の間だけなのだ。


 2年生になると教育する側に周り、3年生になるとイジメル側に回る。


 シゴカれるのは別に良かったが、来年入ってくる1年生をシゴクとか御免だった。なんで花の東京に来て後輩を虐めなくてはならないのだ(笑)


 ゆえに応援団は5月のGW(ゴールデンウィーク)の合宿が終わってから即辞めた。

 もちろん彼らはグルになって私を引きとめようとした。驚くべきことに先生まで私を引きとめようとした。

 まあいつものアレである


 「おまえはこの程度の事で辞めてしまうほどの弱い人間なのか?」
 「今目の前の事を成し遂げられない奴に未来はない」
 「そうやっておまえは人生から逃げてばかりいるのだな」
 「おまえはこのまま辞めれば人生の敗北者だぞ。このままで良いのか!?」


 GWの合宿が終わって辞めようとしたのは9人いた応援団1年生の内の6人である。


 3人は上記の先生と先輩の言葉に感化されて応援団に残った。
 4人は私を含めて辞めた。(その内の一人は3ヶ月後に応援団に戻った)


c_s1314099319_30.jpg

 つまり辞めれたのは3人。辞めた内の一人は応援団のショックから立ち直ることが出来ず…ついに大学まで辞めてしまった。学校に行った時、応援団に会うのが怖かったらしい。実際それが原因で一人は3ヶ月後に応援団に戻ったのだから相当な事があったのだろう。


 そして実はこれまで体育会系をしてきた者にとって

 「おまえ…逃げるのか?」

 という言葉はかなり効果的である。
 
 例えば応援団に戻った一人は過去高校時代に野球部だったらしい。彼はこれまで全ての事をやり遂げてきたのだろう。だから応援団から逃げ出すという自分を許せなかった。

 ゆえに応援団に戻るのだという。

 戻る時、私も彼に誘われたが私はキッパリと断った。

 
 なぜなら私には現実がシッカリと見えていたのだ。

 私は彼とは違った。

 そもそも引き止め工作の「逃げる」「お前は弱い奴だ」とかそういう言葉にまったく効力を感じなかった。簡単な話だ。

 要は応援団に入ったこと自体が間違いだったのだからそもそも最初から道を間違えているのである。 

 
 私にとって大事なのは女だったのである。東京に来たのだ。良い女と気持ちイイ事をしたいと考えるのが当然だ。これが応援団にいると出来ない。まあ…できないことはないかもしれないが、学ラン来て学内をウロウロしている男に素敵な女性が刺激を受けるとはとても思えなかった。

 そういう汗臭い事は私は高校時代柔道部で終わらせているのだ。もう御免だあんなのは。

 私は女性とチョメチョメしたいのだ。それだけなのだ。


 恐らくこの女性への強い憧れが応援団から危うく受けそうになった洗脳を打破したと思う。

 今思っても応援団をこの時点で辞めて本当に良かったと思う。ここは自分を褒めたい。本当に。

 
 大学生活最高の判断。それがこの応援団をこの時点で辞めれた事だったと思う。



 そして応援団の合宿が終わった5月の中旬…

 もう間違いは犯す訳にはいかない。すぐに目的を達成するために私は動いた。とにかく女性だ。女性の集まる所…。女性ばかりのハーレム生活を送るにはサークルしか無いと。

 そう考えて入ろうとしたのがギター部だったのである。

 もちろん入ったのは単純な理由だ。とりあえずギターが弾ければ女にモテるだろうと。

 それにギターを弾いてる奴はだいたいイケメン。だから良い女もそういう所に集まってるに違いないと。

 そう思ってギター部に入ったわけである。


 それ以上でもそれ以下でもない。目的は女。それだけ。


 しかしここでも私はまたミステイクを冒してしまう。

 間違いを起こしてしまう。

 もう今思うと大学1年の頃の私はストーカーの件も含めて呪われていたとしか言い様がない。

 なんと私の考えていたギター部というのはギターサークル…の方で、私が入ってしまったギター部というのは別のギター部だったのだ。

 東京農大の農友会ギター部というのはバンドとかビジュアル系とかそういった類ではなく…ギターをオーケストラのようにパートに分けてクラシック音楽を演奏する部活だったのだ…。

 つまり簡単に言うとお固いギター部。クラシック音楽演奏部…だったのである…。


 入るべきはギターサークル。農友会ギター部ではなかったのだ。


 ここに入るのはマズい。名前をよく見ればわかる事だったはずだ。


 しかしもちろん…この時点の私はそんな事を知る由もない。



 とりあえずよくよく話も聞かずに農友会ギター部に入ってしまった。



 


 そしてここからの話は本当に嘘のような話の連続で…私が入ったことによってギター部は前代未聞の問題を抱えてしまう。これはもうOBまで巻き込んで…

 私の素行が原因で会議まで開かれたのだからとんでもない事態だったのだ。


 精神的にかなり参った。



 まあこれが原因でまた私はギター部を辞めることになるのだが…

















 それは次に書くことにする
































今日の1曲 越路吹雪 ろくでなし



 生まれてない時代の古い曲。この曲を知ったきっかけは「志村けんは如何でしょう」
 http://www.youtube.com/watch?v=jBfwYe-v3i0



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2011(Thu) 09/15

ファミコン時代の自分がTOKYOゲームショウの最新ゲーム見ると失神してたね(22)

ウルトラストリートファイター4 … Comments(22)

次期ウィンドウズ8にはXBOXLIVEが標準搭載!
xbox-live-gold.jpg
マイクロソフトが次世代OS Windows 8にXbox LIVE機能「Xbox LIVE on Windows」を標準搭載します。
 ゲームはもちろん映画やテレビ番組、音楽といったXbox LIVEで提供されているサービスがそのままWindows 8で利用できます。
 「Xbox LIVE on Windows」のインターフェースはWindows Phone 7でも採用されているメトロデザインです。メトロデザインはシステムアップデートでXbox 360にも導入される予定です。

 マルチプレイや実績、アバター、コミュニティなど、Windows 8でXbox LIVE ゲームを開発するための詳細については9月15日にBUILD内で行われる講演「Building Xbox LIVE games for Windows 8」で好評されるようです。 XNEWS





 国内でのXBOXは既にPS3と対等に渡り合うことはないのでしょうが、Windows8にXBOXLIVEが標準搭載されるっていうのは凄いですね。こういうのはマイクロソフトの強みだよなあ…。
 



 さて…


 明日から語学学校の英語漬け合宿…みたいなイベントに3日間参加してくるので、しばらく更新が止まりますが、今現在、実は日本ではTGS2011の真っ只中のため、ゲームの方では様々な新しい情報が出ており、ゲーム業界が活気づいています。

 TGSというのは「東京ゲームショウ 2011」の事ですね。

 最近は歴年に比べると規模が縮小してしまっていますが、それでも日本では最大のゲームショウですので、業界の注目度は非常に高くなっています。で、今回ですね。サラっとゲーム系サイトを覗いて、ちょっと凄いと思ったのがこのゲーム。




 カプコンのモンスターハンターの新作?みたいな宣伝をされているゲームで、モンスターハンターと色々似通っているゲームですが、モンスターハンターにあったモッサリ感が消えていて、これは凄く面白そうな感じです。

 むしろカプコン側からは、モンスターハンターは3DSでライトユーザーへ。ドラゴンドグマはハードゲーマーへ送る!的なメッセージさえ受けます。

 如何せんネットゲーム的な匂いがプンプンするのでライトユーザーには合わないかもしれませんが、これなら触ってみても良いかな…と思っちゃう出来です。

 
 あとはですね。

 やっぱりこれですよね。



 GOW3。

 まあこれはTGS2011でも話題になっていませんし、日本ではほとんど売れないタイトルなのもわかっているんですが、自分的には愛しているタイトルの一つなので取りこぼす訳にはいかない…んですけど、イギリスにXBOXを持って来てないんですよね…。

 マジでしくじった。

 いやもう本当にしくじったとしか思えないですよ。

 まああのデカイ本体をこっちに持ってくるのはどっち道ね、不可能だったんですけど、これをプレイできないのは痛いなあ…



 このスピード感溢れるマルチプレイは他のゲームじゃ中々味わえないですからね。なんていうんでしょう。こう…プレイしているこっちも息切れしそうな感じというか。

 XBOXは日本にあるからって理由でPS3を買ったのを少し後悔…。海外の生活に慣れてからは稼働時間がほぼ0ですしね…。案外これだけのゲームが出ててもやりたいゲームって少ないものなんですよ。面白い!!って思っても10時間で飽きたりとかね。

 アンチャーテッド2もこっちでプレイして面白かったんですけど、やっぱりGOWのあのガチムチの世界観の方が合ってるんだよなあ…個人的には。結局クリアしてからは一切触ってないですから。

 今動画作ってるBorderlandsのように何回も何回もクリアしても今だに愛してる…ってくらいのゲームではありません。




 で…ですね。


 そういえばって感じで思い出したんですよ。昨日。

 ほら。任天堂3DSを25000円買ってしまった人に対して保証で、ゲームソフトくれるってのがあったじゃないですか。それを思い出して昨日ダウンロードしたんですよ。以下のソフトを。

 スーパーマリオブラザーズ
 ドンキーコングJR.
 バルーンファイト
 アイスクライマー
 ゼルダの伝説1
 レッキングクルー
 マリオオープンゴルフ
 ヨッシーのたまご
 メトロイド
 リンクの冒険


 まあどれも3分で飽きたんですけど…アイスクライマーだけはちょっと楽しんでます。


 いや。もうね。このゲーム…というかファミコンには本当に思い出がありまして…。


 私の家は親が二人とも教師、祖父は県庁の指導員…という教育一家でしてね。
 
 小さい頃からピアノに勉強に習い事に…って感じでほとんど遊ばせてくれなかったんですよ。小さい頃。

 そんな中、学校の話題の中心だったのがファミコンでして…。

 もうそりゃあもうね。ファミコン持ってる子は神でしたよ。私からしたら。

 もう欲しくてほしくてたまらなかったんですが、親が買ってくれなかったのでしょうがなく、友達の家に毎日あそびに行ってプレイしてましたね。その時に一番思い出に残ってるのがスーパーマリオとアイスクライマー。


 
 http://www.nicovideo.jp/watch/sm51438
http://www.youtube.com/watch?v=0sy8f4KquuU


 当然当時の私はゲームが凄く下手だったので、友達にイジワルされてすぐにゲームオーバーになっていたのですが、それでもファミコンができる喜びを個人的に噛み締めていたなあ…。

 今これをプレイすると「あ~当時は…これがやりたくてやりたくて… だったなあ」なんて思い出に耽ってしまいます。

 そもそも私、小さい頃ファミコンを買ってくれる夢を50回は見てますから。

 ええ。スーパーでお父さんにファミコン本体を買ってもらう夢ね。

 で「よっしゃああああああ!!家に帰って早速やるぜ~~!!」って興奮したところで目が覚めて終了。

 「え?あれ?あれ?さっきまでファミコンがこの手にあったのに…ああああああ!!」

 という事が何度もあったよなあ(笑)

 
 まあその反動が今来てるんだと思います。

 だからですね。皆さん。

 私を反面教師にした方がいいですよ。

 dfgargr_20110915214823.jpg

 いいですか?小さい頃、親は私からファミコンを遠ざけて絶対に買わなかった。それは私を良い大人にしたかったからです。そのために敢えてゲームから私を遠ざけた。

 わかりますね? しかし結果はどうでしょう…。

 
 今の私はどうなっているでしょう…。


 え…え~と…。今の私については自分で書くのは恥ずかしいので割愛しますが…。




 

 だいたい今私の同世代でゲーム系のブログ書いてる奴なんて…2人くらいですよハイ…。

 そうなんですよ。無駄なんですよ。無駄。

 だから自分の子供からそういう物を遠ざけても無駄なのです。

 
 むしろ、その反動でもっとやっちゃうんですよ!

 ただ、遠ざけてくれた事によってある意味では良かったのかもしれません。家にゲーム機がなかったからこそ、100円玉握りしめてゲーセンでストリートファイター2をリアルタイムで体験できたわけですし、その甲斐もあって私はまだ今でもゲームを楽しむことができてますしね。多くの同世代は今ゲームすらやってないですから。

 まあそりゃゲームしない方が健全なのかもしれないけど…


 大概がパチンコ野郎か釣り野郎ばっかだしなあ。


 どっちが良いとも言えないかも。


 



 そういう思い出が走馬灯のように蘇るアイスクライマーは素晴らしい。


 6800000004244.jpg




































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January February March April May June July August September October November December
2011(Wed) 09/14

ニコニコ動画のマリオ30周年記念動画で不覚にも泣く(8)

財前ゴウの総回診 … Comments(8)




【生誕30周年】SUPER MARIO CEREMONY -The 30th Anniversary Medley-【記念合作】


ニコニコ版

http://www.nicovideo.jp/watch/sm15586696?via=thumb_watch



Youtube版


http://www.youtube.com/watch?v=l-DaJGGDoNI&feature=player_embedded











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