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2007(Tue) 11/27

大学時代 回想7 研究室所属(57)

財前History … Comments(57)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第7弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開










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 牛鉄を辞めた事で…

 大学には適当に遊びに行き、家に帰った後も遊ぶだけでイイという生活に突入した私。

 大学では相変わらずチズエさんとは一言も口を聞けず(というよりあれ以降完全スルーされてる)、ホッケー女とはたまに目が合った時に睨み付けられる。

 だが1年前とは状況は違ってる事がひとつあった。  

 言わゆる懐(フトコロ)の深さである。  今の私ならホッケー女やチズエなどに屈するはずがない。


 どういう事かというと、今の私は1年前の「東京に出てきた右も左も知らない田舎から出てきた雑魚」とは違うのである。リョウさんとの出歩き、金澤君コンパ、そして牛鉄でのバイトなどの様々な特殊体験を経て既に東京というものに馴染んできていた。

 以前のように何か新しい事がある度に「うぉぉ東京すげぇ!!」「ぬぉ!!標準語」「ぐお!何このファッション」、「ちょ…人多すぎだろ」 …とまあ日々が旅行気分。

 この1年は決して「生活している」という感じはなくあくまでも「旅行に来ている」なんていう仮想世界にでも来た気分だった。それになんと言っても徳島の友達が誰1人いないので私を知ってる者がいないというのもそれに拍車をかけた気がする。

 これは例えば私が徳島で「ウンコ漏らしの財前」と呼ばれていたとしても、東京に来たらそれは誰も知らないのでそう呼ばれる事はない。(例えばだぞ?例えば)
 
 つまり新しく生まれ変わる事ができる事を意味する。

 しかし逆に言うと、全ての人間関係を1から構築する必要があるので、自分の人間性や過去も踏まえて出会う人間全てに時間をかけて理解して貰う必要があるので別の意味で大変だ。過去の話をしても自分以外立証できる人もいないし、嘘くさく感じられる事も多いのであまり大きな話もできず、話題もはじめは選ぶ必要があるのである。

 1年前はそういう状態だったと言える。 

 まずここに根付く事、自分を知って貰う事、東京のルールを知る事に必死で、どうも窮屈だったのである。

 しかし… 今はどうだろうか?


 今はある程度東京の町も知り、私を知る友達もたくさんいる。もうそんなに無理して増やさなくてもいい状態。性格や人柄、歴史背景も認知されてきたので話をしても笑い話やネタ話をしやすい土壌ができている。それにリョウさんのおかげで普通にしてたら行けない所や体験できない事も知っている。つまりもう東京の人と対峙しても何ら憶する事はないのである。

 機は満ちた。

 今なら行けるはずだ。

 もう1年前の自分ではない。
 
 今こそチズエさんのハート奪還に出陣すべきなのだ。


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 実は私は牛鉄のアルバイトを始めてからチズエさんの事を未だに気にしている事を周りには一言も言ってない。もう「チズエなど関係ない」とスルーしてるフリをしていた。そりゃそうである。あんなときに足掻いても無駄。むしろ「今も諦めずに財前はチズエを狙ってる」なんて学内に広まったらストーカー事件も加味されて大変な事になってしまう。

 皆が忘れるのを待っていたのだ。

 

 機が熟すのを待っていたのだ。 



 まさか皆、まだ私がチズエの事を諦めてなくて、これから出陣するなどとは夢にも思ってはいないだろう(笑)。

 
 さて…

 ではどうハートを奪回するかだが、これは作戦を練らなくてはならない。

 昔は1人でする必要があったので「ストーカー扱い」で終了した。

 だが今の私には学科内にちゃんと仲間がいるのだ。彼らに協力して貰えば間違えてもストーカーにはならない。早速いつものように下宿に遊びに来ていた奴らにこの事を告げる。
 
 この時下宿に遊びに来ていたのはタカシとワコウ、そして最近知り合ったノリ君。


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財前「…と。こういうわけだ。協力してくれ」

タカシ「はぁ?」

ノリ「…」

ワコウ「おまえまだ諦めてなかったんかw」

タカシ「悪いことは言わないからもうやめといた方がええぞ」

ワコウ「ホンマ軽い男なんやら一途な男なんやらわからん奴っちゃなあ」

ノリ「…」

タカシ「すまんけど協力は無理や。チズエの件に関わったらワイらまで変な問題に巻き込まれる」

財前「ええ!?」

ワコウ「ワイも無理や。今やワイは学科内で「仏のワコウ」と呼ばれてるんやぞ? 評判上々なんや。ストーカー絡みの事件には関わりたぁない」

財前「ちょっと待ってよ。おまえらは俺がストーカーじゃないこと知ってるじゃないか」

ワコウ「リスクがありすぎるわ。だいたいチズエとかもうどうでもエエやんけ。やめといたら?」

タカシ「ワイもそこがわからんわ。そんなムキになるような女か?」

ワコウ「まあレベル的には中の上の下ってとこやな」


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ノリ「…」

財前「いやいや…農大で一番かわいいだろ! あの子は」

ワコウ「それはない」

タカシ「だいたいちょっと不振な男見ただけでストーカーなんて騒ぐか?普通。自意識過剰すぎやろ」

ワコウ「まあ財前をストーカーと断定してネタにした所は評価できるけどな」

タカシ「うむ。 ネタとしてはウケた部類に入る」

ノリ「…」

財前「おまえらな! 今日話し合う目的は悪口を言うためじゃないんだぞ」

ワコウ「だいたいおまえはコケにされたんやぞ?その相手にまた告白とかアホすぎやろ」 

財前「嫌よ嫌よも好きのうちという言葉もある」

ワコウ「アカン。こいつドラマの見過ぎや」



 そんなバカ話が繰り広げられている中… その日は妙に大人しかったノリが発した一言でその場全員が凍り付くこととなる。

 今でも忘れもしない。ノリの一言


ノリ「ちょっといいかな」

財前「ん?」

タカシ「なんやノリ」

ノリ「聞いてると財前がチズエちゃんにアタックするって事みたいだけど、そうなの?」

財前「そうだよ」

ノリ「え?マジで? だってチズエちゃんて彼氏いるよ?」

財前「ぇ…」

タカシ「!?」

ワコウ「!?」



















財前「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」
















財前「ちょっと待てノリ!! そりゃマジか? 初耳だぞ」

ノリ「いやだってそいつ俺のダチ(友達)だし」

財前「なんだと! おまえのダチ?」

ノリ「俺財前ストーカーの件は噂で知ってたけど、それギャグだと聞いてたからさ。ということはチズエちゃんの事好きだったってのもギャグだと思ってたけど…そこはマジなのね…」

財前「どうも噂に尾ひれがついたりして変な方向に言ってるな… それよりノリ! 誰だ。そいつは。おまえの友達なんだろ?名前は?」

ノリ「ああ。オサムだよ」

財前「オサム… 農大か?それとも他大学か?」

ノリ「農大だよ。しかも俺らと同じ学科」

財前「ちくしょう! なんだそいつ! どうやってあの内気な子に近づいたんだ」

ノリ「スキーサークルで出会ってそのままらしいね」

財前「何!?スキーサークルだと!? チズエさんスキーサークルだったのか!!  ノリ!!なんでそれを早く言ってくれなかったんだ。俺も入ったのに!!!」

ノリ「いや…そんなこと言われてもさ… 財前と知り合ったの最近だし…」



ワコウ「おいタカシ。ウィニングイレブンしてようぜ。もう話は終わりだろ」

タカシ「OK」


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財前「くそう…。でもそいつ格好いいんだろうな…。チズエさんとつきあうくらいだから…」

ノリ「う~ん。あんまり格好よくないけどね… モテるタイプでもないし」

財前「おまえは見る目がないんだよ! チズエさんがつきあう男が不細工なわけないだろう」

ノリ「そうかなぁ。まあチズエちゃんがモテルのはわかるんだけども」

財前「そうだろ?そうだろ? で? そのオサムって野郎はどういう奴だ。詳しく教えろ」

ノリ「え…。どういう奴って言われても…」

財前「どこに住んでるんだ」

ノリ「大学近くの下宿」

財前「ちくしょう。野郎!! 自分の部屋でチズエさんとズッコンバッコンやり放題ってわけか!!」

ノリ「ちょ…」

財前「背は?背は高いのか?」

ノリ「低いね」

財前「何!? じゃあ頭か?頭がいいのか?」

ノリ「別に普通じゃない?真面目だけど」

財前「何?頭も普通? じゃあ面白いって事か。そいつ。話術がありやがるんだな?」

ノリ「う~ん。別に大して面白くないね」

財前「何だと! …。 おいおいノリ。どうなってんだ。そいつ特徴らしきものがないじゃないか」

ノリ「そりゃそうさ。だって普通だもんw」

財前「じゃあ特技は何だ。なんか特技があるだろそいつ」

ノリ「ないね」

財前「ない!?  おいおい嘘つくなコラ。なんでそんな野郎とチズエさんがつきあえるんだよ!!」

ノリ「そんなこと僕に言われても…」
 
財前「なんか特徴があるだろ。思い出してくれ。 …ん? まさかそいつ親が金持ちか?」

ノリ「…違うと思うけどw」

財前「じゃあ高級車持ってるとか?」

ノリ「持ってないね。チャリ通学だよ。あいつ」

財前「…」

ノリ「…」

財前「…」

ノリ「ど…どうしたの?」

財前「って事は… 夜の方が凄いのかな…」

ノリ「それもないと思うよw」

ワコウ「アホ」



 なんなんだコイツは。

 まったくオサムって奴は掴めない野郎だぜ…。「普通」って事しか特徴出ないじゃないか…

 私はその他様々な事をノリに聞くが有効な情報は聞けず… 聞けど聞けど何もとりとめない「普通」が返って来るのみ…。

 
 たまりかねたのかゲームに夢中のワコウとタカシが口を挟む。


ワコウ「おい財前。ただその二人のフィーリングが合っただけやろ。おまえチズエ買いかぶりすぎやねん」

タカシ「スキーゲレンデは不細工な奴でも格好良く見えたりするし。そんなところやろ。」


財前「なるほど… スキー場で惑わしやがったのか」

ノリ「あとは…花屋でバイトしてるよ」

財前「何!? 花屋だと?」

ノリ「ごめん。これも普通でしょ…」

財前「バカ野郎ノリ!! それは普通じゃない。男が花屋でバイトとか明らかにナルシスと野郎だ。」

ノリ「それは酷いよ」

財前「駄目だ… 闘志が…萎えた」

ノリ「?」

財前「なんか…花屋でバイトしてる男の姿想像したらさ…。 闘志が萎えてきた…」

ノリ「えぇ!?」

財前「なんか…ファイトが沸かないというか… なんというか… そいつ「なよってる男」じゃないの?」

ノリ「まあどちらかというと普段はなよなよしてポォーとしてるね」


 それを横耳で聞いたワコウとタカシが何故か吹く。


ワコウ「ぶっwwww なよなよしてポォーとしてるってそれチズエもやんけww お似合いカップルやなw」

タカシ「そりゃ駄目だ財前。おまえとタイプが正反対w 出る幕ないわww」



財前「…」

ノリ「あんま悪く言うなよな~。僕はオサムと友達なんだから」

財前「わかってるって。 よし。ノリ。そいつと明日話をさせてくれ」

ノリ「ぇ…?」

財前「話がしたい」

ノリ「駄目駄目。変な事言う気でしょ?困るよそれは」

財前「いやいや。そんな事はしないよ」

ノリ「だいたい財前とオサムは性格的に合わないよ」

財前「そうでもないと思うよ?」

ノリ「とにかくそれは駄目だよ。僕一応チズエちゃんとも知り合いだから… 財前を紹介はキツイ」

財前「…」



 ノリの言い分はこうだ。私をオサムさんに紹介することにより、チズエさんが嫌がるんじゃ無かろうか?。そしてそれがきっかけでオサムさんと私が万が一、万が一仲の良い友達になってしまった場合…チズエさんがそのことを気にしてノリと衝突し、二人の仲がおかしくなってしまうんじゃなかろうかと

 もちろん推測に過ぎないが…。

 オサムさんと私の接触はデメリットしかないとノリは言いたいのだ。


 だが私からするとノリの考えは浅はか。まず第一に私はオサムと仲良くする気はさらさら無い上、そんなもめ事を起こすような事を今更私がするわけがない。この部分はよく考えて欲しかった。

 私はただ確認したいだけなのだ。チズエさんがつきあった男というものを。
 
 これは譲れない部分だった。2年近く脳裏から消えなかった女を射止めた男だ。

 ノリが言うような「ごく普通の男」なわけがないじゃないか。

 …


 そして最終的にこの日の内にノリを説得。明日オサムさんを紹介して貰う運びとなった。なんてことはない。同じ学科なのだから同じ教室で同じ授業を受けるわけである。授業後にちょっと紹介して貰うだけ。ちょっと…。

 この日は夜遅くまでタカシとワコウが酒を飲み、私とノリは話し込んでいたので結局私の下宿に皆が止ることになった。

 
 …

 
 

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 日付が変わった。ガサガサうるさい音で起きると…

 
 ノリか…


 やはりノリは真面目だ。既に大学に行く準備が整えようとガサガサと忙しそう。タカシとワコウは淫らな姿で熟睡中。起こして「大学に行くぞ」と言っても無駄だろう。恐らく起ない。元々こいつらは気が向いたときのみに大学に行くタイプだから(笑)。
 
 まあノリに昨日の話を聞かなければ私も同じように寝てただろうから人の事は言えないが…。

 私は数分で身支度し、ノリと共に大学に出発。そして教室に入り、ノリと隣同士の席に座った。さあ。今日来てるんだろうか?奴は…オサムは…。

財前「ノリ。どいつだ」

ノリ「ほら。あそこの短髪の奴」

財前「ん? え~と あれか? あのシマシマの服の…」

ノリ「そうだよ。あれがオサム」

財前「…」



 ちょ…


 恐るべき事態である。なんとオサムという男…。

















 激しく普通すぎる件について!! 

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なんなんだコイツ。限りなく一般人に近い。

ノリも表現に困るわけだ。私としてもなんとも言いようがない。なんの特徴もなく、雰囲気というかそういうもの自体がない… まるで空気のようだ…。

 わたしはこの瞬間話さずしてすべてを理解した。人間第一印象を見れば大抵の事は当たる。(根が悪人とかそういう特殊な人以外は)

 つまりこれはこういう事だ。チズエさんが彼とつきあって好き合ってるというのは事実だろう。それもこの男の雰囲気を見た場合、告白できるようなタイプには見えない…。
 
 これどうやってつきあう所までもっていったんだ?

 チズエさんからアプローチした可能性すらあるぞ。

 でも決め手が何かくらいはわかる。

 ズバリ「やさしさ」と「普通さ」だ。彼はそれが武器なんだろう。

 まず「普通さ」だが、これは男友達としては何の魅力もないものの、女性からすると意外と重要な要素かもしれない。この分類の人間はまず集団の中で目立たないし、激しい行動もしない。ということであまり浮気の心配がないのだ。

 この場合、つきあっていてもあまり問題が起こることもなく、口論もさほど起きにくい。女性からすると腰を降ろして自分のペースでゆっくりとつきあえるのだろう。

 チズエさんはどちらかというと「のほほんタイプ」だけに… 確かにタイプ的には合う。

 次は「やさしさ」だ。問題のオサムさんだが、やさしいタイプでまず間違いがない。自分よりも他人を気づかうタイプなのでやさしいというより「気を遣う」から結果的にやさしいと感じられるタイプだろう。

 そして我慢強く、清潔で、悪いこともしなさそうだ…。


 この瞬間私は素直に敗北を認めた。

 こううタイプをチズエさんが好むとしたら私では絶対無理だ。このタイプの人間と戦える気がしない(笑)。絶対に真似は不可能だし私の場合、ネタを作って何ぼ、何か面白い事して何ぼとかいう体質が染みついており、今更変えることなどできようもないのだ。

 ノリに謝ろう…。


財前「ノリ…」

ノリ「ん?」

財前「いいやもう。充分わかったから俺帰るわ」

ノリ「へ… 一応話しておけば?せっかくだし」

財前「いや~ けど何を話していいのやらわからないし、話してもスカされそうだからいいや」
 
ノリ「昨日聞きたい事一杯あるような事言ってたじゃんw」

財前「…」



 結局今度は逆にノリに説得される運びとなり、オサムさんを紹介して貰うことに(笑)。いやホントもういいんだけど…。花屋のバイトだろ?花の話とか別に進んでしたかないんだが…。

 そんな事思いながらノリについて行ってオサムさんの席へ。好都合だったのは今日チズエさんの姿が見えないことだが…


ノリ「よぉオサム」

オサム「やぁ。ノリ君」

ノリ「この前はありがとうね」

オサム「こちらこそ」

ノリ「最近どう?」

オサム「え?普通だよ」

ノリ「そうかw」

オサム「ノリは?」

ノリ「普通かな」

オサム「そうかw」





 な…なんなんだこの会話は… どうやって入れと… これじゃ微笑む事すらできないんだが…。 私が黙っていたので空気を察知してかさらにノリが続ける。





ノリ「彼女は今日来てないの?」

オサム「うん」

ノリ「ふぅ~ん」

オサム「…」

ノリ「…」

オサム「じゃあまたね」

ノリ「!? あ。ちょっと待って」

オサム「え?」

ノリ「あのさ。コイツ。財前て言うんだ。君と話したかったって」


 ちょ… 何その下手な紹介。もっと自然にやってくれよ!!


オサム「え?」

財前「ハ…ハロー…」

オサム「何か?」

財前「ぇ? え…え~と。 」


 おいおい。ノリ…ほったらかしかよ。話題があるわけないだろ!!とりあえず…


財前「花屋でバイトしてるんだってね?」

オサム「うん」

財前「実は俺花好きでね。最近どういう花が売れ筋なのかなぁと思って」(大嘘)

オサム「花好きなの?」

財前「もちろんさ」

オサム「う~ん。ごめん。花屋でバイトしてるけどたまたま採用されたから行ってるだけで…花の事はよくわからないんだ」

財前「な…何!?」

オサム「でも男で花が好きなんて珍しいね」

財前「…」

オサム「僕のバイトしてる花屋に詳しい人いるから良ければ今度来てみるといいよ」


 ちょ… 全然興味ないんだが…


財前「あ…そうなの…。ち…近くなのかな…その花屋」

オサム「下北沢さ」

財前「はは。下北沢か…」


 …


 行くわけないだろう…


 そんなとりとめないどうでもいい会話をちょっとした後にオサムは去って行った。聞きたくもない花屋の住所も受け取ってしまったが… まあ… 聞いた以上は一回は行っておかないと駄目だろうか…。まあ下北沢には良く行くから洒落で行ってやってもいいが。

 
財前「ノリ…」

ノリ「ん?」

財前「もういいや。ありがとう」

ノリ「?」


 知っての通りこのタイプの男は毒がないので女性との付き合いは長く持ちやすい。2年~3年は持つ。だって別れる理由が「マンネリ」以外にないんだから。

 激しい系の男ならつけいる隙もあったが、オサムさんの場合は付けいる隙がない。 

 そういうファイトが沸かないというかなんというか…。




 そんな中、何か…鋭い視線をヒシヒシと感じるのでちょっと確認してみると…。





















 ホッケー女だった。
 
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財前「まずい… おいノリ。帰るぞ」

ノリ「ん?何がまずいの?」

財前「ホッケーが見てるんだよ。あいつにいろいろ詮索されると面倒なんだ」

ノリ「ホッケー?ホッケーって何さ」

財前「ほら。あのホッケー部に入ってる女だよ」

ノリ「ちょ… 財前。あの娘と知り合い?」

財前「まあ…知り合いって程でもないんだけど…」

ノリ「あの娘かわいいよね」
































財前「な…何…?」 










ノリ「もし良かったら紹介してよ」

財前「ちょ… おま… 駄目だ駄目だ」

ノリ「なんでさ。僕はオサムを紹介してやったじゃないか」

財前「いや…これとそれとは話が違ってだな。 まあ帰ったら詳しく話すよ…」

ノリ「?」


 

 …その後下宿に帰ってノリには「ストーカー事件」の一部始終の事情を説明。これにて彼もわかってくれた。だが… どうやらノリはホッケー女を学校でちょくちょく見ている内にちょっと気になる存在になってるらしい。好きというわけではなく、今惚れつつある状態…という事だろう。

 しかし大学のような環境ではきっかけもない上、接点がホッケー部に入るしかないという状況ではどうしようもない(笑)。

 まあこの協力者に関しては他を当たって貰う事になった。





 そして…これが引き金となり…今回の表題の「研究室所属」へと繋がっていき…そこで…。


 それは後述。


 大学では大学3年から全員が「研究室」に所属しなければならない。 なぜなら東京農業大学農学科は「卒業論文」が農業実習と結合されており、研究室で農作物の実習をしながら成分を分析し、そのデータを元に卒業論文を書かなければ卒業ができないのである。

 3年生の間は4年生の補佐をする身。そして4年生で自分の実験を始める。

 この研究室は同じ農学科に複数あり、例えば花卉学研究室、蔬菜学研究室、果菜学研究室、人間科学研究室、社会農業研究室など多岐に及ぶ。

 つまり1~2年時は250名が一緒になって授業や行動をしていたが、3年からは本格的にこの中で分離され、約30名ずつくらいの団体が8つ、9つ出来るということである。

 感覚的には中学~高校の「クラス分け」と想像して貰うとしっくりくると思う。

 それで、3年生で研究室は一体どこに所属するのか。それを決めるのが2年生の後期に当たる今なのである。ちなみに見学なんてものはなく、ほとんどの学生が名前だけで研究室を決める。米がしたいとか、花がしたいとか、果物がしたいとか農業の未来を思考したいとか、目的さえあればどこの研究室に所属するかは自ずと決まるからだ。

 一番人気があったのは花を学ぶ花卉学研究室。

 そんな中私は蔬菜学研究室(野菜学)を選んだ。

 当然だ。私はこの当時、将来日本に食糧危機が来るのを予想し東京農大に入った。つまり食料の栽培方法やノウハウ、ホントの所を学ぶためだ。

 花など贅沢な時代だからこそ受け入れられているものであり食料的にはなんの役にもたたない。なぜこの研究室が一番人気なのか理解不能。果樹は…まあ許せるが、野菜と果物。どちらが食糧難の時に重要かといわれればこれは当然野菜となるのは明白。

 それに果物はなかなかつぶしが効かない。木が美味しい実をつけるまで成熟するには数年~数十年かかる場合があり、簡単には変更できない。 野菜の場合は単年で栽培が終わる者がほとんどなので、時代に合わせて栽培する品種を変更できる。

 食糧難が近い将来降り注いだとして…

 手堅いのは間違いなく野菜なのだ。

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 もし食料難が来たとき。一番困るのは都会の人間だ。農地自体がないので食べるものも当然無くなることとなる。それに競争率も激しい。

 こうなると田舎の野菜はほぼ全量都会へと出荷されることとなるはずだ。なぜなら田舎の農家はそんな野菜に頼らなくても、自分の菜園や近所の農家との協力で食物は工面できるからだ。結論を言えば田舎の農家は自分の食う作物さえ植えてれば生きていけることになるが、農地が金のなる木になるのだから放っておく手はない。

 都会人のために農薬漬けの野菜を作り出荷するのである。

 もちろん都会の金持ちが我先にと値段をつり上げて買い占めるだろう。

 それはこちらにとっても美味しい。

 ちなみに農薬漬けなのは農地面積辺りの生産量を上げるためである。まあこう書くと嫌がられるかも知れないがこれが現実。今は食糧難ではないが、実際の農業の実態はこうなのだ。

 
 有機農業で食っていけるのは… 本当に一部の農家でしかないので…


 理想では食っていけない。


 …


 ただ、私の予想は見事に外れ未だに日本は食糧難にはなっていない。さすがにこれでは如何に野菜農家だろうと食っていけるはずもない。単価が安すぎるのだ。

 そういうわけで私はサラリーマンとして会社に就職している身なのです(笑)。



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 さて…


 タカシは実家の関係で果菜学研究室、ワコウは楽な所に行くということで農業生産研究室に希望を出した。後、ノリは私と同じ蔬菜学を選んだようだ。

 その後発表があったが

 蔬菜学研究室に希望を出したのは約25名。人気の花卉学研究室以外はみんなそんな人数だったので不人気というわけでもなかったようだがひとつだけ…ひとつだけ問題があった。

 蔬菜学研究室のリストに私とノリと友達数名の名前が入ってるのは安心した。

 これから一緒に25人が一丸となってやっていくからだ。


 しかし…だ。 そのリストの中に… 気になる名前があったのだ…



 なぜだ… そういうタイプじゃないぞあいつは…


 なんで… なんで 

























 ホッケーが蔬菜学研究室のリストに入っているんだ!!

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 なんてめんどい状況になってしまったんだ。ホッケーにいきなり研究室内でいろいろ嫌がらせされたら私は終わりである。25名しかいないんだ。

 ちょっと…居場所が…。

 まあノリと友達が数名いるから小さくまとまれない事もないけど…。

 これはピンチである。だがあの事件のホントの事を説明しようにも今更説明してもどうしようもないし、何よりアイツは感情的な上に頭が固い。

 「証拠が存在しない話」が通じるタイプとはとても思えない。

  
 う~む…  幸先不安。orz


 チズエさんがいなかったのがせめてもの救いかもしれない。


 …

 
 そんな悩める私を尻目にノリは

ノリ「やったぁ。ホッケーさん同じ研究室だ!!」

 なんてバカな事を言って喜んでる。いやはや…どこがどういいんだか。

 
 先生の説明によると研究室の割り振りが決まった後、実際にその研究室に皆で見学に行く…という事だった。

 今のうちに役職?みたいなのを決めるらしい。要は学年のリーダー決めたり掃除当番決めたり、書記決めたり、担当の先輩を決めたりといった感じ。農作業もあるらしい。

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 早速言われたとおりに蔬菜学研究室に向かう私とノリだったが、先ほどの興奮はナリを潜め…何かノリが不安そうだ。実はこのノリ…バイクつながりで友達になった。姿もごっついし、顔も恐い方に分類されるんだけど、見た目とは裏腹に気がやさしく、気が小さい。

 実は友達も学科内では私とオサム、そして…数人しかいない。まあ…私とノリが友達になったきっかけも私が無理矢理下宿に連れ込んで仲間に引き入れたようなものなので…

 ノリからではない…。オサムさんと友達だったってのもなんとなくわかる気もする。


ノリ「なんかさぁ。この25人…。友達になれそうな奴がいないんだけど…。僕…結局最後まで財前としか無理そう…友達」

財前「まあ適当にやってれば勝手に友達になるって」

ノリ「そうかなぁ…」

財前「25人しかいないんだから自然とそうなる。心配するなよ」

ノリ「う~ん…」

財前「それよりホッケーと一緒で良かったんだろ? おまえ…うまくやりゃあつきあえるかもなw」

ノリ「やめてよw」

財前「ていうかな。今気づいたけどおまえがホッケーとつきあうと俺も助かる事になる」

ノリ「なんで?」

財前「彼氏の言うことなら信用するだろ。おまえが彼氏になって俺を弁解してくれればいい」

ノリ「あ。そっか」

財前クックック…。そうすりゃイチコロよ」

ノリ「ストーカーじゃないって言えばいいんでしょ?」

財前「おまえ単純すぎるぞ…。そんな簡単な話じゃこれは終わらないんだよ…。よし。その弁解のセリフは俺が考える。もしホッケーとつきあえても絶対勝手に言うなよ。俺の考えたセリフをそのまま言うんだ」

ノリ「なんでそう裏工作するかなぁ。いつも」

財前「二人をくっつけるために協力するからさ。裏で…。それくらいいいじゃん」

ノリ「まあ…僕1人じゃ無理そうだし」



 そんな話をしている内に研究室に25名が全員揃ったことで4年生の先輩が前に立ち、色々と説明を始めた。

 先輩が言ったのはこうだ。


  ・おまいらまずは
  ①幹事(研究室のまとめ役。一番偉い)
  ②副幹事(幹事補佐と他研究室とのコミュニケーション、交流担当)
  ③掃除当番(研究室掃除)
  ④書記(決まり事を文書に残す)
  ⑤機材保持(器具、機材の洗浄)
  ⑥作業手伝い班(農作業のお手伝い)
 
   の役を決めろ

  ・その後どの先輩につくか決めろ(月に一回くらい研究室に来て先輩の卒論を手伝え)

  ・喜べおまいら。歓迎コンパをやるお。

  ・3年から忙しくなる。単位あんま取れてない奴はいまのうちに打開しる



 …

 もちろんこの中で一番難航したのは始めの役職決めだ。希望を取るとほぼ全員が書記と掃除係に立候補したので…そういうのは後回しにして幹事と副幹事からまず決めることとなった。

 まず幹事だが、これは研究室の顔だ。私たちは3年生になったら研究室所属になるわけだが、この同学年を纏める役目となる。言わば学級院長のようなもの。

 だが残念ながらここは農業大学。そんな真面目な奴はいやしない。

 この場合女性ならなんとかなりそうだが、纏めるのが無理そうなのでやはり男からと言うことになった。そして… さすが農業系大学と言うべきか、私たちの中で一番ガタイ(体つき、背など)がいい奴が幹事をすることになった。

 白羽の矢が立ったのはカネダという男。いわゆる巨人…である。

 カネダもそう決まると

カネダ「まあ…いいけどよ」

 と渋々了承した。身長186なので私より2㎝も背が高い。まあ私はある意味コイツがいて助かったと言える…。コイツに逆うような無謀な奴はいないだろうから適任だ。

 次に副幹事だ。これは幹事とは違い、まとめ役ではない。名目上は幹事の補佐となっているが主な仕事は頻繁にある研究室のイベントに参加する役。

 といってもこれは同研究室内のイベントではなく、他の研究室のイベントに参加するのだ。これをきっかけにして蔬菜学研究室と他の研究室との交流を深めるのが目的。ちなみに儀式として他の研究室のイベントに行ったときは1リットルくらいのどでかいグラスで酒を一気飲みほして盛り上げなければならないらしい…。 この辺はさすが農大。

 結構こういうイベントは良くあるので、様々な研究室に裸一丸で突っ込む事となる。そういう意味では幹事より副幹事の方がめんどいと言われてる。

 副幹事を決めるのに幹事以上に難航した。だいたい誰もたった1人で他研究室のイベントなんかに参加したくない(笑)。ビール1リットル一気飲みを続けて8つもある研究室に挨拶全部回るとか無理だろ。それも1回や2回じゃないみたいだし…。

 しかしこういう姿を見てカネダがキレだした。


カネダ「なんだよおまえら。俺なんてガタイがデカイってだけで幹事になったのによ。パット決めろよ。」

一同「…」

カネダ「じゃあ副幹事は俺が決める。いいか?」

一同「!?」


 おお。これはいい。 カネダが決めるんなら私になる可能性は0%。だって私はカネダなど知らないし彼とは友達でもない。奴が決めるなら友達を選ぶに決まってる。

 みんなもそう思ったらしく…過半数以上がそれに賛成。

 そして


カネダ「じゃあ決めるよ。副幹事は…」













































「財前君で」

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財前「ぇ?」 

















カネダ「だから」
 























カネダ「副幹事は財前君」



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財前「ちょ… 工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工?」

カネダ「なんかそういう交流とか得意そうだから」

財前「いやいや。そんな事ない;;」

カネダ「見た感じそうだけど?」

財前「見た目かよw だいたい君は俺の事知らないのになぜ…」

カネダ「噂はよく耳にしてたから知ってると言えば知ってる」

財前「ああ… またその噂か…それはだから」


 くそう… あのストーカーの噂はここまで… 

 そしてなんとホッケー女が口を挟んできた。


ホッケー女「いい機会じゃない。」

財前「ん?」

ホッケー女「副幹事でがんばって悔い改めたら?」

財前「な…なんだと!! だからそれはだな…」

ホッケー女「相変わらず往生際が悪いね」

財前「ぐ…このアマがぁ!!」


 しかし… 大声を出してしまったことで周りの視線が…突き刺さる。特に女性陣が痛い視線を…。駄目だ。こんなとこで怒ったらストーカーという嘘をホントにみんな思いこんでしまって…

 そういうキャラを自らが演じてしまう。


 第一ホッケー女は人気がある。女性は皆彼女の味方。こらえろ…こらえるんだ…財前。

 これは奴の策略だ。

 ここは…紳士的な態度でイメージUPを図るべきだ。


財前「ふぅ…。 …。 え~とカネダ君もさ。俺そういう噂のような人間じゃないって。ちょっと話し合おう」

カネダ「は?」

財前「確か副幹事を決めるんだったね?」

カネダ「今更何言ってるんだよw やっぱなんか面白くなりそうだから財前君」

財前「…」

カネダ「君は援団だったんだろ?学ラン着て他研究室行ったらウケルかもなw  ガハハ」

ホッケー女「ぷっw」

ノリ「ぶw」

財前「貴様ら…」




 ああぁぁぁぁぁぁ!! もう!!


 まるで嘘のような話。あのチズエ事件が… あの噂が…

 もう1年以上経ってるのに、またまたこんな形で私を苦しめるなんて!! 

 しつこすぎるぞ。

 いったいいつまで私につきまとうつもりだ!チズエ。彼氏ができてもまだ恨みが晴れてないとでも言うのか!だからあれは誤解だと。

 しかもなんだあのカネダの言った言葉に対する研究室の皆の反応。まるでみんなが知ってる既成事実のような感じ。

 そこまで噂が広まっていたとは!!

 くそう!! あのホッケー野郎。 あいつの性だ!!


 既に自己紹介として「僕の名前知っとるけ?」なんて言う意味すらなく、自己紹介する必要すらない。

 悪い意味で…


 …orz


 これが引き金となってか…私は3年生になり研究室所属になっても全然気が抜けない日々を送る事となる。

 だいたい今日は研究室見学。まだ研究室は始まってもいないのに開始1時間でネタ野郎と化してしまったのだ… だいたい今後の想像はつくはず。 。


 コンナ事がアッテイイノダロウカ
 

 










































 次回  友情と恋愛


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2007(Sat) 11/24

ナイトライダー(51)

財前ゴウの総回診 … Comments(51)

 ちょっと今回だけ大学回想はお休みさせて貰って普通の日記。

 今日ですね。友達の家に行ったときに「ナイトライダー」のDVDボックスを発見しましてね。なんと1話から最終話まで揃ってました。

 こ…これは… 

 と思って頼み込んで借して貰いました。

 なんていうか。私このドラマ大好きなんですよ(笑)。

 どれくらい好きかというと私が最近まで乗ってたセリカの黒はナイトライダーに似てるから乗ってたようなものです。

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 いや。オープンカータイプじゃなかったけど。年代なのかどうなのかこういう黒のスポーツタイプ車見ると反射的に格好いいと思うようになってしまってる。

 ナイトライダーの影響です。 






 ドラマで使用されていたナイトライダーはこちら。


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 ちょ… 渋すぎる!!

 これこそが車よ。

 わかるか君たち。この胸にズガッとくる素晴らしいボディラインが。

 私たちの年代はこのKITT(写真の車)こそがあこがれの車の対象であり、ヒーローだったのだ。ちなみにこのドラマは私の親父すら食い入るように見てましたね(笑)。
 
 こんな車に乗りたいなぁ。

 なんて親父と一緒に言ってた時代が懐かしいです 

 
 冷たい目で冷ややかに見てたおかんと妹はほっといてね。 女にはわからん世界だからね。だいたい得てして女は恋にしか興味がない。極めて遺憾だ。



 …


 ああ。すいません。

 全然わかりませんよね?

 そうですよね。ナイトライダーなんて言ってもわかるのは恐らく総回診の読者の10%。

 ほぼ皆無でしょう…。


 
 説明しよう。

 え?いいって?

 
 まあ聞きなさいって。

 ナイトライダーというのはですね。

 1982年から1986年に米国で放映された特撮テレビ番組。全84話。日本ではNHK?で再放送されてます。日本で再放送されたのは何回もあるんでしょうが、私が具体的に目にしたのは高校生あたりです。

 KITTという車が活躍するわけですが、しゃべる車というのが当時は凄く斬新的で誰もがトリコになってましたね。

 WIKIPEDIAにはこう書かれてます。



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アメリカ本土ではナイトライダーの放映が始まるまで「黒」は不吉の象徴とされ、個人が「黒塗りの車」を所有する事などはアメリカ国民の通念になかったが、ナイトライダー放映開始と同時に黒のファイヤーバードが爆発的に売れ出し、「黒=不吉の象徴」という概念をも払拭させた。第3世代ファイヤーバードの宣伝のために作られたとされるナイトライダーだったが、あまりの売れ行きの過熱ぶりに「ポンティアックのロゴをエンドロールから消してくれ」と車両を提供していたGMサイドからナイトライダー製作陣へ直接要請があったほどである。

 日本国内においても、ファイヤーバードやナイト2000のデザインが、その後のスポーツカーに強いインパクトを与え、今現在でも多くのナイト2000レプリカオーナーが存在するほどの人気を博した。



 当時の人気っぷりはそりゃもうなかったですよ。

 実際にドラマに使われている車のボディが市販車のトライザムで身近だったというのも理由でしょうか。

 このドラマを見た後は車の前部にあの赤いヒュンヒュン光るスキャナーをつけたいと思ったものですよ。(今でもつけたい)

 
 いやあ。今見てもたまりません。久しぶりにDVD見て興奮しました。

 ホントすいませんね…。 趣味の固まりみたいな記事で…。

 今日の内容は全然忘れて貰って結構ですよ(笑)。

 
 ではごきげんよう。








 って おおぉぉぉっと 手が滑った

 


 おっとイカンイカン…。つい手が滑ってYOUTUBEに置いてあったナイトライダーの紹介動画を貼り付けてしまったか。 

 今後は気をつけないと。


 こ…コラ!!


 映像が古くさいとか言うな。 しょうがないだろ。20年前のドラマなんだぞ?
 
 そういうの抜きなら今でも全然名作なんだ。 なにしろ80話以上ある超人気ドラマだったんだから。

  
 車がしゃべるんだぞ?車が。


 そりゃあ今だとそう珍しくはないけどさ…。


 ん? なんだ? この映像は突然マウスが吸い寄せられて…


 おおっと。また手が滑った。

 

 おお?なんだ。ナイトライダースペシャル動画じゃないか。

 う~む。実にいい。


 ってホントすいません…。宣伝とかそういうんじゃないですよ? これ20年以上も前のテレビドラマなんで…そんなことしても意味ないですから。

 今見ようとしても再放送してないから絶望的。SKYパーフェクトTVとか動画サイトやファイル共有で誰かが上げてない限りまず見ることはできないでしょうね…。



 ただね。

 2008年秋にね。リメイクが決定したらしいんですよ。

 20年の歳月を経て新シリーズ放送開始とか。

 80年代の人気TVシリーズ「ナイトライダー」が復活!

 まあいくらファンでも人気が出るとは思えませんが…

 またブームが来て、町にナイトライダー仕様の車がポンポン走り出したらうれしいなぁと内心期待はしています。

 もちろん今風の車のデザインなんて絶対NG。 今の大衆に媚びたものは駄目だ。

 
 ボディは20年前と同じこれじゃないと認められない。じゃないと昔からのファンは見ないよ?

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 みんな恐らく当時のあのままのKITTとマイケルの復活を望んでるはず。


 さて…


 ナイトライダーを知ってる人が皆無の中で今日は敢えてこんな記事ですが、たまにはこういう15分程度で書ける日記もいいかなと思った次第であります。


 じゃあこれからまたあの長い回想記を書きますね…
 


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January February March April May June July August September October November December
2007(Thu) 11/22

大学時代 回想6 社会人の鏡(59)

財前History … Comments(59)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第5弾。
 「一楽木工」、「応援団」、「リリカ再来」「ストーカー財前」「バイク免許取得」を見ないと意味不明なので注意してください。
 
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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開













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 バイク免許を取得し、バイク車体も学生ローン可能という話を聞き、すぐさまバイクを購入しました。

 最終的に車種はドラックスターを選び、価格は全部込みで50万円。

 社会人になった今でもこれだけの金は払いにくいから学生からすると相当高額だったのは間違いないです。
 
 しかしイケイケでバカだったこともあり、勢いで買ってしまったんですよね…。

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 ドラックスターはしびれるほど格好良かったです。跨れば世界が変わりリョウさんと一緒に数え切れないほどの思い出も作りました。もちろん女性が後部座席に乗っているときは頼れる相棒に変貌しました。バイクは自分にとって性の象徴のようなものだったのです。


 しかしこれによりお金は遠い存在になってしまいました。

 頭金15万円は口座に残ってたお金と親からの仕送りをほぼすべて使って支払ったからです。これにて生活費はほぼ0に。 そして来月から毎月4万円のローンが始まります。

 学生に1月4万円のローンはきつい。

 私の親からの仕送り生活費は月に5万円。

 バイクローンに4万円を取られるとすると5万円 - 4万円で生活費は1万円になってしまう。
 
 1日300円しか使えない計算です。

 でも暮らせないということはない。周りには友達がいるし、実家からの救援物資食料も頼めば送って貰える。 餓死するこたぁない。 と甘く見てました。

 その一番の要因が白米。

 これは実家から送ってもらってましたので茶碗のご飯に関してはタダです。ご飯というのは炊飯器で炊けばいいだけなので0円でとりあえず飯は食えます。

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 茶碗のご飯を1日3杯も食っておけばとりあえず生きていけるはずですよね。

 しかし問題となるのがおかずです。これは金がかかる。タダというわけにはいかない。でも1日300円しか使えないから… やはり質よりも量となるでしょう。

 となると一番の主食となるのはキャベツ。

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 これは見た目にもデカイし、1円あたりの体積が大きい。

 生でもいいし、焼いても良い。一人暮らしの強い味方です。


 反面きゅうり、にんじんなどは1円あたりの量が少ないので高級品になる。

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 きゅうりは焼くには抵抗があり、人参は皮むきが面倒の上、意外と高額。


 こうなると一日の献立が決まってくる。


 今後1ヶ月の夜飯はご飯とキャベツに決定です。昼飯は食わない。朝飯も食わない。


 こうするとお金を使わないから一日300円ずつ貯まっていきます。これが900円くらいになったら外食してガッチリと飯を食って体力を回復。これの繰り返しでとりあえずは生きれるはずです。


 …

 もちろん甘い考えでした。こんな生活ができるわけがない(笑)。


 貧困生活2日目にして絶望です。

 …郵便受けに入っていた一枚の紙。


 これが私を絶望の淵へと追いやりました。


 郵便受けに入ってたのは請求書。しかも生活必需の… ものです。払わざるを得ない。

 
 そう。電気代やら水道代やらの公共料金です 電気代とかは1月6000円くらいします…


 …


 そうだ。電気は金がかかるんだった。これは想定外。


 これは痛い。
 
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 盲点でした。まさに灯台元暗し。 1ヶ月10000円しか使えない私にいきなり6000円の支出は痛い。

 ん?待てよ…。

 こういうのって電気だけじゃないよな…。


 そんな気がする。


 不安になったので全ての公共料金を調査すると…
 

 驚くべき結果が!!



 なんと日本の生活では1ヶ月にこれだけの公共料金が必要だった。


 電気代4000円 ガス代2000円 水道代1000円 電話代 6000円 新聞代3000円 NHK1500円 
 

 今まで気にしてなかったが…なんと公共料金だけで1月に合計17500円も払う必要があったのである。

 ちょ…高すぎる件について。

 17500円はいくらなんでも酷い。


 さすがに全部払うわけにはいかないだろう…。よし不必要なものは抜こう。


 …


 電気代4000円 ガス代2000円 水道代1000円 電話代 6000円 新聞代3000円 NHK1500円 


 これでよし…と。
 
 新聞とNHKには残念ながら涙を飲んで貰うしかない。

 新聞は電話すれば解約できる。「最近世の中不祥事ばっかじゃねえか。もういらねえよ」という捨て台詞と共に解約すればいけるだろう。

 問題はNHKだ。

 残念ながらこれは解約することはできない。支払いが国民の義務だからだ。

 でもこれは確かテレビを持っている者に対する義務だったように思う。NHKの放送を見た人が払えばいいんじゃなかっただろうか?

 となると

 「テレビないから」

 と言えば払う必要がないということ。この一言で1500円も浮く。


 だってしょうがないじゃないか。第一私はまだ未成年なのだ。NHKとか払ってられるかよ。

 
 いいか。私は消費税とタバコ税と酒税を払っている。これで充分のはずだ。NHKだけちょっと免除して貰うんだよ。

 
 案の定NHKの取り立ては「テレビがない」の一言で回避できた。


 申し訳ない。社会に出たら払うからね~…。



 これでもう削れるものは削った。

 
 だが金ができたわけではない。ついに本格的な貧困生活に突入した私…。


 …



 しばらくはバイトなしで生活していたが、やはりというべきか…。一日300円なんかで暮らせるはずもなく(やっぱおつきあいとか外食とかあるしね…)、しかもこの計算にはガソリン代が入っていないという致命的な欠陥が発覚。

 ということは…

 結局電気代、水道代、ガス代、電話料金はすべて滞納してしまうことになり…(というか払えない)

 滞納している内に…警告が来たりしましたが、それもスルーしていると…ガスを止められ、電話も止り、電気すら止りました。

 このときの生活のカオスっぷりと言ったらない。
 
 だって私の家は今や水しか出ないんだから。

 ハッキリ言ってこんな体験をしてる人は稀かもしれない。電気もガスもない生活です。

 部屋とか真っ暗です。テレビも本当につかなくなってしまった(笑)。

 これじゃNHKも取り立てようがない・。


 まあ水が出るだけマシとも考えられますが、水なんて出ても意味ないです。東京の水はそのままガブガブ飲めるわけでもないですから。濁ってて汚い。

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 何よりも痛いのがお風呂だった。ガスが止められてるので冷水しかでない。風呂は冷水で入らざるを得ない。もちろんシャワーから超冷たい水がでるんですが、それで体を洗い、髪を洗う。まあ人間やろうと思えばできないことはありません。

 冷水だってね。5分くらい浴びてれば体温が下がるから、そのうち暖かく感じるようになるんですよ。(ちょっと無理はあるけど…)

 電気? 電気とかなくても慣れれば大丈夫です。ろうそくという手があったからね。ろうそくの火があればアル程度の事はできる事を知った。

 寝るときに消せばいい。

 電話? いいんですよ。電話とか。必要ない。だって私の家は溜り場なので連絡しなくてもみんな下宿に来てくれるんですから。彼女もいなかったので電話など特に必要はなかったのです。

 しかしこうした生活もさすがに1ヶ月が限度です。さすがに無理が出てきた。

 健康に弊害が出てきたのである。

 飯に関しては友達が奢ってくれたり、飯を持ってきてくれたり、コンビニのあまりを持ってきてくれたりということで食いっぱぐれる事はなかったが、現代においてガス、電気なしの生活というのはちょっと…。

 ここ東京だし…。

 
 …


 大都会でろうそく生活は無謀すぎた。


 なんか学校とか行ってもひもじい思いをするし、前のように元気も活力も出ない。やっぱ最低限の食事はしてないと、体がついてこない。脳も退化し無気力でなんに対しても閉鎖的な心境になってしまう。

 すでにリョウさんとナンパに行く気力すらなくなってきている。


 やはり… 突然50万円の買い物をするのは無謀すぎたのだ(笑)。




 こうなるとさすがにもうバイトするしかない。


 死んでしまう。

 
 早速求人情報誌を貰ってくる。


 ほうほう。

 バイトと一言で言っても様々なものがあるんだね。


 時給に応じていろいろ仕事内容が違う。


 ①時給800円くらいで楽なホールの仕事 
 ②時給900円くらいのキツイ仕事
 ③日給1万円クラスの力仕事
 ④時給がいい期間限定のアルバイト 
 

 まあ候補は③です。日給で金が貰える力仕事。これが一番手っ取り早い。しかしひとつ問題がありました。既に数ヶ月に及ぶ貧困生活で体力は衰え、脳もうまく働いていない。無気力です…。

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 ああ…。誰か腹一杯飯食わしてくれたらなあ…。

 だれか肉でも奢ってくれたらなあ…。体力も…

 焼き肉とか… 食べたいなぁ…

 …

 …ん?



 焼き肉?
 


 待てよ…


 …




 Ω\ζ°)チーン



 そうか!!


  
 










 
 焼き肉屋でバイトすれば肉食い放題じゃないか!! 

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 うおぉぉぉ!! これだ。これしかない。 バイトしても金くれるのは1月後だから当面の飯はないんだよね…。

 焼き肉屋なら金貰えて肉も食えるからまさに1石2丁。


 早速焼き肉屋の求人をくまなく探す。


 え~と…焼き肉焼き肉…。 経堂とか近くがいいな。


 …


 あ…あった!!


 あったあった。


 焼き肉「牛鉄」!!世田谷経堂にチェーン店3店を構える焼き肉屋である。

 しかしもう一つ「牛角」という全国チェーンの焼き肉屋の募集もあった。

 どうやら広告による募集はこの2店。

 牛鉄、牛角共に時給は互角。900円程度。労働時間も同じ。

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 違いは「牛角」は全国チェーンということ。…ということは様々な点でマニュアル化されており、仕事する場合は快適な環境が整っているのだろう。 

 しかし私の場合はこれが逆にマイナスに働く可能性がある。だって私は別に焼き肉屋で働きたいわけじゃなくて肉が食いたいだけなのである。そのついでにバイトをするのだ。

 私の読みが正しいとするのであれば全国チェーンの牛角の場合、社員にそうポンポンと肉を食われたら困るはずなのだ。全国チェーンだけに。本部が厳しく管理しているに違いない。こういう全国規模店は小さな無駄が積もり積もって破滅に繋がる。

 それゆえ社員に対して店からでる食事は弁当…とか言うこともあり得る。

 反面「牛鉄」はチェーン店と言っても東京に数店舗あるのみ。管理体制は牛角に比べて緩く、社員の飯も弁当はあり得ないだろう。それに店の在庫もチェーン店にポンポン回せないはずなので「古い肉は腐るから焼いて食っちまえ」という流れの可能性が高い。


 フフフ。



 つまり…


 賢い選択は






  



 牛鉄だ!! 

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 間違いない。これぞ正しい選択だ。大きい会社に入るのは就職するときでいいんだよ。



 よし。
 
 ということで


 早速電話連絡を入れる。


 店長らしき人物が対応してくれ、さっそく店に来てくれという。


 すぐさま面接に向かう。

 

 経堂の牛鉄は家から徒歩で約10分だった。楽勝だ。近すぎる。これならバイクで行く必要性もなくガソリン代もいらない。

 店内に入ると外村さんという店長が面接をしてくれた。焼き肉屋で働くことで覚えておくことは以下の点らしい。


 ①土日は平日に比べて30分早く営業開始 (これは間違うな!)
 ②声が小さい奴は駄目だ
 ③鉄板替えるときにお客様に火傷をさせる危険がある。(細心の注意を払え!!)
 ④仕事は17時~24時まで(週に3~4回来てくれ)
 ⑤焼きは土日のみだ。(焼きというのが社員の夜食に焼き肉をするということ。土日以外は店の食材いを使って飯を作ってくれるらしい)
 

 ほらほらほらほら。観ろ見ろ。⑤を見ろ。


 焼き肉が社員のまかないとしてちゃんと用意されてるじゃないか(笑)。まかないは土日。これは恐らく土日はお客さんが多くて忙しいからご褒美という意味で焼き肉してくれるんだろう。

 フフフ。最高の環境じゃないか

 あと17時~24時と勤務時間が長いのも美味しい。

 7時間労働だから×900円で6300円貰える計算になる。日銭にしては良い感じ。

 私にとっては1日働くだけで電気料金が払えるので電気復活。

 2日働けばガス復活。

 3日働けば電話復活。

 4日働けばガソリン復活。

 5日目以降はもう親の総取りフィーバー。健全なる生活に戻るきっかけが見えてきた。
 




 …



 よし。これはいける。






財前「がんばりますよ!!」

外村「うんうん…」

財前「他には?」

外村「え~とね。うちは… ぺらぺら」

財前「ふむふむ」





外村「ということだけど。大丈夫? 楽しく働けそうかな?」

財前「はい。大丈夫です!」

外村「いい返事だ。採用!!」

財前「え!?」

外村「君採用だよ」

財前「マジすか!!」

外村「いいよね?」

財前「そりゃもうw」



外村「じゃあさ。君と一緒に新規アルバイトが1人入る予定になってるから、その子と一緒に1回目入ってよ。水曜日でいい?」

財前「わかりました」

外村「じゃあよろしくね~」

財前「はい~」


 どうやらうまくいったようで採用になった様子。そして広告を見て来た人があと何人かいて、そのうちの1人が採用になってて、その人と一緒に水曜日に仕事に入るらしい。

 焼き肉屋の仕事ってどうなんだろうか? 不安が募るが金と肉のためならしょうがない。 



 そして水曜日…



 …


 牛鉄に向かい、店内に入った。いよいよ初仕事。気合いを入れていくぜ~。



 まずは第一声… これは重要だ。何事も第一印象。

 よしまずは大きい声で挨拶











 財前「チワ~~~~~~~ス!!」

 







田中「げっ!?」

金澤「ちょ…声でかっ」

外村「おおw 来たか財前君」

財前「ん?」



外村「やっぱいい声してるねぇ。腹に来るね腹に。今日からよろしくね」

財前「宜しくお願いします」

外村「ああ、後ね。その大きさの声で良いんだけどドスを効かせるのはセーブしてね」

財前「え…」

外村「声にドスを入れるのはあんまりね。うち明るくさわやかな接客がモットーだから」

財前「あ。すいません。問題ありましたか?」

外村「いや別にそういうわけじゃないんだけどね」



外村「まあこれから教えていくからいいよ」

財前「はい」


 この時はわからなかったが、私は大きい声を出すとついつい応援団系のドスの効いた声になってしまってるらしい。つまり大きい声はそのままでドスをぬいてマイルドな感じの声を出せというのが後の外村さんの指導。

 腹から声だせばドスがきいちゃうんだけどなあ…。


 これは応援団の弊害だ。


 ほらみろよ。やっぱ応援団で特訓したデカイ声とか社会では通用しないんじゃないか…。

 デカイ声はいいにしてもドスの効かせ方がやっぱ現代に合ってなかったんだよ。


 ホントあいつら(援団)役に立たねぇな…。


 そして…  私の同期を紹介してくれた。 誰だろう?



外村「ああ。財前君」

財前「はい」

外村「この子が今日から一緒に働いて貰う金澤君ね」

財前「ん?」


 ほう… この人が… 同期の… 





 目が合う二人







財前「…」

金澤「…」
 
















財前「…」

金澤「…」





 ちょ… この金澤って人…なんかキムタクみたいなんだが…


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 同期がイケメンすぎる件について!!


 

 説明しよう

 金澤君とは … 後に牛鉄きってのアイドルに君臨する男である…。この男はこれから長い間に渡りトイレにある伝言板にて女性から黄色い声援を浴びまくる事になる。

 これは言っても信じて貰えないだろうが、この数ヶ月後…牛鉄2号店は結構アルバイトがどうとかで話題になりモデルのスカウトが数回来たことがある。


 ↑フフフ。一応私も名刺貰ったんだよ? まあ金澤君が本命なんだろうけど…。




 




 ちょ~ なんなんだ東京は。なんでこんな格好いい奴ばっか次から次へと現れるんだ?さすがは…日本一の町。

 
外村「ちなみに二人の役割は決まってるから」

財前「え?」

金澤「む…」

外村「まず金澤君」

金澤「はい」

外村「君は格好いいから接客を頼むよ。ホールに常にいてお客さんの追加注文や皿下げに気を配って」

金澤「はい」

外村「次に財前君」

財前「よしきた」

外村「君は声担当」

財前「…ぇ?」

外村「君は声担当」

財前「声?」

外村「君は新規のお客さんからの注文を全部取りにいって。その後大きい声で注文オーダーを厨房に伝えて。そうすると店が活気づいてるような雰囲気にお客さんが感じるから」

財前「はい」

外村「金澤君は顔、財前君は声。しっかり役割分担してね」

財前「金澤君は顔… 俺は声って… どういうことでしょう?」

外村「そのまんまだよ。お互いを見れば自分の特徴がわかるでしょ」

財前「ん?」

金澤「ふむ」

外村「もう一度言おうか?」



外村「金澤君は顔が売りだからホール中心、財前君は声が売りだから注文叫び」

財前「…」




















外村「金澤君は顔、財前君は声!!」



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財前「ああぁぁぁぁ…」 





















財前「金澤…か」

金澤「?」

外村「まあまあ。顔にしても声にしてもいいものをもってるのは立派な才能。そういうのを考慮して面接合格出したんだからさ」

財前「…」

金澤「…」



金澤「よろしく。財前君」

財前「…。あ…ああ…よろしく金澤君」



 まあ…しょうがない。私も格好悪い方じゃないと思うんだけどなあ…。さすがに金澤君には勝てそうにないわ…。

 親友のタカシやリョウさんも格好いいけど、さすがに金澤君はケタが違う。顔のパーツすべてがなんていうか… 格好いいわ。

 しかし非常に珍しい。

 普通バイトに来たら二人とも同じように仕事を教えて貰うはずなんだけど、ここではまったく別。金澤君はホールをくまなく見回るために必要な事を伝授され、私は焼き肉屋の店内そのものを活気づけるために必要な事を伝授されていった。

 
 デカイ声担当の財前


財前「牛タン一丁追加~ 上カルビ3丁入りました~」

外村「あ~りがとございま~~す」

田中「ありがとございま~~す」




財前「はい 3宅さんお帰りで~~~す」 

外村「あ~~りがとございました~~」

田中「ありがとございました~~」





 店のイメージUP担当の金澤


金澤「お客様。鉄板交換しましょうか? 」 キ(`・ω・´)ラッ

女性客「はぁ~い(*´Д`*)」

女性客「ありがと・゜(゚∀゚)゚・*:.」


金澤「よろしければ空いたお皿お下げしましょうか?」キ(`・ω・´)ラッ

女性客「はぁ~い(*´Д`*)」

女性客「ありがと・゜(゚∀゚)゚・*:金澤さ~ん.」









財前「ユッケいかがっすか~ まだユッケありま~す。 牛刺しいかがっすか~牛刺し」 

客「また今度な」

客「今はいらねえな」

女性「…」





金澤「お客様よろしければお子様に取り皿お持ちしましょうか?」キ(`・ω・´)ラッ

女性客「(*´Д`*)'やさし~い」

客「や・さ・し・い~」








財前「ぐ…」

















財前「ちょ…何なのこの差は…」

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財前「外村さん~」

外村「何?」


財前「俺は金澤君みたいな役はずっとできないんですか?」

外村「はははw 金澤君がいないときは財前君でもいいけどね」

財前「…」

外村「でも金澤君が入ってるときは金澤君で固定だ」

財前「ですよね…。外村さんはホールはされないんですか?」

外村「ホールは店の顔だよ。イメージUPには顔のイイ奴が出ていかなきゃ」

財前「ほうほう…遠慮されてるわけですか」

外村「それが売上げの増加に繋がる。お客様第一さ」

財前「なるほどですねぇ」

外村「金澤君みたいな格好いい子がいると店は美味しいよ」

財前「…」

外山「財前君の代わりを金澤君はできない、でも金澤の代わりも財前君にはできないからね。お互いの役割をよく理解してね。というか金澤君はもう理解してるようだけど…」

財前「深いですねぇ」

外山「ここではお客さんを中心に全てを回すから。働いてればそのうち財前君もわかると思うよ」

財前「はい」



 この外山さんの言ってた事が本当に理解できたのは数週間後。店のトイレに設置されている「お客さんの声を聞く」ボード。ここに自由にお客さんが意見を書き込んでくれるのだが、金澤君には確かに女性の黄色い声援が多く(というか金澤君ばっか)、次に多かったのが店の雰囲気がいい、明るいのがいいという声。

 そしていつしか…

 もちろん牛鉄の肉本来の美味しさや値段設定もあるとは思うが、徐々にではあるが牛鉄は強力なライバル牛角に負けない売上げを叩きだすようになっていた。

 土日は常に行列。

 私も月に10万円稼ぐようになり、貯金残高も増え続けた。

 しかしお金が欲しい、肉が食べたいという目的はいつしかなくなっていた。それよりも牛鉄という店を盛り上げたいという気持ちの方が多くなっていた。もちろんそのためには金澤君を前面に立て、自分は影役に徹する必要があった。

 今や彼は経堂「牛鉄2号店」の看板男として自他共に認める存在にまで成長していた。

 彼なしの牛鉄はあり得なかった。彼がホールに立ってこそ牛鉄2号店はその真価を最大限に発揮することができたのである。

 客の彼への人気が上がるにつれ、それをサポートする私の仕事が増えたのは言うまでもない(笑)。これにより大学生活はすっかりアルバイト一辺倒になってしまっていた。

 将来こういう店を持つのもいいな… と思ったほどだ。

 
 もちろん色々問題もあった。


 一番印象に残ってるのは御飯焦がし事件。

 牛鉄なんかの焼き肉屋はライスがどんどん出るので業務用の大釜で御飯を炊く。しかしある日、厨房の人が水の加減を間違えたのか、機械が故障したのか御飯を焦がしてしまった。

 お客様に出せるレベルじゃなかったのでスタッフ一同騒然となってしまった。みんなはこう言い合った。

田中「ごめん;;次の御飯が炊きあがるまでお客さんにはライスを待って貰うしかない」

金澤「あと残りのライスは何杯?まで出せます?」

田中「あと6杯が限度だ」

財前「足りませんね… ライス6杯となると30分持たないですよ」

田中「しかし…どうしようもない」

 
 ここで店長 外村さんのプロ魂の一言



外村「ライスのねぇ 焼き肉屋なんてねぇ!!」


 
 言っておくがこの時代に「次長課長」なんてコンビは世に出てない。つまりこれはギャグではない。

 こう言って外村さんは別会社の焼き肉屋や御飯屋に何店も電話をかけ、すぐさま下北沢にある店のライスを分けて貰うことに成功したのである。なぜか今でも妙に耳に残っている言葉。社員という責任看板がないとこういう発想は出ないのかもしれない。

 しかし問題がひとつ。

 下北沢までは電車で15分程かかる。行って帰ってきても歩き時間を含めて恐らく40分はかかる。

 今からライスを炊いても50分程で完成するからこれでは遅い。わざわざ貰い行く意味がないのである。

 お気づきだろうか? ここで出番となる主役は一体誰か。


 当然私しかいないだろう。 ん?

 私にはバイクがある。最近はバイクで出勤してたからちゃんと店の外に愛車ドラックスターがピットインしてるわけだ。

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 舐めちゃいけない。下北沢程度であれば飛ばせば20分以内で帰ってこれる。


 そしてスタッフはみんなどうやって取りに行くか考え中。

外山「タクシーで行くなら電車の方が早いし…」

田中「やはりここは早炊きしてでも、うちのライスを使った方が…」

外山「早炊きしたライスなんて客にだせねえよ」



 フフフ… みなさん。みなさん。私がバイク乗りって事を忘れてないかね?

 ほら。ここここ。よく見てよ。ここにバイカーがいるんだから。

 早く気づいて欲しいなあ。よしこの際俺から言っちゃおうか?




金澤「う~む」



 ん?金澤… 


金沢「外村さん。下北沢の店は諦めてやっぱこの近辺の店を当たり直した方がよくないですか?」

外村「う~ん…。もう今更…時間がないよ」


 フハハハハハッハ。金澤君。君その程度かね。 よし今日はおまえに勝った!!

 どけどけ雑魚共。


財前「ッフ…。 皆さん。何かお忘れじゃないですか?」

外村「ん?」

金澤「!?」

財前「バイクなら下北沢まで20分で帰って来れます。」

外村「おお!!」

金澤「そうか!」

財前「フフフ…。つまりですね。私のドラッグスタ…」




金澤「俺が原付出します!!」 


財前「げ!!」










 ちょ… おま…















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工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工  金澤君原付なんて乗ってたっけ?








財前「ぇ…  ちょ… おま…」

外村「さすが金澤ちゃん!! 頼むよ。 20分で帰ってこれる?」

金澤「下北沢ならなんとか」

財前「ちょ…ちょっと…」

金澤「じゃあ行ってきます」

外村「お願い~」

財前「…」



 …




 まあ事件としてはたいしたことはないんですが、やっぱり金澤君には勝てない財前君でした(笑)。だから思い出に残ってるんですかねぇ。

 ホント東京は凄いわ。

 凄い奴がいる。なんかすべてがそいつ中心に回るというかね。
 
 打ちのめされます。でもこういう現実を知るのも社会勉強ですかね。

 こんなレベルの人間がわんさかいるんですから。金澤君は神に祝福されてるというかなんというか… 顔と性格、スタイル、頭 なんか全て凄いよ。

 一番凄いのはね。彼はバンダナまいてもね。長髪なのに髪型くずれてないんですよ。普通帽子とかタオルとか頭に巻いて何時間もいるとね。それ脱ぐと髪型無茶苦茶になるじゃない?


 金澤君はそれがないんです…。何時間もタオル巻いててね。それで脱いでも髪型決まったまま。


 あり得ないだろう…。 私とか無茶苦茶になってるんですが 何か?


 あいつ…一体どういう構造してるんだろう…。


 でも

 逆に金澤君は私の事どういう風に見てたんでしょうねぇ。今思うとそれが気になる。

 
 …


 まあそんな話はこれで終わりにして
  
 バイトだけでは死んでしまうので相変わらず休みの日はリョウさんと町に出歩いたりしたいたが、アルバイトに週に何日も入ってる状態では体も疲れ切っており、社会も知った事でさすがに以前のように無鉄砲には女性に向かっていけなくなっていた。


 そう…


 貯金もでき、健全な生活を送り出した事でそろそろ見知らぬ一晩限りの女ではなく…


 特定の彼女が欲しくなってきたのである。 


 だが特定の彼女となるとやはりチズエさんが脳裏に現れてしまい…結局踏み出せずじまい。やはりまだ一晩限りの女漁りを繰り返す方が気楽といえば気楽だ。

 まだ彼女の影が…消えない。



 しかし状況は変化しつつあった。チズエスパイラルから抜け出すきっかけをなんとなく掴みかけていた。

 今の私には大きな武器がひとつできたのだ。

 それが焼き肉屋のレシピと金澤君。金澤君は後述。

 例えば牛角などによく行く人は「牛角サラダ」なるサラダを食べたことがあるのではないだろうか? レタスにネギが入ったしゃきしゃきしているサラダである。あれのうまさの秘訣はサラダのタレ。

 基本的にごま油とさとうと*****を混ぜてそのタレを作るんだけど、正直あのレベルはレシピさえ知ってれば家でも完全に再現できる。

  
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 焼き肉も同様。塩の場合は塩ダレで揉む、タレの場合はタレで揉む、カルビスープやカルビクッパのような食べただけでは何が入ってるか何を調味料としているのかわからないレシピもバイトしてれば作る機会がたまにあるので完全に会得することが可能。

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 もちろんこちらも家で完全に再現可能。

 まあ言わば女に焼き肉料理を出せばもう落としたも同然なのである。(多分)

  
 それと金澤君だ。

 彼をコンパに連れて行けばもう勝ったも同然である。もちろんコンパに行けば金澤君に全女性の視線が集中する。第一ファーストコンタクトは金澤君の一人勝ちだ。

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 しかし世の中そううまくはできていない。

 世の常識は男一人に女一人制。

 残念ながら日本では2股3股することに社会権がない。

 金澤君が如何に格好良かろうと、選べる女性は一人なのだ。二人は選べない。彼のようなさわやか君は尚更だ。

 金澤君クラスには女性もそれクラスの女性が好意を示す。こうなると自分の身の丈を知ってる女性は引かざるを得ない。

 金澤君クラスの男性を強引に引っ張るのはさすがに女性も気が引けるのだ。

 となると事態は一気に急変。2番手3番手の男に女性は興味を示さざるを得ない。こうなると財前君の独壇場となるわけだ。クックック…。

 2番手は非常に気が楽だ。2番手は酷い男でもいいし、軽い男でも問題ない。女は既に金澤君を諦めているのでそこまでの理想を求めていないのだ。

 1番手に確固たる金澤君という絶対的な存在がいてくれれば、後の男は非常に動きやすいという寸法。
 
 例えば場を盛り上げるために私が下ネタを発言したとしよう。この時、もし男連中がブサイクばかりだとすると?

 場の雰囲気は最悪である。女性はこう思うのだ「何このムサイ集団。サイアク。酔わせて連れ込もうとかそういう風に思ってる連中じゃないの?」。

 これは女性のお気に入りのビジュアルの男性がいないことで起こる悲劇。第一印象でこれは決まる。

 しかし金澤君がいればどうだろう。下ネタを私が言っても女性は「何この人…。でも金澤君みたいな人もいるし… 金澤君の友達ってことは悪い人じゃないかな?」

 とここまで印象が違うのだ!! これはすべて金澤君の力。


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 これぞイケメンマジック。

 コンパはなんだかんだ言って顔なのだ。顔だ。これがいいだけですべてが好転する。

 雰囲気が180℃変わるのだ。

 ゆえにコンパにイケメンが一人は最低必要ということは覚えておいた方が良い。ライバルができるからといって平均レベルの男だけ選抜して望むコンパは逆に成功しない。
  
 
 …と思う。

 イケメンが参加していれば到底落とせない美女がいたとしても可能性がある。その女を誘った場合に「また金澤君と会わしてくれるかも…」とデートをOKしてくれる場合がある。

 もちろんこの場合その美女とはつきあえないわけだが…ここで金澤君との食事会をするとでも約束しておけば女も恩義を感じ、おこぼれに預かれる。

 美女が恩を感じてくれるのである。利用しない手はない。

 逆に金澤君がいなかったらこの美女がデートについてきてくれるはずもない。恩など感じようもない。


 つまり可能性0%。



 世の中残酷にできているのだ。いかに自分は格好良いとナルシストしていたとしても一足外に出ればそれは完全に打ち崩される。身の丈をしった戦略を立てる事こそ重要。

 自己分析のできてない人にはきついが、そういう場合は謙虚になればいいだけだ。

 才能ある奴についていけば間違いない。
 
 


 …




 しかしこういう良き日も長くは続かなかった。


 よき理解者であった外村さんの人事異動により、代わりの店長が牛鉄NO2店に来た。これにより非常に居辛い場所へと変わってしまった。

 外村さんタイプとは違い新しい店長はバイトを信頼して適材適所という事をせず、あくまでも自分が王様として絶対的な位置に君臨し、バイトは兵隊に等しく皆平等に扱われた。

 これにより仕事に自由はなく、ただの規律ある平凡な仕事に成り下がった。

 常に監視されていた。アルバイト以上の事をするのは越権行為と判断された。

 つまり店長はアルバイトを信頼してなかった。

 これによりバイトは自分の得意分野の役割を発揮する事できず、皆が同じ動きをせざるをえなかった。

 役割を暗黙でわかってない状態だけに仕事は皆同じ。こうなると「あいつ楽してねぇか?」「あいつ動かねぇ」「あいつスマしてね?」「なんで俺だけやらなきゃならないの?」などという発言が横行し、新アルバイターとの間に内部的なもめ事が多発。

 外村さんのためなら私も金澤くんも犠牲を惜しまず力の限りを尽くしただろう。

 しかし金澤君も私も新しい店長のためにこれらアルバイトをまとめようという愛社精神は沸かなかった。こうなった責任は私たちの性ではなく新店長にあるのだ。

 ならば新店長のために一肌脱ぐ気持ちがないと助けられるはずがない。

 だが残念ながら理解ある上司の元でないとやる意味も見あたらない。

 所詮時給の世界だ。アルバイトに責任などない。人間的に恩も義理もない店長のために時給外の仕事をする気はしなかった。

 これは金澤君も一緒だったようだ。彼のような人材がこんな状況をうれしく思うはずがない。

 この状態わかりやすくいうと、対戦ゲームやネットゲームなどでチーターを相手にするような感じ。やる気など出ようはずもない。

 まさに現実版チート。

 アルバイトは社員の方針に従う以外に道はない。だが一歩店の外に出れば拒否することはできる。店長であろうと誰であろうと仕事上のつきあいがなければタダの人。この人はプライベートですらつきあいたくはない。

 となると道は決まった。

 残念だが働き口は他にいくらでもあるのだから。

 
 …

 結局これによって私を含め数名が牛鉄を辞めた。もちろん一緒に働いていたアルバイターも後に牛鉄を去った。


 いなくなることで初めて外村さんの偉大さが皆わかった事だろう。

 彼はアルバイターにやる気を出させる術を知っていた。

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 牛鉄2号店はその後も人気を維持していたが顔見知りのアルバイターはほとんどいなくなり、私はプライベートで牛鉄2号店へ友と焼き肉を食べに行くことも以後なくなった。

 外村さん、田中さん、金澤君のいない牛鉄など…。



 …


 なんの魅力があるというのか。


 店長。つまり束ねる者が変わることでこれほど環境が違ってくるとは想定外だった。


 外村さん。

 彼はまさに社会人の鏡として私たちに背中を見せてくれた。あの経験は社会人となった今でも礎として残っており、今でも忘れることができない。

 外村さんはまだ今でも牛鉄で働いているのだろうか…?
















 今日の関連曲

 伝説の糞店長  チーターマン

 

 伝説の糞ゲー 「チーターマン」BGM にこにこ動画で人気沸騰 (←ちょっと古いけどごめん)





 








 次回  大学3年 研究室所属







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2007(Mon) 11/19

大学時代 回想5 バイク免許所得の先に…(49)

財前History … Comments(49)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第4弾。
 「一楽木工」、「応援団」、「リリカ再来」「ストーカー財前」を見ないと意味不明なので注意してください。


 
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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開





 
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 チズエという他に代わりの効かない存在を無くし…

 行き場のなくなった自分。

 大学で友達はできたものの、未だ過半数に近い形で大学ではストーカーと思われている事は変わらない。

 もちろんストーカーのままでも友達はできるし、実は特に不自由もないが良い状況でないことは確かである。


 だが感覚が麻痺してきたんだろう…。あまり深刻には考えなくなっていた。
 
 
 それより今は何か打ち込むものを探すべきだ。この暇な大学生活だ。やろうと思えば何でもできる。

 まず考えたのはサークルに入ることだった。

 (サークルというのは中高生時代でいう部活動の軽い版みたいなもの。良くも悪くも大学風なので行っても行かなくても良い仲間を作るだけの軽いノリで所属できるのがサークルの利点)

 
 やはり大学と言えばサークル活動だろう。実際大学生のほとんどのが男女の出会いを求めてサークルに入る。そこでみんな恋愛したり、思い出を作ったりしてるわけだ。

 これについては私は完璧に乗り遅れていた。

 4月に入学時した時に新入生はサークルの勧誘活動でスキーサークルやら旅行サークルやらサッカーサークルやらに所属する。サークルは別に頻繁に行かなくても良くて、たま~に行っておけばいい的なノリ。ゆえに負担も少ない。でも飲み会やイベントがあるときには顔を出せるから労せずして異性と交流できる最高の存在なのだ。

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 みんなそこで他学科の女と出会ったり、友達を作ったりして大学生活の礎が出来ていく。

 当然私はこれができてない。


 ちなみになぜサークルに入るといろいろ世話を焼いてくれるかというと

 大学生活は暇だからね。みんな世話をする暇がある。ゆえに田舎の学生が東京に出てきたばっかりだとしてもサークルの友達がキチンとフォローしてくれるのだ。そういう余裕があるからね。

 大学生活を楽しむための秘訣はこのサークル活動を如何に有効に活用するかと言っても過言ではない。所属しなければ出会いや友達という側面では明らかに出遅れる。
 
 それなのに…私は…。 ほとんどの学生がサークル活動を謳歌し、学内コンパを楽しんでる時期に…。
 

 スタートダッシュに失敗。いきなり女禁制の応援団に入るという暴挙をやらかしてしまったわけである。


 忘れもしない。あれは入学式の次の日…
 
 勧誘活動でいきなり学ランの応援団に捕まり団室に連れ込まれ、その後いきなり地獄の合宿に拉致され…

 みんながコンパしてるときに


 腕立て 腹筋 走り込み


 なんなんだこの単語は。違和感ありまくりじゃないか。

 
 そしてみんながオシャレな居酒屋で酒を飲んで異性交流を楽しんでいる時に…


 「釜の飯は一粒たりとも残すことは許さん! オース!!」などという団長の怒声の元、吐きながら皆で飯をガツ食い。飯食ってトイレで吐いてまた飯くってトイレで吐いて…

 …

 釜の飯なんて全部なくなるかよ!;;


 しかも世はGW(ゴールデンウェイーク)だったのに…。


 なんでこんな目に合うんだ;; と思いながらもようやく地獄の応援団を抜けられたと思ったら、実習前にとんでもなく綺麗な女性と出会い、心を惑わされ続け…。フラレて。それだけに止まらず結果ふとした勘違いから学科内のほとんどの人からストーカーと呼ばれるようになる始末。
 
 この憤りは誰にもぶつけることができなかった。ゆえに自分の環境を呪った。

 憧れ続けた花の都「東京」はいつしか「敵」という意識に変わっていた。

 怒りのはけ口は東京に向かっていた。

 
 ハッキリ言って社会人になった今でも東京は恐いというイメージが残っている。



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 私はこの時期、完全にひねくれていたのだ。


 断っておくがこれは私が悪いわけではない。悪いのは東京だ。感受性豊かなこの時期にこの仕打ちはあまりに酷い。

 私は1年生の1学期というスタートダッシュを切るのに最良な時期を逃した。もう取り戻せない。大学内での美味しすぎるイチャイチャサークルにも参加することができなかったのはそれほど痛い出来事だったのである。


 だから女と関わるためには他大学の学生とコンパせざるを得なくなり、新宿や町田まで出てナンパせざるを得なかった。これは通常の大学生に比べ圧倒的に厳しく不利な行為だった。

 ナンパっていうのはそんな簡単なものじゃないからだ。

 まず移動に時間がかかる。それにもし引っかけられなかったらそのままスゴスゴ帰ってこなくてはならない。
 
 逆に自大学内とかサークル内であればコンパでも「○●学科の○●です」 って言えばいきなり顔パスで知り合いになれる。誰も怪しまない。それにコンパは居酒屋が基本なので何もなかったとしても一応腹はふくれるし楽しい会話はできてる。


 だが私は違う。ナンパで「○●大学の○○」ですなんて正直に言ったら終わり。そんなんで女はついてこない。怪しい男と思われないように、かつ逃さないように、かつ興味を持って貰うように話しかえないと駄目なのだ。相当疲れるのは言うまでもない。


 それに成功したから言って気を抜けない。特に東京は危ない女も星の数ほどいるからね…。実際そういう危ない目に何度も合ったから、以後偽名を使うのが基本となった。

 コンパのように楽しい会話も気軽にできるわけではない。素性を隠したままでは言えることが限られるため結構精神的にも参ってくるのである。
 

 ちなみに今だからこそ言うが、私はナンパ時に小杉という名字を使っていた(笑)。




 …



 
 これは…大学生のすることなのか!?



 …







 いやいや。俺は大学生のはずだ。


 本来ならばサークルに所属しよろしくやってれば健全な出会いの場なんていくらでもあるはずなのに…







 なのに


 なのに…


 




















 

 なんで東京にまできて偽名を使わなければならないのだ。 















 ナンパに偽名使用とか確かにストーカーと間違われても否定できないわ(笑)。


 友達に突っ込まれるのもわかる… 気がする?


 いやいや。

 ふざけるんじゃない。何も悪いことをしてないんですよ?私は。やっぱりこれは言いがかりだ。


 まあそういうわけで一言でナンパとか他大学とのコンパとか言ってもそれはもう…簡単な事ではないのです。ナンパやってたなんて聞くと「遊び男」とか思われるかもしれませんが、それはそれでね…。いろいろ苦労があるんですよ。

 やっぱりそう至った背景とかさ。あるじゃん。ね? 


 ナンパ仲間もそりゃあふざけた奴が多かったけど、昔話を聞くと同情するような奴も多かった(笑)。みんな悪い奴ばっかってわけでもないわけです。

 ナンパ仲間に共通して言える事はちょっと話せばコイツバカだなってわかる事と口ばっか達者な事。 当然な事ですが、口でいろいろデカイ事は言えてもこの年では実力も経済力も追いついてないわけですから。


 大概がフカシです。まあ実はイイ奴なんだけども。
 

 …



 その中で最も感慨深い人物がリョウさん。

 この人はその中でも特別な存在でした。

 プータローなのに借金100万以上抱えててね。またこれがどうしようもない不良男だったんだけど、実は社会人になった今でも親友(笑)。


 いや…

 親友というか… 兄貴分というかね…


 同レベルじゃないですね…。あっちが絶望的な程に上です。

 肝っ玉から何から何まで。


 でも私がバイクの免許を取るきっかけになった兄貴です。



 リョウさんと出会ったキッカケは大学ではなく、町でナンパした女絡み。
 
 ある女をナンパして一発やった後にその女の子が「借金が無茶苦茶あるの;;」みたいな事言うから事情を聞いたら、その借金は男のものだと言うのです。普通ならスルーして終わりなんですが、この女の子がまた美人でね。1日でサヨナラできないくらいの女の子だったので、私も泥沼にハマッていったわけです。


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 泥沼っていうのは要はその子をその男から奪回するということ。その子が会う度にその男と縁を切りたいような事を言うからほっとけなくなったんですよ。

 つまりそんな借金バカには見切りをつけて貰ってね。「そいつの所に行って話してやるから俺とつきあえよ」と言いたかったわけです。


 チズエさんはもう絶望的だったし、チズエさん以外では東京にきた中で一番いい女だったので「ついに、つきあう女性を見つけた!!」的な感じだったんです。

 
 情けない。「俺にはチズエさんしかいねぇ」「チズエさん意外とはつきあわねえ」とか周りに言っておきながらいきなりこんな事になってしまって…。周りの友達からも「やっぱりな~」、「な?財前はそんな程度だから」みたいな感じで責められましたが


 しょうがないじゃないか。だって僕…大学じゃストーカー扱いだし…。



 =====○)д`);.・;゛;ブッ


 だいたいおまえらはストーカーとか呼ばれたことないからそう言えるんだよ。


 
 ホント若気の至りって奴ですよ。ナンパした女に惚れてその彼氏から奪おうとするとかね…今思うともの凄く恥ずかしいです…。

 
 しかし東京は広かった。いや世の中は広かったと言うべきか。この行為がきっかけで私は自分の甘さを痛感することになります。ちょっと話ができすぎてたのでこの時点で怪しむべきだった。

 女は私と彼氏どっちにするかで揺れていたようにも見えたんですが、信じることにしました。でもこのまま二股ではニッチもサッチも行きません。二人だけでの結論は簡単には出ない。もうこれは会うしかない。

 その男と…。


 というわけで会いに行ったわけですね。彼氏はチーマー(今は死語。当時での意味はオシャレな都会不良?だったかな)、そして恐い人だと聞いていたのでできれば会いたくはなかったのですが、恋に落ちた男は変なパワーが出るのです。

 まあ今考えると明らかに無謀でバカな行為ですが、血気盛んで恐い者知らずの年頃だったのできたのだと思います。

 もっとも会うと言ってもそんな喧嘩腰ではなく、とりあえず3人で食事をしてね。女が「私にあんまりお金とか無理な要求とかするなら別れてこの人とつきあうからね」的な事を言うって事だった。後は状況によってアドリブで。

 話し合いでケリをつける。


 …



 そして…当日。



 待ち合わせ場所は甲州街道沿いにある居酒屋の前に決まっていた。

 
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 私と女は20分前くらいには現地に到着し、男の来るのを待っていた。 なんか場所が怪しい所でビビリまくりな私でしたがなんとかこらえました。なんていうか…店の周りにいる男が恐いんですよ。しかもなんかオヤジっぽい…。恐い系の…ていうかあっち系の…

 看板にはメルヘンチックな事書いてるけど…

 
 見た目は全然ファミリー居酒屋って感じじゃない…。
 

 これ…ヤクの売買とかやってんじゃないの? 


 …ちょっち不安になってきた…。これはただ事ではない。軽はずみだったかもしれない…。たまらなくなって女に聞く。


財前「こ…ここで間違いないよね…」

女「うん」

財前「あの… ちょっと聞くけど彼氏って何歳?」

女「ごめん。ハッキリした年は知らない」

財前「…」

財前「ここでよく彼氏と会うの?」

女「…」

財前「…。 え~と…。この居酒屋って…普通の居酒屋だよね?」

女「そうだよ」
 
財前「…」


 なんか女が緊張して無口になってる。これにつられてこっちもさらに不安になる。正直帰りたくなってきた。…しかしここまで来たら後には引けない。


女「あ。来た」

財前「げ!? マジで!?」


 ビクビク…。


 彼氏がやってきたって… あれか?

 彼氏はバイクでやってきた。足を前に投げ出すタイプのアメリカンバイク。

 なんか着てる服が凄い。

 白の革ジャンにジーパン。しかもそんな色のジーパンどこで売ってるの?って感じのオールドジーンズ。ガタイがいい上にスタイルもいいので凄く似合ってる。


財前「ちょ… あ…あの人?」

女「うん」


 正直言って文章では書き表せない程の衝撃を受けた。というより今までお話したことのないタイプの人種というか… 一言で言えばアニキって感じ。

 女には悪いが私は瞬間的に悟ってしまった。




 この人には敵わないと(笑)。




 無理だ。次元が違うって。


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 雰囲気が恐すぎるとかそういうのもあるんだけど、なんていうか… もうオーラからしてその辺の奴とは全然違う。一般人では出ないってこんなオーラ。私のような青二才が敵うわけがない。

 だ…誰よこの人…
 
 何してる人なの?


 こんなことを思わされる時点で…





 もう勝負はついていた(笑)。 




 「ああ…終わったわ…来るんじゃなかった」と半ば泣きかけの私の頭は既に「この修羅場をどう穏便に切り抜けるか」という事しか考えないようになっていた。これは危険すぎる。

 感じる。この人を怒らせたらただ事ではすまない。


 直感的にそう感じた。「逃げの一手」を選択しつづけるしかない。



 いやこれをチキンとか弱虫とかそういう風に言うのはやめてくれ。

 みんなそうなるから。

 こんな人に刃向かうのはドラマ見過ぎた大馬鹿野郎か、人を見る目のない間抜けだけである。とても話が通じるような相手じゃない(笑)。とりあえず敬語で話そう…生意気なことを言うのはやめよう…と心に決めるのは当然なのである。


 そうしてるうちに男がバイクから降りた。
 

 しかしまあ近くで見てもこの人格好いい。間違いなく私が女なら惚れてる。


 乗ってるバイクがまず渋すぎるし、マフラーから出る音は大きいものの、暴走族のようなイヤミな音の感じではない。実にスマートだ。

 ヘルメットを取って全貌が明らかになった顔はイケメンとまでは行かないないけれど、その辺の小僧では無理な顔立ちというか… 味わい深いというか… 引き込まれるというか…そういう顔。  
 器が違う…。

 そして…男はこっちをちょっと見てそのまま居酒屋に入って行った。女がそれについて居酒屋に入る。私もそれを追った。
 
 い…いよいよ…

 3人が同じ席についた。当然私は恐くて何も切り出せない。というより同じ席に座ってるだけで恐いし、居酒屋の周りの人間も恐いので警戒しきり。

 でもバイクの彼は無言でタバコ吸ってるだけ。 

 しばらく無言地獄が続いた。誰も動かない。


 そんな中…


 女が空気を察知してまずは話し出す。


女「ねぇ。私の事どう思ってるの?連絡もないし。このままだとリョウとは別れるからね」

リョウ「なんで?」

財前「 (ほほぅ… リョウと言うのか…) 」

女「私は本気なの。あなたの気持ちが知りたい」

リョウ「さあな」

女「なによ!!それ。 いい加減にしてよね。マジで別れるよ?」

リョウ「勝手にしろよ」 

女「ちょっとリョウ君勝手すぎない?」

リョウ「おまえも勝手にしろ」

財前「 (ちょ…) 」



 …

 何この人発言が凄すぎる(笑)。この娘凄いかわいいのになぁ…。よくこんな態度が取れるよな…。女に不自由してないんだろうなあ…。


女「もういい!! 帰る」

財前「 (あれ?なんか様子が変だな…帰るってまだ俺は何も…)」

リョウ「酒はいいのか?」

女「酒なんていらないわよ!! じゃあ私この人とつきあうからね? いいのね」

リョウ「ああ」

女「もういいわ。 2度と連絡しないから!!」

リョウ「そうか」



 そう言って女は居酒屋を飛び出し帰っていった。


 取り残された私…
 

財前「 (え?え?なんで帰るの? ちょ…待ってって… 僕はどうすれば?)」

リョウ「…」

財前「…」








リョウ「…」

財前「…」





 ちょ…

 何この非常に気まずい空気…。これ…ど…どうしろと…。リョウという男は相変わらずタバコを吸っているだけ…。

 ていうか俺…全然いる意味なかったじゃん…。なんだよあの女…。

 …

 こ…これって

 
 もしかして…ここは私から話すしかないのだろうか?


 「弱い者は強い者の周りを自然とぐるぐる回る」って言うし…。この場合だと私が弱者だからそうしないといけないんだろうな…。

 
 よし…何か話しかけないと…。  とりあえず帰りたいけど…それ言う前に何か一言でも…


 う~むそうは言っても…一体何て言えば…。 





 候補 

 ①「え~と。では僕もこの辺で…」と今の内に逃げる 

  まあそりゃ帰りたいけど…いきなりこれはちょっと言えないな…却下。


 
 ②「あの… 彼女帰っちゃいましたね?」と共通の話題を切り出す。

  う~む。つかみとしてはOKだが… そもそも恋人だったんだろうかこの二人は?二人のやりとりを見るとどうも違うような…。


 ③「あ…私○●という者です。いや~実はですね。何も聞かないでただついてきただけなんですが何がどうなってるんですか?」とこの件については知らなかったフリをする。





 
 ふむ…。③が一番無難なような気がする。これでいくかな…。


 というよりチキンなのはしょうがないんだ。ホント見た目恐いんだって。この人。得体が知れないというか何というか…。平常心じゃ話かけるの無理だろ。

 とにかく逃げの一手しかねえんだよ。


 危ないと本能的に感じるんだから。マジ関わらない方がいいタイプの人間に見えるんだから。

  
 しょうがないんだ。うん。これはしょうがないんだ。僕のような青二才がくる場所じゃなかったんだ。


 しかしこれは緊張するなぁ…。チズエさんの時と同じくらいの感じ…。 まったく…。なんで私はこんなシチュエーションばっかに遭遇するんだ。ここの所…修羅場ばっかじゃないか。



 よ…よし… 勇気を出して… ③を言おう


 …



財前「え…と」




 
 とその時だった。 なんと向こうから…





























リョウ「なぁ…」







財前「!?」



 
財前「は…はいはい?なんでしょう?」




リョウ「悪いな」

財前「は…」

リョウ「酒でも奢るわ」

財前「え…」


 
 ちょ…待て。待て待て。どういう意味…?なんだこの展開は。 なぜ向こうがこっちに「悪いな」とか「酒でも奢るわ」とか言うの? 


 この時…私は相手に何も言い返せなかった。


 想定外の言葉が相手から出たので返しようがなかったのである。しかも相手を怒らせないように言葉を選んで会話する必要があるっていう意識もあるので…いつものようにそうポンポンとは言葉が浮かばないというか出てこないというか…


 そして… リョウという男がまた言葉を発する



リョウ「あの女は諦めた方がいいよ」

財前「え? あ。 は… はい。それはもちろん! す…すいませんでした;;」

リョウ「アンタ、アイツとつきあう気?」

財前「と…とととととんでもない;;」

リョウ「は? そうなの?」

財前「もちろんです」

リョウ「じゃあアンタ何しにここに来たわけ?」

財前「え? え~とそれはですね… え~と… その… あの」







 ちょ~~~~~ 待ってて;; いちいち鋭く痛いところエグルなこの人は;;


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 ヤバイヤバイヤバイ。 


 何なんだこの想定外すぎる展開は。 「奢るわ」と言ったり「あの女は諦めろ」とすごんだり…一体この人はどうなってんだ;;

 どう言い返せばいいの?


 ああ。もう…マジで帰りたい。来るんじゃなかった…;; なんでアイツ先帰るんだよ…。

 いや待て待て。ここはだな。まずはもう「私はあなたの彼女を奪う存在ではありません」ということをまず宣言しておこう…。そう思って貰わないと困る。そうじゃないと身の危険が…。





財前「あ…私はちょっと話を聞きにきただけでして…。ハイ。アイさん(←さっきのナンパ女)とも知り合い程度の関係でして…ハイ。ただついてきただけです」

リョウ「ん… アイツ、アンタとつきあいたいとかなんとか言ってなかったか?」

財前「!?」






 し… しまったぁぁあ。 そう言えば… アイツ…


女「じゃあ私この人とつきあうからね? いいのね」

 
 なんて言ってたんだっけ?  まったく余計な事をいいやがって。待て…待て… 考えろ。 




 どうする~♪ アイフル?  




リョウ「まあアンタがアイツとつきあおうがどうしようが俺の知ったことじゃないけど」

財前「へ…!?」


 
 ぐ… これは探りだな?相手は私にさぐりを入れてるんだ。ここでつきあうなんて言ったら半殺しにされるぞ…。




財前「いえいえ。つきあいませんよ;; え~と…。アイさんと喧嘩でもなされたんですか?」

リョウ「まあほら。飲めよ」


 そう言ってリョウさんが私のグラスにやってきたビールをつぐ。


財前「あ…ああ;; も…申し訳ありません。」


 こうなるとつぎ返すのが礼儀なので、今度はこちらがつごうとしたが、リョウさんは私のグラスについだ瞬間に自分のグラスにビールを注いだのでタイミングを逃してしまう…。

 


財前「あ…」

リョウ「君何歳?」

財前「!? え?  あ…ああ。 私は19です」

リョウ「はは。俺と2つしか変わらないじゃん。」

財前「…」













































 な…な…何 ぃぃぃぃぃい!? 



















 ちょ…ちょっと待て…私と2つしか年が変わらないって…  21歳!?



 21歳っておま…



































老けすぎだろ(笑)。 



















 と心の中で突っ込むものの


財前「は…はは…。 そ…そうですか。2つしか変わらないんですね」


 と言う私。でもちょっと年が近いので安心した…。


 その後目立った会話もない気まずい雰囲気時が続き…



リョウ「じゃあそろそろ帰るわ。

財前「あ…はい」

 

 よっしゃ チャーンス。私も帰ろう。




 …しかし…




リョウ「なぁアンタ家どこ?」

財前「え… あ… 世田谷区経堂に住んでいます」

リョウ「経堂?」

財前「あ…いや…」




 ちょ… し…しまったあぁぁぁぁぁぁ。ついホントの住所を言ってしまった。ヤバイ;;家がバレたらやばい。訂正だ訂正。


財前「い…いや実はですね」



 しかし…





リョウ「バイクで送ってやるよ」

財前「えぇ!? い…いいですいいです。大丈夫です。1人で帰ります」

リョウ「遠慮するな」

財前「は…はぁ… しかし」


 ちょ… おまい、来るなってマジで;;  これは理由づけしてなんとか阻止するしかない!! ここが正念場だぞ。財前。





 …しかし…



リョウ「だって」

財前「!?」

リョウ「俺も経堂だから」

財前「…ぇ」






























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 リョウ「俺も経堂だから」






























 工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工










 待て待て待て待て待て!! なんだこの危険な状況は!! ちょ… こんな危険人物に家を知られるだけでも地獄なのに、この男も世田谷区経堂に住んでるだと!!



 なぜだ~~~~~~~~;;


 なんなんだこの運の悪さは。


 呪われてるって絶対;;



 なぜこんなことになるんだあぁぁぁぁぁぁ;;



 こんな人に家を知られたらもう大学生活無茶苦茶じゃねえか。


 100万の借金があるんだろ? 絶対俺…肩代わりさせられるよ;;


 なんとか…言い訳を… と考えてる隙に




リョウ「ほら」


 とヘルメットを投げられた。


財前「!?」


 それを反射的にキャッチしてしまう私。

 ちょ…なんですか?このスカスカの半ヘルは…。 

 防御力 … 0なんですが


 事故ったら頭割れて確実に即死 orz



 そしてバイクまで連れて行かれ…



リョウ「そこに足をかけろ」

財前「え!?」

リョウ「さっさとしろよ」

財前「は、はい…」 

 

 言っておくがこれは



 ①明かな飲酒運転。

 ②絶対違反してる削りまくりのヘルメット。

 ③目立ちまくりの爆音マフラー。

 

 


 突っ込みどころ満載の上、犯罪行為に等しいんだけども… 警察に捕まったらどうするのよ。

 
 嫌だ~ 帰りたい~ コイツまじ… 俺一人で帰るって言わないと…


 って


 言えないから。おまいら。言えるはずがないから。 誓ってもイイ。


 この状況で


 「飲酒運転は犯罪です」(`・ω・´)シャキーン



 なんて言える奴はいねえから。無理無理。マジでリョウさんは恐すぎるんだから。穏便に行くのが世渡りってもんなんだよ。

 世の中には絶対敵わないお人っていうのがいるんだ…。

 地球は自分を中心に回ってないんだ…。理解しろ。
 



 バイーン バイーン ドドドド  とリョウさんはエンジンをふかし、私は後ろの荷台に跨る…。

 



リョウ「おい。そこじゃなくて俺の腰を握れ。吹っ飛ぶよ?」

財前「えぇ!?」


 ちょ…こいつまさかこの状況で危ない運転しようとしてるんじゃないだろうな? 

 自重しろよ? 警察捕まったらアンタ終わりだぞ? 


 …僕もだけど。


リョウ「行くぞ」 
 
財前「…」


 グオーンって感じでありえない角度で曲がって道路に割り込むバイク。

 もう危ないなんてもんじゃない;;

 暴走…て感じで甲州街道を走ってたのだと思うのですが、ハッキリ言ってカオス。


 バイク乗ったのも久しぶりだったし恐すぎたのでよくわからない。ていうか危ないなんてもんじゃない。マジで死んだと思った。無茶苦茶すぎる。バイクの後ろがこんなに恐い物だとは思わなかった。

 それになんかリョウさんは意味ない?と思うほどカチャカチャカチャカチャ ギアチェンジしまくる。その度に襲われるエンジンブレーキのGが腹に悪い。

 しかもエンジンブレーキがきつすぎて減速の度に前に後ろにと車体がぶれるので捕まってるこっちとしては前に体重乗せればいいのか後ろに体重を乗せればいいのか全然掴めない(笑)。
 
 マジで落ちそうになったときもあった。

 ホント言われたとおり腰を掴んでなかったら吹っ飛んでたよ…これ…。

 掴むというかしがみつくというか(笑)。

 エンジンブレーキこんなに強烈にかけてエンジン大丈夫なの?

 それにブレーキするのが遅すぎる。「ちょ…当たるΣ(゚∀゚ノ)ノ」ってとこまでスピード引っ張って、いきなり5速→2速、さらに3速→2速みたいにギア落として急ブレーキするんだもん…この人…。 恐すぎるって…。やりすぎだって。


 だいたいスピードに対する免疫が凄すぎるよこの人。バイク乗りってみんなこうなのか?


 よく事故ってないよなあ…今まで と感心してまうほど。

 
 …

 実はこの時のこの感覚は何年も経った今でも鮮明に覚えてます。それほどこの時の体験は衝撃的なものだったんですね。

 当然ね。家まで送ってくれたので家も知られました。 


 それで


リョウ「また来るから」


 なんて感じで去っていきました。




 いや… もう来なくていいから…。


 …




 その後…


 リョウさん、恐れていたとおりこの後ね…やっぱり頻繁に私の家に遊びに来るようになる始末でした。それもいきなりなんです。

 いきなりドアを開けて


リョウ「行くぞ」



 で一方的に拉致(笑)。


 ホントにああ。もう俺は大学生活終わったなあ…。という感じでした。


 …が
 

 実は違ってました。

 ていうかリョウさんなんですが、見た目は恐ろしく、無口で怒ると手がつけられそうにない感じなんですけどね。

 家が近いということでつきあっていくうちにだんだんそれが薄れてきた。全然そういう行為しないし、怒ったことも一度もない。

 付き合っていく内に目立っていったのは中身は男として漢すぎて渋すぎるという事実だけ。


 なんか…ナンパ女に聞いてたような男とは違うんです。


 この人…実は悪い人じゃないんじゃないか?

 いつしかそう思うようになりました。

 もちろん欠点もあります。これもつきあう内にわかってきたんですが、女をモノのように扱うんですよ。性欲処理人形としか考えてないんです。これは直接聞いた訳じゃないけど絶対そうだった(笑)。
 
 これがあのナンパ女と揉めた原因なのは明白。

 それにこのクールな性格です。まったく必要な事をしゃべらないし、発する言葉も単語的な発言しかしない。しかも女とつきあう事にまったく興味はないらしく、ほとんどがヤリ捨て(笑)。

 ていうかこの人女の誘い方も無茶苦茶なんですよ。居酒屋で私に言った調子で、


リョウ「乗れ…」


 なんて一言でその日に会った女をそのままバイクでホテルに連れ込んじゃうんですから…。

 口説き文句その一言だけですよ? 

 あり得ない。

 そりゃまあ…格好いいから女もまんざらじゃないようだから問題にはならないんだけれども…。

 勘違いな男がやったら只のアホですよ。


 だいたい「乗れ」だけで女が落ちたら苦労はしない(笑)。真似できないわ。



  
 しかし、リョウさんが連れて行ってくれる所は新鮮な所ばっかだった。 
 
 まあいつ家に来るかわからないし、来たら来たで誘い方が酷いんですけどね…。バイクで爆音立てながらいきなり家の前にやってきていつもこういう感じでラチするんですよ…




リョウ「行くぞ」


 で相も変わらず拉致。こっちの予定関係なし。気持ちの準備もありゃしない。


 で連れて行かれたところはいつも派手な女とか危なそうな男とかが一杯いるクラブみたいな所でね…。おまえら普段どこにいるんだよ(笑)。みたいな感じの人達。


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 町じゃ見ないタイプの人ばっか…。
 
 当然私はその人達をまったく知らない場合が多いわけですが、いつもそこでリョウさんが私に一言


リョウ「財前」


 この一言だけだからね(笑)。これリョウさんが私に出す合図なんです。 

 意味わかりますか? 


 そりゃわからないでしょうね…。


 これを日本語に訳すとね。


 「おまえがしゃべって場を盛り上げろ。俺の紹介も忘れるなよ? 女がトークでガードとけた頃合いを見計らって俺はめぼしい女誘ってホテルにしゃれこむから」


 ていう意味なんですよ。無理すぎる注文。泣きかけだから;; マジで。

 知り合いがいないから無理だっつ~~の…。


 まあでもそんな事言ったら殴られるので…そこで私ががんばって場を盛り上げるわけです。大概が自虐ネタか自爆ネタ。だってそれしかない。


 知り合いがいない以上、はじめの掴みネタとして使えるのは自分ネタかリョウさんネタしかないわけだけど、

 リョウさんをネタにすると殺されるからそれは使えない;;


 それで場を盛り上げた後…。

 当然リョウさんは一言も発しないわけですが…


 リョウさんは100発100中に近い形で女を持って帰るからね。ほとんどしゃべらなくてですよ?もっとも…リョウさんの自己紹介から何から全部私が代行するんだけど(笑)。


 まあリョウさんはタイプ的にしゃべらない方が格好良く感じられるって自分でわかってたんだろうね。


 リョウさんが女とバイクでどこかに行くと私はリョウさんのバイクで来てたので当然帰りのバイクはない。私は歩いて電車で帰るか、クラブの女を捕まえてホテルに泊まって翌日帰るか

 の2択しかない。

 
 そりゃまあ… こういうところにいる女っていうのは… セクシーでノリの軽い子が多いから絶対ヤリタいと思える子がいるし、結構向こうも積極的だから美味しすぎるのは確かなんだけども…。 
 だってうまいことやればドサクサニ紛れてダンスするときとかにケツとか触れるんだからね…。そりゃこっちもムラムラくるし女も準備完了だっつーの。


 こんなことばっかりしてたから…

 絶対リョウさんとは同じ女で穴兄弟になってるだろうなぁ…(笑)。

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 何回かそういう事相手から聞いた事あったし。なんか複雑だよ…うん。

 
 ん?穴兄弟? これの意味はおまいらは知らなくていい。あんま体験するものじゃないと思う。



 しかし
 
 一楽木工時代の先輩といい、応援団といい、リョウさんといい… なぜか私はこういう人達と縁があるようですねぇ。


 まあ結局ね。あのナンパ女とリョウさんの関係はよくわからないままでしたが、この状況を見るとわかるでしょう?あの女がリョウさんに惚れてただけでリョウさん自体は全然気にしてなかった。多分このノリでリョウさんが一発やっただけ。しかしあの女はリョウさんを気に入っちゃった。

 なんとかリョウさんを自分のものにしたいと思った。

 そこに都合よく私が現れナンパされる。


 その後、私を当てつけにしてリョウさんに交際を迫った。


 これが多分真相。実際あれ以降あの女から連絡はなかったから。


 まあこんな真相をリョウさんに聞くのは愚問だし、こんなつまらん事に答えてくれるわけがないので聞かずじまいですけどね。初めて会ったとき下手にしゃべらなくて命拾いしたよ;;

 多くを語らなかったから気に入って貰えたのかな?

 対応としてはあれで良かったということだろう。いや…助かったと言うべきか。
 

 …


 さて、前置きが長くなりましたが、この事件が私がバイクの免許を取ることになった直接のきっかけです。もちろんね。これが引き金になっただけで、あの日以降、道路でバイクみたり、テレビみたり、雑誌みたりしても妙に意識するようになっちゃってね。

 昔はそんなことなかったんだけど。

 無性に欲しくなったんですよ。リョウさんと一緒にバイクで走ってみたかったというのもあったし。それに私もリョウさんみたいに引っかけた女をバイクでホテルまで一緒に行きたかった。


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 あの人の鬼畜っぷりは半端なかったからそこは反面教師だけど…。




 でもね。それとバイクは別。だいたい歩きだとそのままホテル行かなくちゃならない。実は歩いて行くのは凄く気まずい。

 入る前に合意がちゃんと必要だからだ。これは女性に考えるきっかけを与えることになってしまう。これは拒否権が発動される確率が上がるのだ。

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 歩きの場合は女性も自分の意志で自分の足で歩いてホテルに入るということを男にモロ示すことになるので女性としてはこれは恥ずかしい行為に当たる。


 バイクだとそのままホテルに入ればいいだけなので考える余裕がなく、そのままの雰囲気ですんなり持って行ける。「女性も自分は行きたくないけど…まあ…」という感じになり身を任せやすいのだ。あくまでも自分の真意は隠せる。

 それにバイクがあったら海岸線走ってホテル行ったり、途中で夜景見てから行ったりとかいろいろロマンチックな事もできる。

 まあそんな何よりもあのリョウさんの運転に貫禄を受けたのかもしれないけど、結局免許取得後もあんな運転は恐くて一回もできなかった…。


 あんな運転はスピードというものに対する免疫が生まれつきついてないと無理なんだろう。  
  




 …
 


 とこれは冬休み~3学期での話でしたがここまでの生活を振り返ってみて…

 
 まったく大学生らしい生活をしてないのがおわかりでしょうか?(笑)。


 完全に泥沼化してます。まあ引き金はチズエさんですけど…。 そしてリョウさんがトドメを刺した。

  
 
 ここで一度実家に帰って正月を過ごし、1週間くらいですぐに東京に帰宅。じゃないとリョウさんが寂しがるからね。あの人実は寂しがりやなんだよね。


 …コホン


 まあそんな事はいいでしょう…。


 年が明けて私はバイク免許取得に勤しむことになります。もちろんリョウさんの影響を強く受けてね。

 免許取得には25万円程度の資金が必要だったので、親に「車の免許取るから」てことでお金を借り、その金をバイク免許取得に当てた。 バイク免許取得など当然親が許してくれるはずもないからね。

 まあ車の免許はまだ必要ない。社会人までに取れば問題ナッシング。バイトした金で後で取ればいいんだからそんなのは。

 だがこのバイク免許取得にはある問題があった。


 それがギター部の問題である。 

 これは第2話にも書いたけど実は私は夏休み辺りにギターサークルに入っていた。入ってたと言っても所属していただけに過ぎず「チズエに夢中→リョウさんに夢中」コンボでギターサークルにはまったく顔を出してない。
 
 まあサークルだからそれでいいんだけれども。でもコンパとかがほとんどなくて真面目にギター弾くだけのサークルだったので私は行かなかった…というか面白くなかった。

 思い描いてたサークルってのはこんな所じゃない。

 なんて感じでスルーしてたら

 でチズエ事件が起きてサークル選ぶ期間がおわった。
 

 でもね。年が明けて1月くらいになるとギター部の方から友達を通じて催促が来るようになっていた。「部室に顔を出せ」「定期演奏会が近い。練習するから集まれ」なんて内容。

 ハッキリ言ってギターサークルなどに興味はない。コンパはないし、所属してる女もどうも…

 
 だってギターサークルに入った理由は


 ギター弾き語りできたら格好いいよなあ…。モテルよなぁ。ちょっと教えて貰おう

 
 その一点しかなかったのだ。

 もちろん何回か行ってギターの基礎は教えて貰ったけど、後は自分の独学でできるレベルだった。それと東京農大のギター部は特殊で「弾き語り」をするのが目的ではなく、合奏をするの目的。

 ギタークラシックをするのが目的の団体だったのである。


 弾き語りとかそういうノリでなくて、退屈なクラシックの名曲をギターのパートパートで役割を分けて合奏する。当然指揮者はいるが、ボーカルなどいない。

 簡単に言うとオーケストラをギターだけでやってしまおうという部だったのである。

 そしてそれを練習して年に一回の定期演奏会で発表する。
 
 発表するといってもお客さんとかはほとんどいない…。まあとどのつまり「俺たちは演奏会をやりとげたぜ!!感動だ!!」という自己満足に近い活動団体なのである。

 これはこれで素晴らしいことだとは思う。

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 しかし、私は少なくとも大学時代はこのタイプの人間ではなかった。 

 そんな自己満足をしてる時間は勿体なかった。高校時代の部活でそういうのは終わらせた。

 
 そもそも私の「ギター弾いてモテたい、サークル同士でコンパ一杯したい」という要望とこのギターサークルの活動がまったく一致してない。これでは活動に積極的に参加する理由がない。後は惚れるような女性がいなかったのも原因の一つではあるが…。


 しかしギター部の中では結構カップルも誕生してたみたいだった。


 こんなのはどうということはない。仲間内では「目的が一緒だと恋のアドレナリンが出やすい」という事実が科学的に証明されている。だがこれはほんのまやかしなのだ。

 実際これは活動団体が同じであればちょこちょこ探り合いをできるし「よしいける」というある程度の道筋ができやすい感じで告白が可能だ。
 
 こういう力を借りるのは年を取ってからでいい。見極めなければならない。


 こんなパンピーの恋人ごっこは大学生というなんでも経験できるやりたい放題の時期にするべきではないと判断していた。


 ナンパやリョウさんと色々な事をしていた私には面白いように同団体内でカップルが成立しているこの団体…。これが滑稽に写ってしょうがなかったのだ。

 当然話が合うはずもない。

 内輪で固まるなよと。東京なんだから。外に目を向ければそれこそいくらでも女なんているのに、たった数十人の集まりでカップルが次々誕生するとか… 

 私はそんな閉鎖的な考えの団体には興味がなかった。一部の者とは気が合ったので友達としてつきあっていたものの、大多数のギター部員とはまったくソリが合わなかったのは言うまでもない。

 どうせ大学時代を遊ぶならリョウさんといる方がはるかに刺激的だ。

 もっとも…赤髪の敬助も私と同じタイプだった。




 だいたいこれからはバイク免許取得もあって忙しい。そんな時に「定期演奏会の練習するから部室に顔を出せ」である。行くわけがないだろう(笑)。
 
 まあしかし、たまに家に遊びに来ている仲のいいギター部員が「まあ来いって。何事も経験だろ?人数いないんだよ」なんて頼むので一応顔を出すようにはしたが…
 
 実際行ってみると拷問に等しい件について!

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 ギター部を否定する気はないけれど、この自由な大学時代に真面目腐ってクラシック音楽を演奏するなど理解不能…。 友達なんかが「おまえがクラシックとかwwwウケルww」 なんて感じで練習中に冷やかしにきたりもしたが、そういう奴らもギター部員の真面目な姿を見ると、空気読め的雰囲気になり無言で私の下宿に帰って待機していた(笑)。

 もちろん当の私もこんなことをしてる自分自身に内心笑いながらも「一度乗りかかった船」ということで定期演奏会までは練習に行くことにした。ギター部仲間の頼みみたいなのもあったし…。

 もちろん2年生になったら即辞めるつもり。

 

 
 だがこの中途半端なやさしさが逆に波紋を残すことになった。

 ギター部で不真面目なバカは私を含め2名だった。


 赤髪ロン毛の敬助 と 財前ゴウ

 
 この赤髪ロン毛の敬助も不真面目なバカでまったく練習にはこなかったが、コイツにはバイトという最大の武器があり、「バイトだから」という理由づけを使えば練習をサボることが無難にできていた。

 だが私はサボる理由が「バイク免許教習」ということでどうしてもイメージが悪い。


 しかも練習中も赤髪敬助とエロイ事やらふざけた事ばかり言ってたので多分ギター部員からも嫌われていたと思う。みんなバリ真面目な子ばっかりだったからね(笑)。
   
 まあしょうがない。もともとギターはやりたかったがギタークラシック合奏などやる気がなかったし、義理で練習に出ていただけ。ずっと真面目に練習とか退屈すぎて死ねる。だいたいここは大学。まじめに部活動をするのは高校までで卒業してる。

 サークルってノリをわかってないな…ここは。

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 まあ

 「練習したら一応ギターがうまくなるしそのスキルは得ておこう」

 とは思っていたので一応練習には参加した。


 しかしあることを境に事態は一変する。

 ギター部というのは前述したようにオーケストラみたいなものなので指揮者が必要。通常であれば指揮者というのは外部から雇うか、先生がするものなのであるが、このギター部はなんと部員から指揮者を選ぶ。

 つまりこの時点では私たちは1年生なわけだけど、来年入学してくる1年生用の指揮者をこの時期に決めておくのである。もちろん皆ギターがしたくてここに入っている。(私と敬助は別として…)。誰も指揮者などしたくはない。

 ゆえにこれは投票により無理矢理決める事となった。


 投票結果は

 中井   13票
 鈴木   12票
 佐々木   7票
 相馬    3票
 財前     1票


 だった。

 明らかにおかしい票があるのがおわかりだろうか? そう。赤髪敬助がギャグで入れた私への1票である。

 まあ本来ならばネタとして笑ってすむこの投票結果だが、真面目集団にかかるととんでもない方向に事態が展開する。

 票の多かった中井君、鈴木さん、佐々木さんが揃って指揮者を辞退。理由は「2年生からは学業に集中する」という事だった。大学で学業に集中するとかギャグでしかないんだが(笑)。
 
 相馬君は「バイトがあるので指揮者みたいなのは無理」とのことで辞退。

 となると必然的に私に矛先が向く。当然私も「指揮者とか興味ないので辞退する」ということで辞退。

 こうなると指揮者がいつまでたっても決まらないわけで…会は長引いたが誰も立候補しないし、投票された者はかたくなに指揮者になることを拒否した。

 しかしこの真面目集団。本当に大馬鹿である。なんとある者が黒板に指揮者辞退の理由を書き始めた。

 こういうふうに


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 指揮者投票者 辞退理由

 中井   学業に専念
 鈴木   学業に専念
 佐々木  学業に専念
 相馬   バイトに専念
 財前   指揮者に興味ない




 まったく真面目はこれだから困る。

 おかしすぎる。私は抜いて考えなくては駄目だろう。私への1票は敬助のギャグなんだって。なんでそんなこともわからないのか。融通がきかなすぎるよ。堅物は。

 しかもあろうことか、会はそのうちに

 「財前君の理由が一番甘いよね」という雰囲気になっていった。


 それに誰もやりたくない指揮者だ。皆貧乏くじを押しつけようと理由付けに必死である。まあ私も空気読め的雰囲気が嫌だったので。

財前「練習には来ない、本番だけ適当に指揮棒振るだけでいいというのならやっててもいい」

 と発言。この発言がきっかけで結局来年の指揮者は私に決まった。

 しかしここを覚えておいて欲しい。私はちゃんとこうやって事前に「条件付きなら」と言っているのである。もちろん2年生の時にまったく練習に行かず、指揮者もやる気がなかった私は結果的にギター部を辞めることになるんだけれども、その時散々文句言われたからね。

 責任感がないとか
 酷いとか 

 
 真面目集団は「本当に練習にも来ないし、本番だけ指揮棒を振る」なんて事は夢にも思わなかったのだろう。財前君もいろいろ言ってるけど任せられた以上は責任を持ってやるだろう。

 こんな甘い考えだったに違いない。






 フッ… 甘いよ(笑)。





 ここは大学。真面目に自己満足活動などやるわけなかろうが…クックック…


 もちろん私は定期演奏後、公言通り本当に練習にも行かず、バイクの教習所とリョウくんに連れられて前述したクラブ遊びを繰り返しすばかりだった。 そしてこの半年後、あまりの練習しなさっぷりに部員がキレて私はギター部を追放される。

 …と同時に赤髪敬助も居場所を失い辞めた(笑)。


 そりゃそうである。このタイプの人間は私とアイツしかいなかったんだから。

 敬助とはこの後も飲み仲間としてずっとつきあいはあったけどね。


 今思っても酷いことをしたかな?と罪悪感はあるけど、この時は大学時代。私は真面目にいろいろ責任感を持ってやるのは社会に出てからで充分…との認識だったため、まあ見解の相違で済むレベルだろう。
 
 その後ギター部OBが私の下宿にまで説教しに来たが、公言を盾に完全スルー。


 「俺は練習にも来ないで指揮棒振るだけでいいんだな?とはじめに言ったはずだ」


 当時発した公言はこの時かなり効いた。私は本当にこれを実行したに過ぎないのだ。


 
 でもこういう事をしたバカは農大ギター部始まって以来の事件だと言ってたね(笑)。
 
 
 しょうがないじゃないか。まだ人間ができてなかったんだから。




 さて… ギター部の話はこれで終わり。バイク教習に話を戻します 

 バイク教習に関してはかなり真面目だった。当時大学生の身だったので自転車も車も持ってなかった。 それに電車が私は嫌いだったこともあり、教習所までは歩いて通った。 片道7キロ。往復14キロである。

 普通なら考えられない距離だが「バイクに乗れる」という目標がある私には些細な問題だった。

 1時間近くかけて教習所まで通った。

 …


 ちなみにですが、ここで教習を受けているときにミスターチルドレンの桜井和寿さんに会ってます。当時ミスターチルドレンは休業?かなんかの時期だったみたいで、その期間を利用して桜井さんはバイクの免許を取ろうとしてたみたい。

 確か… ヘイ!ヘイ!ヘイ!で復帰したときにこれを言ってた。
 

 あそこの教習所に来てたって事は桜井さんの家ってあの辺なのかなぁ…。東京に来て初めて会った有名人だけにそりゃあ興奮したことを覚えています。

 私だけ…ね。 なんか東京の人って有名人が来てもあんまり反応しないというか…(慣れてるから?) ちょっと拍子抜けしましたよ。 一生の不覚でサインは貰ってないから証拠はないんですけど、あのときサイン貰っておけば良かったなあと未だに思ってしまいます(笑)。

 
 そして


 バイク教習は無事に終わり、ついに中型自動二輪免許を取得。この時のうれしさって言ったらなかったね。リョウさんとバイクで一緒に走れるんだから。

 会って以来ずっと憧れてた存在だけにようやく同じ土俵に立てた感じだった。

 
 こうなると次に必要なのはバイク。

 当然自分で買わなければならない。

 アメリカンバイクは当然で、格好良さからするとHONDAのスティードかYAMAHAのドラックスターの2択。


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 値段は保険入れて約50万円。これを工面する必要があった。

 当然ローンでないと買えない。

 学生でも大丈夫か? と聞いてみると

 店側の答えは「頭金で15万円入れて貰えればあとは月々4万円のローンで結構です」ということだった。

 うむ…。これならバイトすれば今すぐ買えない金額じゃない。


 しかしここで一つの疑問がうかびあがった。
 
   
 ん?待てよ。 そういえばリョウさん…でかいバイク持ってるし改造もしてるけどあれって…どうやって買ったんだろう?バイトしてるようには見えないけど…。

 
 リョウさんに聞いてみたが、何てことはない。彼の借金100万円というのはバイクの車体と改造代の借金だった。

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 なんか…かわいい。

 やっぱりこの人…根っからの悪い人じゃないな(笑)。


 
 彼は今や私にチズエという存在を忘れさせてくれる唯一無二の存在だった。それほど魅力的な人物だったし、イメージが崩れるような事は絶対にしなかった。

 それに

 寝た女の数は数え切れないだろうけど、一度寝た女の名前は絶対に忘れないという気配りのある人だった。
 
 やってることはとても褒められたもんじゃないけど、間違いなく将来大物になるな…という感じはヒシヒシと感じてましたね…。



















 次回   社会人魂















今日の関連曲


Livin la vida loca [Ricky Martin]





 





 PS 

 後、みなさんわかってると思いまけど、私が凄いとか格好いいとか言うのはおかしいですよ?今日の記事と前回の記事を要約するとホラ。


 要は女と揉めて憧れた人に会ってバイク免許取った


 これだけなんですから(笑)。やってることは全然凄くないです。ほらリョウさんにはチキンでしたし。

 それに普通の人ならチズエさんとつきあってストーカーとも呼ばれず健全な大学生活を送っていたわけです。こういうのが格好いいのです。

 私は駄目だからこうなったのです。


 まあ…どっちが自分の人生にとって良かったかは別にしてね。

 自分としてはストーカーで良かったかなと。色々できたし。


 所詮大学生のやってたことです。 ただの若気の至りですよ。 

 でも学生の皆さんには言っておきます。弾けるときに弾けとかないと社会人になるとそうは行きませんよ…。
 
 あと表現が親子ネットに引っかかってる件について!…ですがこれはもうしょうがないんですよ…。こうなっちゃうんですよ実体験書くと;; でもエロ度は週間ジャンプレベルは維持できてるはずなんだけど。




                                             素材 橘光博website 
                                                  防腐剤
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