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January February March April May June July August September October November December
2015(Mon) 03/16

高校時代回想1  …  一楽木工(25)

財前History … Comments(25)

 この記事は管理人の学生時代を赤裸々に綴った大学時代の回想記です。


defined
09/10/30 大学時代回想21 3年後に明かされた真実 (コメント --)
09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)









 
 
 これはよく酒の場などで話でする。



 私の大学時代の実話です。(多少尾ひれ)



 一部の話はリア友なんかは耳にタコができる程聞いてるかな
  



 …


 …



 長くなると思います。





 おそらく1話では終わりません。



 書く方も覚悟しなきゃいけません。








 回想記1



 …
 

 


 今までの私の経緯ですが

 
 私が女性を意識し始めたのは幼稚園から。昨日書いた鉄棒の娘ですね。その頃は「つき合う」という事自体を知らないので「好き」この感情しかなかったですね。幼稚園で一緒にいれればそれでよかった。向かい合って給食食べたり、一緒に帰ったりするだけです。

 小学生→中学生までそんな感じでしたね。「つき合う」という意味がわからなかった。

 「好き」

 と言って

 「私も」

 と返事を返されたらうれしい…そんな程度です。一緒に帰る、一緒に昼食べる。それ以上はないです。

 これが大きく変わったのは高校生からでした。

 この頃はもう周りの友達はかなり女性を意識してましたね。中学生の頃にはまったくわからなかった「つき合う」という言葉を一部のマセた奴は当たり前に理解してた。中には高校1年で既に彼女がいた奴もいました。

 私の中学は恋愛に遅れていたんでしょうね。そんな話ほとんど聞かなかったし、男は坊主という古い体質でしたから…。

 他の中学校はおそらく恋愛については進んでいたのでしょう。茶髪とかも居ましたしね。そして高校ともなると学区外の人が集結しますから、そこで出身中学によって入学した時点で大分差ができてしまっていたのです。例外なく私と同じ中学に行ってた奴は出遅れてた。
 
 モテる奴は早い段階で女性を意識していた層でした。

 私もものすごく遅れてましたね…。サーカーとか野球すればいいのに、意味もわからず「柔道部」なんていう男の巣窟みたいな部活に入ってしまいました…。進学校でしたので大学を意識しての勉強も大変。細かいことを考えている余裕がありません。

 それでも好きな女性はできましたが、女性に告白しても連戦連敗でした。そりゃそうです。何の作戦もなくアプローチの仕方は小学生や中学生のまま。幼稚すぎです。

 今思うと女性を意識した行動、改造制服(短ラン、ブーツカット)等をはいて花形部活に入ってフェロモンアピールしてる奴に汗くさい部活の私が勝てるわけがなかった…。

 女性にフラレ続けた私は「どうせ俺なんて…」と次第に柔道に打ち込むようになっていきます。筋トレ、初段(黒帯)取得、一本背負いの練習とかね。みんなを柔道場に集めて斉藤という奴とプロレスを何回か催して、先生に怒られたときもありました。

 こんなことしてる奴がモテるわけありません(笑)。筋トレと技の鍛錬ばかりしてましたから…。女性を次第に意識することも減っていきました。その当時はそれが楽しく思っていました。女というものから逃げていたのかもしれません。

 しかし高2になると転機が訪れます。柔道部?がよかったのか、特に意味はなかったのか、春休みの間に身長が信じられないほど伸びました。この時25㎝くらい伸びて183㎝になった。
 
 そして時を同じくして何人かの女性に告白されるという事件も発生しました。…しかし高1のモテない時期を体験して完全に女性恐怖症になっていた私は

「はぁ?俺の恋人は柔道だ」

 という感じで既に性格がひねくれてしまっており(もうね…アホかと…_| ̄|○)

 モテもしないのに突っ張ってましたねえ。背が伸びたのが急すぎたで、周りが私を見る目は変わったのかもしれませんが、自分で自分がまだ理解できてなかったのです。心は成長していないし、まだ精神年齢は中学生のままでした。

 しかも高校2年生の頃は斉●、仲●、三●、森●、島●などといった悪友が同じクラスに来てしまい、毎日が刺激的すぎて女性どころではなかった。

 もう無茶苦茶ですよ。ゲーセンでいきなり殴り合いのケンカ始めたり、友達同士でプロレスして泡吹くまで行ったり…酒飲んで謹慎になったり…。 …あとは言えません_| ̄|○。あやうく死にそうになった時もありました。

 
 まあこの時期があったから今があるとも言えますが…。


 背が伸びたことによって柔道にも影響が出てきます。体重はあまり変わらないのに背だけが伸びているので今までかけやすかった技が使いにくくなってる…。組み手がどうもしっくりこないのです。かなり弱くなりました。重心が上がってしまい足払いですぐ転んでました。まだ背が伸びた骨が完全にくっついてなかったのかな?

 ゆえに背が高い者が使う技を覚える必要が出てきてしまい、一本背負い、背負い投げは捨てました。

 去年1年間は何をしてたんだ(笑)。という感じでした。

 一本背負いから払い腰や内股へと切り替える必要があったのです。しかしプロレスが得意だったので寝技には問題はなかったのが幸いでした。とにかく覆い被さるように相手と同時にこけて、寝技で仕留める。こんな勝ち方ばっかりでした。もうすでに柔道ではありません(笑)。まあとどのつまり私は柔道があまり好きではなくプロレスが好きだったわけです。


 そして高3になるとまた状況が変わります。高3のクラス分けで悪友がチリジリになり、なんとも因果なもので今度は逆に頭のいい奴がクラスに結集してしまう。

 学年での成績は当然変わりませんが、クラスの成績では後ろから数える方が早かった(笑)。クラス順位が信じられないほど下がりました。

 ちょ…国立大学目指す奴ばかりでレベル高すぎ。とてもではないですが、バカな事なんてできない。休憩時間に予習復習は当たり前。そんなクラスでした。息苦しかったです…。

 当然…

 「ヤバイ…なんでみんなこんなに頭いいんだ…」という危機感で今度は勉強に打ち込むことになります。

 他の人と同じ事をしても成績は変わらない…ということで、東進衛生予備校という塾に行きだしました。これは衛星中継で東京の有名な塾の講師に授業をして貰えるということで当時としてはかなり画期的なシステム。同じ授業を見返せる復習ビデオ学習もありましたので、かなり効果的でした。



 「机の下に氷を置いて眠くなったら足を入れろ」



 今でも思い出す勉強必勝法の言葉です。東京の塾の先生のこの言葉で眠気に勝つ勉強の仕方をマスターしました。

 なにせ塾から帰って家で勉強…。夏休みも同じ事の繰り返し…。そりゃあ眠くなります。氷に足を突っ込んで勉強してました。

 それでもクラス内の順位はあがりませんでしたね…。一体どういう奴らなんでしょうか?

 もちろん学年成績と偏差値は無茶苦茶上がりましたが、どうも納得がいかない。これだけ勉強してもクラスでは順位が変わらないとか…このクラスは正直おかしい。

 考えても見てください。氷に足を突っ込んで勉強したのに、クラスでの順位が変わらないということは、クラスの人たちはそれ以上勉強しているということです。

 「この野郎共…真面目に勉強ばっかしやがって…必ずひれ伏させてやる」

 
 その想いで勉強を続けていました。友達が言うにはもう血気迫る表情だったそうです(笑)。そんな姿が目に止まったのか、先生から一つの提案を聞きます。


先生「おい。おまえ最近がんばってるな。推薦入試というのを受けてみないか?」

財前「推薦入試?なんですか?それは?」


先生「ああ。学校がお前を推薦して推薦用の試験を受けるんだ。テストと小論文と面接がある」

財前「ほぅ…」

先生「おまえ農業系の大学がいいんだろ?東京農業大学なんてどうだ?推薦枠あるぞ」

財前「そこはちょっと厳しいです…。偏差値64とかですよ…」


先生「だから推薦で行くんだよ」


財前「いやしかし…」


先生「おまえ多分小論文と面接は偏差値64越えると思うぞ(笑)。今の成績ならテストも運がよければなんとか…。それにこのクラスはみんな国立大学目指してるから推薦枠使う奴いないんだよ」

財前「そうなんですか…」

先生「まあ、おまえはすっぺらこっぺらいつも口だけは達者だからな。面接はいけるだろ。小論文も大丈夫なはずだ。問題は…テストと謹慎になってる事だが…」

財前「せ…先生。そこをなんとか…謹慎は謹慎はモミ消してくだされ_| ̄|○」

先生「う~む…。まあ最近は真面目にやってるしな。じゃあ推薦状かいといてやるよ。ついでに名城大学も推薦入試受けとくか?」

財前「オオオオオオオ」

先生「だが、もし合格しても何も言うなよ。国立目指している他の学生は2月が試験なんだからそのへんは配慮しろ」

財前「はい」


 この日から数えて…推薦入試まであと2週間。

 そこから頭を切りかえる必要がありました。科目の勉強は中止し、推薦入試の面接と小論文の勉強を始めました。これを2週間勉強し、テストの方は今まで勉強した財産でなんとかすることにしました。

 科目勉強は2週間あがいてもたいして意味ない。

 それならば学校では習わなかった面接と小論文を勉強したことが得策だと感じたのです。まずは生物部の先生に教えを請い、面接試験と小論文に備え、万全の体制で受験準備を整えます。何十枚小論文を書いたことか…。


 これに落ちれば後がない…。

 
 そして…

 
 飛行機でいよいよ東京と名古屋へ。受験です。 

 
 世田谷区。浜田雅功の住んでいるとこだ(・∀・)



 …まあそんなことはどうでもいいんですが…
 

 推薦入試の小論文の問題は


 現在の農業の発展と政治… 以下略  についてでした

 
 まあこんなのは楽勝です。小論文とかは元々問題なかったですからね。

 次のテストは

 数2、Bとか無理…。

 _| ̄|○で終了… 平均70点くらいでしょうか?よくわかりません。


 そして面接へ。

 練習したときに、もうこれは才能の世界だと感じてました。マニュアルが一応あるんですが、それでは高得点は取れない。

 面接は並び形式で大広間で行っていました。

 他の学生がどういう質問されてどういう風に答えてるか丸聞こえです。みんな普通の事ばかり言ってます。真面目すぎる。これはテストじゃない。人生が試されてるのに…。

 みんな本に書いてあるような答えばっか言ってる。

 違う。面接というのは試験官の質問に答えればいいというものではない。興味をひかせこちらの世界に引き込まないと印象になんて残らない。マニュアル通りとかこいつら終わったな…。受験勉強のしすぎだバカ共が。テストでは不覚をとったが、面接で負けられない。

 フッ しかしみんな青いな。

 第一、高1、高2、高3と激闘の時代を歩んで来た私が普通の事言うわけ無いだろう。事前に花の名前や農業のイロハは勉強ずみだ…。あとはそっち方面の話題に無理矢理もっていけばいいだけ。もらった!!

 
 …クックック

 
 以下は面接の時の事。ちょっと忘れてる部分もありますが、だいたいこんな感じでした。


面接官「あなたはどのような学生生活を送ってきましたか?」

財前「他の学生方がゲーム、部活に打ち込んでいるときに、私はそれには目もくれず、合間を見て家の農業を手伝って来ました。」

面接「??部活に柔道とありますが?」

財前「部活は勉強と同じく絶対にやらなければならない事項ですので手は抜いてません。家の仕事を手伝ってきたというのは、他の学生で言う…自分の自由な時間を割いての事です」

面接「ほぅ…それはどんなものですか?」

財前「主に蘭。そして水田です。シンビジューム、カシオペジラムなどが栽培の主となっています」(これホント)

面接官「では柔道の部活はどうでしたか?」

財前「相当打ち込みました。柔道もそうですが、その先にあるのはプロレスでした」

面接官「プロレス?」

財前「プロレスが幼少時代から好きだったのですが、まさか高校にプロレス部はございません。プロレスに一番近かったのが柔道であり、それに打ち込むことで今まで憧れの気持ちで見ていたプロレスの試合を一掃身近に感じることができるようになりました」

面接官「具体的に教えて下さい」

財前「柔道場を利用してプロレス大会を催したのです。素人がすれば危険ですが、武道部同士でやれば問題ありません。結構好評でした。実際にプロレスをすることでその心を知ることができたのです」

面接官「なるほど。大学でもサークル、農遊会などでがんばってくれるのは大学側としてもうれしいことです。それが広がれば尚更です。がんばってください  それではわが大学を選んだ志望動機を…」 


 ほらきたきた。お決まりのパターン。

 後はこの大学にどうして入りたいのか?とか大学に来て何をしたいのか?という事を無難にこなせばいいだけ。

 重要なのはさっき書いたとこ。これがあるから後は普通の事言っても印象に残るはずでした。さすがに志望動機は普通に言わないとマズイ。


 柔道場でやったプロレスは先生に見つかってこっぴどく怒られました。20人くらいギャラリーがいましたから(笑)。それが面接の武器になるとは…。

 面接の時にプロレス中、斉藤のジャンピングニーパットをモロに食らって怒って、スリーパーホールドかけて、締めすぎて斉藤に泡を吹かせてしまい一時は騒然となったことが頭に浮かびましたね。悪友に感謝 (-_-)おまえとのバカ騒ぎは無駄にしないぞ。

 
 高校時代にやってきたことは、まったく勉強とは関係ない上、どうしようもなくバカな事だったと思います。しかし、それが面接試験では武器となったのです。勉強、柔道だけを真面目にしてたらこれは言えなかったでしょう。

 そして「他の奴がゲームしてた時に俺はこんなことしてたんだ」

 親のゲーム嫌いが災いし学生時代ずっとゲームをやらせてもらえなかった悔しさ。その皮肉がちょっぴり入っております(笑)。これは親に感謝しないといけませんね…。みんなと同じように私はドラクエとかしたかったんだ!!_| ̄|○。

 
先生「 面接はおまえの生きてきた道を美化して言えばいい」

 負の部分を武器にする。そう教えてくれたのが学校の担任の先生でしたね。

先生「謹慎事項を武器にしろ」


 出会う人によって人生が変わるとはこの事かもしれません…


 
 …


 先生のおかげで…


 (T-T )( T-T)

 
 めでたく東京農業大学と名城大学に合格。


 当然東京を選択。


 友達にはいろいろ罵られましたねえ(笑)。


斉藤「ちょ…おまえ詐欺かよ。おまえの偏差値で行ける大学ちゃうぞ。きたねえ」

三木「なんでおまえが推薦で合格するんだよ(笑)。あり得ないだろ。謹慎野郎が!!(←コイツも謹慎野郎)」

島田「口だけだろ。実力と勘違いするなよ。口だけで合格しやがって…」

仲●「東京とか…田舎者丸出しのおまえが行っても無理だと思うぞ…」


 もうね。非難囂々。まだ11月でしたしね…。

 しかし事実は事実。


 ただ…  

 もう勉強する目標がありません。大学に合格してしまってるわけですから…。授業も聞く必要はないし、部活も終わってる。どうすべきか…。ゲームも親が怒るから家ではできないし…。

 一応年間の塾の授業料を払ってしまっているので塾は続けることにしました。やはり東京の先生の授業を受けるのは楽しいですからね。それにセンター試験を受けてもいいかなと。一生に一回しか受けられませんし。

 そういう事で学校後に塾に行くのは継続したので生活自体はあまり変わりませんでした。学校→塾の繰り返しです。それに先生はこんなこといいます。

先生「いいか。遅刻はゆるさんぞ。他の学生よりも真面目に授業を受けろ。そして誰よりも真面目に学校を掃除しろ。それが礼儀だ。それに目立った行動は慎めよ」

 …ごもっともです。

 しかしここで大きな転機が訪れます。塾に今まで行ってはいましたが、勉強の事しか頭になくて周りの状況に気づかなかった。

 しかし、今は周りの人の勉強する姿を見たりする余裕があります。みんながんばってるなあと。ちょっと心に隙があったのでしょうか?

 なんかそういう雰囲気があったのでしょうね。

 そう…ここで当時は女性をあまり意識してなかった私に革命を起こした女性が登場するのです。今でもこの方には感謝しているほどです…。正直人生を変えました。



 いつも出会いは突然訪れます。


 私はヘッドフォンしていつものように衛星中継の授業を受けてました。その授業が終わって帰ろうとしたその時でした。いきなり目の前(ホント数㎝)にまで女性の顔が近づいている!!。

  (;゜д゜)?え

 
 心臓が止まりそうになりましたよ。女性の顔がキスするときのように近い。状況がまったく掴めない。


 な…なんだ?なんだ?

 
 そして…その女の子が一言私につぶやきます。



























リリカ 「バイバイ」

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 …





 …










 …








 …










 





 惚れた











 何かわかりませんが「バイバイ」という一言そして、その女性の顔が無茶苦茶かわいかった。こんな美人な子今までに見たこともない。そんな女性がいきなり顔を近づけて来てバイバイとか…。

  経験したことのないシチュエーションです。

 
 女性にはもちろん興味ありましたが、つき合うとかつき合わないとかそんな事考えたことがなかった。学校外の女性とは付き合いまがいの事はありましたが、学校内での付き合い方なんて知らなかったし、そんな事したらなによりも周りに何を言われるか…。

 同じ学校で彼女を作るなんて考えたこともなかった。

 
 それにことごとくフられた高1の苦い経験があったから…


 しかし…そんな硬派な私の壁は「バイバイ」というリリカさんの単純な一言で完全に崩壊。

 このとき歴史上でもベルリンの壁が崩壊しましたよね(笑)。
 

 それほどの力があったし、なによりリリカさんはかわいかった。ジグソーパズルの空いた隙間に最後の1ピースが埋め込まれたようでした。


 財前「これからは  … 女だ」


 なぜかこんな事を思ってしまった…。今考えてもおかしいんですが、それほどの衝撃だったのです。

  

 そうだ!!俺は東京の大学に行くんだった。
 
 こんなダサイ格好では行けない。こんな幼稚な精神ではいけない…。東京の女性は1枚も2枚も上手な事は明白。

 ヤバイ。俺ダサすぎる。


 女性を勉強しなければ!!


 こんなことで動転してしまうとは…。


 …

 




 リリカさんに「バイバイ」と言われただけで、その当時は相当な事が頭をよぎりました。東京にこのまま行ってはいけない…

 そんな天の声を聞いたのです。なぜリリカさんのバイバイでこんな事思ったのか今思っても不思議です。

 自分はリリカさんにふさわしくない…と心のどこかで気づいていたのかな?まあ特技というかね…。女性に3秒で惚れられる特技があるんですよ(笑)。私。



 そして現実に戻る。リリカさんはこちらの反応を伺っていたので


 は  (;゜д゜)?


 となりこちらも「バイバイ…」と返しました。

 塾帰りの自転車ではもう悩みましたね…。

 …

 あれだけ顔を近づけて「バイバイ」とかあり得ない。なんでそんな事をしたかと考えてみたわけです。


 到達した答えが

 「リリカさんは俺の事が好きなんだ」

 ↑アホ

 しかし、残念ながらリリカさんに告白する事はできません。相手は受験を控えてます。人生の大きな岐路です。そんな事できるわけがない。不謹慎もはなただしい。
 
 
 しかし…俺の事を好きなはず。俺の告白を待っているかも?

 もう勉強どころではなく、とりあえず翌日リリカさんの友達シモ●に相談することにしました。

シモ●「あ~あの娘 勘違いさせやすいけんな~。誰にでもそういう事するから。それ…大きい意味はないよ。だってリリカの好きな人、財前君じゃないもん。」










 …










 …













 …









 ちょ…













 待てよ!!(笑)
 







 

 そんなバカな!!_| ̄|○

 え!?あれだけ顔を近づけておいて特に意味はないだと!!バカな。あり得ない。なにいってんだコイツ。アホか?


 いや…まてよ…

 …とは言っても友達がそう言ってるし…好きな人とか聞いてるみたいだし…。

 
 …


 …

 そう

 このころはほとんど女性経験がないので、こんな事で勘違いしてしまっていたのです。自分に惚れていると…。ちょうど女の子とよく目が合うと陥りやすい状況ですよね?

 シモ●はさらにトドメをさすことをいいます。

シモ●「リリカの学校の机見てみ。好きな人の名前書いてあるから(笑)財前君じゃないから期待しないでね。」



 …

 そんなもの見れるわけないだろう…。ゆえにその場で名前を聞きました。

 なるほど。

 シモ●が言うにはリリカさんの好きな男は茶髪でジャニーズ系のM君。ああ。そいつなら知ってる。確かに格好いい。学内で有名な美女がいたんですが、その娘ですらつき合おうかどうか悩んだほどの男です。

 とてもじゃないですが勝ち目はありません。

 相手があの男だとすると、リリカさんにお目に敵うようになるにはそんなすぐは無理。

 内面、外面全てにおいて鍛え直す必要があります。謹慎とか受けて笑っている場合ではなかった。前から女性をもっと意識しておくべきだった。丁度受験も終わってるし… 


 よし…

 そこからファッション雑誌、メンズ雑誌の購読が始まります。そうです。重要なのは服、そして髪型。まずはこれが第一関門。ここを完備しないと無理。男は中身とか言ってもね。外見が伴ってないとダメなんです。現実はそんなに甘くない。

 とりあえず外見は自分ではわからないので友達に聞きました、俺って外見的にどうなの?と

島●「外見はいい方だと思うぞ。けどな…性格としゃべる内容がバカすぎてダメだ。それにおまえ幼稚すぎ。東京行ったら黙ってたらモテるかもな」

斉藤「かっこいい方じゃないか?けど着てる服がダサすぎるし、女の事何もわかってないからな…お前」

藤●「おまえは黙ってれば大丈夫だよ。あんまりしゃべらないほうがいいぞ。しゃべると最低の男になるからな…」


シモ●「ズボンの丈足りてないよ?」




 …





 …




 ハッキリ言うねえ_| ̄|○。

 なるほど…。問題は口か…。そして服にも問題がある。そういえば急に背が伸びたからズボンの丈とか足りてないし_| ̄|○。

というわけで服を買うことにしました。どうもその頃はビジュアル系がブームなようでカジュアルスーツが大人気との事。

 おお!!スーツなら大好きなんだよ。

 よしGRAYを真似よう。

 しかしビジュアルスーツは一着2万円近い。青山なんかでは売ってません。普通に着ることを考えると5着は必要。10万円です。それにシルバーアクセサリーや靴、帽子も必要ですからね。20万円は投資しないといけない。

 小遣いで買える代物ではない…


 …


 まあけど今のままではリリカさんは振り向いてくれない。

 …



 …



 決心しました。


 アルバイトです。今は11月。大学に行くまではあと4ヶ月ある。題名にある一楽木工がここに出てきます。


 重い木材を切ったり運んだりする仕事をするところです。まあ簡単に言うと土木系ですね。

 恐いおじさんや暴走族上がりのお兄さんがたくさんいる職場です。ここでまずは内面を鍛えながらお金を稼ぐ事にしました。コンビニ店員や綺麗な仕事では軟派すぎる。なんか…こう緊張感のある仕事がしたかった。体も鍛えられるしね。


 というか私…なんで女性の「バイバイ」だけでこんなにがんばれてしまったのでしょう…。可能性もないのに…。

 一目惚れなのに…。ほとんど話したことないのに…

 普通こんなにがんばれることなんてあんまりない。綺麗な女性が自分に与えるパワー。

 この時これになんとなく気づいたのかもしれません。

 男は女性への性を利用すれば信じられないパワーがでるのです。この時点でこれに気づいた私はラッキーでした。女性への愛を自分の成長に繋げる。

 それがわかったのがリリカさんに出会ってからなのです。

 というわけでこのころから女性を崇拝しています。ゆえにめいぽの世界で女性にヒイキするのは当然であり男なんて(RY

 …すいません。 

 
 学校の休みの日は片道15キロかけて自転車で木工所まで通いました。山を越えて行くので自転車で行くのはキツイキツイ…。下りは天国ですが登りが悶絶…。

 仕事場につくなり疲れ果てています…。

 しかし日給は1万円近いので私にはうれしい限り。元々体育会系の部活に入ってましたので、特に体力面では問題なかった。そして男の職場の荒い命令や暴力がたまらなかった。

 中でも仕事でミスすると暴走族のお兄さんが暴力を奮ってくるので恐すぎましたが、仕事が終われば普通。かなりやさしくて女性の口説きのテクニックまで教わりました。

 ちょっと今の女性の口説き方が強引なのもこれが影響しているかもしれませんね(笑)。しかし凄い有効なテクニックなんです。やはりね。この暴走族のお兄さんは修羅場を潜りまくっているので、ただ勉強し、部活し…という守られた生活を送っていた普通の学生なんか足下にも及びません。自分の存在がゴミみたいに思いましたね…。

 大学に行くのも親の金でしたし…。この人の方がよっぽど凄い。

 暴走族の兄さんの学生時代はいきなり家を襲撃された事もあるみたいで、とにかく思い出話が凄すぎる。

 そんな人が女性の口説き方を教えてくれたんですからね。他では聞けません。やはり土木系のバイトを選んだのは間違いではなかった。

 そして職場の人たちからは男の器というか…そういうのを感じました。

 そしていよいよ給料を貰い、服を買う…。

 その頃の私の変貌ぶりはそりゃあ凄かったみたいです。同じく推薦入試合格した友達3人が2月からこの一楽木工にアルバイトに来ましたからね(笑)。何かがある…とみんなも思ったんでしょうね。

 山を自転車で越えられないバカもいましたが(笑)。

 残念ながらその頃は暴走族のお兄さんは配置移動で別の現場に行ってしまってたので…友達は会えなかったんですけどね。

 しかし…

 リリカさんとは塾の帰りに一緒に帰るだけで特に進展はありませんでした。そのまま2月まで来てしまいます。もう言えない…。4月から私は東京、リリカさんは京都の大学…。

 今言うのはあまりにも無責任です。しかしこれほど好きになった女性は初めてだったので、気持ちが抑えられない。しかし、告白したくてもできない。この矛盾_| ̄|○。

 振られても4月にはお互い徳島にいませんから後腐れもない。しかし言えなかった。

 その間もいろいろと男性誌女性誌をみて研究していたのですが、使う機会がありません。リリカさんと会うのは制服の時ですから…。そして徳島にはあと2ヶ月…。告白ったって…今更なのです…。そして塾も終わり、リリカさんと会うきっかけがなくなりました。
 
 なぜ…言わなかったのか…今でも後悔してます。

 こうなりゃヤケです。気持ちがどうにもスッキリしない私は一楽木工の人や友と町にナンパに行くようになり、そこらへんの女性でなんとか堪えられない気持ちを抑えようとします。

 そこでもいろいろ挫折や苦い思いもしましたねえ。とにかく女性が欲しかった。 後半は成功率も上がり、一人で行ったりもしてました。

 もうリリカさんと付き合うという目的はありませんでした。諦めていました。ナンパしてた頃の目的…


 それは…



 全ては大学で東京の都会人に負けないためにやったことです。ナンパの一つもできない男が東京に行ってもバカにされるだけだ…。

 田舎者の私は東京を神のように思ってましたから…。

 ビジュアルスーツに身を固め、女性を口説くテクニックをナンパで実戦。そうしないとスタートラインにも立てないと考えていたのです。


 何人ナンパしたことか…。

 しかし気持ちの上では自信もでき、東京に行くための万全の準備が整いました。
 
 いや…

 まだだ…


 これでも東京の強者には田舎者扱いされるかもしれない…。東京に行く友もいない。東京に行けば一人。誰もサポートしてくれないし、誰も私の事を知らない。

 個性で勝負するしかない。もし…コンパなんかがあったら…。果たして東京の奴に勝てるんだろうか?こんな田舎者が…。

 それにはやはり今準備しておかないと、スタートラインにも立てない…。

 東京というものがどんなものかさっぱりわかっていないので、どこまでやっておけばいいのか…終わりがありませんでした。

 まだだ…

 まだ服が足りない。

 一楽木工を3月まで続け、稼いだお金は40万くらいあったんですがすべて服に消えました。東京に行く時をジッと待ちました。

 そしていよいよ4月…

 そう…いよいよ乗り込むのです。花の都東京に。

 数え切れない程の美女がいるでしょう。そして夢だった渋谷…新宿は一体どんなところなのか?

 そして東京の人は冷たい…というのは本当なのか?果たして私は東京の女性を口説き落とせるのか?通用するのか?

 それを試されるときが来ました。

 もう後戻りはできません。しかし楽しみでしょうがありません。これから4年間東京。

 もうリリカさんの二の舞は絶対に踏まない。

 … 

 大学で勉強するなんて意識はこれっつっつぽっちもありませんでした。とにかく女です。東京の女… これに憧れてました。

 

 舞台はいよいよ激動の大学時代へと続きます












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January February March April May June July August September October November December
2011(Sat) 10/01

大学時代回想26 若気の至りなんて他人は云う(56)

財前History … Comments(56)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
11/09/27 大学時代回想25 男と男の約束…そして告白へ(コメント53)
11/09/25 大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ(コメント 25)
11/09/21 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし  (コメント 30)
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント 78)

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08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想09 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想08 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想07 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想06 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想05 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想04 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想03 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想02 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想01 一楽木工  (コメント24)
























ずっと君の事、好きだったんだ


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 このセリフを言った瞬間、背筋が凍りつく…。
 
 さらに電話の向こう側にいる亜美さんの表情をイメージしてさらに背筋がゾクッと痺れ上がる。


 1秒…2秒…

 …

 まだ亜美さん声は聞こえない。

 相手が言葉を発するまでの時間…この微妙な間は私にとってまさに地獄である。

 返事は2つしかないのだ。YESかNOか。それとも返事は先延ばしにするか。どちらにしても結局答えは後日に出るので2つに1つである。

 どちらにしてもさすがの亜美さんもこの状況を不思議ちゃんでは誤魔化せない。無理だ。この時ばかりは真面目に答えるしか無い。もはや逃げ場はないのだ。もちろんそれは私にとっても同じだった。だから余計な世間話をしなかったのだ。

 下手に世間話をすると告白できる間合い…空気がなくなってしまう可能性がある。そしてそれは亜美さんの間合いでもあるので、コチラ側は圧倒的に不利なのだ。


 それゆえの不意打ち。私にはこれしかなかったのだ。





 次の亜美さんの言葉を聞いてから対応は考える。今回のケースでは相手の答えはある程度予想できる。ゆえにある程度の対応は可能だ。可能のはずだ。



 そう…その予定だった。



 だが亜美さんの第一声は…
















亜美「あ…」




























亜美「ごめん…何言ってるのかよくわからない」

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そ…そう来たか…

また私を阿鼻叫喚の渦の中に巻き込むつもりかこの魔性め…

やはりこの子は一筋縄ではいかない。この期に及んでも不思議ちゃんを通そうとするとは… 

だいたいそんな不思議ちゃんの思考で大学まで来れるわけがないだろ…。勉強がある程度できたから大学に来たんだろ? 数学とか国語とか歴史とか…ある程度点数があったから大学に来たんだろ!?

つまり君は不思議ちゃんではない。それを演じているだけだ。そうだろ?

私は気持ちを整理した。

ここまで来たんだ。後には引けない。


もうやるしかない。もうやるしかないんだ。

もはやナリフリかまってはいられない。

ここまで来たら死ぬか生きるか。どちらかしかない。


ナンパだ…あの時のナンパのテクニックを思い出せ…。とにかくヤレレばOK。土下座してでも何を犠牲にしてでもヤレレばOKの精神。

今自分は崖っぷち。泣いても笑ってもこれが最後。もうやさしい財前を演じる必要はない。




財前「亜美さん」

亜美「…」

財前「俺は真面目に気持ちを告白したのに意味わからないはないだろう」

亜美「…」

財前「本当はもっと早く言いたかったんだよ」

亜美「でも。つきあってって前にも言われたし…だからそれは断ったでしょ?」

財前「まあ…」

亜美「それに私たち仮づきあい中じゃなかったの?」

財前「う~む…」

亜美「…」

財前「もう俺も4年生で…時間がないからさ。最後の期間は君と一緒に色々思い出を作りたいんだよ」

亜美「う~ん…でも…」

財前「例えばさ。今好きな人とかいるの?」

亜美「得にはいない…」

財前「じゃあ…。俺の事はやっぱり友達以上には見えない?」

亜美「う~ん…」

財前「…」

亜美「…」








亜美「私…男の人とつきあった事とかないし、それに…」

財前「…」

亜美「財前くんと付き合っても数カ月後には卒業しちゃうから…あの…」

財前「…」

亜美「うまく言えないけど嫌な思い出になりそうな気がするし…あの…。それから…」

財前「…」

亜美「初めての人とはじっくり付き合ってみたいと思ってたし…うん。だから財前くんとは時間が…」

財前「なるほど。そういう事だったのか~」

亜美「え…」

財前「いや…。なんとなく俺を避けてたのはそれが理由だったんだなって思って」

亜美「避けてはないけど^^;」

財前「ほら。深い関係になっちゃてもあと数ヶ月で卒業だし、それが悲しいって思ってたんでしょ?」

亜美「う~ん…。どうだろう。初めての人は慎重に選びたかったし、ゆっくりと時間をかけてじっくり付き合いって思ってたの」

財前「なるほど…」

亜美「^^; …だから」








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 これは…万事休すか…

 そう思ったが、私にはある妙案が浮かんだ。感じ方から察するに亜美さんは恐らく私を嫌ってはいない。そう。嫌われてはいない。だが恐らく好かれてもいない。

 そして付き合うのはあまりにも時間が足りない。

 それもそのはず。私は4年。亜美さんは3年生だ。私はあと4ヶ月やそこらで卒業。

 女性視点から考えると確かに悲しい結末が待っているとしか思えないかもしれない。亜美さんにとっては初めての彼氏だ。それが4ヶ月で終わる?かと思うと身構えるのも当然だ。

 そう…

 だったら私が初めての彼氏にならなければいいのである。

 要は亜美さんにとっての初めての彼氏でなければいいのだ。
 

 これなら行けるかもしれない…。電話の雰囲気で私は瞬時にそう察知した。


 それに…このパターンはイケルパターンだ。

 そう私の第6感が告げていた。















財前「わかったよ亜美さん」

亜美「うん…」

財前「でも亜美さん今好きな人はいないんだよね?」

亜美「うん…」

財前「じゃあ彼氏候補は今のところいないの?」

亜美「うん…ずっといないね」

財前「ならさ。期間限定で俺につきあってくれない」

亜美「…」

財前「まずさ俺はず~と亜美さんの事が好きだったんだよ?この気持は本物さ」

亜美「^^;」

財前「で。俺には4ヶ月しか時間がないよね。その間だけ俺とつきあってくれないかな」

亜美「だからそれが私は嫌なので…」

財前「いや。つきあうって言っても彼氏としてじゃないのさ。友達としてでいいんだよ」

亜美「え?友達?」

財前「うん。友達としてつきあってよ」

亜美「^^;」

財前「友達としてならいいよね」

亜美「普通の友達?」

財前「そうだよ。普通の友達として付き合って欲しいんだ」







亜美「友達ならいいよ^^」

財前「やったあ」

亜美「でも元から友達だよ?財前くんとは」

財前「ああ。それはわかってるんだけど。ちょっと趣旨が違うんだ」

亜美「え?」

財前「友達として…できればデートとかして欲しいし、予定がなければ土日やクリスマスを一緒に過ごしてもらって欲しい」

亜美「え…」

財前「もちろん友達としてだよ?」

亜美「でもそれって…」

財前「違う違う。恋人じゃないんだよこれは。友達としてって事さ」

亜美「う~ん…でもなんかそれって今までと同じじゃない?」

財前「ああ…」

亜美「なんか曖昧^^;」

財前「わかった。わかったよ。1ヶ月でいい…。1ヶ月だけつきあってよ。思い出作りに」

亜美「え…1ヶ月…」

財前「俺も最後だからさ…大学生活。何か思い出を作りたいんだ」

亜美「うん」

財前「1ヶ月間…東京生活最後の思い出作りを亜美さんとしたいんだ」

亜美「それ…私じゃなきゃダメ^^?」

財前「当たり前じゃないか! 他の女性と思い出作るつもりなんて無いよ」

亜美「…」

財前「で、これは友達としてだから亜美さんの彼氏経歴には傷はつかないよ。亜美さんに彼氏はいない。俺とはあくまでも友達としてつきあってるわけだから」

亜美「う~ん…」

財前「1ヶ月だけでいいんだ。ね?いろいろ東京で行きたいところがたくさんあるんだ。そこに付き合って欲しい。収穫祭・文化祭も終わったし今はそれほど忙しくないよね?」

亜美「まあ…」

財前「一人で東京を観光なんて勘弁してよ;; 俺…一緒に東京友達もいないしさ…」

亜美「財前くん友達いるじゃん」

財前「いやいや…みんな忙しいし、彼女ができた奴も多いしさ。一人ぼっちなのよ…俺;;」

亜美「う~ん…」

財前「色々泊まってみたい旅館とかもあるんだよね」

亜美「え!?旅館も行くの…?」

財前「当たり前じゃないか。ほら。一緒に鎌倉行った時も泊りだったじゃない。問題なかったでしょ?友達としてで」

亜美「まあ…そうだけど」

財前「1ヶ月なんてすぐだよ。ね。お願い。」

















亜美「じゃあ…」

財前「…」

亜美「じゃあ1ヶ月だけね?」

財前「やった!」

亜美「でも…」

財前「…」

亜美「なんでそんなに私と色々行きたいの?」

財前「俺にとっての大学生活は亜美さんだからだよ」

亜美「^^;」

財前「ここで言わないと後悔するって思ったから電話したのさ」

亜美「…」

財前「でも電話して良かったよ」

亜美「^^;」

財前「俺も練りに練った東京最後の思い出を作るよ」

亜美「あんまりお金かかるところはやめてね^^;」

財前「何言ってるのさ。お金は全部俺が払うから気にしなくていいよ」

亜美「^^;」

財前「じゃあこの1ヶ月は毎週空けてもらってOKかな」

亜美「この1ヶ月の土日の予定を空けておけばいいの?」

財前「そうそう」

亜美「う~ん。わかったよ^^。」





亜美「でも友達との予定が入ったらそっち優先してもいい?」

財前「…」





財前「相変わらず手厳しいなあ(笑)亜美さんは」

亜美「^^:」

財前「それって俺と遊びに行く約束してても途中で友達に誘われたらキャンセルするって事?」

亜美「できれば…友達も大事なので」

財前「酷いなあ…」

亜美「^^;」

財前「ドタキャンありのルールって凄いなあ…俺の予定無茶苦茶じゃん」

亜美「ごめんね;;」

財前「普通そんな事堂々と男に言わないでしょ…」

亜美「あんまり拘束されたくないから^^;」

財前「まあいいよ。じゃあ早速だけど。今週の土日に一緒に行って欲しい所があるんだけどいいかな」

亜美「え?どこ?」

財前「東京ドームとかスポーツとかコンサートとかプロレスとか…色々行きたいところあるんだ」

亜美「^^;」

財前「とにかく非日常な所へ行こうよ」

亜美「…」








財前「じゃあ詳しくはまた明日学校で言うね。今週の土日は空けといてね~」

亜美「うん」

財前「じゃあまた明日」

亜美「バイバイ^^;」















ガチャ…
































これは…











これは…

























来たああああああああああぁあああああああああああああああああ!

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財前「ハッハッハ。おい。やったぞ! ついに亜美さんを口説き落とした!!」

青柳「なぬ!?…」

財前「ついにこの時が来たか…ついに!!」

青柳「あ…おい」

財前「あの体を抱けると思うと手が打ち震えてくるぜ…」

青柳「お…おい…」

財前「しかも誰もまだ触っていない未開の花園…素晴らしいシチュエーションだ」

青柳「おまえおかしくないか?」

財前「なんだよ」

青柳「いやな。お前の電話を聞いてる分には友達として…とかなんとか言ってたからよ」

財前「まあな」

青柳「それも1ヶ月間の友達だろ?」

財前「そうだ」

青柳「おい…それってフラれたって事だぞ? わかってると思うけど」

財前「カァ~。おまえわかってねえなあ」

青柳「ぬ?」

財前「あのな。つきあってるとか友達とか彼氏とか彼女とかそんなの関係ないんだよ」

青柳「は?」

財前「そんなもん曖昧にお互いに暗黙の了解で成り立ってるだけだろ?」

青柳「…」

財前「要はだ。ヤッたら彼氏彼女の関係になるって事だ。わかるか?彼氏彼女の関係であってもヤッてないカップルとかそれはカップルじゃないんだよ」

青柳「言ってることがよくわからんが…」

財前「男と違って女っていうのはな。DNA的に警戒心が強くできているんだよ」


これについては再度説明すると長いので 大学時代 回想10 阿鼻叫喚の魅力 参照



財前「いいか?

つまりこういうことだ。

男性はすぐその気になるが、女性はなかなかその気にならない。だが付き合ってしまうと女性の方が男性よりも恋愛に熱を上げて呑めるこむ。その理由は…


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 例えば男の場合…性行為に及んでも意識が薄くなることもなく精神的にも普通だ。もし外敵が来てもすぐに逃げられるし対応が可能だ。これは昔で言う周りが敵だらけの時代からの刷り込み。

 男性はすぐに体を求めたがるし、臨戦態勢をとるのも早い。できるだけ早く女性と性行為に及ぼうと考える。早くしないと外敵が来てしまうからだ。つまり性行為に迅速に及べる用に精神構造が作られている。女性に比べるとすぐに好き好きアドレナリンが脳から出るようになってるのだ。

 反面

 女性はその行為に及んだ場合、非常にもろい存在となる。意識が薄れているので外敵や何か突発的な危険が迫った場合はすぐに逃げられない。何より腰がすぐに立たない。性行為中にもし外敵に襲われた場合、餌食になるのは女性なのは明白である。

 ゆえに女性は性行為に及ぶ場合…安全な場所と確認できてからでないとその気にならない。ボロいホテルや繁華街でのホテル選定がNGなのはこのためだ。

 もちろんホテルに行ってしまえば逃げ場はない。ゆえにホテルに行くことを恐く感じる。この場合安全を確認するには男性を信用するしかない。

 このように女性はそう簡単に性行為に及ぶ気持ちにならないような感じにDNAが記憶しているのである。これは♀の防衛本能がそうなっているから自然の摂理。

 男は外敵を恐れ早く性行為をするような感じの精神DNAを持っているが、逆に女性は周りに外敵がいないと確認してからでないとそういう気にならないようなメカニズムなのだ。



 つまりそういう事だ。

 これは人間である以上は逃れられない何億年も前からの先祖代々の刷り込み。

 現代人は所詮この百年程度しか生きてないのだから逆らおうとしても無理なのである。



 つまり…

 そういう事。1ヶ月間限定の友達としての「つきあい」で始まる私と亜美さんだが…実はもう答えは出ているのである。亜美さんは私の提案を受け入れた時点で落ちているのである。

 彼女はこれから毎晩、毎日のように私のことを考える。

 例え好きでなかったにしてもそうなる。

 女性とはそういうものだ。


 それがいつしか…依存に変わり、デートをする内に安心へと変わる。

 安心に変わって警戒心を解いた時、彼女の股は自然と開く。


 女性とはそういうものなのである。









財前「…というわけだ。わかったか?」

青柳「よくわからねえが…おまえの中ではそれで成功なんだな」

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財前「当たり前だろ。余程のヘマをしない限り問題ない」

青柳「まあおまえがそう思ってるならいいんじゃねえか?」

財前「ああ」

青柳「考えてみると…曲がりなりにもデートできて旅館も行けるっていうのは凄いな。泊まりだろ?」

財前「当たり前だ」

青柳「いいな…」

財前「フフフ…」

青柳「だが成功したと思うのは気が早いと思うがな」

財前「まあな…」

青柳「…どちらにしてもおまえの告白は終わった…。次は…俺の番なわけだが」

財前「!?ああ。そうだったな」

青柳「考えたんだが…」

財前「うむ」

青柳「俺もお前と同じ方向で行こうと思ってるんだよ」

財前「何がだ?」

青柳「それだ。その友達戦法って奴よ」

財前「おお。なるほどw おまえも味をしめたかw」

青柳「つまり良い思い出を作る方法に切り替えたって事だろ?おまえ」

財前「まあそういう事だな。亜美さんと気持ちいい事がしたいのさ」

青柳「…」

財前「あんな極女の女性をガブリンチョできるなんて最高だぜ・*・」

青柳「…」






青柳「俺も知恵とは今まで通り友達で良いかなって思ってきたよ。そうだよな。無理に告白して関係を壊す必要もないんだよな」

財前「まあな」

青柳「だからそういう事にするわ」

財前「うむ」

青柳「どちらも傷つかない…」

財前「うんうん。これは結構使える戦法だからな。がんばれよ!?」

青柳「うむ」
























財前「…」

青柳「…」























財前「…」

青柳「…」
































財前「おい…」

青柳「ん?」

財前「さっさと電話しろよw!」

青柳「ん?何がだ?」

財前「おまえが告白する番だろうが!!(笑)」

青柳「だからこのまま友達で行くって言ったろ」

財前「え?何?どういう事だ?」

青柳「俺もおまえと同じように理恵とは友達として思い出を作るって事にしたんだよ。ギター部の部室に行けばまた会えるしよ。」

財前「は…はぁぁ!?」

青柳「ムフフ」

財前「バカヤロウ!!おまえそれは全然話が違うだろ!」

青柳「ん?何がだ」

財前「おまえは俺の説明をさっき聞いてたのか」

青柳「なんの説明だ」

財前「男と女の事についてのだよ」

青柳「ああ。DNAがなんたらって奴か?聞いてたよ」

財前「おまえな。俺は亜美さんとこれから毎週デートするんだぞ?それに泊りで旅館も行くんだぞ?」

青柳「でも彼氏になる可能性がないだろおまえは。ハッキリ断られたんだろ?友達として行くんだろ?」

財前「か~~ぁ。おまえホントわかってねえなあ。友達とか彼氏とか関係ねえって何度も言ってるだろ」

青柳「あん!?」

財前「友達して行くけどもちろんガブリンチョはするって事だぞ?」

青柳「ガブリンチョ?」

財前「夜を待って亜美さんをガブガブガブリンチョするって事よ」

青柳「ん?」

財前「要はSE●は当然させて貰うってこった」

青柳「なにいいいいい!?

財前「当たり前だろそんなの」

青柳「ヤれるの?」

財前「じゃないと喜ぶかよ。ただの友達なんてこっちから願い下げだ」

青柳「彼氏でもないのにどうやって寝るんだかw」

財前「そこがおまえの馬鹿正直な所なんだよなあ。彼氏とか友達とか関係ないんだってそんなの。証明書があるわけじゃあるまいし」

青柳「よくわからん…」

財前「おまえさ。例えばだぞ? 理恵の彼氏にはなれるけどSE●禁止。理恵の彼氏じゃないけどSE●はOK。これならどっちを選ぶ?」

青柳「なんじゃそりゃ」

財前「わからないならいいが。まあそういう事だ。とにかくそこまで行くだけの道ができたって事が重要なわけなの」

青柳「ああ」

財前「友達は友達でも亜美さんの隙をつける位置にいられるって事だ。つまりハンターって事よ俺は」

青柳「なんだそりゃ」

財前「要はチャンスがあるって事だ」

青柳「そうか?」

財前「これはおまえの言う友達っていうのは全然違うんだよ。おまえの理恵と友達という関係はSE●できる可能性が0%の関係じゃないか」

青柳「そんな事ないぞ」

財前「もうおまえにもわかるように簡単に言ってやるよ…。俺は宝くじを買った。おまえは宝くじを買ってない。これと同意。つまりおまえはスタートラインにも立ててないんだよ…」

青柳「…」

財前「デートできない友達とできる友達は全然違うぞ…」

青柳「ああ…」

財前「そもそもおまえは理恵と飯すらも食いに行けないのにどうやてヤルんだよ…」

青柳「…」

財前「反面俺と亜美さんの場合…ヤレる確率はかなり高いわけだ。なにしろ旅館に一緒に泊まるんだからな」

青柳「…」

財前「まあそういう事だ。だからおまえも理恵にそう言うんだよ。1ヶ月でいいから友達として色々デートして下さいって。もちろんお金も全部出すし、全部僕が計画しますって。だからその間だけで良いから情けで観光につきあってって…。言うんだよ。」

青柳「そんな事はできんな」

財前「はああ!?」

青柳「なんかそれ…まるで奴隷みたいじゃないか。俺が。俺がまるで理恵に媚びへつらってるようだ」

財前「え!? そりゃそうだろ」

青柳「そんな事はできんな。俺はあくまでも対等の立場でいたい。理恵もそれを望んでるはずだ。」

財前「かあああ!? おまえはホントに何もわかってねえな」

青柳「ああ!?」

財前「何が対等な立場だよ…おまえは眼中にも入ってないんだぞ?わかるか? 理恵からしたらおまえがどうなろうと知ったこっちゃ無いんだよ。わかるか?」

青柳「そんな事はねえよ!」

財前「とにかく告白しないと先に進めないぞ。もちろん振られたら俺の戦法に切り替える。これで完璧よ」

青柳「それなら友達でいい。フラれたからってお前のように下手に出るのは男としてできん」

財前「男が女より下手なのなんて当たり前だろ。世界にはレディーファーストって言葉もあるくらいだぜ? わかってるのか?」

青柳「ここは日本だ」

財前「日本も世界の中の一つだろ」

青柳「…」

財前「昆虫だって虫だって動物だって、メスと交尾するためにオスはメスに必死にアピールするんだぜ?わかる?中には後尾した後にオスはメスに食べられる種だっているんだぞ? そもそもオスは交尾後は必要ないんだよ。下手で当然だろ。」

青柳「なんかまたおかしい話になってるな…」

財前「下手に出る。頭も下げる。その代わりヤルべき事はヤラせてもらう。これが男と女のフィフティーフィフティーの関係じゃないか」

青柳「そんなもんかねえ」

財前「当たり前だろ」

青柳「なんかおまえってヤル事しか考えてないから俺と考えが合わんな…」

財前「例えば道を歩く綺麗なお姉さんがいたとして」

青柳「うむ」

財前「土下座して懇願したらヤラせえくれるって状況があったとしたらおまえどうする?」

青柳「そんな女はいらん」

財前「俺なら喜んで土下座するぞ(笑)」

青柳「俺は理恵ともっとちゃんとした事をやりたいんだよ」

財前「ちゃんとした事?なんだそりゃ。女と男が一緒にいて他になにやるんだよ…」

青柳「話とか旅行とか」

財前「くだらねえw」

青柳「おまえにはわからんから良いわ!」













財前「で?どうするんだ?理恵は」

青柳「ああ…財前…悪いが…今日はもう…」

財前「ああ。わかったよ。まあけど…後悔すると思うぜ?」

青柳「理恵とこのまま友達で終わっても悔いはない」

財前「いやいや。今日告白すれば別の意味で相乗効果もあるんだよ」

青柳「なに!?」

財前「もしおまえが告白して理恵に振られたとするだろ?」

青柳「ああ」

財前「そしたらその噂はすぐギター部に広まるだろ?」

青柳「隠せば広まらんぞ」

財前「バカ。自分で後輩とかに言って広めるんだよ」

青柳「なんでだよw」

財前「そしたらもしかしたら…ギター部の後輩がおまえにアタックしてくるかもよ?」

青柳「何!?」

財前「振られた男っていうのは背中から哀愁を漂わすからなあ。年下からは渋く見えるものさ」

青柳「う~む。しかし…。フられてすぐ新しい子とそういう関係になるって軽い男に見られそうで何か嫌だな」

財前「軽い男こそ最高じゃないか」

青柳「俺はそういうのは性に合わん」

財前「おまえもう卒業するのに何考えてんだよ。評判なんてどうだっていいだろ」

青柳「おまえとは違ってな。俺は後輩からの評判がいいんだ。真面目で通ってるし。軽いお前とは違う」

財前「あと4年も経ってみろ。誰もお前のことなんて覚えてないぞ。現実は厳しいんだ」

青柳「そんな事はない!」

財前「リセットできるのなんて今しかないのになあ。会社に入ったらこうは行かないのに…なんで今からそうお固い行動ばかり取るかねえ」

青柳「生き様の問題だな。俺はおまえとは違う」

財前「わかったよ…。でもおまえ…告白してないのになんでそんな偉そうなんだよ…」

青柳「…」

財前「告白しないのになんでそんな偉そうに言うんだよ。勇気がなかったんだろ?要は」

青柳「それはだな…」

財前「ハッキリ言っておまえ今…第三者から見ても相当格好悪いだろ。告白するのは男の約束じゃなかったのか?」

青柳「しかしだな…あの時は酒の勢いもあってだな」

財前「まあ。もういいけどさ。おまえ自信の事だし」

青柳「…」

財前「俺は今日は目的は達成したし」

青柳「…」

財前「じゃあ。おまえはおまえで理恵とよろしくやるという事で」

青柳「ああ…」

財前「陰ながら応援してるよ」














 


 こうして…


 青柳と私の長い夜は終わった。


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 青柳は結局理恵には告白をしなかった。もちろん私にもこの気持はわかる。得てして恋愛とはそういうものだ。


 告白する…


 言葉で言うのは簡単だ。書くのも簡単だ。だが実際にやろうと思うと「とてつもなく」難しい行為なのだ。

 これはやった事のある人ならわかると思う。

 もちろん友達から自然と恋人に…というパターンの場合はこういったケースには当てはまらないが、そういった仲でもない相手に告白をする…つまり一線を超える行動を取るというのは言わば自爆するのと同じであり、まず普通の精神状態では行うことができない。

 今日の場合、青柳が告白できなかったのは私と亜美さんの電話をずっと聞いていたからだ。


 これによって彼の奮起した気持ちは時間の経過と共に萎えてしまい、しぼんでしまった。


 思えば二人同時に電話をかけて各々が告白をすべきだったと今思う。




 もちろん…

 私も決して成功したわけではない。

 ただ、亜美さんがこの1ヶ月はずっと私と観光やデートに付き合ってくれるというだけの話であり、まったく相思相愛でもない。それにむしろ亜美さんのハッキリした返事は…YSSかNOかで言うとNOだったのだから、楽観的に考えられる状況でもない。

 しかし私はある程度この先の状況について楽観視していた。


 なぜならこれまでの経験である程度は男と女の関係というのを少しづつ理解していたからだ。



 例えばコンサートやスポーツ観戦、さらに旅館に旅行などに一緒に行った場合…大概の場合、其の相手の事はよく見えてしまうものだ。例え意識していた相手ではなかったとしても、一緒に多くの時間を共有していた相手のことを人間は自然と好きになっていくものなのだ。

 それは同じグループや同じ部活からカップルが多数成立する事でも証明されている。


 ゆえにこの1ヶ月… 色々な行動を亜美さんと共にすれば必ず亜美さんにも隙が生じ、そのままどさくさに紛れて…という状況は必ずあるとこの時点で確信していた。

 男と女の関係なんてものは、シチュエーションと要素さえ揃えばそんなに難しいものでもないのである。

 






 少し…だがここに来て私にも運が向いてきた気がした。











 この1ヶ月が勝負になるだろう。




















 終わりよければすべてよし。

















 果たしてこの言葉通り大学生活を終わらせられるかどうか。

 それはこの1ヶ月間の自分の行動にかかっていると思った。

 
 



 今もこの最後の時期の思い出は…恥ずかしく甘酸っぱいものとして心に刻み込まれている。









































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2011(Tue) 09/27

大学時代回想25 男と男の約束…そして告白へ(54)

財前History … Comments(54)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

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 青柳が突然家に来てかれこれ2時間が経過していた。

 彼は延々とギター部で如何に自分が凄い存在か、そしてギター部というものの活動が如何に素晴らしいものであるかを2時間も話し続けている。

 私はそれを酒を飲みながらゆっくりと聞いている…。いや。聞いているというよりも聞かざるを得ないと言うのが正解か。「大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ」で書いたとおり、私には青柳に対する負い目がある。

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 指揮者を辞め、ギター部を辞めた尻拭いをしたのが青柳だ。

 本音を言えば「どうでもいいんだよ青柳。ギター部の話しなんて。興味ないんだ俺は…」と言いたい。もちろん言いたい。しかしそれは禁句だ。

 もちろんそんなルールは私たち二人の間にはないが、これはマナーという奴で…

 そういうものなのだ。

 恐れなければならないのはこの先の展開だ。この先、青柳が泥酔してしまうと…コイツは歯止めが効かなくなる。暴走…というか、そういう類の事をしてしまう奴なのだ。最悪は殴り合いにまで発展しかねないため私の中にも緊張が走る。

 よくわからないが青柳はなぜか一方的に私をライバル視しており(これについては未だに私もよく理由がわからないのだが…)、何かにつけて自分が優位である事を証明しようとするのだ。

 もちろん私はいつもそれを許容しているのだが、酔っ払ってしまうとそれがエスカレートし、私も許容しきれない所まで来てしまうのである…。そうなると青柳はかなり逆上するのでそれが怖い。

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青柳「あ~イライラするぜ!

財前「え…」

青柳「それでよ~。俺も4年だからギター部としては引退になっちまうんだけどよ」

財前「ああ」

青柳「やっぱ俺がいないとダメなんだよなあ。若い奴が全然ダメでよ」

財前「そうか」

青柳「あいつらまったく練習しねえし、俺に敬意を払わねえし」

財前「そんな事ないんじゃないか? 俺が見たところ真面目そうな連中に見えたけどな」

青柳「真面目じゃダメなんだよ!!」

財前「え?」

青柳「熱いもんがねえんだよアイツらはよ。熱いもんが」

財前「あ…ああ」

青柳「まあお前よりはマシだけどよ。ギター部から逃げたお前よりはな」

財前「いや…だから俺は逃げたんじゃなくて元々クラシックギターをやる気は…」

青柳「指揮者だったろお前は! 指揮者っていえば最高権力者だぞ!? 最低野郎だよ。おまえはよ。それから逃げるなんて本当に最低野郎だよな」

財前「ハハハ。かもな(笑)」

青柳「笑い事じゃねえだろうが!!」

財前「おまえ何が気に入らないんだ?ギター部辞めたなんてもうかれこれ2年以上も前の話だし、おまえが指揮者としてうまくやったんだろ?」

青柳「ああ。そうだよ。俺がやったさ。俺が完璧に指揮者を努めてやったよ」

財前「じゃあそれでいいじゃん」

青柳「おまえのそのギター部に対する軽い気持ちが俺はムカついてるんだよ」

財前「そんな事言ったってしょうがないだろ。俺は他にやりたいことがあったんだよ」

青柳「ああ。知ってるよ。バイクとか女だろ!?」

財前「まあな」

青柳「リョウとかいう無職の野郎と毎日街にナンパに出かけて楽しかったのかよ。それでお前の人生の身になったのか?ああ?」

財前「さあ。どうなんだろうな」

青柳「なんだよそれ」

財前「そんなんどうだっていいじゃないか。おまえはおまえでギター部で最高だったんだろ?」

青柳「もちろんだ」

財前「じゃあそれでいいじゃん。なんで俺のナンパとかリョウさんが関係あるんだ?」

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青柳「おまえが辞めたからだよ。おまえがギター部を辞めたから…」

財前「おまえ一体俺にどうして欲しいんだよ…」

青柳「なんつ~かさ。結局そういう熱い…というか熱いモノをもった奴が今の後輩にいねえんだよな」

財前「なんだそれ」

青柳「まあいいや。この話はもういい。」

財前「…」





青柳「実は俺もギター部引退したからバイクの免許をな…その…取ろうと思ってるんだよ」

財前「何!?おまえバイクの免許取るの?」

青柳「おうよ」

財前「急にどうしたんだ?」

青柳「なんか楽しそうだなと思ってよ」

財前「バイクが?」

青柳「ああ。それにお前とか敬助とかとツーリングとかもしてみたくなってな」

財前「そりゃあいいな」

青柳「もちろん大型まで取るぜ」

財前「そうか。でも中型免許で充分だぞ?」

青柳「俺は中途半端なのは嫌いなんだよ!

財前「…。でもお前車は普通免許なんじゃないの?」

青柳「まあな」

財前「だったらそっちも大型にしなきゃ…」

青柳「そっちはいいんだよ!!」

財前「そ…そうか」

青柳「要はハーレーに乗りてえんだよ。俺は」

財前「ハーレー…すげえな! 俺の憧れだよそれ」



財前「男の中の男でなければ乗ってはいけないモノだからな…」

青柳「ガハハそうだろそうだろ?羨ましいか?ん?」

財前「いいなあ」

青柳「まさに俺にピッタリのバイクよ。俺のためにあるようなものだな。アイツは」

財前「…ていうかおまえまだ免許持ってないんだろ?」

青柳「もちろんこれからだ」

財前「じゃあ威張るなよ…」





 私は彼の気持ちをなんとなく理解していた。

 時折見せる彼の素顔と言動。これが全てを物語っていた。要は彼も彼なりの理想の大学生活というのがあって、それはギター部に所属していたために出来なかったのである。

 もちろん彼はギター部で活動したことを後悔などしていない。指揮者として最高の事をやったのだろう。だが
、彼は指揮者だ。2年生の後半から3年生の終わりまで…彼の大学生活をほぼギター部に捧げたはずだ。 

 なぜならおわかりのように指揮者は演奏者とは違い唯一無二の存在だ。

 野球部で言えば監督。

 ゆえに休むことは許されない。代わりがいないのだ。

 それゆえ通常ではバイトすらできない役職なのである。彼はそれをやり遂げた。

 やり遂げた。


 だが…同時に犠牲にするものも当然あった。

 それは自由で方便な大学生活である。

 もちろんバイクの免許など取得する時間はなかっただろう。女性交流も犠牲にする部分はあっただろう。

 そう。人間なにもかも…というわけにはいかない。

 何かを成すという事は何かを犠牲にする…という事なのである。

 つまり彼はギター部で栄光を手にし、後輩の尊敬、名誉を勝ち得たが、逆に私がやっていたような街へナンパへ出かけて女性との交流を持つことや、ここでは書けないような…危ない橋は渡っていない。

 それゆえタマにこうして私の家に遊びに来ては私の行動をチェックし、そしてその憤りをぶつけているのである。


 それは4年生になってさらに顕著になっている。

 恐らくこれは…ギター部という後ろ盾がなくなったからだと思う。

 彼は引退したのだ。

 引退すると誰もが過去の人となる。

 それまでは絶大な権力と力を誇っていても、世代交代でバトンを渡してしまうと、ある意味では一般人になってしまうわけだ。それがギター部で最近行われた。

 まあこんなのはどこにでもある当たり前の話だし、高校の部活でもそう、会社でもそうだ。

 そして世の中的に見れば大した話ではない。なぜならこれはギター部という小さな枠内だけの話であり、世間にはまったく何の影響も及ぼさない出来事だから。

 だが彼にとってはそれが寂しかったのかもしれない。彼はギター部の指揮者、権力者という座から今、ひとりの一大学生へ戻ったのである。

 元々失うものなど何もない私とは違うのだろう。

 それが形として現れたのがハーレーに乗ることだったのかもしれない。









 そして青柳の言いたいことを全て聞いた後…

 今日は…話が珍しく女性関係の話題へと展開していった。

 青柳は女性関係で様々トラウマがあり…あまり女性関係の話を自分からしない奴なのだが…




青柳「それでよ」

財前「ん?」

青柳「おまえ今彼女はいないのかよ」

財前「いないな」

青柳「か~~。情けねえなあ。ナンパしてるとか言っておいてそれかよ。なんだよそれ」

財前「彼女というのはナンパとは違うからな」

青柳「ほう。まだナンパの女で寂しさを紛らわせてるのか?」

財前「いや…もうリョウさんが職についたからさ。それ以降やってないよ」

青柳「なんだそれ。おまえリョウって奴がいなきゃなんもできないのかよ」

財前「どうだろうね。リョウさんと一緒にナンパには行ってたけど、女を口説く時にリョウさんに助けてもらってた訳でもないからさ」

青柳「でもまえはリョウって奴がいねえとナンパできねえんだろ?」

財前「まあな(笑)。どっちかというと俺はリョウさんが好きなだけで、ナンパはそれほどだったのかもなあ…。要はリョウさんとナンパに行くのが楽しかったんだよ」

青柳「なんだそりゃあ」

財前「なんつうか。あんな格好いい人初めて会ったしなあ。行動すべてに色気があるっていうかさ」

青柳「ホモかよおまえ(笑)」

財前「実は最初俺もちょっとそうかな…って思ったんだけど違うな(笑)」

青柳「気色悪いやつだな」

財前「要は一緒にいて刺激を受けるんだよね。アドレナリンがドバドバ出るって言うかさ」

青柳「ただの不良のフリーターだろ?」

財前「あの頃はな。今は違う。とにかく凄い人なんだよ」

青柳「そんな凄い奴とは思えんがねえ」

財前「まあお前は自分が一番のナルシスト野郎だからわからんよ」

青柳「俺はナルシストじゃねえよ」

財前「おまえは自分を中心に地球が回ってるって思い込んでるタイプじゃないか」

青柳「おまえ俺の事をそんな風に思ってたのか!?」

財前「悪いけどさ。他のやつに聞いても全員そうって思ってるはずだぞ?俺が正直にお前に言ってるだけで」

青柳「そんな事はねえよ」

財前「みんな口に出して言わないだけだよ」





青柳「まあそんな話はどうでもいいんだよ。それより俺よ…好きな娘が今いるんだよ」

財前「ほう…」

青柳「でもさ…今俺達4年だろ?時間がねえじゃん。つきあってもすぐ離れ離れになるかもだしさ。」

財前「そうだな~」

青柳「だからどうしようかと思ってよ…」

財前「え?それもしかして俺に相談してんの?お前が?」

青柳「そうだよ」

財前「珍しい事もあるもんだな(笑)」

青柳「何かアドバイスはあるか!?」

財前「そんな事言われたってわからないよ。とりあえずその子の写真有る?」

青柳「ああ。あるぜ…ほら」

財前「どれどれ」






















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財前「これ無理じゃん。Impossibleだ」

青柳「はああ!?なんでだよ」

財前「これおまえあれじゃん。おまえが1年の時からずっと片思いの娘じゃんか」

青柳「そうだよ」

財前「だいたいなんでギター部で一番人気のある女の子をなんでワザワザ狙うかねえ」

青柳「そりゃかわいいからな」

財前「ギター部から一歩出ればそうでもないぞ?」

青柳「そんな事はねえ!」

財前「まあ思い出と一緒に過ごした時間が相乗効果でなんとやらって奴でな。まあ今のおまえにはわからんだろうけど」

青柳「なんだよそれ」

財前「いい加減諦めろよ…。しつこいのは嫌われるんだぞ」

青柳「おまえに言われたかねえよ。それにお前だって…1年の時にストーカー呼ばわりされたチズエとかいう奴を未だに好きなんだろ?」

財前「それとこれとは違うぞ。チズエさんは特別なんだよ。おまえのような不純な動機とは違うんだ」

青柳「なんじゃそりゃ」

財前「俺は彼女を自分から諦めたんだよ。あれ以降はほとんど接触してないし」



青柳「まあそんな話はいいんだよ。やっぱ大学にいる間に自分の気持ちにケリを付けたくてな」

財前「ふむ…なるほど」

青柳「どうすればいい?」

財前「そりゃ告白すればいいんじゃないか?」

青柳「そんな事はわかっとるわ」

財前「そうだよね…」

青柳「問題はどうやってするかだ」

財前「告白を?」

青柳「そうだ」

財前「まじでする気なのか…」

青柳「おうよ」

財前「この3年で完全に答えは出てるぞ…」

青柳「出てねえ!」

財前「でもなあ…さすがに1年からずっと3年間追いかけ続けてるわけだろ? しかもギター部でおまえをずっと見てきてるわけだろ?彼女は」

青柳「まあな」

財前「そりゃ脈はねえよ」

青柳「はああ!?ずっと一緒にいたからこそ俺の酸いも甘いも見てるんだろアイツは」

財前「あ~~ぁ…。悪いな柳。俺の戦法というのはさ。そもそも初対面とかつきあいが浅い子に対して練りに練っているものでな…長い付き合いの女友達に対しては発動しないんだわ」

青柳「は?よくわからん」

財前「ほら。ナンパとかで培ったテクニックだから一撃必殺なの。わかる?ちょっと隙を見せた所にガブリンチョするって事なのよ」

青柳「??」

財前「だから自分の素性を知られすぎていると無理なの。酔わせれられないし勘違いさせられない」

青柳「簡単に言ってくれ」

財前「ああ。簡単に言うとだな。強い光を人に当てると眩しくて目をつぶるだろ?」

青柳「ああ」

財前「その間に財布を盗む…みたいな感じ?要はフラッシュ的な戦法なんだな」

青柳「う~ん。まだよくわからんな~例えば?」

財前「例えばさ。普段行かないような場所やレストランに行って、女性が普段男からは聞かないような甘いセルフを吐く。これで少し擬似世界?というか普段と違う世界を見せる。そういう世界を見せて惑わせて、そのままの流れで求愛して勢いでヤッちゃうわけさ」

青柳「うひょおお」

財前「これのポイントは如何に現実離れというか…現実逃避のシチュエーションを作るかって所にあるわけだ」

青柳「ふむふむ」

財前「例えばリョウさんは存在自体が現実離れしてるから、女はすぐ参っちゃうんだよ」

青柳「ほおお」

財前「つまりやっぱり日常生活を見せちゃうとダメなんだな。あくまでも日常から逸脱してなきゃいけない。だからみんなクラブや怪しい店でナンパをする奴が集まるのさ」

青柳「なるほどなあ」

財前「俺とかは存在自体でそんな事できないから雰囲気や言葉でそういう状況、キャラを作るしかないわけだ」

青柳「ふむふむ」

財前「しかしこれはだな。友達には一切通用しない」

青柳「!?」

財前「相手をあまり知らないから酔うわけで…おまえと3年も一緒にいる娘に使ってもまったく効果はない」

青柳「な…なんでなんだ!?」

財前「だってお前…その娘おまえがアプローチしても今まで音沙汰なしだったんだろ?」

青柳「まあアプローチと行っても食事に誘うとかくらいだけどな。」

財前「全部断られたんだろ?」

青柳「断られたというか相手が忙しくていつもスケジュールが合わなくてな」

財前「それは断られたと同意なんだよ」

青柳「…」

財前「つまりもうおまえの事は知り尽くしてて、門前払いって事だよ。そういう女を現実逃避させて酔わせるのは容易な事じゃない。諦めることだな」

青柳「…」

財前「まあ旅行に行ければなんとかなる可能性はあるが…それも叶わぬ願いだしなあ…」

青柳「飯すら無理だからな…」






青柳「でも他に好きな奴はいねえんだよ。何か手はないのか?」

財前「まあないでもないけどな」

青柳「なんだ?なんだ!?」

財前「酒に酔わせてそのまま勢いで…とかさ…」

青柳「バカヤロウ!そんな事できるかよ。俺は愛されたいんだよ。無理矢理は性に合わねえ」

財前「ああ…。すまんすまん。おまえは俺と違ってSE●が目的じゃないんだったな(笑)」

青柳「そうだ」

財前「だったら尚更無理だな。」

青柳「…」

財前「ていうかおまえさ。その娘とSE●したくないの?」

青柳「…まずは愛しあってからだ。そもそもそういう行為は愛しあう者同士がする物だろうが!!」

財前「か~。バカかおまえは。愛し合うのとSE●はまるで別のものだよ」

青柳「何!?」

財前「ヤリタイからヤル。それは欲望に従ってるだけじゃないか。女だって30超えたらヤリたくて仕方がなくなるんだぜ!?その頃は男より欲望が上がるって知ってる?」

青柳「そんな事はない。あの子に限ってそんな事は…」

財前「愛だ恋だと抜かしたって所詮は僕らアニマルなんです」



青柳「…」

財前「そもそも子供を産む年頃にはDNAが作用してSE●したくてしたくてたまらなくなる。それが人間なんだよ」

青柳「そりゃ昔の話だろ?」

財前「あ~。おまえそういう本能的な事を利用せずにどうやって相手を落とすわけ?おまえイケメンじゃないんだぞ」

青柳「イケメンじゃなくても心はバッチリだぜ…」

財前「…ああ。そうかもな。でも愛されるのは諦めろ。な?この3年で答えは出てる」

青柳「ううう~…。」

財前「それでもやるってのなら止めはしないが…」

青柳「むむむむ…」





























青柳「俺はやるぞ~!!」

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財前「え…!?」

青柳「決めた!俺は決めた。今から理恵の家に行く!!」

財前「!?」

青柳「幸い理恵の家はおまえの家から近い。おまえも一緒に付いて来てくれるよな!」

財前「ちょ…待て…なんで家に行くの?」

青柳「直接告白しに行くに決まってんだろうが!!」

財前「ちょ…」

青柳「フェイス・トゥ・フェイスだ。当たって砕けろ作戦だ」

財前「えええ!?」

青柳「おまえも来いよ。そして俺の生き様を見届ける証人になってくれ」

財前「おい。待て柳。おまえ酔ってるんだよ。な?酔ってるんだ。馬鹿な真似はやめろ」

青柳「うるせえ!もう決めたんだよ俺は。俺はやる。俺はやる男なんだ。俺はやれる!!」



 …

 恐れていたことが起きてしまった。

 彼はこういう暴走癖があり、いつも行き詰まるとこうなってしまう。だがいつもは吉野山でダッシュで突撃とかパンツ一生でその辺をダッシュとかその位で住んでいたのだが今回は彼の3年間片思いのギター部の同級生の理恵の家に突撃とかシャレにならない。

 そもそもコイツなにもわかってない。

 青柳だけ行くなら別に止めはしないが、私も一緒に来いとか正気とは思えない。


 私はそもそもギター部とはなんの関係もない人間なんだぞ…。そんなのが理恵の家に青柳と乗り込んだとかいう事実が学校に広まったらそれこそ笑いものである。ただでさえストーカーなんてあらぬ疑いをかけられているのに、それがさらに…

 とにかく私は青柳を止めた。

 それはやめておけと。


 作戦ならちゃんと考えてやると。



 だから今は待てと止めた。


 だが彼は少し落ち着いたものの、まだ何か物足りないみたいだった。





 それもそのはず。彼は知っての通り情熱型の人間だ。一度情熱に火が灯るとなかなか消すことはできない。今は彼の理恵への「告白するぞ!」という気持ちが荒ぶっている状態。

 これを沈めるのは…容易ではない。


青柳「ふ~…ふ~…」

財前「青柳。ちょっと牛丼でも食いに行くか。な?腹減っただろう。酒ばっかりじゃ胃に悪いしな。ハハハ…(笑)」

青柳「その後理恵の家に行くぞ」

財前「いや…それは…とにかく落ち着けよ…な?」

青柳「…」







青柳「そういやよ…」

財前「ん?」

青柳「おまえ今彼女いないっつったよな?」

財前「ああ」

青柳「好きな子はいるのか?」



 お…。これは話題を理恵から逸らすチャンス到来か!?」



財前「あ…ああ。いるよ」

青柳「ほうほうほうほう!? で?どんなやつだ?どこの誰だ?」

財前「いや…ひとつ後輩なんだけどさ。」

青柳「ほうほうほうほう!? 後輩ですと!? 同じ研究室か!?」

財前「いや…研究室は違う。けど隣の研究室だ。亜美っていう娘なんだけどね」

青柳「写真はあるか」

財前「ああ。あるよ」



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青柳「へ~。おまえにしちゃあ。落ち着いた娘を選んだモノだな」

財前「まあな(笑)」

青柳「とうとうチズエは諦めたか」

財前「諦めてないぞ?」

青柳「何!?」

財前「事実上不可能だから忘れてるだけだ。チャンスがあれば行く」

青柳「そんなチャンスねえよw」

財前「うるせえ。おまえも理恵にはノーチャンスだろうが」

青柳「まだ俺の方がチャンスあるわ!」

財前「まあ理恵の話はいいや。とにかくこの亜美って娘はワンダーな娘でさ。一緒に旅行に行ったり、何度もこっちが好きのサインを送ってるのに一向に振り向いてくれないし、なんお素振りも見せてくれないんだ」

青柳「おまえバカだな。それを振られるって言うんだよ」

財前「バカな事を言うな! 振られてるわけがないだろうが。まだ告白してないんだよ」

青柳「バカヤロウ。それを言ったら俺も理恵に告白してないわ」

財前「あのなあ…俺は旅行も行ってるし、食事も行ってるんだぞ?危うくスッピンまで拝める所まで行ってるんだぞ?おまえとは違うの」

青柳「…」

財前「とにかくあの子は男との経験がない分ガードが手厳しくてな…。」

青柳「おまえさっきさ。お得意の非現実なシチュエーションを作ってって奴言ってたじゃん。それすればいいんじゃないのか?」

財前「ああ…それがだな…。問題があるんだよ」

青柳「なんだ?」

財前「俺がそういうシチュエーションを作ろうとしてもな…あの娘の方が不思議ちゃんというか…ワンダーすぎて非現実的なシチュエーションに持ち込めないんだよ」

青柳「何?」

財前「いつも俺のほうがあっちの…亜美さんワールドに入ってしまう…orz」

青柳「そういう事もあるんだな」

財前「まさにありゃあブラックホールだな。となると下半身の方もさぞかし名器に違いない」

青柳「…」

財前「やっぱさ。暗黙の了解ってあるじゃん?例えば飯に男と二人で言ったらそれは友達以上の関係になりたい事を望んでるって事だとか、映画に誘うってことはアレだからだとか、旅行に行くってことは…とか」

青柳「まああるわな」

財前「あの子はなんか…そういうのがないんだよなあ。ただ付いて来てるだけっぽい所もあるし…かと言ってそうでもない部分、計算してる部分も見え隠れする時があったりして…意味分からん。俺の誘いに乗ってるとも取れるし、やんわり断ってるとも取れるんだよ」

青柳「なるほどな…」

財前「だから正直今は距離を置いているところなんだ」

青柳「距離をおいてる?」

財前「ああ。3週間前に一緒に4人で旅行に行ってからまったく会ってないし話してもない。連絡も取ってないし」

青柳「マジか」

財前「一つの賭けだな。俺が接触しなかったら亜美さんの方から接触してきてくれるかもしれないしさ」

青柳「でも3週間接触なかったんだろ?亜美の方からも」

財前「まあな」

青柳「おまえ自分の事になるとさっぱり理解できてないな。そりゃあおまえ脈ナシなんじゃねえかw」

財前「そ…そんなことはないお!」

青柳「ヨッシャわかったわかった。俺が一発で答えを出す方法を教えてやるよ」

財前「何!?まじで?そんな方法があるのか?」

青柳「あるある。なぁに。簡単なことだ。単におまえがな?その亜美って奴にな?」

財前「うんうん」



































青柳「告白すりゃあいいんじゃねえか。今すぐ」

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財前「え?」

青柳「今すぐ電話して告白すれば答えが出るじゃねえか。」

財前「アホか!俺はおまえとは違うんだよ。慎重に慎重に暖めてきてる恋なんだぞ?」

青柳「おまえさっき友達への作戦は持ってないって言っただろ。そんなに一緒にいるなら、もうお互い新鮮味はなくなってきてるんじゃないのか!?」

財前「…」

青柳「友達だろうがもう。おまえらは。知り合いじゃねえだろう」

財前「ま…まあ」

青柳「じゃあ男なら告白しろ。ほら。電話で。今すぐだ」

財前「ちょっと待て…ちょっとまてよ…なんでこんな展開になるんだ!? おかしいだろ。なんかおかしいぞこれ」

青柳「ガハハ。何がおかしいんだよ。おまえさっき非現実がどうとか言ってたじゃないか。普通じゃない方法だから良いんだろ」

財前「…」

青柳「別にいま告白しようがしまいが結果は同じだろうが」

財前「ま…まあ…」

青柳「じゃあ告白しろ。今すぐだ」

財前「ええええ!?」

青柳「おまえが亜美に今電話で告白したら、その後、俺も理恵に電話で告白する。男と男の約束だ。今日を二人の記念日にしようぜ。男と男の記念日に」

財前「え…」

青柳「二人の新友が同日に二人の女に告白する。格好良いとは思わないか?それに俺も大学最高の思い出になりそうだしよ」

財前「…」

青柳「大学生活腐ってもあと1年ないんだぜ。俺とお前で一個くらいドデカイ思い出を作らないとな」

財前「しかし…」

青柳「今日こうやって友達として飲んでるのもお互い何かの縁だしよ。やろうぜ」

財前「…」



 …


 なぜか…

 なぜかわからないが青柳のこのセリフは胸に響いた。


 こんな話の流れで電話で亜美さんに告白…あり得ないことだ。そもそも私は電話などで告白をしたことがない。電話でするなんて失礼だと思っていたから。

 しかしだ。今日のこの状況は何かが違った。

 むしろ会いに行くほうが不可能だ。私の隣りに今いるのは青柳だ。電話でしないと言ったら「じゃあ亜美の家に行くか!?」とか言い出しかねない。それ以外にも「じゃあ理恵の家に行こうぜ」とかも言い出しかねない。


 この状況を総合的に判断して… ある意味ベストな選択は


 ・そもそもどちらも告白しない


 だった。しかし…


 ・二人で電話で女に告白する


 この選択も悪く無いと思う自分がいた。

 確かに悪くない選択だ。そもそもこのままズルズル行ってもお互い何もないまま終わるだけ。そして大学を卒業して一生会えぬ関係になるだけ。


 それならば…いっその事告白して粉砕した方が楽になるのではないか。

 今ならなんか…できそうな気がする。

 一人じゃできないけど青柳もするって言ってるんだから勢いでできそうな気がする。


 これを利用しない手はないのでは…


 そういう甘いささやきが胸でコダマしているのだ。



 確かに悪い話ではない。




 私が告白すれば青柳も告白するという…。この事実がある事で何かこう…私一人の時よりも背中をスッと押してくれてるような安心感がある。何か。

 この感覚…久しく忘れていたような気がする。
 

 そうだ。そもそも私はナンパが本流の初見殺しじゃないか。


 友達になってしまった女性に対する有効な作戦は持ち合わせていない。

 いや。むしろ今までロクな事がなかった。





 そう考えると…この話…悪く無い話だ。










 これが若気の至りなのかどうかはわからない。だが私は決心した。

 この話に乗ろうと。





 私は青柳に確認した。




 「私が亜美さんに告白したらおまえも告白するんだな?」…と。




 彼は深く頷いた。





 なぜかわからない。なぜかわからないが、これから生きて帰ってこれる望みのないアフガニスタンの戦場に出るような気分になっていた。

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 俺たちは行くのだ。次の舞台へ…








 そう心に決めると私の行動は素早かった。







 サッと携帯電話を手に取り電話帳から




 亜美…を選択




 ここで心臓の高鳴りは最高潮に達するも屈しない。屈する訳にはいかない。

 もはやトランス状態の私に「やめとけやめとけ」という心の悪魔の必死の叫びは届かず…






 そのままボタンをプッシュ。





 しばらくの静寂が辺りを包んだ後…








 電話のベルが鳴った




















 トゥルルルルル  トゥルルルルッル














 もう死にそうだ…。緊張して死にそうだ…。



 私は青柳の顔を見た。彼も必死に私の方を真剣な表情で見ている…。その辺にある何の変哲もないオヤジ顔だが、今はやけに青柳の顔が頼もしく見えた。

 

 トゥルルルルルル  トゥルルルルルル



 また亜美さんの電話を呼ぶ出す音がなる。

 ひょっとしてお風呂に入っているのではなかろうか…。そんな気もした。通常の精神状態ならそれを望むかもしれない。

 だが今の私はそれを望んではいなかった。

 なぜなら決心したのだ。今。ここで。今。すぐ告白しようと。


 今ここで決心したのだ。


 次の機会はない。今この瞬間でなければ私は告白できない。




 今しかないのだ。今しか…
























 そして…



















 ガチャ…





























亜美「もしもし?」

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 3週間ぶりの亜美さんの声…。まるで天使の囁きだった。








 
 亜美さんが電話に出たら私は何を言おうか事前に決めていた。

 それはこれまで散々苦渋を舐めさせられた不思議ちゃんワールドに引き込まれないための防衛策。


 そう。会話をしないことだ。余計な会話をしないことだ。

 通常の女性になら有効なこの方法が亜美さんには逆効果。逆に盾を構えられてしまう。





 攻めるなら彼女が盾を構えていない時に攻めるべきなのだ。





 それはいつか。




 決まっている。それは彼女が電話に出た瞬間。







 そう。今だ。今。すぐ。今。











 今言うのだ。





















 私は亜美さんにダイレクトに言葉を吐いた















































財前「亜美さん…実は俺…


















































ずっと君の事、好きだったんだ


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2011(Sat) 09/24

大学時代回想24 進めど地獄、泣いてチンピラ(27)

財前History … Comments(27)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
11/09/21 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし  (コメント 30)
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント 78)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)












 ギター部に入った時、私はなぜか注目された。

 理由はわからないが、恐らく応援団だったという事実と、そこを1ヶ月で辞めてきたというのがギター部の面々にとっては非常に物珍しかったようだ。

 その上に、私は応援団の命令で強制で坊主頭にされていたので、それも影響していたのかもしれない。

dfgarger.jpg



 まあ無理もない。


 真面目なクラシックギターオーケストラ部に応援団上がりの身長185cmの坊主頭が入ってきた。


 これで目立つなという方が無理な話である。

 
 実はこの時、私も周りを見渡した時に違和感を感じてはいた。ギター部という印象とは、かけはなれた人ばかりなのだ。皆それほどオシャレではないし、非常に真面目な感じの青年、女性が多い。

 どちらかというとこう…古いというか…

 しかしまあギターといえば引き語りもあるわけだからそういうもんなんだろうとこの時は勝手に自分で思い込んで、とりあえず入部に関する話を聞く事にした。

 あくまでも私の目的はギターが弾けるようになるという一点であり、ギター部自体の活動についてはまったく興味はない。ギターをうまく教えてくれるかどうか。それが重要だった。


ギター部「やあ。ギター部に入りたいのかい?」

財前「そうです」

ギター部「まず最初に言っておくけどさ。俺たちは真面目にギターを弾く部なんだ。サークルとは違う。わかるかい?」

財前「どういう事ですか?」

ギター部「サークルというのは遊びさ。遊び。好きなコトやってるだけで何の責任もないだろ?でも俺たち農友会は違う。ちゃんと学校から部費が出てるからそれなりの事はしないといけない。」

財前「それなりの事というと?」

ギター部「12月に定期演奏会があるんだ。俺たちの最大のイベントはそれさ。そこで観客を楽しませること。それで東京農業大学の宣伝にもなるし、学校も部費を払っているという面目が立つわけさ。だからそのためにも12月の演奏会はキッチリとした演奏をしなければならない」

財前「なるほど」

ギター部「簡単に言うと12月の定期演奏会と11月の文化祭の演奏が2大イベントになるかな」

財前「年に2回ですか。それ以外の時はどうしてるんです?」

ギター部「もちろん練習さ。」

財前「なるほど」

ギター部「まあ普段の日はバイトとか勉強が忙しければ練習も休んでいいし、部室に来る必要もないけど、定期演奏会や文化祭前は来れる日は毎日必ず来なければならないよ」

財前「ふむふむ」

ギター部「その辺りの規律があるっていうのがサークルとの違いかな」

財前「なるほど。学校の宣伝のために活動しているのがギター部であると」

ギター部「そうだね。だから自己満足のサークルとは違うのさ。」



財前「ふ~む…という事は…ギターサークルに入るよりはギターの上達も早いんですかね」

ギター部「そりゃあ練習時間が違うからね」

財前「バッチリですね。ギターがうまく弾けるようになりたいからギター部にしたんですよ」

ギター部「そうなんだ。ギターは部費で購入している分が何本もあるから基本的にはそれを使っていいよ」

財前「え?そうなんですか?」

ギター部「そこがサークルと違うところさ」

財前「なるほど…」

ギター部「とりあえず体験で入部してみなよ。丁度さ、低音のパートの人が欲しかったところでさ。君、背が高いから調度良かったんだよね」

財前「低音のパート?」

ギター部「まあオーケストラだからね。それぞれのパートがあつのさ。主旋律を弾く人は小さいギターを使って中音は中のギター。そして低音は大きいギターを使うのさ」

財前「へ~。ギターの大きさって均一じゃなかったんですね」

ギター部「クラシックギターはそうだね」

財前「じゃあとりあえず体験入部します」

ギター部「いいね。じゃあそうしなよ」



 これは当時大学1年生の6月の話である。

 要はこのギター部というのはオーケストラのギター部でサークルとは活動内容が違う。なぜなら学校から部費の一部を貰っているので、学校の宣伝をどこかでしなければならないため、11月の文化祭の時と12月の定期演奏楓一般の人に演奏を聴かせるのだという。

 特に12月は重要で大きなホールを貸しきって演奏会をやるらしい。

 
 気になったのは反しの節々に「サークルとは違う」という言葉を入れていたこと。そこまで強調するものなのか?と個人的には思っていたが、この時はそこまで気にならなかった。

 つまりそれだけ真面目にしてるんだなあと勝手に思い込んでいた。


 私はとりあえず体験入部をし、部室のギター部の面々に挨拶をした。

 皆良い人だ。応援団の話をすると「大変だったね~」「応援団なんて辞めて正解だよ」と言ってくれる。

 私は大学に入って初めて何かやさしさに触れたような気がして安心感を得た。

 そして思ったのだった。ここギター部は良いところだなあ…と。


 しかし一人だけ…まるで何年もギター部に居座っているようなオーラを醸し出し、既にギターをなぜかうまく弾きこなしている男が部室の隅にいた。

 見るからに中年。気難しそうな性格をしている人なのはわかった。

 恐らくギター部のキャプテン…か何かではないだろうか。存在感が半端ない。とりあえず新入りの私はその主に挨拶をしておく必要があると思い、その主に挨拶をする。


財前「あ…あの…ギター部に体験することになった財前ですけど…」




青柳「ん…」

gow08.jpg

青柳「誰だ?おまえ…」

財前「は…はじめまして!」

青柳「ん? …ああ…。何だ?おまえ新入りか」

財前「は…はい。まだ体験入部ですけど」

青柳「ガハハ。そうかそうか。いやあ。新しい仲間が増えるのはいい事だ。絶対気にいるぜ!?この部。いい人ばっかだしよ」

財前「そうですかw」

青柳「で?名前はなんていうんだ」

財前「財前です」

青柳「へ~。どこ出身なんだお前」

財前「徳島県です」

青柳「徳島か~行った事ねえなあ。俺は埼玉だな」

財前「ほうほう」

青柳「それと俺は青柳ってんだ。まあ今後ともよろしく頼むよ」

財前「こ…こちらこそよろしくお願いします」



財前「ギターうまいですね。今度よろしければ教えて下さい」

青柳「ん?ああ。ガハハ。まあ俺も毎日練習してっからよ。ちょっとはマシになったかな」





 …

 …や…やべえ。

 この人とんでもない威圧感じゃねえか。きっとギター部キャプテンに違いないな…。
 
 まあとりあえず挨拶しておいたし…大丈夫だろう。




 その後私は、明らかに1年生であろうという集団の方に向かい、色々と話しを聞くことにした。
 
 どうやら応援団とは違い、この4月に入部した1年生がギター部は15人もいるらしい。

 そしてその内の半分以上が女性という素晴らしい環境。

 この時再び応援団を辞めてよかったと心から感じた。やっぱりあんな所にいるもんじゃない。


 ただひとつ気になっているのは女性が多い割には綺麗な人がいない事だった。

 少なくとも今日見た部員の中に「かわいい」「彼女にしたい」と感じた女性は一人もいなかった。まあこの部分は少々残念ではあったが、そもそもギター部に入った理由はギターが弾けるようになって女性を口説くという目的なので気にならなかった。

 そもそも大学全体レベルで言えば東京農大には数千人も学生がいるのである。

 特に拘る必要もなかった。


 という事はギター部の部室にこれ以上いる必要はない。

 まあとりあえず今日のところは挨拶も済ませたし…帰るか。




 と思って出口の扉に手をかけた時だった。










青柳「おうおうおう。おまえなんだ?もう帰るのか!?」

gow08.jpg











財前「え…」

青柳「せっかく来たんだしもうちょっと部室にいろよ。もし何だったらギターもそこにあるし弾いてみればどうよ」

財前「は…はぁ」

青柳「なに。今日アルバイトとか?」

財前「い…いえ。アルバイトはまだやってません」

青柳「じゃあいいじゃん。もうちょっと遊んでいけよ部室で」

財前「は…はぁ…わかりました」

 

 …

 なんという威圧感…。だがキャプテンに言われたら仕方ない。

 だがギターを弾くにも弾き方をしらないので… それにギターを弾けっていっても、ギターケースにはなんか個人的シールとかステッカーとか貼ってあって明らかに誰かの私物っぽい雰囲気。

 明らかに共有のギターとかじゃない。
 
 勝手に弾いてはいけない雰囲気が漂ってるのだが…。それに今日来たばかりなので友達もいないし、正直座ってるだけは苦痛なんですが…。

 1年生に話しかけようにもなんか…雰囲気的に暗そうな人が多くて何か話しかけづらいというか…なんかもっとアホっぽい奴はいないのだろうか。

 でも青柳キャプテンの言うことに逆らって帰るのもどうかと思うので、とりあえず部室の端に正座して座っていると…





 「ちぃ~~す」



 という挨拶と共になんかとんでもない奴が部室にやってきた。

 なんとその男…赤髪のロンゲ。

 それでいて顔は結構イケメン。

 syankusutop.jpg


 これは…私が当初イメージしていたギター部…というかギターサークルにいそうなお兄さんな感じの男である。
 
 私はこの時淡い期待をした。

 おまえ…ギター部であってくれ。そして1年生であってくれ…。


 コイツとならいきなり打ち解けて友達になれそうな気がする!


 

 …



 そして



 どうやら私の予感は的中したようだ。奴は調子よく先輩にペコペコ頭を下げて挨拶したあと、1年生と思われる集団のグループの方に入っていった。見るに1年生は奴とタメ語で話している。そして奴は先輩とは敬語で話している…。

 つまり確定である…。奴は1年生。そしてギター部であると。

  
 だが私の方もあの集団の中に飛び込むのは気が引けた。何しろ私は今日入った新入りである。いきなり彼らのところへ行って「やあ。よろしく~」と言うのも変な話だし、「あ。僕も1年生なんですけど友達になりません?」っていうのも変な話だ。

 と言ってこのまま帰ろうとすると青柳キャプテンにまた怒られるし…。


 …というわけで

 とりあえずタイミングを待つことにしたのだが、チャンスは意外と早く訪れた。どうやらあの赤髪の男…1年生の集団と最初は調子よく話していたが、すぐに話題が尽きたらしくなぜか今ぼっちになってる。

 一人ぼっちになってる…。


 まあ無理もない。そもそも見るからにあの真面目そうな軍団と赤髪の奴は人種が違うし、話も合うわけがないと思う…。


 そんな風に観察していると私は奴と目が合った。

 途端に奴の目が輝き出す。


赤髪「あれ?あれ?お兄さん新入り?」

財前「え…ええ。そうです」

赤髪「ちょ…デケエなw 身長高すぎない?」

財前「そうですかね…」

赤髪「ああ。敬語はいいよ。俺も1年だから」

財前「おお。そうなの?よろしくw」(知ってたけど)

赤髪「うわぁ。なんかうれしいなあw ギター部で初めて気が合いそうな人に会ったよ」

財前「そう?」 

赤髪「俺は敬助ていうんだ。よろしくな」

財前「よろしく」

敬助「それとさ。聞いたよ~。君応援団に入ってたんだって?」

財前「ああ…まあ… でもなんで知ってるの?」

敬助「いや。あそこの1年の奴らに聞いたよ」

財前「聞いてたのかw」

敬助「なんか君さ。怖がられてたよ~。あそこの奴らに」

財前「え?なんで?」

敬助「そんなん普通に考えたらそうじゃんw 坊主でその身長だろ? それに応援団上がりってww ヤバいっしょ」

財前「…確かにww」

敬助「まあ俺も同じようなもんだけどさ~。どうもギター部の面々とは馴染めなくてね~」

財前「その髪じゃあなあ…」

敬助「だよな~w どっちかというとギターサークルのノリなんだよね。俺って」

財前「じゃあそっち行けばいいじゃん」

敬助「まあ様子見てからかな。サークルなんていつでも入れるし。やろうと思えば掛け持ちでもいいしね」

財前「なるほど」

敬助「色々経験したほうがいいでしょ。大学生活楽しまないとさ。応援団も良い経験になったでしょ?w」

財前「おお!君わかってるねえ。そりゃもう金払ってでも経験したほうがいいぞ応援団」

敬助「まじで?何するのよ応援団って」

財前「腕立てして応援するだけ」

敬助「ギャハハハハ。なんだそれ無茶苦茶面白いじゃん。ギャグだなww」

財前「真面目にやってる人もいるからギャグじゃないけどw」

敬助「ほう?じゃあ実際どうだったの? 楽しかったの?応援団って」

財前「実は…かくかくしかじかで…」





財前「応援団…。アリかナシかでいうと…」

敬助「うんうん」

財前「ナシだな」

敬助「ギャハハハ。おまえ面白いな」

敬助「しかしすげえな!腕立て1000回とか今時やってる奴いるのかww」

財前「口で言うのは簡単だけど地獄なんてもんじゃないぞ!?」

敬助「ギャハハハ。そりゃそうだ。俺にはできそうにないや」



 なぜかわからないが、赤髪の敬助とはいきなり意気投合した。

 コイツ…良いやつだ。

 しかも驚くべきことにコイツ…結構イケメンだなあとは思っていたが、それもそのはず。生粋の東京人で、なんと子供時代…「さわやか3組」という番組に出演していたタレントでもあったのだ。

 さわやか3組というのは恐らくほとんどの読者が知ってると思うが、NHKの教育番組の15分枠の番組。学校で見たりした人もいるのではないだろうか?

 1987年4月~2009年3月まで放送されている。

 

 どうやら芸能関係の仕事をしていたのは子役時代だけだったらしいが、まさかタレントだったとは驚きである…。通りで整った顔をしているわけだ…。

 しかし…

 これだから東京は素晴らしい。これだから大学は素晴らしい。

 ちなみに赤髪の敬助とは今だに交友関係があり、今でも東京出張時にたまに飲むし、結婚式に呼ぶ呼ばれるの仲だったりする。

 そんなこんなで

 私たちの話はギター部の部室で最高に話が盛り上がっていたのだが…

 




 そんな私たちがうるさすぎたのか、ここで青柳キャプテンが…





















青柳「おまえらウルせえよ。お前らの声で俺のギターの音が聞こえづらいだろうが!」

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 恐ろしくドスの利いた声。


 …

 あたりの空気がピリッと引き締まり、シーンと静まり返る。


 ヤバ… 少し話が弾みすぎたか…

 私の背中にとっさに緊張感が走った

 さすがに青柳さんを怒らせるのはヤバい… 

 しかし赤髪の敬助がこの時とんでもない行動に出た。


 なんとキャプテン青柳さんに向かってとんでもない暴言を吐いたのだ








敬助「うるっせえよ。大してデカイ声じゃないだろうが」

青柳「ああ!? こっちは練習してんだよ」

敬助「部室でしゃべっちゃいけないって規定はないだろ?」

青柳「くだらねえおしゃべりする所じゃねえんだよ」

敬助「頭が固い奴だなあ」

青柳「ああ!?」

財前「お…おい…おい敬助」

敬助「ん?」

財前「マズイだろ…」

敬助「何が?」

財前「なんでおまえ先輩にタメ口なのよ」

敬助「!?」

財前「青柳さんにタメ口はさすがにマズイだろ…」

敬助「あ。ギャハハハ。おまえ知らないの?」

財前「!?」

敬助「コイツ1年だぜ?」

財前「え?」

敬助「こいつこんな老けてるけど1年なんだよw」

財前「…」













































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工エエェェ(´д`)ェェエエ工

















財前「え…ちょっと待て。この人1年生なの!?」

敬助「そうそう。みんな勘違いするんだよなw」

青柳「…」

財前「お…驚かせやがって…」

青柳「俺は別におまえに先輩だなんて言った覚えはねえぞ?」

財前「いやあ。正直最初OBかと思ったよ。30代後半とかの」

青柳「そんな老けてねえだろ!」

財前「いやいや。老けてるというか、OBって言っても違和感ないレベルってだけ」

青柳「うるせえよ」

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財前「でもなんでそんなギターうまいの? 昔からやってた?」

青柳「いや。始めたのはここに入ってからだ」

財前「じゃあ1ヶ月やそこらで弾けるようになったの?!」

青柳「まだまだだけどな」

財前「なんだギターって1ヶ月でそんなうまくなれるのか。じゃあ俺も練習がんばろうかな」

青柳「真面目に練習すればだぞ」





敬助「コイツ毎日弾いてるからなw 普通は短期間でこんなうまくならないぞ」

財前「そうか。敬助。おまえはどうなの?」

敬助「え?俺?まだギターに触ったことすらないわ」

財前「なるほどw」






 そんな感じでギター部1日目が終わる。

 なんとも…応援団と比べるとなんと楽な雰囲気だろうか。こうやって県外の人や東京の人と気軽におしゃべるができるだけで「大学に来て良かった~」という気になる。

 何しろ徳島県の人とは発音から言葉遣いから考え方から全然違うから凄い新鮮。

 なるほど~。これが大学生活というものなのか~。



 私とギター部とのファーストインプレッションは非常に良かった。

 未来は希望に満ち溢れていた。

 この楽しい雰囲気でギターも自然とうまくなり、彼女もできて、友達もできていけば言うことは何も無い。これぞキャンパスライフ。これぞ大学生活だと思った。


























 そして

 数週間後…
 
 私はいよいよギターの練習を開始することになった。先輩方が私に与えてくれたギターはバスギターというもので、普通のギターよりも一回り大きいものだった。

 そして私は低音パートというグループに分けられた。

 低音パート担当の先輩は女性のマチコ先輩。

 私はギターのことに関しては素人で無知だったため、私の体が大きいから大きいギターなのかな?と最初は思ったのだが、私と同じサイズのギターを女性も弾いてたりするし、明らかに背の小さい人も同じ大きいギターを持ってたりもしたので、その点だけが不思議だった。

 

 先輩が説明をする


マチコ先輩「さあ。皆さん。いよいよギターの練習です。私たちのグループはバスグループ。主に低音を担当するパートです。オーケストラで言うとオーボエ、ベース、ドラムなどの担当ですね。じゃあ最初にドレミファソラシドと弾いてみましょう。よく見ていてくださいね。ここがドです。」

財前「ほうほう…。ここがドか。」

マチコ先輩「そしてここがレです。ここがミ。私の指の形をよく見て下さい。こうやって弦を押さえます。ハイ。いいですか?じゃあドレミと弾いてみましょう。さんはいっ!」



 ド…レ…ミ…



 とりあえず音が出た。しかし非常に小さい音だがこれは…



マチコ先輩「はいはい。財前くん。弾き方が違うよ?バスギターの弦は親指で弾くのです。」

財前「え?親指?」

マチコ先輩「そうですよ。バスギターは親指以外使ってはいけません」

財前「親指だけ…?」



 ここで大きな疑問が湧き上がった。


 一応私もギター演奏を見たことがあるから知っているのだが、ギターというものは普通ピックというものを使って弾くのではないだろうか? 親指そのままで弾くとか聞いたこともないんだが…

 1177508410.jpg

財前「ギターはピックを使って弾くのではないのですか?」

マチコ先輩「ああ。それはエレキギターとか普通のギターはそうだよ」

財前「そうですよね」

マチコ「それは自分で一人で演奏したりだとか引き語りしたりだとかはそうだね。でもこれはクラシックギターだし、私たちがやるのはオーケストラだからそういう一人でやれる演奏じゃないのよ」

財前「え?」

マチコ「私たちは低音担当なので低音だけを弾きます。主旋律はファースト、セカンドと呼ばれるパートが担当。和音はプライム、そして重低音はまた別のパートが担当しているの。だから私たちは全てが合わさってひとつの音楽を演奏するのよ」

財前「えええ!? 俺は…一人で弾き語りとかしたいんですけど。」

マチコ「それはギターが違うし趣旨も違うわね。その場合は自分でギターを買って家で練習するといいよ」

財前「…」

マチコ「あ~実はそういう人多いんだよね。みんな勘違いして入ってくる。でもオーケストラも楽しいんだよ!?」


財前「わかりました。これってバスギターが弾けるようになったら普通のギターも弾けるようになるんですかね」

マチコ「う~ん。どうだろう。少しはマシかもね」

財前「…」





 …これは正直衝撃だった。

 ギターを親指だけで弾くとか正気の沙汰とは思えない。

 ギター部というのは合奏を主にしているというのは聞いていたが、まさか一つ一つのパートが単音を演奏してひとつの音を作るだなんて思いもしなかった。

 コレって言わば…

 ギターの良さを消してるということになるんじゃ…


 一人で演奏できて歌えるというのがギターの魅力なんじゃないの!?

 

 実際そうだった。

 ドレミファソラシドの練習が終わると次は曲の音楽の練習に入り、ドソラシドとかそういう単音を弾くだけに終始。それが各パート練習した後に合奏で合わせてみたのだが…

 なんか全然盛り上がらない…。

 そして1年生を除いて、2年生3年生がお手本を見せてくれるということになった。


 当然今の2年生3年生は去年の定期演奏会を経験してるわけで曲も出来上がってるし、キチンと曲を演奏することができる。そして私たちも初めてギター部のオーケストラの演奏を聴けるという事でかなりテンションがあがった。


 確かにひとつひとつの音はショボイ。

 しかし全てが集まれば…すべてが集まれば凄いんじゃないだろうか!!


 そんな期待を胸に先輩の演奏を聞いた。






 これについては文章では表現しきれないのでYOUTUBEから動画を拾ってきた。

 実際のギター部のオーケストラ演奏というのはこういう感じである。

 

 私はこれを聞いて衝撃を受けた。

 いや。衝撃なんてものじゃない。物凄いショックだった。


 え…何これ…の世界。

 そこには私の求めていたギターの形はなかった。私からすると何の魅力も感じない音色だったのだ。合奏、オーケストラになっても変わらない。まったく何も感じなかった。

 もちろん勘違いしないで欲しい。これは私個人の感想だ。

 私を除いたギター部の部員たちは先輩の素晴らしい演奏に感動していたし、先輩の凄い演奏を聞いて自分も頑張ろうと3年間、4年間もギター部で演奏し続ける人の方が多い。 

 つまり素晴らしいのだ。


 しかし私にはその良さがわからなかったというだけの話。

 なぜか。

 それはもうお分かりになるだろうと思う。

 この演奏にナンパな匂いがするだろうか? 女の危険な匂いがするだろうか?


 まったくない。

 要は女が欲しいからギターをするわけであって、私はこんな事にかまけてる暇はないのだ。


 …

 私はふと青柳を見てみた。…彼は先輩たちのギターの音色に泥酔している…。酔っている。目がトロンだ。

 やつとは話をしても無駄だ…。私は瞬時に悟った。 
 

 次に私は敬助を見てみた。

 一応奴も真面目に聞いているが、音色に酔ってはいない感じだ。
 
 近くによって敬助に聞いてみる。


財前「な…なあ。おまえ。この演奏聞いて正直な所どう思った?」

敬助「ん…ああ」

財前「俺は正直…ちょっと間違えたかなって思ったんだけどさ」

敬助「え?何を?」

財前「いや…この部に入ったことを…」

敬助「ぶwww」

財前「悪いが正直何の魅力も感じない。曲も知らないし…眠いし」

敬助「奇遇だな財前」

財前「ん!?」

敬助「俺もまったく同じ考えだwwww」

財前「やはりwwwww」

敬助「これ全然ロックじゃねえじゃんw」

財前「おまえロックしたくて入ったのかよここ」

敬助「いや…なんつうか。もっとこう…ノリノリ?っていうか」

財前「ああ…わかるよ…」



 そんな話をしている内に先輩の演奏が終わり、1年生からは大きな拍手が巻き上がる。
 
 パチパチパチパチ


 青柳なんかは感動しきりで


青柳「あの旋律やばくねえか!? さすが先輩だよなあ。最高の演奏だったよ><」 

他1年生一同「そうだよな! 俺もああいう風に演奏できるようになりたいなあ」

財前、敬助「…」



 何度も言うが私はギターのオーケストラを否定しているわけでもないし、ギター部を否定しているわけでもない。これはこれでアリだと思うし今でも素晴らしいものだと思っている。

 単に私の思っているギターとは違っただけなのだ。

 だから私はやらない。それだけの事である。





 …




 adfggaga.jpg





 それから私はあまりギター部には顔を出さなくなった。

 当然である。魅力を感じないから。

 それに練習しても親指でギターを弾く練習をしてもまったく意味が無いから…。だが家にはちゃんとギターを買った。もちろんクラシックギターではなく普通のギターだ。
 
 長渕剛とかその辺が使っているギターである。

 一応ギター部の練習で基礎はなんとなくわかっていたので、本を買ってとりあえず家で練習をした。

 だが、先輩も言っているようにここはサークルではない。

 ずっと部活に顔を出さないと先輩から電話がかかってくるのがギター部だった。一応部活なので…


 先輩から呼び出されるのだ。たまには練習にこいと。


 正直練習にはコレっつっつポッチも魅力を感じてなかったのだが、部室に行くことで青柳や敬助、他の1年生とも会えるので、とりあえず飲み会の約束とかそういうのをするために部室に顔を出していた。

 ギター部の練習はやる気はなかったが、1年生とかと飲むのは楽しかったのである。


 とりあえずこの数ヶ月の間になぜか
 
 青柳、そして敬助、それと公斗という奴と親しくなり、かなりの頻度で私の家で酒を飲む仲となっていたのだ。

 まあ別にギター部に行かなくても電話で彼らを呼べばいいだけなのだが

 とりあえずたまにはギター部に顔を出さないとバツが悪いし、練習と言ってもオーケストラの合奏練習。弾いたふりをしておけばOKという感じだったので…とりあえず的な感じで練習にはたまに顔を出していた。

 そしてギター部に在籍し、まともに練習しないまま月日は過ぎ、時は11月になり文化祭が始まり、そして12月になり定期演奏会が始まった。

 まあこの辺りは大学回想では

 07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
 07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
 05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)


 に書いてる生活をしているだけ。つまり女性の尻を追っかけながらリョウさんとナンパに行く日々を送っていたのだから…ギターなんてまともに練習しているわけがないのはおわかりになると思う。

 実際は2週間に1回とかそのレベルでしか部室には行ってない。

 だからバスパートのギターとかまったく弾けるようになってない。

 だが私は1年生だったので無問題だった。


 そもそもバスパートの人間は私だけではない。同じ旋律を弾く人間が5人も6人もいるのである。別に私が弾けなくても彼らが演奏をすれば何ら問題はなく合奏はできる。

 私は弾く…フリをしているだけである

 弾けないのだから当然だ。


 そして

 そのまま文化祭、定期演奏会に突入。この文化祭と定期演奏会というのがギター部にとっての目的みたいなもので、ギター部の存続理由はこの2つのためにあると言っても過言ではない。

 何しろ東京農業大学の文化祭というのは別名「収穫祭」と言って、農大で育てた野菜や牛、研究成果などを一般の方々に販売したり、公開したりするのでかなりの人が来る。

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 特に目玉が豚の一匹丸焼き…みたいな屋台である。

 その人達にギター部はひとつのブースを構えて演奏を聞いてもらう。

 そして定期演奏会はチケットを一般層に販売し、大きなホールを借り切る。そしてギター部のみでそのお客さんに対してギター演奏をして差し上げるのだ。これはある意味、東京農業大学の宣伝でもあるので部費がでる理由にもなっている。

 なぜ部室にもロクに行かず、演奏もできない私がなぜギター部に所属していたのか。

 なぜ辞めてなかったのか。

 その理由はここにあった。

 基本的に大学の文化祭、収穫祭というのは高校生や中学生の頃とは違い、全員参加ではない。

 基本的に3年生からの研究室、そして1年生2年生に関しては農友会と呼ばれる部活か大きなサークルに入っていないと参加できない。

 そう。誰でも参加できるわけではないのである。


 私の見積もりでは半分以上の学生は収穫祭に参加しないと思う。

 大学というのはそういうものなのである。

 自分で何か行動してないと本当にイベントも何もなく終わってしまう。これはあまりにも勿体無いのだが、実際そうなのだから仕方が無い。どこにも所属してなければ収穫祭に来る理由がないのだ。

 それはまあ…客として来るというのもアリだが、東京農大の学生が客として参加するというのは少し違うと思う。どうせなら運営側として参加したいという気持ちがあるはずだ。


 そんなわけでとりあえずはギター部に参加しておけば一応農友会という名目の元で文化祭で大きい顔ができるわけである。

 ハッキリ言うとこれがキッカケで他大学や一般人の女性と知り合うこともできるわけだ。

 なぜなら農大生目当てに東京農大の収穫祭に来る高校生や…他大学の女子学生も結構いたりするから。

 
 実際収穫祭では女子高校生とちょっと良い思いをさせてもらって…この展開は美味しすぎるとしか言い様がなかった。
 

 しかしだ。

 しかしだ。

 確かに収穫祭で一般の女子高生と仲良くなりおいしい思いをしたものの、実際これって…リョウさんと一緒にナンパに行っても同じことができるわけで、別に収穫祭でなければできない事でもない。

 もちろん収穫祭に運営側として参加できるなら…もしかして「チズエさんとも…」という下心もあるにはあったのだが、残念ながら「チズエ」さんは収穫祭自体に参加しておらず、これは完全に無駄骨に終わる。


  302-4.jpg



 こうなると唯一の優位性はギター部の演奏を一般の方に聴いてもらって喜んでもらうという事だったのだが…


 正直言って延べ人数にしてギター部の演奏を聞きに来た人数は数十人。

 数十人である。
 



 もちろん私はこの人数を否定しているわけではない。これはこれで良いと思う。

 しかしだ。私としては少ないと思ったのだ。

 
 私はギター部に入って収穫祭も定期演奏会もまだ経験してなかった。だから何らかの期待は持っていたのだ。先輩が口癖のように「文化祭と定期演奏会がギター部の活躍の場所だから!感動するよ!」と言ったからどんなモノかと期待しすぎていた所もあったのかもしれない。

 収穫祭に来た客は数十人。

 少し私はこの人数には疑問を持った。


 そしてその後の12月…定期演奏会が開催された。

 これはギター部の単独開催だ。ホールを借りきってチケットを買って貰って一般人に来てもらう。



 しかし…

 そのホールに来たのは同じく数十人だった。

 多分20人か30人くらいだったと思う。

 そして…ほとんどがOBであり知り合いだ…。


 
 これって宣伝になってるんだろうか?

 冷静に考えると疑問だ。


 だが1年生も、他の2年生、3年生も凄くテンションが上がっていた。打ち上げの飲み会でも「俺たちはやったぞ~~!!」「今年の定期演奏会は最高だったな!!」なんて感じで盛り上がっている。

 感動しまくってる。

 
 何度も言うがもちろん私はこのギター部の活動を否定するわけではない。素晴らしいと思う。

 しかし私にとっては違った。ベクトル自体が違った。

 明らかにおかしかった。これは敬助も同じ疑問を抱いていた。


 少なくとも私には自己満足にしか見えなかった。

 確かに定期演奏会で一般の人に音楽を聴かせる…という事で目的は達成しているのかもしれない。確かに大学の宣伝にもなるし、東京農業大学に対する良いイメージ作りにも役立っただろう。

 だからこそ学校からも部費が出ている。


 だが果たしてこれで宣伝になっているのだろうか?

 例えばこの時代にはまだインターネットはそれほど発達しておらず、Youtubeもニコニコ動画もなかった。だからこの時にはできなかったのだが、もし演奏をビデオカメラで取って今Youtubeで上げれば…

 少し宣伝すれば再生数は100を超えるはずだ。


 ある意味ではこの時点で定期演奏会を見た人数に勝つことになる。宣伝としてはこちらの方が効果的な手法となる。


 また当時思ったのだが、農友会というのが大学のイメージ作りに必要な団体であるのであれば、OBしか客の来ない定期演奏会をするのではなく老人ホームで演奏してはどうかと思った。

 ソッチの方がよほど大学の宣伝にもなるし良いイメージを地域に与えるのではないか。


 皆が定期演奏会の成功の満足感と高揚感に浸っていて「飲み会」をしている中…私はそんな事を考えていた。


 だが、もちろん老人ホームで弾こう!なんて提案するつもりはない。

 そもそもギター部はこれで辞めるつもりだったからだ。
 
 収穫祭も定期演奏会も経験したし、もはややり残したことはない。私としては2年生になったら「チズエ」さんが所属しているスキーサークルに入るつもりだったからだ。


 大学生活というのは人生に1度しか無い最良の時である。


 無駄な時間を費やしている暇など無いのだ。


 
 そんなわけでスキーサークルに入ろうとしたのだがここで問題が起こった…。

 今は12月…。知っての通り私たちギター部は定期演奏会を終えたので新入生が入ってくる4月まで目立った活動はない。言わば休息期間であるのだが、逆に言うと私たちは2年生になる準備の期間を与えてもらっているとも言える。

 ちょっと考えて欲しい。

 私たちの部活はギターオーケストラだ。オーケストラ。

 つまり演奏者だけではなく指揮者というのがいる。

 歴代東京農業大学の指揮者というのは学生が努めてきた。

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 指揮者は2年生の指揮者と3年生の指揮者がいる。もちろん3年生の指揮者がメインだが、指揮者はそれほどすぐには育たないので2年生の間に指揮者を選定し、1年間の修業を経て3年生の指揮者になるのだ。

 ゆえに私たちは来年2年生になるという事でギター部の指揮者を決めようという話になった。

 これは非常に重大な会議で厳格な投票の元で指揮者が選ばれる。

 
 もちろん一部の変わり者以外は指揮者などやりたくはない。

 当然である。みんなギターが弾きたくてこのギター部に入ってきているのだから。

 誰がギターではなく指揮棒を振る指揮者になろうと思うだろうか。ここは音楽大学ではないのだ。指揮者になったからと言って就職に有利になるわけでもなければ、学校から良い成績を与えてくれるわけでもない。

 ゆえに音楽やオーケストラが本当に好きな人でないと指揮者などできない。


 それを選ぶ会議がこの会議だ。


 投票は1年生だけの投票によって行われる。

 当然多数決だ。一番票が多かった者は問答無用で指揮者にならなければならない。

 もちろん希望者がいれば別だが、希望者などいるわけもなかった。

 私的には「ギターがうまい青柳がすればいいのでは?」と思っていたので家で飲んでいる時などに何度か青柳に「おまえやれば?」とか言ったりもしたのだが、どうやら青柳は「俺が演奏をやめたらギター部の演奏が軽くなるだろ」という理由で演奏者に留まりたいようだった。

 
 …

 この時…私は読みがあまりにも甘かった。

 
 私はギター部の練習にほとんど顔を出していないしギターが下手だ。正直…敬助と遊んでいたことしかほとんどギター部の活動らしい活動をした記憶はない。

 だから私が指揮者に選出されることなんてありっこないって思ってた。

 そんな事は起こるはずがないと考えてもいなかった。


 そりゃあそうである。まともな頭をしていれば私を指揮者に選んだりはしない。



 だってどう考えても真面目に練習するわけがないし、指揮もまともにするわけがない。






 あり得ないのだ。いや。あり得てはいけないのだ。私が指揮者に選ばれるなど。









 だいたい他の部活の奴らからも言われていたのだ。


 もう敬助とか財前がギター部にいるだけで笑えてくるって。そもそもおまえらが真面目にあの演奏をしているだけでギャグでしか無いって。だって明らかに人種が違うから…

 
 そう言われていたのだ。

 考えてみて欲しい。敬助はロン毛で赤毛。そして私もこの時は坊主ではなく、この6ヶ月で髪は伸びロンゲでパーマで茶髪だった。


 それがこういう中に入って座ってギターを演奏していたのた。

 

 あり得ない。おかしい。明らかに浮く。人種が違う。絶対浮くに決まってるじゃないか。私と敬助とか…。

 実際雰囲気はこんな感じだったから想像つくと思う。

 そりゃ他の人は笑うと思う。実際に結構話題になってて…他の部活からも「ギター部にいる赤毛と茶毛のロンゲ二人がギャグだ」って有名だった。珍しくてわざわざ見に来るヤツらすらいた。

 まあそれはそれで楽しかったのだが、実際私はストーカー事件で名前は結構売れてたし話題は不要。それにこれ以上真面目なギターをやるのは苦痛だった。

 いや…具体的には真面目にやってない。そもそも弾けてない。ギターを空弾きというか…ほぼエアーギターに近かったから。どうでも良いのだこんな演奏など。ギターで合奏などなんの意義も感じない。

 だから私は早く辞めたかったのだ。

 ギター部を。 

 スキーサークルとかで早くハっちゃけたかったのだ。

 真面目なことなど望んでないのだ。大学は遊ぶところなのだ。社会人になって遊べなくなる前に全てを経験しておくところなのだ。

 立ち止まっている暇など無い。真面目にギター部などでかまけてる暇など無いのだ。




 わかっていた。


 そんな事は私も敬助もわかっていた。



 もちろん…


 この投票で指揮者などに選ばれなければその計画はスムーズだっただろう。





 しかしあろう事かこの会議で私が指揮者に選出されてしまったのだ!!







 そう。私に投票があったのである。











 理由はわからない。さっぱりわからない。

 だがこの1票をバカヤロウの敬助がギャグで入れたことは間違いない。それは良い。そんな事では指揮者にならないから。しかし他の人は指揮者を「勉学に励むこと」を理由に辞退した。

 本来指揮者の事態は許可されないのだが、運が悪い事に選ばれた人たちは特待生であり、成績が低下すると奨学金が打ち切られる…という大義の理由があったため特別に許された。

 そうなると次の矛先は私である。

 私は大学の成績はもちろんトップレベルではないので奨学金目当てに勉強をするという理由がない…。

 そうなると途端にみんな「指揮者は財前」という声が高くなる。

 理由は「面白そうだから」とか「今までにない指揮者が見れそう」とか「ギター部を楽しくしてくれそう」とかそういう理由だったと思う。

 アホばかりとはまさにこの事である。


 これを見ていた先輩たちは「財前が選ばれたんだから財前が指揮者だな」とか勝手なことを言っていたので私はハッキリと言った。私は指揮者などやるつもりはないと。

 ていうかヤル気がないと。

 でもまあ前で指揮棒を振るだけ?ならやらないでもないと。

 
 そもそも練習には相変わらず参加するつもりはなかったし、真面目にクラシックを演奏する気もなかったのだから。

 指揮者というのは部に一人しかいない。演奏者というのはたくさんいる。つまり代わりがいる。指揮者は代わりが効かない。この時点で考えればわかるはずだ。指揮者は練習には基本的に毎日参加しなければならない。演奏者のように休めない。代わりがいないのだから。

 練習に毎日参加しなければならないとか愚の骨頂である。

 それにギター部のことを本当に愛し、曲の編曲までしなければならない。


 無理だ…。そもそも私はギター部を愛してはいないのだから。



 そんなの私にできるわけがないだろう…ていうか練習に毎日来るわけがないだろう…。


 もちろんそんな事はギター部の部員もわかっていたと思う。だが恐らく…指揮者をやりたくないという気持ちから、とりあえず私に決めておけば後はなんとかなるだろうと思ったのだろう。財前も心変わりして指揮者を真面目にやるかもしれないと思ったのだろう。



 …


 だがこの流れは止まらず私は指揮者に選出された。

 たった1票で。

 もちろん私は真面目にやる気はなかった。こんな1票で指揮者にされるなんて酷すぎるとしか言い様がない。だが逆に考えるとほとんど練習に参加してなかった私を指揮者にする…という事は

 つまり彼らにもそれなりの覚悟があってのことなのだろう。私はそう勝手に理解していた。

  


 …



 しかしこれがとんでもない事態を招く結果となる。

 なんと指揮者というのは前で指揮棒を振るだけの存在ではなかった。なんと週に1回…指揮者学校というのに通わなかればならないという話を先輩より聞かされたのだ。

 そしてそれは部費で指導費を支払っているのでサボるのは許されないとのことだった。

 冗談じゃない。

 私はこの当時リョウさんの影響でバイクの免許を所得している最中であり、指揮者学校などに行っている暇はなかったのだ。

 だいたい部活動で絶対に休んではいけないとかあり得ない。


 これは仕事か!? 仕事なのか!? 

 それに馬鹿らしくなってくる。もし私が指揮者を一所懸命したとしよう。1000人とか10000人を相手に演奏をするというのなら力も入るだろう。しかし現実はどうだ。

 実際には収穫祭でちょこっと一般人数十人の前で演奏するのと、定期演奏会で数十人のOBに演奏するだけ。


 これだけのために私の貴重な時間を1週間に1度も潰すのか!?


 あり得ない。あり得ない暴挙だ。大義名分がない。モチベーションがない。



 もちろん何度も言わせてもらうが、ギター部の活動を否定するわけではない。彼らは素晴らしいと思う。

 だが私は違う。それだけなのだ。


 そもそもギターに対するイメージからして彼らとは違うのだから相容れるわけがない。



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 …


 結局この後私がどうなったかは…お察しの通りである。

 指揮者学校よりもバイクの免許を優先したので…1ヶ月後にすぐに問題になり、私のためにギター部で会議が開かれた。

 そこで私はハッキリと言った。

 「これだけ縛られるのなら指揮者などやる気はない」と。


 だが2年生の先輩、3年生の先輩は必死に私を説得した。いや…説得したというよりも私を何か…犯人というか悪者扱いをして問いただしている…というのが正解かもしれない。

 この時の同級生…1年生の悲痛な冷たい…何か汚いものでも見る目で私を見ていた光景は未だに忘れる事はできない。

 彼らの心の声が聞こえてくるようだった。


 「なんでコイツ指揮者に選ばれたのに真面目にやらないの?」
 「部費で指揮者学校の経費が出てるのよ!?なんでサボるの?馬鹿なの!?」
 「こんなバカでも指揮者してくれないと私たちの誰かが指揮者しなきゃならなくなるからな」
 「こいつ無茶苦茶でしょ。指揮者に選ばれたら少しは改心して真面目にすると思ってたわ」

 
 悲痛だった。あまりにも悲痛だった。

 そしてなぜか敬助も悲痛だった。

 なぜなら彼は私に1票を入れた張本人であり、彼自身もかなり欝で参っていたのだ(笑)


 もちろん私もギター部の人たちの気持ちはわかる。

 そもそものギター部に対する気持ちが違うからだ。私は初めて3年、2年生の演奏を聞いた時からギター部の活動に対してまったく興味がなかった。そもそも演奏にも感動しなかったし、自分がそうなりたいとも思わなかった。それに収穫祭や定期演奏会に対しても意義を感じなかった。自己満足にしか見えなかったのだ。

 だが他の1年生は先輩の音楽に感動し、ギター部の定期演奏会にも誇りを持っていた。

 ゆえに彼らはギター部を自分たちの大学生活の青春と捉え、真面目に大切に思っていたのだと思う。



 だから私に腹が立ったのだろう。私を許せなかったのだろう。

 でも私を選んだ時点でそれは…叶わぬ願いというのがなぜわからなかったのか。

 それは彼ら自身が指揮者ではなく、演奏者でありたいという事を望んだことに甘えがあったのかもしれない。




 この事態は長引き、遂には私の家に引退した4年生、OBまでもがやってくる事態となった。

 この時様々な事を聞かされた。


 「東京農業大学ギター部の長い歴史の中でこんなにふざけた指揮者は初めてだ」から始まり「おまえには指揮者に選ばれたという責任感はないのか」という事まで…

 30代の年のOBに延々とギター部の素晴らしさを聞かされ、意義を話された。

 これ…応援団の時と同じである。

 延々と自分はダメ人間だという事を聞かされ、それを脱出するには頑張るしか無いだろう!みたいな事を聞かされる。

 明らかに余計なお世話だった。なんだこの糞な説教は。ギター部に入って演奏したから良い人間になれるとでも言うのだろうか?

 あり得ない。そんな事はない。

 私には高校時代に青春し忘れた人たちが今必死にそれを取り戻そうと部活動に打ちこんでいる様にしか見えなかった。

 不必要だ。私にそれは不必要だ。

 東京に私は4年間しかいない。大学は4年間しか無い。こんな事をしてる場合ではないのだ。


 OB、4先生に私はそれを話した。

 とにかく勘弁してくれと。ギターはギターでも私はアコースティックやエレキの方をしたいわけで、ポンポンと単音を親指で弾いてる場合じゃないんだと。それにやりたいことが他にいっぱいあるんだと。

 OB、4年生はキレそうになりながらも、コレ以上は時間の無駄だと思ったのか…


 わかったよ。このろくでなし野郎が


 という捨て台詞と共に帰っていった。


 だが…

 その後、この会議は3回以上開催された。

 開催理由は当然「財前の件について」という議題で…。そうそれほど指揮者というのは大切なポジションであり、それほど指揮者というのはギター部にとって重要な存在なのである。

 だからそんな重要な役に私を置くのがまちがいだと何度も…


 毎週私を攻めるだけの会議が繰り返された。

 これに遂に敬助は耐えられなくなり彼はギター部を辞めた。なぜなら彼は私の良き理解者でもあり、ギター部の活動に疑問を持っているひとりでもあったからだ。彼も私が責められるのを見て苦しかったのだろう。彼も私と同じで部活動を真面目にする気はなく、ただそれを利用してギャグやネタ的に生活を楽しみたいだけだったのだ。

 今のギター部は彼にとってそういう場所ではなくなっていた。それだけの話だ。

 そして

 肝心の私はこの時、丁度バイクの中型免許が取得完了し、400CCのドラッグスターを購入。

 バイク(ドラッグスター)のローンを払うためにバイトをしなければならなくなったので、焼肉屋で働くこととなっていた。ゆえに指揮者などさらにやってる場合ではない…。

 バイトをしなければならない。

 それに散々部活で「おまえは社会で通用しない」とか言われていたが、いざアルバイトをしてみると社会人の人たちに厳格に指導されサボるどころではない。こっちの方がよほど厳しい。だが金を貰ってると思うと納得してそれに従うことができる。

 アルバイトは楽しかった。それはまだ知らない社会だったから。


 こうなると私には時間がない。



 結局ギター部は辞めさせてもらった。

 本当はもっと早く辞めさせて欲しかったのだが、指揮者というのはそれだけ誰もがやりたくない役職だったためかなり長引いてしまった。


 もちろん辞められたのはもう一つの理由がある。



 それは新しい指揮者の目処が立ったからだ。



 そう…



 ここで…



 次期指揮者と決定したのが…





 というより




 次期指揮者として…



























 どうやら俺の出番のようだな…

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 と指揮者を自ら立候補したのが…青柳だったのである。



 











 これが未だに私が青柳に頭が上がらない理由でもあり、彼が私の家に来た時、彼がどうしても私に嫌味を言ってしまう理由だ。

 彼はギター部を信じており、ギター部の道は正しい道だったと確信ている。それが間違っているなどあってはならない事だ。

 反面私はそれとは正反対の意見だ。続けなくて本当に良かったと思っている。

 そもそも続けていたら今の私はないだろうから。



 だが青柳にとって私はひとつの指標でもある。私は彼よりも不幸せでなければならないのである。

 それを証明することが彼…すなわち青柳の道が正しかったことを証明する事になるのだ。



 私は青柳がそれを意識的に望んでいる事は薄々とはわかっていた。これは辞めた敬助も同じだ。

 ゆえに青柳と酒を一緒に飲むと私と敬助は青柳をフォローし、彼を褒める機会が多くなる。


 「青柳おまえスゲエなあ」、「俺たちはやっぱダメ人間だよ」という事を彼の前で言う。そうするだけで青柳は機嫌がよくなり、3人で美味しいお酒が飲めるのだ。

 まあ人生ってそういうものだ。それが一番うまく行くのだから。これは暗黙の了解ってものだ。

 会社に入ったらそれを過度にならない程度に上司の前ですれば良い。それだけのことだ。

 

 実際そう思っているし、青柳がやってくれて本当に私は助かったのだから。感謝しているのだ。















 という事でこの件に関する話は終わり。

 また次回からは話は彼が家に来た所まで戻ります。






























今日の1曲 耳かきの唄 長渕剛






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Borderlands 字幕付き動画UP中  
 「買わないなら見ろ!」無理やりシリーズ化

 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフル Only Part1
 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフルOnly Part39new
 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフルOnly Part38

 ・マイリスト
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先生何やってるんスかシリーズ
本当に目の錯覚?何度見ても信じられない不思議な画像
マジたまらんww エロすぎて頭に入らないラグビーのルール説明映像
【画像あり】最近の定規すごすぎワロタwwwwwwwwwwwww
グリーのガチャ鬼畜過ぎだろ・・
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今年の漢字、何だと思う? 地震、原発、台風、洪水・・・ 俺は「災」
明日にも人工衛星大気圏突入へ 当たればアメリカが賠償
ほしのあきが結婚!競馬騎手の三浦皇成と12月に
かわいい猫の画像ください!!









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2011(Wed) 09/21

大学時代回想23 強く儚い ろくでなし(31)

財前History … Comments(31)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
11/09/18 大学時代回想24 進めば地獄、泣けばチンピラ
11/09/15 大学時代回想23 強く儚い ろくでなし
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント --)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)






 


 世田谷区桜ヶ丘。

 大学に入って3年。

 ずっと同じアパートに住んでいる。今、私の学部である農学部はこの場所にはない。厚木にキャンパスが移動したからだ。厚木はここから電車で1時間以上かかるので常識的に考えれば引っ越したほうが良い。

 だが私はこの場所を移動しなかった。なぜならこの部屋には数えきれないほどの思い出があるからである。私の大学生活の全てが詰まっており、今更この場所を引っ越すことなどできない。

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 それに農学部と畜産学部以外は相変わらずキャンパスは世田谷区桜ヶ丘にあり、この部屋は学校から歩いて5分の距離に位置しているため、この3年間の間にできた多くの友達が今だにこの家に遊びに来る。

 移動できるはずがなかった。


 だが時折激しい寂しさに襲われるのも確かだ。

 それはやはり彼女がいないからであろう。

 リョウさんと活発に活動していた頃は毎日がナンパやアクションの連続で息つく暇もなく時が流れていた。寂しさなどはそれほど感じなかった。むしろ家にいる時が唯一の休息場所だったとも言える。だが今は違う。私も4年生になり、リョウさんも昔のような遊びをする事はない。

 厚木の研究室に行く…家に帰る…厚木の研究室に行く…家に帰る

 日々の生活はこれの連続であった。

 亜美さんとも…まだ数週間の間だけだが距離を置いている。


 里沙とノリは相変わらず良い感じなので、ノリも私の家に立ち寄る機会が減っている。


 もしかしたら

 …少し寂しいのかもしれない。


 こんな時は友達を家に呼んで酒を呑むか、馬鹿騒ぎするのが一番なのだが、事前にアポを取っていないとそう簡単に友達が家に来てくれることはない。なぜなら皆…家は遠いのである。埼玉、横浜、果ては群馬から通っている人たちもいるのだから…。


 それにしても

 この感情は何なんだろう。



 好きな女性には見向きもされず、他の新たな女性に手を出す勇気もない。家で何をしようにも何をしていいのかよくわからない。反面、友達はなぜか自分のお膳立てで幸せになっている。

 やりきれない思いでPlayStationを起動するが、気持ちが乗らない状態でゲームをしても面白くはない。


 このまま寝てしまおうか。

 いや…寝たらまた朝になり、また同じ日々が繰り返されるだけだ。


 …


 こんな時…救ってくれるのはバイクである。

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 家にいても何も変わらない。

 何か…今の私には非現実が必要だ。

 私は家の外に置いてあるドラッグスターのカバーを取り、エンジンをかけて夜の道へと飛び出した。



 なんなんだろうか。この感情は。

 無性に腹が立ってくる。なぜかはわからない。苛々するのだ。

 なぜ自分は幸せではないのかという事に腹が立つ。

 多分これは彼女がいないからだ。きっとそうだ。

 それはつまり直接的に言うとなぜ「亜美さんはつきあってくれないのか」という事になるのだが、そう考えるのは脳が拒否する。あまりにも幼稚な考え方だからだ。

 そしてバイクで80キロ、100キロとスピードを出していると、いつも思う。

 このまま壁に激突したら俺死ぬよな?…と。

 これは四方を鉄とガラスで覆われている車とは違い、バイク乗りなら常に考えることだ。転ければ死ぬと直感的にわかるのだから当然だ。目の前を100キロ超のスピードで車が走っているのだから当然といえば当然だ。

 バイクに乗っているとき…それはつまり死というモノを身近に感じられるという事でもある。

 死は今すぐ目の前にあるのだ。

 そんな状態なのだが、不思議と自分が今おかしい思考状態にあるとは思わない。

 だがいつもこの状態は私を戒めてくれる。バイクに乗ると全てを忘れられるのである。

 恐らく危険状態に常にあるため脳内麻薬が出まくっているのだろうと思う。

 
 私が今ここでハンドル操作を間違えて死んだとしよう。もちろん家族を含め多くの人が悲しむだろう。しかしそれで何か世の中が変わるかといえばまったくそんな事はない。別に何も変わらない。

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 次にこう考えてみる。

 じゃあもし私がこの先生きて行くとして…亜美さんと相思相愛の仲になったとしよう。別に誰も喜びはしないだろう。私が喜ぶだけだ。そしてそれで何か世の中が変わるといえばまったく変わらない。何ら変化はない。

 つまりそういう事なのだ。

 そんな事は別にどうだって良いことなのである。

 なんせ自分は世界の人口から考えると69億分の1に過ぎないのだから。

 
 バカみたいな話だが、バイクに乗ると不思議とこういった思考になり、スッと気持ちが楽になる。

 「あ。別にいいんじゃん。別に。」

 という考えになり、そのまま成り行きに任せて生きていけばいいという結論に達するわけだ。



 もちろん今、こういった考えを文章で読むと可笑しい。馬鹿だ。普通に考えて。

 でも成人になりたての男にとって、たまにはこういった考えをする事も大事なのである。感受性が高い時期なのだから。

 普通に生活をしていると、どうしても小さい殻に閉じこもってしまう。

 例えば私で言うと、ここ数ヶ月は亜美さんの事と、大学の事しか考えてなかった。物凄くチッポケな世界である。その世界に登場人物は恐らく30人もいないだろう。

 だが実際には69億人の世界があるわけで…


 と考えるとスッと楽になるのだ。

 これは頭でわかっていても実行するのは難しい。


 今日最愛の女性に振られたとしよう。かなりショックを受けたとしよう

 そして自分にこう言い聞かせたとしよう。

 「なあに。大丈夫さ。女は世界に39億人もいるのだから。」

 もちろんこんな事…頭ではわかっている。だが実際そう簡単に割り切ることはできない。人間、なかなかそういう世界は見ることができず、どうしても「明日教室で会ったらどうしよう…」とかそういうチッポケな世界の心配をする。

 どうしてもそうなってしまう。

 だがバイクに乗って猛スピードで突っ走るとそれらは全て解決する。


 そんなチッポケな考えは死という現実の前には無意味だからである。

 自分でもわかっているのだ。もし、この先走っている道路に小さい子石があったら… それでスリップしたら…私は死ぬのだから。そこには理由などはなく、ただあるのは運のみ。運だけなのである。

 実際それで死ぬ人もいる。世の中そういう風に理不尽にできているのである。


 不思議なものだ。
 
 気持ちが楽になると急に食欲が湧いてくる。



 寂しい男とバイク。


 
 この2つの要素が合わさって腹が減ったとなれば行くところは決まっている。


 
 ラーメンである。


 ここでパスタとか定食とかいう選択肢はあり得ない。


 ラーメン以外にはあり得ないのだ。



 現在21時30分。となれば行くところは決まっている。


 東京都世田谷区羽根木。
 
 つまり下北沢周辺。


 ラーメン「なんでんかんでん」である。



 もう何回リョウさんと来たかわからないラーメン屋だが飽きるということはない。やはり偉大なのだ。

 ラーメンが出されると…さっきまで「このまま死のうかな…」なんて思ってたのに「やっぱ生きてるって最高だな」ってなる。

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 さっきまで猛スピードで走ってたための極度の緊張、そして風の風圧、そして寒さ、バイクでこの店に来たという高揚感。これらがコンボとなって合わさってラーメンがさらに美味しく感じるのだ。

 そして「なんでんかんでん」に来る客を見てさらに安堵感を得るのだ。そこにはチャラチャラした奴などはいない。誰を見ても真剣にラーメンを食べている。サラリーマン…学生…その辺のオヤジ。

 なんて素晴らしい世の中なのか。


 そう。女などいらないのだ!!

 
 この一杯のラーメンがあれば!


 …


 なんか今思えばバカ丸出しなのだが、そういう年齢だったんだからしょうがない。

 

 



 そして…

 とりあえずこれで明日からまた吹っ切れた感じで日々を過ごすことができる事を確信し、家路につく。


 また寂しい気持ちが自分を襲う。

 大学生活があと少しで終わってしまうのに彼女がいない寂しさと焦りが襲う。

 だが今はさっきまでの自分とは違う。

 「そもそもおまえ、好きな子を彼女にできた試しがないじゃないかw」

 なんてツッコミを自分自身に入れる余裕が今はある。

 だいたい彼女なんていなくたって良いのである。人と比べるからダメなのだ。飯が3食食える。それで充分なのだから。


 行く宛のない行きと違い、帰りは早い。

 特に下北沢から桜ヶ丘など30分もかからずに着いてしまう距離だ。家の近辺に来たあたりでスッとエンジンを止めギアニュートラルで家の前まで走る。一応このバイク…マフラーを改造してあるので音がうるさく夜は住民の迷惑になるのだ。

 そしてギアニュートラルで家の前を照らした時、家の前に妙な人影がある事に気づいた。





 まさか…

















 亜美さん!?


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 そう直感したのだ。まさか亜美さんが私の家へ来るとは!?

 …だが違った。


 そこに立ってたのは青柳だった。

 青柳は木ではなくて私の友人だ。私が過去に所属していたギター部で最も力を持ってる実力者で、彼とは1年生の時から仲良くしている。また彼の家は埼玉にあるため学校から2時間半近くかかる。それゆえよく私の家を寝床として利用していたのである。

 ギター部の実力者とは言ってもイケメン、ビジュアル系…というタイプではなく、どちらかというと「さだまさし」「井上陽水」系。

 なんていうか…職人系の古い時代の男である。結構思ったことをズバズバ言うのが特徴で、少し自分に酔う所がありナルシストも入っているタイプ。

 彼は私がギター部を突然辞めたことを根に持っており、最近はそれほど姿を見せなかったのだが… 

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青柳「おう。久しぶりだな」

財前「ああ。どうしたの?」

青柳「いやあ。泊めてもらおうと思っておまえを待ってたんだよ」

財前「そうかそうか。でもおまえ俺が帰ってこなかったらどうするつもりだったんだ?」

青柳「そしたら別の奴の家に泊まるつもりだったよ。俺友達は他にも一杯いるからさ」

財前「そ…そうか」

青柳「まあ飲みながら話そうぜ。今日は」

財前「OKOK」



 そしてお互い部屋の中に入り、青柳が買ってきた酒を飲みながら昔話に花を咲かせる。

 話を聞いていると彼はどうやら研究室で嫌なことがあったらしい。こっちの事はおかまいなしに自分の話だけを延々としている。もしかすると…その愚痴を私に聞いて欲しかったのかもしれない。


青柳「それで?おまえ彼女できたのかよ」

財前「いや。できてないな」

青柳「なんだよそれ。おまえギター部辞めてから全然冴えない男になったよな~」

財前「そ…そうか?」

青柳「ギター部に入ってた頃はおまえ光り輝いてたよ」

財前「そんな事ないと思うぞ(笑)」

青柳「まあ勝手に辞めた奴がどうなろうと知ったこっちゃあないけどさ」

財前「…」

青柳「まあ今は俺が完璧にやってるから安心しろよ」

財前「そうか」

青柳「おまえもギター部にいれば最高の経験ができたし、人間的にも成長したのになあ」

財前「ああ…」

青柳「俺は凄い成長したよ。あれから。本当に人間的にも成長したと実感してるもん」

財前「そうだな…」

青柳「ギター部もいつの間にか俺が中心になってさ。いや~参っちゃってさ」

財前「…」




 そこから延々と青柳のギター部についての自慢話を聞かされた。

 まあこんな事を言うのも何だが、私は今、ギター部に一切の興味はない。何の未練もないし、またそこに行きたいとも思わない。ただ、入ってよかったとは思ってる。今だにギター部時代の友人が何人かいるからだ。ギター部に入ってなかったら彼らと会うことはなかったのだから。青柳もその内の一人である。


 だが私には青柳に責められるべき理由があった。

 青柳が私を攻めたいのもわかる。


 それは私がギター部を辞めた理由があまりにも自分勝手過ぎたからだ。

 それは大学2年生の時だったが、言わば私はまだ青く若かった。そして田舎者だった…。


 そうとしか言えない。

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 過去の話に遡るが、私は大学に入った時に舞い上がっていた。それは徳島のド田舎からいきなり首都の東京に来たからだ。「どんな事が起こるんだろう!?」その期待の連続だった。

 だってここは東京。毎日がエキサイティングな日々になるのは間違いないのだから。

 しかしそれが思わぬ落とし穴にハマることになる。

 あまりにも東京を高貴な街だと思い過ぎていた私は、既に入学式の時点で現実を現実と認識できていなかった。まるで…夢の街にいるような感覚だったのだ。それゆえ全学生の中で5人しか入らない応援団の勧誘に見事に引っかかり、東京の大学に来たのになぜか学ランを来て大声を張り上げている始末。

 まさに非現実だ。大学に来て学ランを着てるとかもう…考えられないアホである。

 「俺たちこそが至高だ! 俺たちこそが最高なのだ」

 みたいな訳なわからない言葉に洗脳され、右も左もわからない内に抱き込まれてしまっていたのである…。そして5月のGWになった瞬間にバスに監禁され、そのまま目隠しをされてどこかわからない場所へと連れて行かれる。

 ホテルにつくとそれまで優しかった先輩の態度が一変し、鬼に変わる。そして逃げないようにと財布と鍵をホテルの金庫に入れられ… 腕立て1000回とか3時間マラソンとかそういう体をイジメ抜く精神修行を延々と1週間やらされたのだ。

 こういう場合、唯一の救いは食事なのだが、実はその食事こそが地獄。

 「応援団は至高だ!! 釜の飯は一粒たりとも残してはならない!!」

 なんていう訳のわからない理由で釜の飯を全部食わされた。もちろんこれはお茶碗とかそういうレベルの話ではない。そのホテルにある釜の飯を全てという意味だ。

 つまり食べ物を粗末にしてはいけないという考え方をそのまま実践している形。

 ホテルにある釜だ。釜の飯を全部平らげなくてはならないのだ。

 
 人間の食べられる量を明らかに超えていた。

 まさしく地獄絵図とはこの事である。

 
 もちろんそんなものがいきなり腹に入るわけもなく、皆トイレで吐いていた。3食すべて吐いている者もいた。その後は声出し。

 外に出されて「あの海の向こうにいる者たちに俺たちの誇りの声を聞かせるんだ!」


 なんて訳のわからない理由で声出しを延々とさされた。

 そもそも海の向こうとかここから目で見える範囲でも島なんてないし、街もない。そんな向こうまで声が聞こえるわけがないじゃないか。だいたいこの海…太平洋じゃないのか?

 ハッキリ言って体を壊しに行ったようなものだった。

 
 だがこの時、私は実は応援団をやめようとは思ってはいなかった。確かに地獄のような光景でキツかったが、元々マゾ的な性格を持っており「まあこれはこれで良いかな」なんて風にも思っていたのである。

 なぜならこれは非現実な光景。

 もしかしたら、こういう事を4年間続けると貴重な経験になるのではないか…。なんか凄い人間になれるのではないか。

 そう考えていた。


 しかしその考えは覆される。

 なんとよくよく観察するとこんなキツいシゴキをされているのは1年生だけで、2年生はそれほどシゴキを受けてないし、3年生は1年生をシゴクだけ。4年生にいたっては神みたいな存在に君臨しており、合宿場に来ても遊んでいるだけである。

 つまりこんな非現実的な事を強いられるのは1年生の間だけなのだ。


 2年生になると教育する側に周り、3年生になるとイジメル側に回る。


 シゴカれるのは別に良かったが、来年入ってくる1年生をシゴクとか御免だった。なんで花の東京に来て後輩を虐めなくてはならないのだ(笑)


 ゆえに応援団は5月のGW(ゴールデンウィーク)の合宿が終わってから即辞めた。

 もちろん彼らはグルになって私を引きとめようとした。驚くべきことに先生まで私を引きとめようとした。

 まあいつものアレである


 「おまえはこの程度の事で辞めてしまうほどの弱い人間なのか?」
 「今目の前の事を成し遂げられない奴に未来はない」
 「そうやっておまえは人生から逃げてばかりいるのだな」
 「おまえはこのまま辞めれば人生の敗北者だぞ。このままで良いのか!?」


 GWの合宿が終わって辞めようとしたのは9人いた応援団1年生の内の6人である。


 3人は上記の先生と先輩の言葉に感化されて応援団に残った。
 4人は私を含めて辞めた。(その内の一人は3ヶ月後に応援団に戻った)


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 つまり辞めれたのは3人。辞めた内の一人は応援団のショックから立ち直ることが出来ず…ついに大学まで辞めてしまった。学校に行った時、応援団に会うのが怖かったらしい。実際それが原因で一人は3ヶ月後に応援団に戻ったのだから相当な事があったのだろう。


 そして実はこれまで体育会系をしてきた者にとって

 「おまえ…逃げるのか?」

 という言葉はかなり効果的である。
 
 例えば応援団に戻った一人は過去高校時代に野球部だったらしい。彼はこれまで全ての事をやり遂げてきたのだろう。だから応援団から逃げ出すという自分を許せなかった。

 ゆえに応援団に戻るのだという。

 戻る時、私も彼に誘われたが私はキッパリと断った。

 
 なぜなら私には現実がシッカリと見えていたのだ。

 私は彼とは違った。

 そもそも引き止め工作の「逃げる」「お前は弱い奴だ」とかそういう言葉にまったく効力を感じなかった。簡単な話だ。

 要は応援団に入ったこと自体が間違いだったのだからそもそも最初から道を間違えているのである。 

 
 私にとって大事なのは女だったのである。東京に来たのだ。良い女と気持ちイイ事をしたいと考えるのが当然だ。これが応援団にいると出来ない。まあ…できないことはないかもしれないが、学ラン来て学内をウロウロしている男に素敵な女性が刺激を受けるとはとても思えなかった。

 そういう汗臭い事は私は高校時代柔道部で終わらせているのだ。もう御免だあんなのは。

 私は女性とチョメチョメしたいのだ。それだけなのだ。


 恐らくこの女性への強い憧れが応援団から危うく受けそうになった洗脳を打破したと思う。

 今思っても応援団をこの時点で辞めて本当に良かったと思う。ここは自分を褒めたい。本当に。

 
 大学生活最高の判断。それがこの応援団をこの時点で辞めれた事だったと思う。



 そして応援団の合宿が終わった5月の中旬…

 もう間違いは犯す訳にはいかない。すぐに目的を達成するために私は動いた。とにかく女性だ。女性の集まる所…。女性ばかりのハーレム生活を送るにはサークルしか無いと。

 そう考えて入ろうとしたのがギター部だったのである。

 もちろん入ったのは単純な理由だ。とりあえずギターが弾ければ女にモテるだろうと。

 それにギターを弾いてる奴はだいたいイケメン。だから良い女もそういう所に集まってるに違いないと。

 そう思ってギター部に入ったわけである。


 それ以上でもそれ以下でもない。目的は女。それだけ。


 しかしここでも私はまたミステイクを冒してしまう。

 間違いを起こしてしまう。

 もう今思うと大学1年の頃の私はストーカーの件も含めて呪われていたとしか言い様がない。

 なんと私の考えていたギター部というのはギターサークル…の方で、私が入ってしまったギター部というのは別のギター部だったのだ。

 東京農大の農友会ギター部というのはバンドとかビジュアル系とかそういった類ではなく…ギターをオーケストラのようにパートに分けてクラシック音楽を演奏する部活だったのだ…。

 つまり簡単に言うとお固いギター部。クラシック音楽演奏部…だったのである…。


 入るべきはギターサークル。農友会ギター部ではなかったのだ。


 ここに入るのはマズい。名前をよく見ればわかる事だったはずだ。


 しかしもちろん…この時点の私はそんな事を知る由もない。



 とりあえずよくよく話も聞かずに農友会ギター部に入ってしまった。



 


 そしてここからの話は本当に嘘のような話の連続で…私が入ったことによってギター部は前代未聞の問題を抱えてしまう。これはもうOBまで巻き込んで…

 私の素行が原因で会議まで開かれたのだからとんでもない事態だったのだ。


 精神的にかなり参った。



 まあこれが原因でまた私はギター部を辞めることになるのだが…

















 それは次に書くことにする
































今日の1曲 越路吹雪 ろくでなし



 生まれてない時代の古い曲。この曲を知ったきっかけは「志村けんは如何でしょう」
 http://www.youtube.com/watch?v=jBfwYe-v3i0



56616_orig.jpg
Borderlands 字幕付き動画UP中  
 「買わないなら見ろ!」無理やりシリーズ化

 ・【Borderlands】Mordecai スナイパーライフル Only Part1
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2011(Mon) 01/31

最近流行の「子供に対する英才教育はピアノだけでいい」で育った男(68)

財前History … Comments(68)

 
 現在海外で特にメイプルの事も書くことがないので、ちょっと前回紹介したタケチトの記事読んでたら、懐かしいことを書いていたので、こちらをご紹介しながらピアノの事を書こうかと思いました。

 とある友人のネット挑戦とブログ開設をド真ん中から見守ってみた




 きっかけはこの記事ですね。


 音楽の恩師、たまこ先生~回想日記  (壱岐タケチト)    2011/01/16
 http://ikitaketito.blog134.fc2.com/blog-entry-83.html

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 まさかあの時作ったブログを彼がこんなに続かせる何て思いもよらなかったんですけど、彼の細かさというか真面目さはやはりブログ書くのに向いていたんでしょうね。

 今は色々自分で勉強しながらやってるようです。

 彼の書いたピアノのこの記事は私にとっても非常に懐かしいものでした。

 恐らくこれは6年以上もブログを書いているにも関わらず、書いてなかったと思うんですけど、実は私の母親はピアノの先生なんです。

 俗にいう個人の経営するピアノ教室って感じのものです。

 母は私が生まれる前から音楽大学に通っていて、私が産まれたのを機にピアノ教室を家で開き、生徒に教えていました。

 平日の16:00から19:00くらいまでの簡単な教室。1人1時間のレッスンですから1日に約3人。土曜日は昼から教室を開いて8人くらいに教えていたように記憶しています。

 発表会の人数が25人を超えていたので、生徒数は全部で30人くらいいたのではないでしょうか。

 こう書くと皆さんには聞こえが良いかもしれません。しかしその息子に当たる私にとってはまさに地獄の日々でした。

 なぜなら強制的にやらされたからです。


 …ピアノを。


 それも幼稚園入学前からです。

 
 知っての通り私は音楽を愛するとか、ピアノを弾いて教養を深めるとか…そういう類の人間ではなく、どちらかというと食用カエルに爆竹を仕込んで爆破させたり、「空爆投下!!」とか言って隣の家に瓦を投げ込んで楽しんだり(今思えば犯罪…)するタイプの子供でした。

 ピアノなんてものは女の子がやるもので、クソくらえでした。

 そんな当時の私がくだらないピアノ演奏の練習などを受け入れるはずもなく、当然ながら練習などまったくやりたくはない。しかし母は私をピアニストにしたいと思っていたようで、毎日2時間のピアノ練習を課せられていたのです。

 それも強制的に。

 嫌ではあったものの、親に逆らうという思考回路がなかった私はこの仕打ちに従わざるを得なかった。


 練習時間は夕食後の午後7:00~9:00。土曜日はその1.5倍の練習を日課とさせられました。


 これは当時の私にとって耐えられない屈辱でした。


 当たり前です。当時の子供の話題は「とんねるず」の仮面ノリダー。そしてアニメ北斗の拳、そしてもちろんドリフターズ。

 これが話題の中心。これを観てないと「いじめられる」…と言っても過言でないほどの人気番組。

 私は当然見られません。

 なぜならその時間帯はピアノの練習をしなきゃいけなかったから。


 当時のドリフターズの面白さと俺たちひょうきん族の面白さといったら想像を絶します。

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 もはや伝説となっていますけど、未だにこれを超えるお笑い番組は存在しないわけですから、子供がこれを見ないとかまずあり得ないわけです。

 録画するビデオも一応あったとは思うんですけど、未だに当時の事を歯がゆく思ってるって事は、私の家には多分なかったんだと思います。

 これが何歳の時かは忘れましたが…。

 でもまあこの時は親に刃向かう器量もなかったし、世間も知らなかったし、言いなりになるしかなかったからどうしようもないです。
 

 だから私には幼稚園から前の記憶がほとんどありません。

 夜はほぼピアノの練習しかしてなかったからです。もしかすると娯楽…というものに触れてなかったかもしれません。

 
 まさに籠の中の小鳥。世間からの情報を意図的に断ち切られピアノ演奏マシーンとして英才教育を施されたのが私…財前だったわけです。


 あなたはピアノだけを知ってればいいの。


 それが恐らく母の思惑だったのでしょう。

 母もこんな事はしたくないと思いつつも、自分のピアニストへの夢を諦めきれなかったのかもしれません。

  

 しかし…その思惑は…。

 私が幼稚園に行くことを機に徐々に歯車が狂いだします。


 幼稚園に行くという事。これは私にとっては最大の転機でした。なぜなら社会とはどういうモノなのかを知ったから。幼稚園にはこれまで自由に育ってきた子供たちがいました。
 
 幼稚園に入るまで…私はピアノをしてたか、一人で外で遊んでいたかのどちらかでした。家族以外の人とはほとんど関わらず暮らしてきたので、幼稚園に入った瞬間に面食らうのです。

 そもそも彼らが話していることが理解出来ない。


 彼らが常に発言する志村…とは誰なのか。

 志村うしろ~とは何なのか…。


 前述した北斗の拳なんかもそうです。
 
 当時は最高に人気のあったアニメですが、私はその存在を知らなかったからみんなが何を言っているのかチンプンカンプン。

 「昨日のケンシロウ観た?ア~タタタタタタ~wwww」
 「おお。見た見た。あのパンチ凄かったよねwww」
 「ピ~~リ~~~ あべし!!」

 わかるはずがありません。私はこれを聞いて、北斗の拳とは、何か…「北から来た強い拳法家か何かが強いのかな~?」みたいな感じを脳内でイメージしてました。

 もちろん実写でのイメージです。北斗の拳がアニメだったなんて知る由もない。

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 気になります。友達の間で話題になってる北斗の拳とは何ぞや?と気になる。

 もちろん気になっても家では見られません。

 夕食が終わる19:00にはピアノの部屋に移動させられ、鍵を掛けられていたからです。ゴールデンタイムで放送されていた北斗の拳は当然見えない。

 心もとない私は当時…

 みんなと同じ遊びができない事に泣きながら練習していたものでした。


 だから「志村」「志村うしろ~w」と言ったフレーズも実際にリアルタイムでテレビで見たことはありません。友達から全部教わったもので、志村っていうのが誰なのか、それが人なのかも私にはわかりませんでしたから。

 私がドリフターズを見れるようになった頃には既にドリフターズは終了し、カトちゃんケンちゃんごきげんTVになってましたし…。

 とんねるずについても同意です。母はとにかく「とんねるず」が嫌いで、教育に取ってこれほど悪いものはないような思考でした。だから頑なに見せてくれなかった。


 しかし…

 そこに救世主が現われます。

 今でも覚えています。家が墓屋をしている畑くんという大金持ちと、藻崎という悪ガキ。藻崎は背が高く喧嘩が強かったので皆からは藻崎くんと言われて恐れられていたガキ大将です。

 当時畑と藻崎は幼稚園を締めていたような存在で言わばボス格です。

 みんな必要以上に近づかず、何か言われればそれに従ってイジメを無理強要をされる…といった感じでした。

 藻崎の行うイタズラも相当なものですが、誰これ構わず暴力もかなり振るっていました。


 幼稚園ではみんな藻崎を避けていました。とにかく怖かったから。
 
 それに近づくとイジメの対象になるので、みんな藻崎からはできるだけ離れて遊んでいました。

 ですが私は例外でした。当時は閉じ込もってピアノしかしてなかったので、まったくの世間知らず。藻崎と畑がどんな危険な存在だったかの認知ができてなかったのです。ゆえにそれほど意識はしていませんでした。

 ある日幼稚園で音楽の時間になり、私がピアノを習ってることを知っていた音楽の先生は、私にピアノを演奏するよう指示しました。

 この場合「イヤだ」と答えるのが正解です。

 だって藻崎と畑が同じ教室にいたから。

 そんなピアノをうまく弾いたりしたら「おまえ目立ってんじゃねえぞ!」みたいな感じでイジメられるに決まってます。

 しかし私は世間知らずだったので、そんな事は露知らず、ピアノを演奏してしまうのです。しかも上手に…。

 みんなから拍手をされたのは記憶にあります。特に女子からその反響は大きかったと思います。


 それに幼い頃から毎日2時間も練習してるのだから下手なわけがありません。
 


 でも案の定、それ以降、畑と藻崎の悪ガキコンビに完璧に目を付けられることとなりました。


 「おまえ男なのにピアノなんてキショー(気色悪い)。女だろww」
 「お前のことはこれから女って呼ぶわww みんなもそうしろよ~」


 とかそんな事になった気がします。まあ幼稚園ではよくあるイジメではないでしょうか。それからの記憶はあまりないのですが、結構長期間色々されたように記憶してます。

 蹴られたり、水をかけられたりって事は日常茶飯事でした。

 藻崎とは疎遠だった私もそれ以降マークされるようになりました。

 もっとも藻崎にイジメられていたのは私だけではなく、他大勢でしたが…。

 でも不思議と必要以上な暴力は振るわれませんでした。他の子には藻崎や畑はもっとキツイ蹴りやイジメをしていたように記憶してましたが、私にはある一定以上の暴力はふるわなかった。

 これは今考えるに、恐らく私の体が大きかったからだと思います。

 今でだいたい身長が185cmくらいあるんですけど、幼稚園の頃から結構大きかったらしいですから。


 その後も順調に成長して、いつしか…幼稚園で一番大きくて強かった藻崎と同じくらいの身長になっていたような気がします。確か…背並びとかすると一番後ろだったので。(当時は背の高い順に隊列を組んだりしていた)


 それが理由かどうかはわかりませんが、ある日に転機が訪れました。

 それまで暴力やイジメしかしてこなかった藻崎と畑が私を家に呼んだのです。

 呼ばれたのは墓屋でお金持ちだった畑の家。


 思えばここが私の人生の転機です。

 ここで藻崎が私を畑の家に呼ばなかったら…。もしかしたら私は…生真面目でピアノ一筋な人生を歩んだかもしれません(笑)。


 それほどの衝撃でした。


 藻崎と一緒に畑の家に行って私が初めて目にした物。







 それが…

























 ファミリーコンピューターでした。

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 この時の衝撃は今の私を知ってる人は敢えて言わなくてもわかると思います。

 まさに「水を得た魚のよう」という言葉がピッタリです。

 それまで手で奏でるものというのはピアノしかなかったわけで、こんなにツマラナイものはありません。しかしファミコンという指で操作するゲームは恐ろしく面白かった。

 ピアノとは次元が違う面白さ。


 それがファミリーコンピューターでした。


 何しろこっちは自分の手の動きに合わせて画面のキャラも動くし、音も出る。生まれてはじめてファミコンというゲームを見た私が受けたショックはハルマゲドン以上の衝撃でした。


 藻崎と畑はファミリーコンピュータの楽しみ方を私に教えてくれました。

 私はピアノをしてましたから、指先はその年代の幼稚園児に比べると圧倒的に器用です。すぐにゲーム上の自キャラを思い通りに動かすことができました。

 それからは悪の道に一直線です…。

 気づけば夕食の時間はとうに過ぎていました。
 
 藻崎と畑は悪ガキです。しかも畑の家は墓屋とかいう怪しい商売の親でしたからヤクザ…みたいなものだったのかもしれません。遅くなっても畑の家には誰も怒る人がいません。

 藻崎の家には行ったことがないからわかりませんが、当時の喧嘩っぷりを見ると、こいつの両親も恐らくまともな親ではなかったでしょう(笑)


 こうなると怒るのは私の母です。


 そりゃあそうです。それまでは幼稚園が終わったらまっすぐ帰ってきて、夕食を食べてピアノの練習部屋に監禁されてた小鳥のような私が、突然夜になっても家に帰って来なくなったのですから。

 当然私の母は恐らく必死に私を探したことでしょう。


 夜になったことを気付かなかった私も悪いですが、辺りが暗くなることも忘れるほどファミリーコンピュータは楽しかったのです。

 その後の藻崎が帰る時になって…。辺りが真っ暗な事に気づき自分もヤバいことに気づいたくらいです。

 ここからどう帰ったのかは記憶にないのですが、恐らく畑の親が私の家に連絡をして迎えに来てもらったのだと思います。


 でもこの日は…そりゃあ地球がひっくり帰るくらいの癇癪で母に怒らえた記憶があります。

 もちろん。それまで真面目な幼稚園児だった私が、普通の幼稚園児では考えられない事をしたのだから理解できます。

 当然親父にもこっぴどく怒られました。


 でも私はこの日を堺に昨日までの財前ではなくなっていました。


 そう。ファミリーコンピュータを知ったのです。

 そして…悪ガキの藻崎と畑と深く親密な仲になっていったからです。


 それ以降私は藻崎と畑と幼稚園内でも行動を共にするようになりました。こちらも衝撃でした。彼らのすることは籠の中の世間知らずの私からすると信じられない事ばかりだったからです。

 不良は頭が悪いわけではありません。

 知能が発達してるからこそ皆から恐がられているのです。

 それだけ色々な経験をしてるし、色々なアイデアを持っています。


 女子の下着や運動着を盗むとか当たり前。凄い幼稚園児です。それを匂わしてくれたり、女子に鉄棒で逆上がりする事を強要し、回ったところで体を手で止めて女子の股間に顔をうずめるとか、藻崎は今思うと信じられない行動ばかりしてました。

 それに誰かが何か珍しい玩具やカードを持ってきたらすべて藻崎のモノになってましたし、人の弁当におしっこかけたりもしてましたね…彼は。

 私もそういうのにつきあうのは嫌でしたが、藻崎は既に友達でしたし、こちらから藻崎と離れるわけにも行かず畑はファミコンを持ってるので離れられなかった。

 藻崎は畑の家ではファミコンやってるだけなのでかわいらしいのですが、幼稚園内ではボスですからね…。

 
 藻崎は頭にパーマもかかってたし、当時は恐ろしいほどマセた男だったのです(今思うと天然パーマかも)


 一緒に行動するようになったのだから否が応にもそういうのを見てしまいます。

 鉄棒に登ってそこでしばらく上下移動してるとなぜか絶頂して気持ちよくなるとか、徒競走の時に砂を握りしめて、周りにふり撒くとみんな目が見えなくなって1位が取れるとか教えてくれたのも彼です。

 そんな彼と一緒にいた私。


 そうすると私にも少しづつ知恵が付いてきます。

 徐々に私は藻崎の影響を受けてきます。


 
 それまでピアノの練習は嫌でしたが、それに反抗するという思考回路がなかった私…

 しかしついに…それに反抗するという知恵がついてきた。



 ピアノは嫌だ。でも母が怖いから練習する。

 ↓

 ピアノは嫌だ。じゃあ練習しなきゃいい。


 
 この思考回路に到達。今思うと簡単な思考ですが、幼い頃から教育を施された幼稚園児がこの思考回路に到達するのは並大抵の事ではありません。これは藻崎や畑と遊んでないと到達できなかった領域かもしれません。


 私の思考はこうでした。


 ピアノを練習する時間を0にして、ファミコンとテレビを観る時間に当てたい。



 まさに欲望しかないわけですが(笑)、幼稚園児には当たり前のことです。それに他の多くの幼稚園児はこういう事を普通にさせてもらってたわけですから、これが通常の幼稚園児なのです。

 どちらかというと毎日2時間もピアノを練習させられる私の方が異常なのです。
 


 しかし母はファミコンなどというものにまったく理解を示しませんでした。

 「欲しいなら自分で買いなさい」
 「ファミコンゲームなんてやると頭が悪くなるからダメ」
 「ゲームをすると悪い人間に成る」

 とか訳のわからない事を繰り返すだけ。当時私は小遣いなど貰ってなかったですから、無理なことをわかってて母はこのような事を言ったのです。

 父はさらに最悪でした。

 当時父はPC98シリーズというパソコンを持っていて、それでハイドライドスペシャルのようなゲームをプレイしてました。これはもちろん当時の私は知りませんでした。今思い返してみると「そうだったな~」という記憶があるだけです。

 しかし母の矛先が自分に向くのを恐れた親父はあろうことか息子に対して

 
 「ファミコンは俺がTVを見れなくなるから駄目だ」


 とかいう信じられない理由でファミコン購入を拒否します。そうなんです。ファミコンはTVに繋ぐので、基本的にTVが見れなくなります。今のように便利な切り替えスイッチもないですし、家にテレビは1台しかなかったので、それを占領されるのを親父は恐れたわけです。

 今思うと無茶苦茶考え方が幼稚です…。

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 当時私は母よりも親父が大嫌いでした。とにかく意味不明な男にしか映らなくて…。帰ってきたらTVばかり見ているのがとにかく嫌いでした…というより羨ましかったし、突然顔をひっぱたかれたりもしたし、何か得体の知れない様なところがあって怖かった。

 逆らえない。
  

 しょうがないので私は畑の家に行ってまたファミコンをする事になりました。

 藻崎も同様です。

 今思うと藻崎が畑の家に入り浸っていたのは藻崎の家もファミコンには理解がなかったからなんでしょう。


 いつしか夕食前に母が私を畑の家まで迎えに来るのが日課になりました。

 もちろんこれはダメな行為です。基本的に幼稚園児がまっすぐに家に帰らないのは許されていません。基本的にはみんなと一緒にバスで帰るか、親が迎えに来るわけで、友達の家に寄って帰るとか通常あり得ない。

 でも私は幼稚園の送迎バスは畑と藻崎と共に途中下車して畑の家でお世話になってました。

 
 母が泣きじゃくっていた日もあったと記憶しています。 


 母はピアノ教室をしているので16:00前から生徒が来ます。つまり私を迎えに行くことはできないため、私が畑の家に行くことを止めることはできなかったのです。

 迎えに来れるのはレッスンの終わった後ですから夕食前。

 それまでの間のみ私はファミコンを堪能することができました。もちろん帰れば地獄のピアノ練習が待っているわけですが…


 でもこんな日は長くは続きませんでした。

 親父がキレて私を農納屋に閉じ込め(農家で言う米倉みたいな所)、

 「言う事を聞かなかったらそこで飢え死にするまでいるがいい」

 的な…おしおきをしたのです。

 当時の私にとってこれは堪えました。納屋は無茶苦茶寒いし、その辺を怪しい虫がウロウロしてるし、何より真っ暗。恐怖で狂いそうになります。

 何しろそれまでは世間知らずでしたし、良い子で来てましたし、親に本格的に怒られることなどなかったので、こちらも泣いて非行を詫びたのでした。

 それでも親はファミコンは買ってくれませんでした。


 そしてそれ以降、畑の家に行けなくなった私。


 相変わらず19:00~21;00までのピアノ練習は継続。


 まさに狂喜乱舞でした。

 ファミコンを買ってくれるにはどうすればいいのか。考えに考えましたが良いアイデアは浮かびませんでした。


 ファミコンを親が買ってくれる夢を30回は見ました。

 夢で買ってもらってテンションMAXでガバッ!!と起きる。でも起きて買ってもらったファミコンが手元にない。夢だと気づく…。この時の喪失感といったらありませんでした。

 
 それからしばらくして幼稚園は終わりました。


 小学生に進学すればファミコンを買ってくれる?と期待しましたが

 母の対応は相変わらず一緒でした。


 しかし私が小学生に上がると共にこの問題は徐々に解決する事になりました。


 小学生になったから親がファミコンを買ってくれたわけではありません。


 もちろんピアノの練習が緩くなったわけでもありません。


 変わったのは私です。

 小学生になると知恵がつきます。私はある方法でピアノの練習をサボり、ファミコン、そしてTVを見ることを解決したのです。

 まず第一のきっかけが粗大ゴミでした。

 ファミコンをするにはTVが必要なのですが、小学生がTVを買うことは不可能です。しかし小学校から帰る道にTVがそこら中に捨てられてることに気づきました。

 当時は今と違ってゴミはTVやタンスなど、なんでもゴミ捨て場に捨てて良かった時代でした。つまりTVなどがそこに普通に捨てられていたわけです。

 私はそこに捨てられていたTVを持ち帰りました。

 でもそのままもって帰ってしまうと親にバレるので、秘密基地である広場にテレビをまず一旦保管し、親の寝静まった朝の4:00くらいに起きて、秘密基地まで行き、そこにあるTVを担いで自分の部屋まで運びました。

 それを押入れの中に押しこんで古い布団で隠し、設置が完了。

 でもアンテナ線が部屋に用意されてないのでTVは映りませんでした。でもTVは映らなくてもファミコンはプレイする事が可能です。次にファミコンを如何にして手に入れるか。

 こちらに知恵を絞ることになります。

 一番簡単なのは親の財布から金を盗んでファミコンを買いに行くことでした。

 「1000円札が何枚も入ってる時に抜けばバレない」という藻崎から教えて貰った必勝法を使えば楽勝でした。

 しかし…お金は簡単でしたがファミコンを買いに行くのが難関です。小学生の私にとってこれは非常に難しいことでした。とにかくTVゲーム屋が家から遠く、自分では行けなかったのです。理由は小学校時代には校区外というものが設定されている事。学校の規則では家から半径2キロ以上の場所に一人で出たらいけないことになっていた。

 これが見つかると学校から処分されます。

 実は校区外を出る子は多く、結構な人数が処分されていました。

 なぜなら知り合いの親とかの目も光っているので、見つかってしまうわけです。

 ゆえに家から2キロ校区外にあるテレビゲーム屋に行くのはあまりに無謀でした。たとえ行けたとしてもファミコンの箱を持ったまま家に帰るのは目立つし、その帰り道に先生や近所の親なんかに見つかって補導されたらファミコンを買ったことを親にバレてしまう。

 これでは全てが水の泡です。

 さあどうするか…。

 思案に暮れましたが、小学生の経済力と知識ではどうすることもできないと悟り、結局押入れにTVを持ってきただけで終わったのでした。

 結局私がファミコンを手に入れることになるのは何年も先の話になります…。


 その間もピアノに性を出すのですが、ひとつの成果をだします。

 当時やっていたのはブルフミューラーとかいう訳のわからないピアノ誌で結構難しい曲だった。とにかく1曲をマスターするのにそれはもう時間がかかったものですが、逆にこれは利用できます。

 ここで、ある事を思いつきます。

 練習しているときは私は監禁されているわけですが、同時に母はその部屋にいません。

 母は別部屋で洗い物をしてる。


 つまり私の練習している姿は見えないわけです。


 この時にある考えが浮かびました。


 つまりですね。ひとつの曲を完成させてしまえば、あとは練習は誤魔化せると考えついたのです。

 計画はこうです。

 まず1曲を完成させてそれを一通り弾いてラジカセに録音します。それを10パターン録音。練習の時間になったらラジカセを再生してそれを部屋で流すわけです。

 そうすればTVが見えます。

 ピアノの部屋の鍵の隠し場所はわかっていました。ひとつは母が持っているのですが、スペアキーが机に入っていたわけです。でも私では開けられないので、妹にそれを持たして鍵を開けてもらう。その間テープが再生されているので母にはバレない。

 そして私はこっそりと部屋を出て、カトちゃんケンちゃんごきげんテレビを見るのです。

 この作戦は意外にうまいこと行きました。

 19:00にテープを再生してアニメを見る。アニメが終わったらピアノの部屋に戻り、巻き戻し。またテープを再生させてカトちゃんケンちゃんごきげんテレビを見る。終わったら部屋に戻り、母が21:00に鍵を開けに来るのを待つ。

 これで私はTVを見る時間を手にいれたわけです。

 意外や意外、毎回同じテープを使わず、違うパターンを録音してそれを流すという作戦で半年近くバレませんでした。

 もちろんバレたときは大目玉を食らいましたが、別段問題ありません。


 その次の日からもまたテープ再生作戦を行って、またバレたら怒られれば良いだけです。


 年齢的に成長し、精神的にも成長し、もはや母の怒りなどは私にとってなんて事のないイベントになってました。母の手に負えない場合は親父がまた私を納屋に閉じ込めるわけですが、これもノープロブレム。

 納屋に閉じ込められても納屋の2回の窓から脱出できるので、すぐにそこから脱出し、自分の部屋に戻っておくのです。

 親父の場合はその後に風呂に入って、出た時に私を出しに来るというパターンでしたから、親父が風呂から出た時点で急いでまた納屋に戻ればOK。その後は泣いたふりをしてればノープロブレムでした。

 基本的に親は幼い子供がそんな事をするなんて思ってもいないので何の疑いもなく出してくれます。


 子供というのは親の知らない間に成長するものなのですね。クックック…


 これで私にとって足りないのは押入れにあるTVにつなぐファミコンだけとなってました。


 しかし相変わらず、校区外を抜けてファミコンを安全に買いに行くアイデアは出ませんでしたが、ここで転機が訪れます。

 なんと親戚の子供が高校受験になり、「ファミコン」をすると勉強ができないというので私に譲ってくれるという話が来たのです。

 親戚は私がファミコンを欲しくてたまらない事を知っていたのでこの話が来たのでした。

 もちろん私の母はファミコンが家に来ることに反対しましたが、親戚の親が母をある程度説得することで母も折れました

 …が

 その内容が頂けない。なんと頑なに拒否する母を説得した親戚の両親の言葉が

 「1日30分に制限すれば特に問題ないよ」

 という内容だったのです。「母も30分くらいなら問題ないわね」という認識でした。

 ゲームできる時間が30分!? こちらからするととんでもない話です。ファミコンをプレイする時間が30分とか笑わせます。ちゃんちゃらおかしい。

 そんな条件付きでファミコンが家に来ると困ると逆に困ります。ゆえにその場では私は「ファミコンはいらない」と答えました。

 親戚一同、母も含め驚きの顔をしましたが、ちゃんとこちらは考えあってのことです。


 親戚の兄は中学生です。つまり校区外などありません。自由に自転車で走ることが出来る。

 つまり…持ってきてもらえばいいのです。こっそり。ファミコンを。私の家まで。

 そして親戚の兄にはファミコンを捨てたという事にしてもらえばいい。

 そうすれば30分どころか何時間でもファミコンがプレイ可能です。



 親戚の兄にそう伝えるとこの作戦を了承してくれました。


 これにより私は快適なファミコンライフを得ることができます。

 それもそのはず。母は家にファミコンなどないと思ってるわけですから、ゲームする時間に制限などありません。無制限です。完璧です。

 ピアノはテープが勝手に演奏してくれますから、私のピアノ練習を聞きたいだけの母にも迷惑をかけない。


 私はファミコンができて幸せ。
 母は私のピアノが洗い物しながら聞けて幸せ。
 
 
 誰も不幸にならない最良のシナリオでした。

 この夢のような生活はたったの数カ月間だったと記憶してますが、最高でした。


 …

 しかしこの作戦は意外なところで綻びを見せます。数カ月間はうまく行ったのですが、なんと妹が勝手にファミコンを遊んでいたところを親父に見つかってしまい… あろうことかファミコンを取り上げられてしまったのです。

 これは大きな誤算でした。

 自分はみつからないように細心の注意を払ってファミコン、そして押入れのTVを守っていたのに、妹にはそれがありません。

 妹にはファミコンへの思い入れもないし、それまでの激闘の歴史もない。

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 ただファミコンを遊んだだけ。親にバレても大した事だとは思ってないわけです。取り上げられても「まあいいか」程度の認識です。

 所詮女などそんなものです。


 これに怒り心頭だったのは私です。だってドラクエ3…まだ終わってなかったんです…。

 男たるものドラクエ3を途中で放棄することなどできるはずもない。

 すぐに親父がファミコンを隠した場所を探し当てて、またファミコン生活に戻ろう。

 …そう考えましたが…。

 その思いは辛くも崩れ落ちました。


 なんと親父がファミコンを自分の寝室につけてドラクエ3を遊ぶようになってしまったのです。

 人が粗大ごみから取ってきたTVを取り上げた上にファミコンまで奪い、あろうことか人のセーブデータを消してドラクエ3を遊ぶとか父親としてあるまじき行為です。

 無茶苦茶な野郎です。

 糞です。


 あの消されたセーブデータ…。そを見た時に小学生だった私。その心の傷は未だに大きく残っています。

 しかもピアノ演奏がテープでしてることもバレてましたから、母親も30分に1度はピアノの練習を覗きに来るようになってしまい、TV鑑賞時間も同時に失ってしまった。

 もう諦めるしかない…

 もうどうしようもない…。
 

 そう思った私にまたひとつの転機が訪れます。


 そうです。壱岐です。壱岐タケチトです。

 コイツは今でこそ親友ですが、当時は私の家にピアノを習いに来てるダサい奴って感じで認識していました。私は当時彼とは友達でもなんでもありませんでした。

 私は嫌々ピアノをしてましたけど、彼は男なのにピアノをわざわざ習いに来てるわけです。

 お金を払って。


 この時点で分かり合えないバカヤロウでした。

 それに彼は当時から非常にピアノが下手だったのは記憶にあります。

 一応家がピアノ教室ですので、生徒が弾いてるピアノの音色は勉強部屋まで聞こえてくるんですよね。それに私は小さい頃からピアノしてますから弾いてる人がうまいかどうかなんていうのはすぐに判断がつく。

 それはもう酷かったです。

 私が幼稚園で弾いてた曲を彼は未だに弾いてましたから。

 
 おいおい。おまえそんな曲まだ弾いてるのかよ… みたいな感じで思ってました。


 そしてピアノの発表会。

 これは年に1度行われているものです。生徒が一同に集まって演奏の披露会をするんですね。親とかももちろん来ます。タケチトなどは緊張して弾いてましたが、私にとってピアノの発表会などというものはどうでも良い存在でした。

 私に取ってのピアノ発表会とはピアノを演奏して拍手をもらう場所ではなく、

 そこに来てたおじいちゃんおばあちゃんの前で良い演奏をして感動させ

 小遣いを貰うためのツールでした。

 うまくピアノを演奏しておじいちゃんとおばあちゃんの元に行き、目を輝かせれば1万円くらいくれたのでチョロイもんでした。

 もちろん母には内緒で貰うのは言うまでもありません。

 貰ったお金がバレルと「あなたの将来のために貯金しておいてあげるわ」なんて訳のわからない理由でお金を取られますから、絶対に親に言うことはない。



 でもそこで…私は驚くべきものを目にします。

 壱岐です。壱岐タケチトです。

 彼は発表会の待ち時間にある物を楽しんでいました。

 奴が持っていたのはゲームボーイでした。自慢気にSAGAなんかを見せてきます。私は恥ずかしながらゲームボーイなんて眼中になく、ファミコンしか見えてなかったのですが、これがこれで面白そうなのです。

 しかもこれ…TVを使わない携帯ゲームです。


 つまり親にバレ様がありません。

 もちろんファミコンの方が良いのですけど…

 ゲームを許してくれない我が家の家庭環境を考えると最高のハード機でした。

 これは買うしかない。


 おじいちゃんおばあちゃんから貰ったお金と、親の財布の金を盗んで資金を用意し

 
 次の日に即効でゲームボーイを買いに行きました。

 もちろん校則を破って校区外のゲーム屋にです。

 ファミコンと違ってまったく問題がありません。ゲームボーイの箱は小さいし、本体はポケットサイズなのでもし校区外にいることがバレてもノープロブレムだったからです。

 まあバレることは考えられません。ポケットに入れられるので田んぼの畔道などを帰れば車で移動してる近所の人に見つかることもないし、先生も発見は不可能でしたから。
 
 要は店でゲームボーイを買って箱をその辺に捨ててゲームボーイをポケットに入れる。そして川際の田圃道を通って家まで帰る。

 これでOKでした。

 幸い誰に見つかるわけでもなく、何の問題もなく帰って来れました。

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 それからの私はピアノとの付き合い方もかわりました。

 相変わらずラジカセにテープを入れて再生させるのですが、以前とは違いピアノの部屋にいながらゲームができるので母親が来たら足でラジカセを停止してゲームボーイを置き、続きをピアノを実際に弾けばいいのです。

 一応曲を途中からいきなり演奏するのは結構難しかったりするんですけど、やってるうちに慣れてきて、どこからでも演奏できるという変なスキルがついたりもしましたね(笑)

 ちなみに母はゲームボーイみたいなゲームがあるなんて事はまったく知らないのでバレようがありません。

 電源切って背面向けておいておけば絶対にバレないわけです。

 

 恐らくピアノの分岐はこの辺からでしょうか。

 記憶ではこの辺から私はピアノをまともに弾いた記憶がありません。さらに精神的に成長してきますから、ピアノを弾くのなんてバカバカしくなってきて母にも


 もう手で弾くとか古い。俺は足でピアノを弾く男になる


 とか言って足でピアノを弾いたりしてました(笑)。さらに精神的にも成熟してきているので親父にも文句が言えるようになり、

 「親父はいい年こいてあの時ドラクエ3を僕から取り上げて自分でプレイしてたよな。返さないと親戚一同にこの失態を言いふらす」

 とかいう訳のわからない言葉でTVとファミコンの奪取にも成功。

 その後にも母にも何度となく怒られましたが、


 「ピアノで飯が食えるとは思えない」


 と言ってそれ以後ピアノを手で弾くことはなく、足でしか弾かなかったので、とうとう母も諦めて中学生くらいでピアノは完全に辞めたと思います。

 今もまあ弾こうと思えば弾けるのかもしれませんが、過去のトラウマが酷すぎてピアノの鍵盤を触る気にもなりません。

 でもタケチトとは未だにピアノを続けています。

 まあ下手なのは変わりませんが、彼の真面目さには感服です。




 ピアノの英才教育を受けた私がいつしかピアノを足で弾くようになり

 ピアノを惰力で続けていたタケチトはいつしかピアノを自分の特技に変えた



 人生とは皮肉なものですねえ。

 でも「ほんまでっかTV」に出演してる先生なんかがよく言うんですけど、幼少の頃の子供の知能発達にはピアノが一番良いみたいですね。スポーツにも勉強にも…。そしてむしろピアノだけやるのが良いのだとか。

 今ピアノがまた見直されてきてるみたいです。


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 脳科学者はかく稽ふ  澤口俊之
 http://toshi-sawaguchi.life.coocan.jp/
 http://toshi-sawaguchi.life.coocan.jp/blog/


 なるほどという部分は確かにあります。

 当時の自分は嫌だったのですが、今こうやってデータ的に証明されたりすると…あの頃のピアノも否定出来ない部分もありますね…。でも私のは習い事というよりも監禁でしたらね。

 母が鬼気迫る鬼に見えました。

 …が

 結局今となれば母に感謝することになってしまうのかもしれませんが。



 なんだかんだでだから息子が産まれたら結局ピアノの稽古を母にまた頼む予定です。

 そうなるとまた息子は反発するんでしょうが。

 
 そしてその頃も私はXBOXやメイプルストーリをしてたりするんでしょうね。



 って事は私からドラクエ3取り上げて熱中しちゃった、あの頃のバカおやじと同レベルって事になるわけです。


 いや…むしろそれ以下か。


 いや。以下はないと思う。




 
 でも後数年後で子供を作る予定なので、どう考えてもゲームはやめてないし性格もそんなに今と変わるはずがない。


 …

 血は争えないなあ(笑)















 …というわけで当時のことを思い出しながら適当に書き綴ってみました。


 また機会があれば書いてみます。





 
dfsfdsgdggf.jpg 壱岐タケチトのブログ恋愛旅行記  

私は旅行恋愛の事を綴る詩人。壱岐タケチトです。
壱岐タケチトのブログ旅行恋愛記
音楽の恩師、たまこ先生~回想


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2009(Fri) 10/30

大学時代回想22 …3年後に明かされた真実(80)

財前History … Comments(80)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第22話目です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
2011/09/21 大学時代回想23 強くは儚い ろくでなし
09/10/30 大学時代回想21 3年後に明かされた真実 (コメント --)

09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)




 





 さて。


 ここからは研究室の話に移るので


 まずは研究室とはなんぞや?というところから説明しておこう。


 大学の研究室というのは学生にとって卒業論文を書くための場所だ。東京農業大学は1学科に250名以上の学生がおり、ここから6~10ある研究室に各学生が所属していく。(3年生時)  研究室の人数は1学年で20~30名になる。

 そして研究室に所属した学生はそれぞれに卒業論文のテーマを与えられる。

 卒業論文を行うに当たっては大概が2~4人のチームを組む。

 私たちの場合はエコハウスという暖房器具などを一切使わないビニールハウスを利用した栽培を確立するというテーマを与えられている。

 昼間の熱をあるものに吸収させ、これを夜に排出する仕組みを利用し、内部を2重構造にして保温性を保つ。実質経費は水代金だけだ。(→ 大学時代回想8 友情と恋愛


 もう一度エコハウス班、そして研究室のメンバーを説明。

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 研究室のメンバー
 ①頼れない相棒      ノリ
 ②強気でボーイッシュ   ホッケー
 ③研究室の幹事      カネダ    他、後輩も含め研究室メンバーはあと15名ほど存在する。

 
 研究室(エコハウス班) 
 ①直子が大好き            賢治くん
 ②賢治に興味がない        直子さん
 ③顔は綺麗だがキレると恐い   エリさん
 ④誰もが知ってるストーカー     財前くん


 

 
 ちなみに卒業論文の活動と言っても実はやることはそんなに大した事はない。要はエコハウスで育てたトマトやキュウリの発育測定。ゆえに水やりと日々の日常管理をするだけ。
 
 そして最終的に
 
 対象区   暖房、冷房完備の従来の大量生産型ハウス栽培
 ECO区   地球環境に考慮した自然を利用した未来のハウス栽培

 この2つの生産性の比較する。当然ながらECO区の方が当然生産性は対象区に比べて劣る。但し、経費はECO区の方が当然低いので両方の総経費で見て採算が取れればOKという考え方。

 この回想だけ見れば私は遊んでるだけのように認識されてしまうと思うが、実際大学に行く目的が水やりと発育測定、日常点検なんだから、こういうのはキチンとやっている。

 学生の卒業論文と言えど、研究題材自体は研究室の教授の評価に関係するから適当にするわけにはいかない。

 大学教授側からすると、これは学会に発表する題材として権威に関係するだろうし、担当するのが助教授だったりすると教授昇進に関わる大切な研究になったりもする。
 
 決して、学生が卒業するためだけの題材というわけでないのが難しい所だ。

 ゆえに学生側は責任はないにしても真剣に実験に取り組む必要がある。


 
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 しかしながら実情は…

 学生にとって卒業論文、実験というのはあくまでも大学生活の一環。

 研究室活動の中で大きな比重を占めるのは結局は研究室メンバーとの飲み会やイベント、文化祭(収穫祭)、他研究室との交流、そして恋愛ということになる。

 学会の事なんて考えないし、教授や大学の立場を考えた実験などをするわけはない。

 だからこそ権威ある大学は、入学のための試験、偏差値を設け、高度な研究意欲や勉学に強い関心がある優秀な学生を求めようとするのかもしれない。

 もともと優秀な学生であれば当然ながら行う実験も高度で優秀なものになるはずだし、結果も自ずとついてくるはずだからである。 
 
 まあしかし。そうは言ってもどこの大学も真剣に実験に取り組むのは大学院生くらいだとは思うが…
  


 亜美さんとの件が一段落した私は、しばらくは亜美さんの事は置いておいて、そんな研究室にどっぷりと浸かろうと決意したのだが、現実は…









カネダ「お~い財前」

財前「ん?」

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 研究室の実験に精を出しはじめて数日のある日

 幹事のカネダに呼び止められる。


 カネダというのは我が野菜研究室の幹事。幹事というのは部活で言うと研究室の主将、キャプテン的な位置づけ。もちろん同学年。基本的な役割は「他研究室との交流」や「イベントの企画」、「研究室活動のとりまとめ」って事になる。

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 身長が187cmもある巨人なので、迫力抜群。研究室内でも逆らう奴はほとんどいない。怒ったときは恐ろしく恐いのだ。

 幸い私は彼と同じくらいの身長があるので迫力で圧倒されることはないものの…

 根本的に骨格の太さが段違いなので喧嘩したら確実に負ける事くらいは察知できる(笑)まあしかし。彼は温厚な性格なので対立することは「ほぼない」わけだが。
 

カネダ「作業終わったら作物学研究室に一緒に行ける?」

財前「作物学研究室… なぜ?」

カネダ「今日、作物学研究室で納会(飲み会)なんだって」
 
財前「ああ。そうなのか…」 

カネダ「おまえ。いつものように余興担当で挨拶兼ねて行って来てくれ」

財前「作物学研究室か~…」

カネダ「じゃあ頼むよ」

財前「…」



 納会というのは個々の研究室が行う飲み会。基本的にその研究室全員が参加する打ち上げみたいなものだ。作物研究室の方は学会か何かが終わった?から納会をするんだろう。

 この納会。
 
 実は内部だけでなく、他の研究室との交流も目的のひとつで、農学科にある10個の研究室から幹事と副幹事が招かれるのが通例となっている。

 各研究室から招かれた幹事は寸志(酒)を持ってその研究室を伺い、副幹事はエールを切ったり余興したりしてその納会を盛り上げる。

 私の研究室の場合は、幹事のカネダが酒を持っていって挨拶、次に副幹事である私がエールを切って、気の利いたスピーチをして納会を盛り上げるという役割分担になっている。

 エールっていうのは「フレ~~ フレ~~~ 作物学研究室!!!」
 
 ってやつ。

 一応1年の時に応援団に所属していたので、私のエールは意外に好評だったりする。


 なんか体育会系のノリがバリバリだけども、元来東京農大というのは農業系の大学な訳だから当然と言えば当然なのだ。

 私もこういう余興や挨拶などの役回りは嫌いじゃないから副幹事を引き受けているものの…

 他の8つの研究室に行くのはいいけど

 作物学研究室だけは気が乗らない。
 

 なぜなら作物学には…



























 チズエさんがいるからだ。

  200-21.jpg








 そう。あのチズエさんだ。

 花の都。東京の大学で女と遊びまくるつもりで飛び込んだ大学1年の私が一目惚れした超美人の女の子。

 その後チズエさんの勝手な勘違いから私はストーカーと勘違いされ、その噂が噂を呼びいつの間にか大学全体に「ストーカー財前」という認識が広まらせ、私に多大なる被害、迷惑を与えた張本人だ。

 もっとも…ここまで話が大きくなったのはチズエさんというより、口うるさいホッケーが言いふらしたからなのだが…。まあホッケーはチズエさんとは非常に仲が良かったからしょうがないのかもしれない。


 もちろん向うはもう今や気にしていないのかも知れない。

 しかしあの時の傷は今も私の胸を大きくエグッている。


 そりゃそうである。ここは大学。私の過去を知っている者は誰もいない。高校時代の知り合いもいない。0からだ。0から人間関係を構築していく場所だったのだ。


 それがいきなりストーカー。


 あり得ない。まあ今は私が地道に友達づくりに励んだ甲斐もあって、大学にいる主要な人にはこの誤解は解けているものの、何しろ250人もいるので全員には無理だ。

 つまりまだストーカーというイメージを持ってる人は多いのである。



 その総本山と言えるべき場所が作物学研究室なのである。



 そこにはチズエさん本人がいるのだから当然だ。エールやスピーチも作物学研究室では非常にやりにくい…。ネタにされてネタにされて…。


 しかしまあカネダだけ行かすのもかわいそうなので…。


 …

 
 …





カネダ「じゃあ財前行こうか」

h19_4_15_640_kadan_simojyuku.jpg


財前「あ…ああ」

カネダ「もう忘れろよ。過去の事は」

財前「…」

カネダ「じゃあ俺はいつもの如く寸志渡したら帰るから後はよろしくね」

財前「ああ。」





 作物学研究室に着くと案の定チズエさんがいた。


 そして他総勢20数名の研究室員から注目を浴びる。 ん?…どうやら果樹学研究室やハーベスト研究室の面々は先に来てもう挨拶を済ませているようだ。




作物学の幹事「ハイ。注目~。ちゅうも~く。野菜学研究室のカネダさんと財前さんが来てくれました~」

作物学の院生「わ~パチパチパチ」

カネダ「いつもお世話になっています。お酒持ってきたので皆さんでどうぞ」

作物学の院生「わ~。パチパチパチ」

作物学の幹事「それではカネダさんに駆付け一杯お願いしましょ~」

作物学の院生「わ~。パチパチパチ」


カネダ「…。ゴクゴク… プハッ。 ありがとうございます!!」

作物学の院生「わ~。パチパチパチ」

カネダ「では私はこれで失礼~。後はうちの副幹事がやりますので」

作物学の院生「カネダさんお疲れ様~パチパチ」
 
 
 出番が回ってきた…。やだなあ…。



財前「おばんでがす。財前です」

作物学の幹事「お待たせしました。皆さん。財前くんですよ~」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

作物学の幹事「財前くんは数々の噂をお持ちですが、最近のストーキング状況はどうですか?」

財前「はい。目標をロックオン間近であります!」

 

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

作物学の幹事「えええ!? もううちの研究室のメンバーをロックオンするのはやめてくださいよw!?」

財前「それは私の下半身に聞いて下さい」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

作物学の幹事「では過去のストーキングの懺悔もかねて駆付け5杯お願いします!!」

財前「ご…五杯!? しかもこれ日本…酒」

作物学の幹事「財前が飲む~ぞ♪財前が飲む~ぞ財前が飲む~~ぞ~♪ 5秒で飲むぞ!! ハイ。」

財前「ご…五秒で??」

作物学の幹事「ハイ。5…4…3…」

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 ゴクゴク…  ゴクゴク… ゴクゴク… ゴクゴク… ゴクゴク…


作物学の幹事「ハイ。5杯飲みましたが? ハイ。遅いコール!!遅~い!!遅~い!!」

作物学の院生「遅~い!!♪ 遅~い!!♪」

財前「…」


 ゴクゴク…



作物学の幹事「ハイ。お見事~。しかし?? 財前くんの? もっといいとこ見てみたい~♪」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

作物学の幹事「ハイもう5杯!! もう5杯!!」

財前「!?」

作物学の幹事「注ぐのはやはりこの人~ チズエさん!!」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

チズエ「…」

財前「…」



 ゴクゴク… ゴクゴク… ゴクゴク… ゴクゴク… ゴクゴク…



作物学の幹事「ハイ。お見事でした~♪」

財前「ウッ…プ…。 さ…最後に一言言わせて下さい」

作物学の幹事「どうぞ!!」


財前「僕は無実です!!」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

作物学の幹事「此の期に及んで見苦しいですよ財前君。これは駄目です。粗忽です!! ハイ。もう一杯!! もう一杯♪ もう一杯♪」

作物学の院生「アッハッハ。パチパチパチパチ」

財前「えええ!?」


 ゴクゴク…


作物学の幹事「ハイ。お見事~。じゃあ財前くん。あとはゆっくり楽しんで下さいね。でもここでストーキングは禁止です」

財前「りょ…了解しました…」






 …


 とまあ納会はこんな感じである。

 d@ofgksdo@fgkdsf@pgkdfs@pg.jpg

 だいたいその人のキャラによって飲まされる量が決まる。

 ネタがない奴の場合は1杯で終わり。ネタになりそうで場が盛り上がりそうな奴の場合は飲んだ後に「遅い」だの「もっと見てみたい」だの「粗相」だの理由をつけて引っ張る。

 私の場合はストーカーというネタだけで、だいたいコップに平均10杯は飲まされるから大変なのだ。

 まあどこの研究室へ行ってもこういう風にネタに使われるわけだけど、

 チズエさん本人がいるとネタもちょっと…控え気味にせざるを得ない。
 

 それに本人の気持ちも考えると…

 ってまあストーカーなんてやってないから向こうが悪いんだけどね。


 ノリやカネダからは「おまえあんなネタに使われてよく耐えられるなww」とはよく言われたりするが、ああいう雰囲気は個人的に嫌いじゃないから平気だ。

 だがもちろん亜美さんの研究室に行った時にあんなことは一切しない。


 …私はその後作物学研究室でチズエさん以外の男とコミュニケーションを楽しんだ後、







 自らの研究室に帰った。もう20時を回っていたが…… カネダとホッケー女がいた。
 

カネダ「お? おつかれさ~ん」
 
ホッケー「おつかれ~」

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財前「おまえらまだいたのか。遅いねぇ」

カネダ「今日は色々研究が忙しくてな~」

ホッケー「うんうん」

財前「そうか。ちょっと飲み過ぎた。もう今日は帰るわ…」

カネダ「どうした。元気ないな」

財前「そんなことないよ。まあ作物研に行くのは精神的にキツイものがあるけどw」

カネダ「おまえもストーカーで色々ネタにされて大変だなw」

ホッケー「へ~。財前って納会の時に色々ネタにされてるんだ。」

財前「…」
 

 実は他の研究室の納会に行くのは基本的に幹事と副幹事だけなので、ホッケーは納会の詳しい事情をあまり知らない。

財前「ああ。そうだ。ホッケー。一応言っておくけど俺はチズエさんをストーカーなんてしてないからな」

ホッケー「…」

財前「ネタにされるのは全然構わないが、そこだけは本人にハッキリ伝えておいてくれよ」

ホッケー「そういうことは逆にチズエちゃんに言わない方がいいと思うよ。今更だし。むしかえすし」

財前「でも本人にだけは誤解を解いておきたいってのはある;;」

ホッケー「でもさあ。財前じゃなかったんだったら、チズエちゃんが勘違いしたストーカーは誰なのかな」

財前「知らねえよw そいつのおかげで俺はとんだ迷惑だ」

ホッケー「う~ん…」

財前「そもそもそいつ自身がストーカーだったかどうかも怪しい。後ろを歩いてただけの一般人じゃないの?」

ホッケー「さあ…」

財前「まあ今となってはどうでもいいけどさ」

ホッケー「でも惜しかったんだよ~財前」

財前「惜しかった?何がだよ」

ホッケー「チズエちゃんとうまくいったかもしれないのに(・ε・`*)」

財前「え!? どういうこと?」

ホッケー「チズエちゃんの誕生会に来たことあったでしょ」   参照「ストーカー財前」

財前「ん?ああ…。あれか。あれが何か?」

ホッケー「あれってチズエちゃんの希望だったんだよ。アンタを呼んだのは」

財前「…」



























財前「何!?」

















財前「ど…どういうこと?」

ホッケー「あの時香奈ちゃんの彼氏は呼ぶことになってるんだけど、それだと男の子が1人になっちゃうから」

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ホッケー「他に誰か男の子を呼ぼうって話になって。それでチズエちゃんが財前を呼びたいって言ったんだよね」

財前「…」

ホッケー「だから変なことしなければうまくいったんだよ?二人は」

財前「そ…そうだったのか。チズエさんが俺を呼んでくれてたんだ」

ホッケー「その後も財前と電話で話して色々進行したりしてチズエちゃんもご機嫌だったんだけど…」

財前「…」

ホッケー「財前がプレゼントを贈った当りからチズエの挙動が怪しくなって、同時にストーカーも現れて」

財前「…」

ホッケー「チズエちゃんの住所を財前に教えたのは私だけど、大学内では他の誰にも言ってなかったし… だったらストーカーは住所を教えた財前しかいないなって」

財前「もういい…」

ホッケー「だからプレゼント贈るって理由で私が財前に住所を教え無ければアレだったかも…」




ホッケー「え?」

財前「いや。もういい。」

ホッケー「え?どうしたの?」

財前「もういいよ…。 もう帰る」

ホッケー「…」










 嘘のような話だがこれは本当の話だ。

 この時の私の衝撃。恐らく誰にも理解されないだろう。

 正直言うと大学回想を書くきっかけはこの出来事を書きたいがためでもあった。

 まさに嘘のような現実。


 夢にも思わなかったし、私の周りの友達もこんな真実があったとは誰も予想だにしなかったろう。

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 絶対に手が届かない対象だと思っていたチズエさん。

 
 


 まさかあの時… あの時



 あの誕生会。
 



 まさか彼女自らが私を呼んでいてくれていたなんて。 

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 恐らく。こういう事もあるんだろう。世の中の裏ではこういう表に出ない情報というのもあるのだ。実際今回もホッケーがこの事を打ち明けてくれなかったら…

 私は一生この事実を知らないまま

 生きていっていたに違いない。
 




 
 そうか。こういうこともあるのか。

 こういうことも起こり得るのか。





 帰りの電車で色々考えた。



 もしあの時、あの段階で…プレゼントをチズエさんに贈ったりしなかったら…

 もしかしたらチズエさんとつきあえていたかもしれない。


 しかし。

 大学1年でそんなに恋愛がうまく行ってたとしたら…私はチズエさんが彼女というだけで満足し、チズエさん中心の生活を送っていたであろう。恋愛がすべての男になっていただろう。

 ある意味。

 あの時。

 ストーカーと間違えられてから私の大学生活は始まった。本当に逆境からのスタートだった。チズエさんとの愛の巣になる予定だった私の下宿。(大学から数分の好位置)

 チズエさんのストーカー以降も女性に振られ続けたことで…


 私は比重を男性友達にシフト。
  
 するといつしか下宿は男友達の溜まり場になり…ノリ、タカシ、ワコウ、つっちー、八百



 そして…








 リョウさん

 

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 彼との出会いはストーカー事件なくしてあり得なかった。順風満帆に大学人生を送っていたら…リョウさんに会っても何も貫禄は受けなかっただろう。第三者からみれば彼はただのフリーターなのだ。
 
 わたしもそう思って彼を相手にしなかったに違いない。




 しかし


 あの経験があったから


 私はリョウさんの凄さをわたしは理解することができたのだ。これは何よりも大きいことだ。







 あの事件があったからこそ 

 社会人になっても交流が続くような

 数え切れない男友達を得ることができたのだ。 

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 これはこれで良かったのだと思う。あそこでチズエさんとつきあっていたら男として人生を舐め、果てには堕落していたに違いない。

 そりゃあそうである。東京に勇んで出てきていたのだ。

 いきなり東京の女を落として自分のものにしていたら… あの頃は18歳の自分だ。


 天狗になっていたに違いないのだ。



 あそこで鼻をへし折ってくれたから今の私がある。(恐らく大学回想も書いてない)




 これで…これで良かったのだ。


 








 ゆえに…

 さっきの研究室でのホッケーの話などはあれ以降は聞いてもしょうがなかった。あとの話。そんなことはどうでもいいことだった。


 あの日の誕生日の真実。

 それが聞けただけで私はもう充分だったのだ。


 それを聞いた瞬間


 もはや…。一体ストーカーは誰だったのか?とか、ストーカーと間違えられて運が悪かった…とか


 そんなものは超越した。

 

 むしろ運が良かったのだ。













 今回…この出来事をうまく文章で纏められたかどうかはわからない。
 
 しかしどうしても書きたいことだった。

 こんな経験は滅多にできることではないし、何しろ本当の事を知るのに3年もの月日を要している。でも何か…これを書くことで、読んでくれた人の何かのお役に立てるような気がした。

 こういうこともあるんだよと。ただ…まあそれだけの話だが。








 人生というものはこれほどまでに色々な要素が絡まり合って各々の人間の道に影響を与えているのである。


















 それに気づかせてくれたのが

 今まで苦しめられ続けた「ストーカー疑惑」とは








 なんとも皮肉なものですよね(笑)

























 大学回想はこれで終わりではないですが、次の話はまた気が乗った時に書きます












 今日の選曲    ガンジス     長渕剛


  http://www.youtube.com/watch?v=8UbZuX78-Qw&feature=related


 歌詞が当時の私の状況と照らし合わせるとグッと来て…  よく聞いていました。
   歌詞


 










使用している写真は素材を使用したものであり、本人のものではありません
  CoCo* ---web用写真素材&HTML テンプレート---

 


テーマ: 見つけたモノ
ジャンル: ライフ








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2009(Thu) 10/29

大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし(78)

財前History … Comments(78)

 
 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第22話目です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
09/10/30 大学時代回想22 3年後に明かされた真実 (コメント --)
09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント --)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)







 

 

 既に


 前回ノリと里沙の結論を言ってしまっているので興醒めではあるものの…書くことにする。




 夕食時に里沙の様子がおかしくなってから夜風に当たりに行った二人。




 案の上と言うべきか。ノリと里沙は夜風に当たると言ったまま1時間以上帰ってこない。

 一体どこの夜風に当たりに行ったのか。

 もちろん亜美さんも私も二人がホテルに行くなんて事は絶対ないと思っているから、そこにまったく心配をしていない分、帰ってくるのを待つのが辛い。

 恐らく…ただノリは「うんうん」と話を聞いてるだけで、ほとんど里沙が片思いの相手についてしゃべってるだけという光景が目に浮かぶようである。

 そして

 亜美さんは待つことに痺れをきらしたのか「もう部屋に帰る?」と自分から言いだし、私もそれに同意した。亜美さんが部屋に帰る…。

 本来の私であればここで亜美さんの部屋に如何にして入り込むかということを考え抜くところであるが、里沙があんなことになったので微妙に気まずい空気が流れているわけで…。

 さらに今日の亜美さんが私の事を噂で(あくまでも噂)ケダモノ発言した事より、動くに動けない状態になっているのである。正直あれは相当ショックだった。

 私に関して大学内であまり良い噂が流れないのはわかるが、そういうのは大抵間違った情報が伝わっている。

 本来的にはそうではないのである。

 まあ町でナンパしてるとか、ストーカーしてるとかいう噂がどこかからか漏れたんだろうが、全部聞こえが悪いだけの話であり、本質を見るとまったく大した事はない。

 ケダモノでもなんでもない。

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 そもそもストーカー疑惑は完全なるガセ。周りの男友達はそれをわかった上でネタにしてるだけであり、ネタなのだネタ。

 だからこう宣言したい。

 「俺はストーカーなんてやってない。信じてくれ」と。

 しかし世の中難しいことでそんなことを堂々と言う方が怪しく見られる。こんなことを堂々と言うとさらに疑惑が高まるだけ… ゆえに言えないという矛盾。

 身内はわかってくれているからいいのだが、第三者に対して聞こえがわるいのはもはや諦めるしかない。

 
 次にナンパ。これは本当にやりまくっていたものの、ナンパしてたから「ひどい奴」という評価に関してはまったく不当なものだ。

 そもそも私には過去彼女がいなかった。つまり私がナンパしても誰も悲しむ人はいない。何も無理矢理ナンパしてるわけではなく、当然会話も、そして食事に行くのも相手同意の上だ。浮気じゃないのである。もちろん不倫でもない。

 じゃあその女性をホテルに連れ込むのはどうなのかという話になるが、これも無理やり連れ込んでるわけじゃなくて、相手も同意の上で行ってるのである。
 
 まあ…厳密に言えば完全には同意してないかもしれない。

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 しかし女性側としても、「まあ一緒に飲んでみて…気分が合えば行ってもいいかな」「そういう気分になれば」という曖昧な判断でついてくるかついてこないかを決めるわけで、今日出会った素性の知らない男について行くことに関して完全なる同意なんてあるわけない。

 「まあ…いいか」

 でついてくる。ここまで持っていくのが如何に難しいことか。当然相手に対する思いやりも必要だ。これは緻密な行動によって成り立っている。決して軽い気持ちでナンパしてるわけではない。

 それをわかってない奴が多すぎるのだ。

 ゆえに信頼関係として本当の意味での同意ができるのはホテルでの行為が終わってからなのである。今までの経験上ではナンパでトラブルになったことはほぼ皆無。

 どっちかというと私の考えとしてはナンパよりも


 つきあってうまく行ってないカップルや浮気、暴力の方がよっぽど攻められるべき事だと思う。この表を見ろ。


         評価
 ナンパ     ◎   お互い気持ちいい。それでいて後腐れなし
 浮気      ×   つきあってる相手がかわいそう。
 恋人と喧嘩  △   お互い嫌な気持ち。ストレス貯まる
 彼女に暴力  ×   つきあってる相手にかなりの痛手を与える


 おわかりだろうか。こうみるとナンパというのは意外とお互いにとってプラス要素が大きい。上位に位置する行動だと気付く(勝手だけど)

 「あの人ナンパしてるんだってね。サイテーだよね」なんて評価を受ける理由など一切ないわけだ(独り身の場合)。冷静に考えて何ら悪いことはしてないはずなのだ。

 


 …


 しかしまあ世の中に認められることはないんだろうな…


 という結論に誰もが達するのは自分でもわかっているけども(笑)



 話を戻すと、亜美さんにこんなことを熱弁したらさらに嫌悪感を増されるだけなので、「どう考えてもここは大人しくしているのが無難」…ということが言いたかっただけだ。

 これには一種の諦め…みたいなものも入ってるのかもしれない。
 
 



 結局亜美さんと一つ屋根の下で寝ながらも…本当にその日はこれ以降なんのイベントもなく、寝てしまった。男として情けなさ過ぎる選択だが、上記のような縛りの事項が私には多すぎるので、手を出せない事情もあるのである。





 …





 朝起きるとノリが部屋にいた。
 
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 昨日どうなったのか気になった。


財前「あ…おはよう」

ノリ「ん」

財前「おまえ昨日どうだったの?」

ノリ「実は昨日一睡もしてない」

財前「!? 寝てないの?」

ノリ「色々考えるところがあってさ」

財前「へ~…」

ノリ「…」


財前「そういやここ朝風呂あったな」

ノリ「ん」

財前「まあこんなところで真面目な話もなんだから風呂行って話さないか?」

ノリ「いや…おれは別に部屋でいいけど」

財前「いいから行こうよ」

ノリ「…」


 
 そういって1階の大浴場にノリを連れ出す。昨日寝てないというのでピンと来た。どうせあいつの事だから一睡もしなかった理由は以下の2択しかない


 ①片思いの里沙ちゃんをなんとか助けてあげたい
 ②里沙ちゃんに惚れた。


 この2つ。もう絶対にこれしかない。そもそも何も悩みがなければ寝てるはずなんだから。①②で悩んでて、一晩考えても結局どうしていいかわからないまま朝を迎えたってパターンだろう。

 そして…

 答えはすぐにハッキリした。




財前「で…何を悩んでるんだよ」

ノリ「ん? なんで悩んでるってわかったの…」

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財前「そんなの誰でもわかるだろ…」

ノリ「そうか…」

財前「里沙ちゃんと何かあったって顔に書いてるし」

ノリ「うん。まあ昨日色々話を聞いたんだけどね。4年も片思いしてるだけにその人に対する想いが凄いんだなあ」

財前「4年ていうと大学入る前からだよな」

ノリ「そうなの!そうなの!凄いよね」

財前「うんうん。で?」

ノリ「で?…って何が?」

財前「え…。まさかそれだけじゃないだろ? その話なら俺も夕食中に聞いたんだが…」

ノリ「…」

財前「そんな他人事でおまえは一睡もできなかったわけじゃないんだろ?」

ノリ「ま…まあ」

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ノリ「イメージと違って…意外と誠実で良い娘だなあと…」


 はは~ん。コイツ… さては里沙に惚れたことを隠してるな? 

 でもハッキリそう聞くのも野暮だな… 

 「おせっかい」はあまりしちゃいけないって事だってわかってるが、自分の性格上止められない。



財前「ひとつ…思うことはさ」

ノリ「ん?」

財前「その片想いが成就する可能性があるのかどうかって事が気になる」

ノリ「何が?」

財前「4年の片想いに拘る気持ちもわかるけど、俺たちは来年卒業だし、里沙ちゃんもあと1年ちょっとしか大学生活は残されていない」

ノリ「うん」

財前「いつまでもその男に拘るよりも目の前の幸せを掴んだ方が良いってアドバイスはしなかったのか?」

ノリ「おまえが言ってる意味がよく分からないんだけど…」

財前「今の里沙ちゃんの悩みを解決する事なんて簡単な事じゃないか。今の奴は諦めて他の男とつきあえばいいだけだよ」

ノリ「おまえこそ何もわかってないな。4年の重みがあるんだから。そう簡単には諦められないんだよ」

財前「しかしあの子は美人じゃないか。その片思いの相手さえ諦めればすぐに彼氏ができる」

ノリ「それはわかるんだけど…」

財前「俺をネタに使っても良いぞ。片想いしてただけなのにストーカー扱いされた奴も世の中にはいるって教えてやれ。どっちかというと俺の方が無残だ」

ノリ「おまえと里沙ちゃんは違うよ。おまえはネタ重視だろ?里沙ちゃんは真面目な片想いなんだ」

財前「俺もチズエさんには真剣だったに決まってるだろ(笑)」

ノリ「すぐ諦めたじゃん」

財前「アホか。言っておくが俺だって完全にチズエさんを諦めてる訳じゃない」

ノリ「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」

財前「そうせざるを得ないだけだよ。世の中みんながみんな思い通りの人とつきあえるわけじゃないんだから。諦めなきゃしょうがないだろ」

ノリ「まあ…そうだよな」

財前「だからもう諦めれさせればいいじゃん。」

ノリ「う~ん。俺は実際に里沙ちゃんの話を聞いてるだけに…」

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財前「フフフ。読めてるぞ」

ノリ「ん??」

財前「里沙はホッケーにどことなしかタイプが似てるからな。おまえが惚れないわけはない」

ノリ「そ…そんなことはないよ」

財前「そもそもな。里沙の片想いに可能性があったしりたら亜美さんが里沙をこの旅行に連れてくるわきゃないんだ」

ノリ「ぬ…」

財前「とにかくわかったな。里沙とヤルつもりなら諦めさせろ。俺を題材に使うなら、あの忌々しいストーカー事件の事も里沙に詳しく話してやるよ」

ノリ「…」

財前「ていうかその方が俺にも都合がいいし」

ノリ「なんで?」

財前「同時に亜美さんもその話を聞くことになるから…」

ノリ「あ…」

財前「自然にストーカー疑惑を解くことができるかもしれない。フフフ」

ノリ「…」

財前「風呂出るまでにどうするか考えまとめとけよな。里沙ちゃんと時間を共有できるチャンスはもう今日しかないんだから。」

ノリ「なんで?今日で帰ってもまた大学で話したりできるし…。なんなら誘って遊びに行ったりできるよ」

財前「おまえな~。日をあらためて食事に誘ったりしたら、下心があるんじゃないか?って里沙は警戒するぞ?」

ノリ「…」

財前「そうなるとチャンスはないな。あくまでも自然じゃないと」

ノリ「だから俺は別に…」



 そう言って私は脱衣所に帰った。

 ノリが里沙に惚れてない場合はまったく意味のない助言かもしれないが、それはあり得ないという確信があった。昨日寝てない上に、風呂に誘ってもすぐ来なかった。

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 こんなの恋の病以外あり得ないじゃないか(笑)

 他人の片想い話を聞いて、それに胸を痛め夜が寝れなくなったなんて聞いた事がない。里沙を想う気持ちがあるから親身になって悩んでるわけで、それは紛れもなく恋なのである。

 今頃あいつも湯船でいろいろ考えてるんだろうな… フフフ

 
 すると… 

 ガラガラ


財前「!?」

ノリ「ふぅ~」

 
 数十秒しか経ってないわけだが…


財前「え…おま。早いだろ(笑)」

ノリ「ん?」

財前「考えまとまったのかよ」

ノリ「考えることなんてないし」

財前「そうか…」


 この時のノリの冷静さを見て、当時の私は「あれ?里沙に惚れてなかったか…」と思ってしまったのだが、今振り返ってみるととんでもない。

 結果あの二人はこの数週間後につきあうわけで…


 思えばあの夜に色々そういう話もあったに違いない。あの夜二人の距離が縮まった事をお互いに隠す口約束でもしてたのだ。絶対。

 私はとんだ噛ませ犬である。まったく…。


ノリ「そういえばおまえはどうだったのよ」

財前「何が?」

ノリ「亜美さんと」

財前「あ…ああ。何も…」

ノリ「何も!?何もしなかったの? 二人きりだっちゃじゃん!!」

財前「ま…まあ…部屋は別だけど」

ノリ「おまえ俺には偉そうにペラペラ言っておいて自分は何も進んでないじゃないか(笑)」

財前「だって;; だって手を出したりしたらケダモノってホントに思われちゃうんだもん」

ノリ「そんなの実際そうなんだから隠してもしょうがないでしょ」

財前「そんな事言わずに何かアドバイスくれよ;;」

ノリ「アドバイス? う~ん…」

財前「…」

ノリ「アドバイスか…う~ん…」

財前「…」

ノリ「まあ。あれだ」

財前「お。何かあるのか!?」

ノリ「がんばれよ。」

財前「 …」




 




 まあ世の中そういうものか…。

 私も他人の事についてはアドバイスやらはできるんだけど、自分の事になると全然駄目。 そもそも本人は恋の脳内麻薬のおかげで平常心じゃいられないんだからしょうがない。

 的確なアドバイスを得るにはタイプの違う友人が必要だな…ホント。










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 そして朝食へ。

 風呂では色々話したものの、部屋に帰ってからはほとんど言葉を発しなかったノリ。何があったかよく教えてもくれない。私に里沙に惚れたとも言わない。


 だがその答えはやっぱりなんとな~く朝食会場で出た。
 
 
 朝食会場に二人は先にきてた。

 
 …


 亜美さんはいつもと変わらないメイクを当たり前のようにして来てる。

 里沙は昨日より化粧が明らかにケバイ。どう考えてもかなり塗ってる。

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 今日は家に帰る日。

 そんな濃いメイクは必要ない。片想いの男一筋とするならばこんなバッチリメイクを俺に見せる必要性は0。ノリに惚れてないとするならばさらに必要性は0だ。

 ではなぜこんな濃い化粧を??
 
 って考えるとおのずと答えは出るわけだよね…。

 この辺のわかりやすさと隙の多さはホッケーとそっくり。ノリが惚れないわけないじゃないか…。

 


 フフフ。風呂場ではうまく逃げたたつもりだろう。しかし私の目を誤魔化せるわけはない。

 一応友達として知っておく必要があるのだよ。そして里沙が亜美さんの友達である以上は知っておく必要があるのだよ。

 おまえらの胸中を…。

 私は二人の気持ちを試してみることにした。なぁに。簡単な事だ。ただお茶を頼むだけ。これだけで二人の関係は丸裸になる。私は早速実行した。


財前「里沙ちゃ~ん」

ノリ「…」

里沙「何よ」

財前「俺のお茶汲んできてよ」

里沙「はぁ? ヤダ。自分で汲んでくれば?」


財前「じゃあノリのお茶汲んできてやってよ」

里沙「え?」

財前「ノリのお茶」

里沙「な…なんでよ。お茶は自分で汲むものでしょ…」

財前「そうか。ならしょうがないな。俺がみんなの分のお茶汲んでくる」

里沙「あら…」




 …


 クックック…


 ホントわかりやすい奴だ。ノリのお茶って言ったら態度が急変してるじゃないか。

 私の目は誤魔化せんぞ。おまえら。

 とにかく
  
 里沙がもうノリを昨日のようには扱っていないことは明白。もちろんそれは惚れた晴れたの話ではなく、単純に悩みを聞いてくれたから恩義を感じただけという捕え方もできるが…
 
 それに比べて私の方は…

 相変わらず亜美さんに話しかける題材がない。

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 とりあえず亜美さんに話題を振ってみる。


財前「亜美さん。今日朝時間あるけど、どこか行きたいとこある?」

亜美「う~ん」

里沙「は~い。は~い。ありま~す」


 いや…おまえに聞いてねえし!!


里沙「鎌倉大仏に行きたい~」

財前「は? 大仏とか興味ねえし」

里沙「え~」

財前「大仏の本場は奈良なんだよ。中学で習ったろ」

里沙「でも大仏行きたい」

財前「とにかく俺は亜美さんの意見を聞く。 亜美さんはどこ行きたい?」

亜美「^^;」






亜美「私も大仏に^^;」


財前「…」






財前「じゃ…じゃあ今日は大仏に行こうか」

ノリ「待った!!

財前「ん?」

ノリ「鶴岡八幡宮にも行こう」

財前「鶴岡? どこだよそれ」

ノリ「縁結びの寺なんだよね」

財前「はぁ? 寺!?。寺とか却下却下。大仏にしようぜ」

ノリ「おいおい。縁結びの寺だよ?」

財前「縁結び? 縁結びって何だよ」

ノリ「縁結びっていうのは恋愛、人との出会い、物との出会い、社会・学校との縁、親子・子供との縁、お金との縁、家の縁とかすべてに関する縁だよ。縁結びの寺に行っておけば今後良縁に巡り会えるかもしれない」

里沙「へ~。(・ε・`*)鶴岡八幡宮か~。縁結びって所が良いかも」

財前「寺に行っただけで金から人から恋から成功するってか?誇大妄想も大概にしろ」

ノリ「妄想ってか成功する運がちょっとだけ上がるって事だよ」

財前「とにかくだ。亜美さんも大仏に行きたいって言ってる以上まずは大仏に行く。いいな」

里沙「え~(・ε・`*) 亜美しゃんは鶴岡八幡宮に行きたくないの?」

亜美「行きたい^^」

里沙「じゃあ決まり~」


財前「…」







 もうどうでもいいわこいつら…    どこでも行きたいとこへ行けよ。

 なんか私がこの場に居る必要性があるのかどうかすら疑わしくなってきた。これってノリ、里沙、亜美の3人旅行で良かったんじゃないの?  そもそも里沙は出発当初、亜美さんと私がつきあってることを確認して、「だったら協力する」って言ったじゃないか。

 あれ以降まったく協力する気ねえぞこいつ…。

 

 しかし目的地が決まれば話は早かった。朝食後すみやかに用意をすませ、いざ鶴岡八幡宮に出発。

 






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 鶴岡八幡宮

ノリ「(ノ゚ο゚)ノ オオオオォォォォォォ でけえ!!」

里沙「あ。おまんじゅう売ってるよ。買ってく?」

亜美「うん^^」

財前「…」

 カランカラン

ノリ「みんなお願い事した?」
 
里沙「は~い」

亜美「^^」

財前「…」



 …

 アホすぎる。

 いや。別に怒ってるからこんなことを言う訳じゃないが、「縁結び」と称して縁結びの寺に行って神様にお祈りをしたら「結ばれる」「良縁がある」と本気で思ってるんだろうか?

 勝手すぎる。どうも都合が良すぎる気がする。

 例えば世界に一歩目を向ければ、ろくに食べ物すら食べられない人がいるわけで。私たちのような食に不自由ないばかりか逆に食べ物を破棄してるような恵まれた立場にいる我々がさらに欲ぶって神様に縁結びを頼んで、そこからさらに運が良くなる事を祈願するとかあまりに都合が良すぎはしないか。

 「神は皆に平等である」という精神で考えるとどこをどう考えてもおかしい。


 良縁を与えるべき存在は他にたくさんいるはずだが…

 そもそも寺にお祈りを繰り返したしたくらいで良い出会い、縁が成立するのであれば、毎日祈願できるお寺の住職はトップアイドルと結婚してなきゃおかしいわけで。

 冷静に考えると矛盾点はすぐわかるだろう。


 しかしノリや里沙、亜美さんは祈願が終わった瞬間から「お守り」や「グッズ購入」に必死だ。
 

 私はそういうのにまったく興味がないので、鶴岡八幡宮に展示してあった看板なんかを読んで時間を潰すことにした。看板には歴史的背景をズラズラと書いてあったから読むと色々知れて以外と面白い。

 鶴岡八幡宮とはそもそも何を目的に作られた寺なんだろうか…。いつ作られたのか。


 …
 

 ふむふむ。

 なるほど。

 鶴岡八幡宮という寺は鎌倉武士の守護神として崇められていたらしい。

 康平6年に源頼義が、前九年の役での戦勝を祈願した京都の石清水八幡宮護国寺を鎌倉の由比郷鶴岡に鶴岡若宮として勧請したのが始まりのようだ。そしてその末裔の源頼朝が、宮を現在の地である小林郷北山に遷した。鎌倉はこの頃は既に、京都と並んで政治文化の中心となっており頼朝は関東の総鎮守となって崇敬されていた

 そして江戸時代に徳川幕府の庇護を受け、大規模化が進み、仁王門、護摩堂、輪蔵、神楽殿、愛染堂、六角堂、観音堂 法華堂、弁天堂等を建築、徳川家光の治世に薬師堂、鐘楼、楼門なども建てられた。また境内には、方五間の大塔、東照宮も存在したとのこと。

 ここまでの文でどこにも縁結びが出てこないというのもポイント。


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 では縁結びというのはどこから来ているのか。

 
 実は縁結びというのは鶴岡八幡宮の歴史自体とはそれほど関係ない。
 

 鶴岡八幡宮で縁結びのお守りを貰うときに「をだまき守」と書いてある。「縁結び」という起源はこれが関係しているらしい。「おだまき」というのは静御前が源義経を慕って舞った時の歌の内容も関係している。

 おだまきとは現代語訳で

 つむいだ麻糸を、中が空洞になるように丸くまきつけたもの

 この縁結びの「をだまき」の言葉の意味と、この事を書いた吾妻鏡の歌詞と照らし合わせると


 静は繰り返し繰り返し;昔を今に戻す手段がほしい(成す由もがな)

 
 となるらしく、これらを意訳すれば

 女性がある男性を思う言葉になる。
 

 それがこれ。

 
私はどうしてもあの人(源義経)の事が忘れられない。もう一度、あの燃えるような…あの人との熱い交わりが欲しい…と繰り返し願う



 ということらしい。

 なんとなんと。縁結びの由来は源頼朝ではなく源義経が関係していた。

 それも静御前が源義経(当時かなり格好良かったとか)との熱い夜が忘れられないから、「あの人ともう一回」…と願ったことから来ているのである。

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 もちろんこれは解釈の仕方によって違うので合ってるかどうかは不安だが、寺にはそういう風な事を書いてあったので当時はそう理解した。

 待てよ…これって…  ちょっとノリの言っていた縁結びとは微妙に違う。

 ここでいう縁結びは


 もう一度…愛するあの人に会いたい


 という意味じゃないのだろうか。フフフ。 あいつらバカだからこんな深いところはわからんだろうな。「縁結び」なんていうどうとでも解釈できる広い捉え方で祈願してる気になってるんだろう。

 鶴岡八幡宮は全然知らなかったけど、今や鶴岡八幡宮に関する知識は私の方が圧倒的に上だなこりゃ。

 クックック…







 その時
 



ノリ「お~い財前」

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財前「ん?」

ノリ「おまえお守りとか買わないの?」

財前「あ。ああ」

ノリ「亜美さんとせっかく来たんだしさ」

財前「ん」


 なるほど。私と亜美さんに縁結びをさせるためにノリなりに気を遣ったか(笑)

 これを断る理由はないな…。




財前「ちょっとそっち行く」


 …

財前「亜美さん縁結びのお守り欲しい?」

亜美「うん^^」

財前「OK~。二人分買っても良いかな?」

亜美「はい」

財前「んじゃ。2個買うね」


 私はそう言って2つ縁結びのお守りを買った。さっきの歴史的背景を読んで意味ないことはわかってるんだが、そんなことを真剣に言うのは野暮というもの。変人呼ばわりはもうたくさん。

 ここは奴らに合わせる。世の中そういうものだ。

 ここは大人の対応で皆に合わすべきなのだ。


財前「はい。亜美さん^^」

亜美「ありがとう^^」



里沙「ねぇ。ねぇ。財前」

財前「なんだよ。邪魔するな」

里沙「私とノリの分も買ってよ」

財前「なんでお前らの分をオレが!?」

里沙「ついでだしいいじゃん」

財前「ついでに買うようなものじゃない」

理沙「ケチ~(・ε・`*)」

財前「そんな高いもんじゃないだろ?自分で買えばいいだろ…って。あ…」

里沙「??」



 おっと。いかん。

 そうかそうか。ノリが縁結びのお守りを直接 里沙に買ったら「間接的に里沙に想いを告げる」事になるな。

 なるほど。

 だからノリも里沙も自分たちの分を買えないのか…。あからさますぎると。

 恥ずかしいと。


 だから第三者(財前)が買え…と



 あ~そうですかそうですか。わかりましたよ。買えばいいんでしょ買えば。


 ノリもそれならそうと私にハッキリ頼めばいいのにさ(笑)

 
 ぬ…。ということはノリが私を呼んだのは亜美さんと私を気遣ったのではなく、これを狙っての事か?

 ぐ…

 あんにゃろう…。



財前「わかったよ…買ってやるよ。」

里沙「ありがと~」

ノリ「すまんな~」

財前「おまえら」

里沙「??」

ノリ「??」

財前「大事にしろよ」

ノリ「あり~」






財前「おい…ちょっとまてノリ」

ノリ「ん?」

財前「大事にするってお守りの事じゃないぞ」

ノリ「わかってるよww」







 フッ。 縁結びのお守りで歓喜…か。

 
 バカどもには丁度いい目くらましだ。
  
 

 当時「空気を読む」という言葉はなかったが、この時の私の行動はまさにその「空気を読んだ行動」言えるのかもしれない(笑)















 その後私たちは鎌倉の大仏を観光。

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 ここでも3人が観光している間に私はせっせと歴史的背景の看板を見物。

 見るにこの大仏。鎌倉大仏とは呼ばれているものの、実際は高徳院の中にあるというイメージらしい。、高徳院は元来浄土宗の寺院で阿弥陀如来を本尊とし、これを表現した阿弥陀如来像として「鎌倉大仏」「長谷大仏」が名高いようだ。

 また大仏は当時部屋の中にあったようだが、津波で建物が倒壊してしまい、以後は露座となっているようだ。


 …

 なるほど。元々は大仏院という建物に大仏があったということは… 奈良の大仏と同格って事なのか。


 ふ~む…。


 結構こういうのも面白い。あの3人はそんなことは知りたくもないんだろうけど…。

 





 大仏見学後私たちは帰路についた。




 前述したが、この数週間後にノリと里沙はつきあう。しかしこの時一体二人の間に何が起こっていたのかは今もなってもわからない。 お互いに惹かれだしている段階だったのか、本当にこの時はなんでもなかったのか。

 里沙は4年間片想い。そして大学生活残り1年。いつ成就するかわからない片想い。

 あの人に拘ると

 もしかしたら彼氏ができなくて大学生活が終わるかも…

 …

 不安。不安。不安

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 とどまることを知らない不安が別の男を欲しがった。

 そこにノリが現れた。

 ということなのかもしれない。


 


 

 結局今回の鎌倉旅行。私と亜美さんの進展は縁結びのお守りくらいか。



 だが今回の里沙とノリを見てよくわかったことがある。

 普通の女性を落とすためには、ナンパみたいな感じで会話しても駄目なのだと。今回の里沙のように精神的に弱っているときに狙わなくてはならないのだと。

 そもそもこの2日間…隙だらけの里沙とは対照的に、亜美さんにはまったく隙がなかった。まさに鉄壁というしかない。独特とも言えるあの防御壁は圧巻の一言。こちらの攻撃を跳ね返すというよりも吸収してしまう感じか…。まあだからこそいい女とも言えるわけだが、こんなんじゃベッドインは夢のまた夢。

 とにかくこのままでは何をしても駄目だ。

  
 …
 


 仮づきあい中のはずなのに…まったくそういう素振りがない。

 というよりこんな事は既に亜美さんには忘れ去られているような気がする。

 曖昧すぎたか…。

 やっぱりもう一度ハッキリと告白する必要がある。


 白黒ハッキリさせる必要がある。




 このままでは…友達のまま終わってしまう…











 
 しばらく亜美さんとは距離を置こう。


 そう結論を出した。

 といっても数週間だけのつもりだが…。

 今は何をしても無駄。頭を冷やす。



 私は。

 明日から数週間の間だけ…

 ここ最近サボっていた卒業論文の研究活動に集中することを心に決めた。























 今日の選曲  Swallowtail Butterfly   YEN TOWN BAND(


http://www.youtube.com/watch?v=zL9GzM7dQi4





使用している写真は素材を使用したものであり、本人のものではありません
  CoCo* ---web用写真素材&HTML テンプレート---



テーマ: 切ない恋
ジャンル: 恋愛








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2009(Mon) 10/26

大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (89)

財前History … Comments(89)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第21話目です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
09/10/30 大学時代回想21 3年後に明かされた真実 (コメント --)
09/10/29 大学時代回想21 縁結びという名の目くらまし (コメント 73)
09/10/26 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント 87)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)











 亜美さんと鎌倉に行く約束は取り付けたものの…何か腑に落ちない感じが否めない。


 いつからだろうか。

 こうやって恋如きで悩むようになったのは。よくよく考えると恋で悩む必要性などまったくないにも関わらず最近のこの体たらくは一体何だ。

 そもそもナンパに行けば性欲は充分満たせる。これは経験でわかってるわけで…私は恋愛などまったくする必要はないのである。リョウさんにそういう技は全部教えて貰ってるのだから。
 
 そして

 その最近の迷走に起因しているのは間違いなくチズエだ。過去勝手にストーカー呼ばわりされて酷い目にあった女だが、あの頃は大学入学1年だっただけに相当ショックが大きかった。
 
 徳島の田舎からファッションに身を包んで華の都東京に希望を持って出てきた一人の青年が…

 いきなりストーカー呼ばわりされて総スカンとか

 鬱病になっても誰も不思議がらないレベルの出来事だ。


 あのチズエとかいう女のおかげで結局大学生活でまともな真面目な恋愛がほとんどできなかった。ヤルという性欲は数え切れないナンパで満たせているにしても、心と心が繋がる恋愛という事に関してはまったくの未経験に等しい。

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 やはりず~~と引きずっているのである。あの出来事を。 

 だから大学4年となった今、ここに拘ってしまうのだ。

 最後に…大学で…まともな真面目な恋愛をして卒業したい。


 自分の心では亜美さんとヤレればそれでいいと想いながらも、心のどこかにこういう純粋な気持ちがあるのだろう。最後くらい…ナンパ以外で…大学内で彼女を作っておきたい。

 そういう軌跡を残しておきたい。


 でもいざやろうとすると空回りしてしまう。



 …


 よ~く今の自分を自己分析すればこうなる。

 
 調子が今ひとつでない理由はこれで間違いないだろう。

 この年になって気づいた。やっぱり自分は恋愛というものはどう考えてもあまり上手ではない。

 そもそも女の気持ちが一切わからないし、どうしてもヤリたいという本能が前に出すぎるからそれを諫めるのに気力ゲージを使い。ナンパの戦法をそのまま出したら軽い男に見られるから、それを修正しながら一般相手用に変換するのもまた気力ゲージを消費する。

 ホント気を遣ってばっかだ。

 こんなことしてたら目の前の女性との会話に100%集中できないからまた行動や挙動が変になる。

 …要は目の前の相手に集中できていないのだ。

  
 これまでのやり方で望めば今回の鎌倉も…結局うまく行かないような予感がプンプン。どっちかというと余計な戦略などは考えず、自然体で望んだ方が逆に良いような気もする。



 …






 そんな中ノリはノリノリだ。

 今研究室で一番ノリに乗ってる奴はこいつだろう。 

 亜美さんの友達が美人だったという事実は相当大きかったのだろう。ここ最近は着る服やファッションセンスが変わってきてる。それでいてホッケーをまだ諦めていないという所が…見ていて痛い。

 あまりにもおめでたすぎる野郎だ。

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 だいたい写メールやプリクラで美人に写ってる女ほど信用できないものはない。あんなものは綺麗に撮ろうと何度でも撮り直せるんだからさ…斜め45度のカメラ目線とか有名じゃないか。

 そもそも何なんだコイツは。鎌倉にしろ、亜美さんの友達にしろ全部私がお膳立てしてやった事じゃないか。ノリ本人はまったく何も行動していないにも関わらず浮かれられる神経がわからない。

ノリ「え?もちろん財前には最高に感謝してるよ」

 なんて頻繁に言ってくれるのは良いのだが、そもそもまだ付き合ってもいないのに感謝されても困る。フラれたらどうするんだと。おまえがフラれたら、また夜な夜な慰めるのは私なんだぞと。

 もしそうなったら



 女を紹介し、それにフラれた奴を慰め、さらに自分の恋も失敗



 ということになるので一番割に合わないのはどう考えても私じゃないか。



 
 
 

 そして約束の日がやってきた。

 週末の土日。場所は鎌倉。1泊2日のダブルデートである。


 実は今回は宿に泊まるにつれて「ひとつのトラップ」をしかけてある。

 こんな事は行く前からわかってることだが、泊まるとするならば部屋は2つ。これは鉄板だ。部屋割りは当然

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 こうなる。これも必然だ。

 部屋A  亜美、亜美の友達
 部屋B  財前、ノリ、
 


 しかし実は今回、電話で予約するに当たってこう店主に告げてあるのである。

 部屋A 財前、亜美
 部屋B ノリ、亜美友達

 
 フフフフフ  フハハハハ

 二人きりのデートだったはずなのに友達を呼ばれて涙目だった私だがタダでは転ばん。

 当然わかってる。こういう部屋割りにならないことは。そりゃ私とノリが一緒に寝ることになるだろう。亜美さんと亜美さんの友達が同じ部屋で一緒に寝ることになるだろう。
 
 しかしだ!!

 そうこちらがお膳立てするのはあまりにも時期早々というもの。なぜならノリと亜美さんの友達が民宿に着く前に相思相愛になるという状況も考えられるからである。可能性は2%くらいはあるだろう。

 この状況の場合、さっきの女男、女男の部屋割りでも素直に受け入れる可能性が高い。亜美さんは嫌だろうが、ノリと友達がデキちゃったらしょうがない。そっちに気を遣わざるを得ない。

 …となると私と寝るしかない。

 つまりダブルデートにした事こそがアキレス腱になるのだ。 クックック…


 そしてもう一つの状況は亜美さんの友達だ。亜美さんと私が仮で付き合ってることを知ってるか知らないかわからないが、まあ知ってるだろう。常識的に考えて。

 そうなると友達の方が私たちに気を遣う可能性がでてくるわけだ。

 私と亜美さんをカップルだと友達が認識している場合… 店主に部屋割りはこれですと言われたら、私と亜美さんに気を遣って「いいよ^^」と言い出す可能性があるのだ。

 まさに友情である。


 当然可こうなる能性的には5%もなく、十中八九は亜美さんと亜美さんの友達が相部屋になるわけだけれども、かといって最初からこれら美味しい状況を潰すこともない。

 部屋割りを最初から 

 部屋A  亜美、亜美の友達
 部屋B  財前、ノリ、

 にしてた場合にこれを覆すのはほぼ不可能。だったらちょっとは足掻いておきたい。もちろん店主には「私がこういう部屋割りをしたってことは絶対に言わないで欲しい」という旨も伝えてある。

 まさに完全犯罪って奴だ。


 一緒に寝りゃあこっちのもんよ。酒の勢いに任せて… 






 …



 そして

 私とノリは待ち合わせの30分前の朝8時に下北沢に到着。ここから出る電車に乗れば鎌倉までは2時間程度で行ける。鎌倉まで距離にして70キロ程度なのでバイクでも行けるのだが、バイクだとマフラーの爆音で会話がほとんど成り立たず、亜美さんの友達とノリ、そして私がまったくコミュニヶーションが取れない。

 こうなると見知らぬ感じで民宿に着くことになってしまい、前述した「亜美さんと同部屋」作戦の可能性が限りなく0になるので電車で行くことにしたのだ。

 ノリにしても

ノリ「もし亜美さん友達が想像しているよりも美人で豊胸だった場合…運転中に興奮して事故る可能性が…」


 という事で意見が一致してる。他にレンタカーで行くという方法もあったが、お互い東京の道を運転した経験が少なく、こちらも大事を取ってやめることにした。

 集合時間まであと20分。

 …のところでノリがソワソワしてきた。出発前は強気でも、いざ当日となれば緊張するのは当然だ。

 果たして目の前にどんな娘が現れるのか。

 私にとっちゃどうでも良い事だが、ノリは気になってしょうがないのだろう。 


ノリ「おい。もしブスだったらどうしようか…」

財前「おまえ写メール見たろ?問題ないって」

ノリ「そういえば趣味とか聞くの忘れてたし…」

財前「そんなの今日聞けばいいだろ?」

ノリ「初対面からそんなこと聞けるわけないでしょ!」

財前「そんなこと気にしてる場合かよ。おまえは今日その娘と同じ部屋で寝るかもしれないんだから」

ノリ「…ぇ? どういうこと?」

財前「そういう部屋割りにしてある」

ノリ「ちょちょちょちょちょちょ;; 待ってよ。オレおまえと同じ部屋じゃないの?」

財前「それが違うんだな」

ノリ「駄目駄目駄目駄目駄目。そんなの絶対駄目」

財前「なんでよ。おまえもそっちの方がいいだろ?」

ノリ「アホか~!! おまえは良くてもオレは初対面の娘と同じ部屋とか…絶対寝れないよ」

財前「う~ん。でも今更そんなこと言われても。嫌ならもっと早く言ってくれないと」

ノリ「おまえが勝手に決めたんじゃないか!」

財前「まあまあ…じゃあ向こうがおまえと一緒の部屋でもいいって言って来たらどうする?」

ノリ「え?向こうってその娘がオレと同じ部屋で寝たいって事?」

財前「そうだよ」

ノリ「ないね。ないない。うんないと思うそれは」

財前「世の中何があるかわからんよ」

ノリ「それは…その…そのときは考えるけど」

財前「じゃあいいじゃんか」

ノリ「え?でもそんな事言ってるの?その娘」

財前「言ってるわけないだろ」

ノリ「だよねぇ…」

財前「まあそういうことだ。ノリ君。今日は出たとこ勝負で行くしかないんだよ。わかるね?」

ノリ「だからおまえが勝手な…」




財前「シッ… 来た来た亜美さん来たぞ。黙れ」

ノリ「ぇ・・・」





 亜美さんとその友達は約束時間のの10分前にキッチリ到着。

 さすがだ。

 格好を見るにちゃんと旅行する準備をしてきてるし、ファッションも普段とはどことなく違って「よそ行き」っぽい攻めのファッション。

 これは脈ありか?と想わせる雰囲気がプンプンだ。

 そして気になる友達は…











 …





 

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 まあ写メールと比べると結構イメージは違うけど、見た目は全然悪くない。

 どことなしか大人し目なタイプに見受けられるが… 少しさぐりを入れてみる
 
 
財前「おはようございます」

亜美の友達「おはようございます」

ノリ「おはようございまう」

財前「…」

亜美の友達「…」

ノリ「…」



 やはり…。これはノリは苦労しそうな気配。そもそも積極的な子ならここでノリにアピールしにいくだろうし、「あ。今日はよろしくおねがいしま~す」くらいの一言は発言するからだ。

 挨拶だけしてあとの会話はこっちに任せるといった体勢を見せた以上、この娘は亜美さんにべったりくっついて旅行するって事くらいしか恐らく頭にない。話術に難があるノリには難しいタイプか…。


財前「え~と。お名前をまだ聞いてなかったんだけど」

亜美の友達「里沙です」

財前「ほほう。里沙ちゃんか。学年は?」

里沙「亜美しゃんと同年です」

財前「なるほど~。1こ下ね。 そうかそうか。ちなみにどこに住んでるの?」

里沙「向ヶ丘遊園です」

財前「うお!? いいとこ住んでるね~」

里沙「そんなことないです」

財前「それでファッションが素晴らしいんだね。さすがは向ヶ丘遊園の人だ。凄いな~」

里沙「そんなことないです」

財前「週末とか何して遊んでるの? テニス? ドライブ?」

里沙「テニスはたまにしたりします」

財前「うほっw テニスか~。いやあ憧れちゃうな~テニスとか」

里沙「そんなたいしたもんじゃないです」

財前「趣味もやっぱりテニスだったりするの?」

里沙「え~と趣味は…」



亜美「ちょっと財前くん。財前くん…」

財前「ん?」

亜美「おしゃべりはそれくらいにして…電車出ちゃいますよ?行きませんか?」

財前「あ。そうだね…。じゃあ行こうか。切符はみんなの分買ってあるよ」

ノリ「…」





 そういって駅に歩き出すと予想通り里沙ちゃんは亜美さんにべったりくっついて移動。私とノリが前方2メートルくらい先を先導して歩くという形になった。まあ…そうだろうな。そしてノリがなぜか一人でイライラ。


ノリ「なあ。おまえ里沙ちゃんとばっかしゃべるなよ…」

財前「ん?」

ノリ「オレもしゃべりたい」

財前「じゃあしゃべれよw」

ノリ「何話せばいいかな?」

財前「なんでもいいんじゃないか?テニス好きって言ってたしそれで繋げば?」

ノリ「テニスとか知らないし…」

財前「おまえアホだなあ…。適当な事言えばいいんだよ。テニスは軟式と硬式あるよね~とか伊達公子とか杉山愛とかウィンブルドン凄いよね~とか適当に語句並べてればわかりゃしないだろ。知ったかぶれよ」

ノリ「知ったかぶれって…」

財前「打つときはこうラケットを返してさ。ドライブかけて打つとかも基本だったりするよね~とか言ってみればいいじゃん」

ノリ「う~む。ていうかおまえテニスやってたの?」

財前「いや。なんとなくそうじゃないかなって」

ノリ「…」




 そうアドバイスして電車に乗り込んだものの…ノリは社内でも静かなものだった。

 やはりそういうものなのかもしれない。人間にも容姿相応というものがあって、普通の娘ならいざ知らず、いきなりこんな美人が乗り込んできて初対面で「ハイどうぞ」って放置されても

 ノリのようなタイプはどうしていいかわからないわけだ


 ホッケーみたいなタイプの女なら勝手に話題を振りまいてくれるし、しゃべらないノリにも突っ込んでくれるし…

 でノリが何もしなくても充分に場は持つのだが…相手が大人しい娘だと無理か。こうなると私がしゃべるしかないわけだが、それをするとノリが空気になるし、里沙ちゃんに気があるんじゃないか?って亜美さんに思われかねないしで、これはこれで難しい舵取りが必要なのである。

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 まあしかし。こうなったらもうしょうがない。

 私がしゃべろう…。



 …とその時だった。里沙ちゃんがとんでもない一言を発する

 

里沙「え~と財前さん。ちょっと聞いてもいいですか?」

財前「ん?何?」

里沙「亜美しゃんと財前さんって…」

財前「うん」























 里沙「つきあってるんですよね?」

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財前「な…な…」

ノリ「!!」

亜美「…」



 な…なんだこの娘いきなり…。
 
 亜美さんとは仮づきあい。そして他言は無用の秘密って事になってたんじゃないのか。

 もちろん亜美さんも友達である里沙ちゃんにはしゃべってるんだろうけど、何でこんなとこでこんな事聞くんだよ…。

 なんだこれは… どう答えればいい… まずい。いきなり修羅場だこれ…

 

  
 ケース① つきあってると答えた場合

 他言は無用という約束をいきなり破ることになり亜美さん激怒。仮つきあいすら破談に;;


 ケース② つきあってないよと答えた場合

 仮つきあいってこっちから亜美さんに言い出してとりあえず付き合って貰ってるのに「つきあってないよ」なんて言ったら亜美さんが激怒!?。


 ケース③ 仮につきあってるだけだよと答えた場合

 仮つきあいは他言は無用なのに自分からバラしたてたら世話はない。しかも世の中に「仮づきあい」なんて事はまったく認知されていないので、こう答えた場合「仮つきあいって何ですか?」なんてさらに突っ込まれてその場の空気は爆死。





 
 くそ…


 とんだ爆弾女だな。この小娘。

 気の利いた会話ができない癖にしゃべったと思ったらとんでもない発言をしくさる…。ノリに助けを求めても無駄なのはわかってるし… ここは…ここは…



 
 逃げるしかないだろ…








財前「里沙さん。それ誰に聞いたの?」

里沙「え?」



 クックック… 自分からは何も言わず、つきあってると明言するわけでもなく、明言しないわけでもない。さらに何一つ知らないという状況にまで対応しているという…まさに完璧な回答だな。

 

里沙「亜美しゃんですけど…」

財前「なに!? 亜美さんに!?」

里沙「これって一応ダブルデートですよね?私としてはそういう所ハッキリして欲しいんです。

財前「え…いや…うん。それはその…」




 な…なんなんだこの小娘!! オレが誰とつきあってようが勝手だろうが(仮だけど)。 なんだこれは。この言葉の裏には一体何があるんだ。

 奴の真意はなんだ…

 どうしたいというのだ。

 奴は何を狙ってるんだ…くそ… 初対面だけに…読めん。


 あ…そういえば亜美さん。

 亜美さんが言ったってコイツ言ったよな? てことは亜美さんは今どういう顔をしてるんだろう…



 それによって答えが決まる…







 チラッ…





 





 って…






















 亜美さん無視かよ(笑)!!


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 待てやこれ!!
 
 これ…二人でオレをハメただろ。絶対ハメだこれ。だいたい初対面の人に面等向かっていきなりこんな発言する奴なんてこの世にいるわけねえよ。絶対なんかあるんだ。これ絶対何かある…。





財前「つ…つきあってるさ…」

里沙「やっぱり!!」

財前「え!? 君、亜美さんにその事聞いてるんじゃないの?」

里沙「この子…こういう系の話って聞いてもあんまり教えてくれないんですよ」

財前「な…」

里沙「私の方もいきなりダブルデートに付き合ってなんて言われるし不思議だったんです」

財前「あ…ああ」

里沙「そういうことなら納得しましたw」

財前「そ…そうか」

里沙「だってダブルデートって普通つきあってるカップル2組でやることですよ」

財前「そ…そうだよね…」

里沙「亜美しゃんがどうしても鎌倉について来てって電話で言うからw」

亜美「…」

財前「そうなんだ…」

里沙「でもそういうことなら私。協力しますよw 」

財前「そ…そうか」

里沙「あ。それと事前に言っておきますね」

財前「え?」


里沙「ダブルデートって事ですけど、私、今好きな人いるので他の男性とは友達以上にはなれません」

財前「…」

ノリ「…」

亜美「…」

里沙「そこだけ事前に確認して貰いたくて」

財前「なるほど…。確かにそうだよね。そもそも最初からダブルデートになってなかったよね今回の旅行…」

ノリ「オレもおかしいとは思ったよ…」

亜美「ノリさん付き合わせてごめんなさい。財前くんと二人で旅行に行くのが恐かったんです…」

財前「!?」

ノリ「あ~。うん。それ良~~~くわかるw まあいいよ。これで余計な事考えずに鎌倉楽しめそうだし」

里沙「そうですよね~」

財前「…」






財前「あの…亜美さん。なんでオレと二人で行くのが恐かったの…」

亜美「財前くんっていろいろ変な噂があるから^^;」

財前「今まで亜美さんには何も手を出してないでしょ…」

亜美「もうちょっと時間が…^^」













 

 なるほど。なんでこういう事になったのか今すべての謎が解けた気がする。
  
 思えばあのとき…ノリを指名したのも、ノリならよく知ってるから安心というのがあったんだろう。そして里沙ちゃんを指名したのも里沙ちゃんにはすでに意中の相手がいるからブレない。つまりノリに迷惑はかからないって思ったのだろう。

 そりゃそうである。ダブルデートを本気でするなら行く前に紹介したりするはずだから。
 
 
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 しかしその後の電車移動はこれまでの重苦しい空気がガラッと変わった。


 私は私で一応亜美さんの気持ちがわかったのと、もう少し時間が経って信頼関係ができれば確実につきあってくれるだろうという確信。

 ノリはノリで里沙ちゃんを彼女候補として見る必要がなくなり、緊張する必要がまったくなくなったことにより呪縛から解き放たれた。

 里沙ちゃんにしてもそう。早々にノリはNGとカミングアウトしてるだけに、あとは旅行を楽しむだけ。会ったときが別人であるかのようにおしゃべりを繰り返している。

 亜美さんもあの発言後笑顔が耐えない。 



 もしかしてこの里沙という女…


 救世主かも。




 それにしても亜美さんのこの発言は…


亜美「ノリさんごめんなさい。財前くんと二人で旅行に行くのが恐かったんです…」

亜美「財前くんっていろいろ変な噂があるから^^;」


 亜美さんにはそういう素振りを見せたことがないはずなんだが… なんでこんな風に思われたんだろうか。

 …

 そもそもそんな獣みたいな行為を私がするわけない。 これまで一度も手を出してないんだぞ。至って紳士じゃな…



 …



 あ…




 









 しまった!!





 そういや部屋割りを


 部屋A 財前、亜美
 部屋B ノリ、亜美友達

 
 にしたままだった!!



 まずいまずいまずいまずい。これはまずい!!

 さっきケダモノみたいな事言われといてこんな部屋割りをみんなにバレたら



里沙「ちょ…何この部屋割り…財前サイテ~」

亜美「この部屋割り…財前くんがやったのね…今後のつきあい方を考え直させて貰うわ」

ノリ「これはちょっとオレもフォローできないなあ~ケダモノくん」



 こうなることは火を見るよりも明らか。


 本当のケダモノになってしまうではないか!!


 こ…これは…  マズイだろ。


 しかしこの4人がいる状況で部屋割りを電話で言うのもなんかおかしいし… こんな会話を聞かれるのもマズイ。 どうすれば…どうすれば…

 そんなことで冷や汗をかいてる内に電車が鎌倉に到着。


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 里沙ちゃんと亜美さんは喜び勇んで駅の出口に駆け足で出て行く。

 しめた!! ここだ!! 奴らの注意は今ここにない!!


 早速民宿に電話。

 電話番号を16連射。


 プルプルプrプルpルル


財前「もしもし。今日予約してる財前ですけど!!!!!」

店主「はい」

財前「部屋割りを変更してください。早く!!」

店主「え~と。どのように?」

財前「女は女で。男は男で固めてくれ。部屋。わかりますよね?」

店主「ああ。女性と男性を部屋を分ければ良いんですね? かしこまりました」

財前「そうです。よろしく!!」


 ガチャ





 


 …


 これでヨシ…と。


 後でノリに


 「だからバカなことはやめろって言ったのにww」

 と突っ込まれたが、とりあえず本当のケダモノになるのだけは回避できた…。女性と男性の部屋が分かれてれば誰もおかしくは思わないだろう。

 ふ~…。


 その後、鎌倉を心ゆくまで4人で堪能。ノリと里沙ちゃんも友達として意気投合したようで、もう既にかなり仲良さそうになっている。もちろん友達として。

 そして観光している間にノリが私が過去ノリにやってやった数々の自己犠牲の行動をチョロチョロ話してくれたおかげで亜美さんも安心してくれているようだ。

 そりゃそうである。どれだけノリのために行動してやったか。自己犠牲を払ってやったか。

 これを少しでも話せば私の株が上がらないわけがない。

 もちろん本人じゃなく第三者が話すことでその信憑性は高まるわけだ。

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 今回はこの上に里沙ちゃんも居たことで「へ~。財前って見た目の割に以外と紳士じゃん」なんて言ってくれたりしたことも功を奏し、今やまったく亜美さんは私を疑っていないといっても過言ではないだろう。

 それにしてもこの里沙…。

 電車を降りるまではまだ後輩っぽい立場をわきまえていたが、観光している間に私の事を「財前」と呼びつけにするわ、ノリの事を今や「ノリダー」と呼んだりでやりたい放題。

 中でも酷かったのが勝手に作った仮面ノリダーの替え歌。


 周りに大勢観光客が居る中… 大声で




里沙「仮面~ノリダー パンツは真っ茶色~ 」



 などと歌うものだからノリが慌てて


ノリ「ちょっと…里沙ちゃんやめてよ」

里沙「あはは。パンツが真っ茶色~」

ノリ「里沙ちゃん!」




 
- The best home videos are here 仮面ノリダー主題歌



 なんかもう理沙ちゃんがノリをいじってノリが凹む…

 なんていうのがパターン化してきた。里沙ちゃんは鋭い。ノリはいじられキャラだというのを今日1日で見抜いてしまっている…。


 この歌…観光地ならまだいい。だが大学で歌われたらどうだろう…

 ノリもこの歌を大学内で歌われるのを一番恐れているようで


ノリ「知らない人ばっかの鎌倉ならまだ…、もしあの歌を大学でやられたらオレの立場は…」

 なんて感じで病んでたりする。しかしそもそも生まれてこの方女の子を叱ったことがないノリに、里沙ちゃんのこの行為を止めろと言ってもそれは不可能。

 もしホッケーがこれを聞いたら間違いなくノリの息の根は止るだろう。

 








 そして日も落ちて…

 私たちは予約していた民宿に到着。
  
 部屋割りも事前に電話をしておいたこともあり問題なく終了。こんなことは女性と男性と部屋が分かれてさえいれば何てことはない。
 
 到着後ほどなくして女性陣は風呂に出発したので、私とノリも夕食を待たずして先に風呂に行く事にした。
 
 今回の民宿は私が予約しただけにもちろん風呂の選定もぬかりはない。
 
 ちゃんと女性が喜ぶようにしてあるのである。

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 まあ男にとってはあまり関係がないが…。


ノリ「おまえ感謝しろよな~。亜美さんとグッと親密になったじゃんか。この旅行で」

財前「そうかなあ」

ノリ「やっぱりオレは江ノ島にツーリングに行きゃあ良かったかな」

財前「おまえ楽しんでたじゃん。里沙ちゃんと」

ノリ「アホか。パンツは真っ茶色とかノリダーとか年下の女の子に言われて…自分が情けない…とほほ」

財前「まさかとは思うけどおまえ里沙ちゃんに惚れてないよな?」

ノリ「かわいいとは思うけど、あんな強気な子はオレには無理だな;;」

財前「ホッケーと似たようなもんだと思うが…」

ノリ「ホッケーはもっとやさしいよ!!」

財前「そうかなw」



 
 …


 そんな話を風呂場でノリとしたあとに頃合いを見て夕食会場へ。

 里沙ちゃんと亜美さんは先に来ていたようだ。


 しかし


 亜美さんの浴衣姿…素晴らしい…
 
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 やっぱり何て言うか… 浴衣を着ると一段と太ももや胸元の…露出が…

 本当に亜美さんの体というか…くびれは凄くエロイ。
 
 これを前にして平常心を保てる男なんているのだろうか。

 人をケダモノ、ケダモノと言うが、こんなのしょうがないじゃないか。どっちかというとこんな色っぽい体をしてる方が悪いと思う。

 原理的には…超短いミニスカートを着て町を堂々と歩きながら、それに見とれたりしたら「うわ!変態!」と言ってしまう女と理不尽さは似てないだろうか。

 だってその浴衣の下は…

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 こういうことになってるわけで。あれがこうでこれがああなのである。

 これで興奮するなという方がどうかしてるだろう。

 
 しばし亜美さんに見惚れていると…


里沙「おい財前。亜美しゃんに見とれすぎ~w」

財前「な…!?」

亜美「…」

里沙「そういうところを無神経にさらけ出すからケダモノだって思われるんじゃないの?」

財前「イチイチうるさいな。亜美さんの浴衣姿初めて見たんだからしょうがないだろ」

里沙「私の浴衣姿はどうよ。ほらほら」

財前「見れたもんじゃねえ。おまえ意中の相手がいるんだろ? そいつに写メでも送っとけよ」

里沙「片思いなんだから送れるわけないじゃん」

財前「な~んだ。片思いだったのか。そりゃ叶わぬ恋だな(笑)」

里沙「酷い。亜美しゃん財前がこんなこと言うよ;;」

財前「片思いは叶わない。これはオレの経験談でもあるがな」

亜美「財前くん。ちょっと酷いよ…」

財前「!? や…ヤダなあ。これはアメリカンジョークじゃないか。本音はもちろん里沙ちゃんを応援してるよ」

里沙「ぅそだ…」



そして話になかなか入って来れないノリがようやく会話に参加。


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ノリ「り…里沙ちゃんならきっとうまくいくよ。その人とw」

里沙「うるさい。茶色いパンツは黙ってて!!」

ノリ「;;」

財前「まずおまえその性格から直した方がいいんじゃねえか? 俺たちは一応おまえよりも先輩なんだぞ」

里沙「ざんね~ん。あたし1年浪人してるから財前とノリダーと年は一緒だよ」

財前「なに!?」

ノリ「そうだったのか」

 
 …

 そうこうしているうちに会食が登場。

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里沙「うわぁ。凄い食事だね~」

亜美「^^」

ノリ「これ高いんじゃ…?」

財前「フフフ。」



 そしてそんな中…

 里沙がとんでもないことを発言する。


里沙「ねぇ財前」

財前「なんだよ」

里沙「部屋変わってあげようか。亜美ちゃんと一緒に寝る?今日」


 …

 ちょっとまて… マジか。この女マジで言ってるのか。里沙…こいつはマジで救世主かも!



財前「え?…いいの?」

里沙「いいよ」

亜美「…」

財前「まあオレはいいけどさ。オレは全然いいけど…」

理沙「じゃあ変わる?」

財前「ウンウン」

里沙「そんなわけないじゃん。アメリカンジョークだよ(・ε・`*) 」

財前「なんだと!?」

里沙「あ~。引っかかった~w 結局財前はケダモノなのね」

財前「き…貴様!!」






 駄目だこの女… 一枚も二枚も上手すぎる…

 味方につけておかないと大変な事になるなこれ…。「亜美さんとの将来はわたしが握ってるのよ」と言わんばかりの発言…。


 こ…これは警告か。なんという悪女…。

 この時を境に私は里沙に高圧的な態度を取るのを一切やめたのであった。敵に回すのは怖い…


 

 
 そして食事も終わって

 なぜかあの発言を境に里沙の様子が変になった。

 今までの元気さはどこへ行ったのか急にテンションが下がってる。 なんだこいつ…まさか鬱か?


 
財前「里沙ちゃん…ど…どうしたの?急に元気ないね」
 
里沙「片思いの彼の事思い出しちゃって…叶わぬ恋なのかなやっぱり」


 …


 あ…

 そういえばさっき


里沙「片思いなんだから写メなんて送れるわけないじゃん」

財前「な~んだ。片思いだったのか。そりゃ叶わぬ恋だな(笑)」



 こんなことを言ってしまっていた…。まさかあの発言が引き金に…?

 これは…

 まずいな。

 
 ここでなぜかノリが動き出す。
 
ノリ「良かったらオレが話を聞こうか? 話せば楽になるよ」
 
里沙「いいよ別に!」

ノリ「まあまあそう言わずに」

里沙「どうせ叶わぬ恋だよ…」

ノリ「そんなことないって」

理沙「…」

ノリ「じゃあちょっと俺ら夜風に行ってくるわ。ほら。行こう。里沙ちゃん」

里沙「…」



 そういってノリと里沙は外へと出て行った。し~んと静まりかえる夕食会場…。なんか全部私が悪いような雰囲気だが実際そうなんだからしょうがない…が。 すぐに亜美さんにキツクお灸を饐えられる。




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亜美「財前くん…。里沙はああ見えて傷つきやすいんだから!」

財前「ごめん…」

亜美「でもあの子かわいいでしょ^^」

財前「まあ」

亜美「結構男性からお誘いもあるみたいだけど、ず~と断ってて。もう4年間片思いなんだよ」

財前「4年も!?」

亜美「ず~と…ね」

財前「そうだったのか…」

亜美「財前君もそういう背景知らなかったからしょうがないとは思うけど」

財前「なるほどなあ」

亜美「実は鎌倉にね。旅行に来たのも財前君と二人きりが恐いのもあるけど…それだけじゃなくて…」

財前「!?」

亜美「財前くんとノリくんと一緒に行けば里沙も明るくなるかな~って」

財前「な…なるほど」

亜美「実際今日は楽しそうだったよね」

財前「まあ…。いろいろあるんだねえ。でもそういうのは先に言っておいて欲しかったなあ(笑)」

亜美「^^;」

財前「まあノリなら大丈夫だよ。あいつやさしいから」

亜美「^^」








 里沙ちゃんのあの明るさは… 叶わぬ片思いの彼に対する憤りを隠すために無理して出していた明るさだったのか。

 4年片思い…これは想像以上に重い。

 ブサイクならまだしも理沙ちゃんは普通に美人だ。他の男からの誘いも絶えなかったろうに…。それを絶って貫いていたのだろうか。妥協すればすぐ幸せになれていたはず。

 …

 あの明るさの裏にはそういう事情もあったのか。


 …

 しかし世の中わからないものである。
 
 旅行中ずっと隠していた里沙の内面を私が不用意な発言でえぐり出し、里沙が…。それが引き金となって…亜美さんのこの旅行に求めていた本当の目的を知る。

 そして…これは本当に偶然なのだが、たまたま同行したのがノリだったというのがとにかく大きかった。ノリは元来信用でき信頼できるやつだ。男なら誰もがわかっていることだ。

 しかし女性にこの良さを伝えるのは難しい。

 やはりある程度一緒にいないとノリのようなタイプの良さはわからないからだ。彼のようなタイプは時間数の限られたコンパではまず光が当たることはない。

 
 今回はまさにノリと里沙のためにあったかのような旅行。

 亜美さんが陰で糸を引き、私が見事に駒として操られていたということだろう。


 私は里沙ちゃんとノリとは一緒にいられなかったのでこの後の出来事は詳しくは知らない。何を二人で話したのかも知らない。

 しかし里沙ちゃんはこの時ノリの本当のやさしさを知ったのだろう。


 …


 結論を言うとノリと里沙ちゃんはこの後、数週間後にカップルとなる。

 ノリは里沙ちゃんのホッケーに似た明るさに惹かれ

 恐らく里沙ちゃんはノリの包容力に惹かれた。


 第一印象はNGだったノリが…。 なぜ。


 これだから世の中わからない。

 

 
 後にノリはこんな名言を私に残す。






 


 しゃべらない俺がモテた理由は、しゃべる奴(財前)が捨て駒になってくれたから。

                                             by ノリ






 



 

 棚からぼた餅の身分で勝手なものである。


 感謝して欲しいものだね。ホント。






 
 次回は「鎌倉からの帰り」

 
 











 今日の選曲  PUFFY -  渚にまつわるエトセトラ
 

 http://www.youtube.com/watch?v=-FUsj62eC3E






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2009(Fri) 10/23

大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう(83)

財前History … Comments(83)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第19話目です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
09/10/23 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント --)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)










 


 亜美さんに仮ながら「つきあう」事を了承して貰ったものの…

 そこから

 どうベッドインまで持って行くかに悩む私。


 男にとって女性と「付き合う」なんていう事実はどうでもいいこと。まず、付き合うという段階を突破しなければ目的を達っせられないから、その手順を踏むために「付き合う」だけの話であって

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 実際「付き合う」なんて約束事項はどうだって良い事なのである。
 
 現在亜美さんとはつきあってはいないが、仮として「とりあえずは今のところ付き合う」という仮約束を取り付けているので目的は既に達成している。この時点で亜美さんの下半身の鍵はもう開いているのだ。

 普通の女性の場合、男とヤル場合は一応の納得材料を必要とする。つきあってもいないのに適当にヤルってのは自分に言い訳ができないからだ。そんな事をしたら淫乱女って事になってしまう。友達にも言い訳が利かない。


 とりあえずながらも付き合ってる男性とヤルのであれば、一応「まあつきあってるし…別におかしくはないよね」…と自分に対する言い訳材料はできるわけだ。
 

 つまり女性側としても

 男が如何に自然に自分をベッドインまで誘導してくれるか


 これは暗黙の了解で守って欲しい絶対の最低条件なわけである。

 …が処女の場合はまた話が違ってくるのでこの辺がまた難しい。というよりややこしい。
 

 


 つまりポイントは如何に怪しさを察知させることなく自然にヤル…というかヤラザルを得ないシチュエーションに持って行くか。ここに今までナンパしてきた経験が生きてくる。

 ナンパした女性と簡単にヤレテしまうのは、相手がそういうテンションになっているから。と同時に状況も上記の条件を満たしているから。

 ナンパが自然行われているCLUBなどの場所は、ドアを開ければそこは別世界であり、ある意味では現実逃避が一瞬で出来る場所。CLUBに一歩入れば自分は解放状態。

 なぜなら大学や学校とは違って周りは自分を知らない人ばかりだからだ。

 所在を自分から言わない限り、自分は匿名みたいな存在な訳で何をしてもその場限りで終われる。ある意味ネットと似ているかもしれない。だから、知らない男についていくっていう行為も勢いでやってしまいがちになるのだと思う。だってCUBから家に帰っちゃったらまた現実に戻るわけだから。

 これを日常のシチュエーションで…かつ普通の女性に行おうとするのであれば

 酒、旅行

 この2つくらいしか思い浮かばない。

 
 酒は一定量呑めばそのまま現実逃避できるアイテムであり、酔えばどう考えてもガードは緩くなるものの、ヤルという行為を神聖なものとして捉えていると考えられる亜美さんに酒の勢いで迫るというのは今後の人間関係、信頼関係維持の意味で考えもの。

 その点、旅行という手段を使うのは亜美さん向きだ。

 とりあえず知らない土地に行ってしまえば視覚的に現実逃避するから開放的になる。さらに旅館に泊ってしまえば、終電前に家に帰るという逃げの選択肢も選べない。

 そしてどうせ旅行に行くなら実家のある徳島だ。

 あそこには高校時代の仲間がいるし、場所も勝手もすべてわかる。あいつらを使ってうまく罠にはめればイチコロよイチコロ。


 これしかない。
 

 とりあえず亜美さんの研究室に行ってみる。



 


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 ふむ。とりあえず研究室内には数人の人がいるようだ。 

 やりにくいな…

 一応亜美さんと「付き合ってる」というのは仮であり、他言は無用、他人にバレナイようにって念を押されてるだけにこういうところは気を遣わないと…。


財前「あ…亜美さん」

亜美「?」

財前「ちょっといい?」

亜美「…」


 とりあえず踊り場へ


亜美「何ですか?」

財前「とりあえず文化祭も終わったし、慰労もかねて旅行にでも行かないかなと思って」

亜美「あ。いいですね^^」

財前「!? ホ…ホント?」

亜美「はい。最近あんまり旅行とか行ってないので」

財前「なるほどぉ。そりゃあ丁度良かった」

亜美「どこ行くんですか?」

財前「徳島にでも行ってみる?」

亜美「??? とくしま?」

財前「そう。徳島」

亜美「え~と…」

財前「???」






亜美「どこですかそれ^^」

財前「ちょ…徳島県だよ徳島県」

亜美「ああ。徳島県!!」

財前「そう徳島県」

亜美「でもちょっと遠くないですかそれ…」

財前「飛行機なら1時間さ」

亜美「飛行機はちょっと…」



財前「そ…そうだよね;」



財前「じゃあもっと近場なら…静岡とか名古屋とかどうかな」

亜美「…」

財前「あれ…」

亜美「実はわたし鎌倉に一度行って見たかったんです」

財前「ん? おお! 鎌倉!!実は俺も行きたいと思ってたんだよ」


 か…鎌倉?? どこだそれ… 


 鎌倉幕府なら知ってるけど…



亜美「鶴岡八幡宮とか高徳院の大仏さんとか見てみたいと思いませんか^^」

財前「あ…ああ。あはは。大仏見てみたい見てみたい」


 鶴丘八ってどこよ…

 大仏?? 大仏があるって事は鎌倉って奈良県なのか??

 
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財前「あの亜美さん。鎌倉って…」

亜美「??」

財前「か…鎌倉幕府…と何か関係ある?  …のかな?」

亜美「はい。鎌倉幕府は源頼朝が鎌倉幕府したところですよ^^」

財前「そ…そうかw」

亜美「はい^^」


 クックック…いい国(1192)作ろう鎌倉幕府とはまさにこの事を指してたわけか。

 こんなところで厨房(中学)の頃の知識が役立つとは思わなかったな。   

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財前「じゃあ鎌倉に行く?」

亜美「いいんですか?」

財前「全然いいよ」

亜美「あ。じゃあ友達連れて行ってもいいですか?」

財前「全然い…  ぇ?」
































亜美「あ。じゃあ友達連れて行ってもいいですか?」


 80310rtijigjeijgeroigj99yu9ugegu_20080313005556.jpg





















 工エエェェ(´д`)ェェエエ工工




 



財前「と…友達!?」

亜美「はい。

財前「友達も連れて行きたいの?」

亜美「どうせならみんなで行った方が楽しいかな~って」

財前「…」


 友達連れて行くとかどうなってんだ… これは二人きりのデートなんだろ。なんで…

 そんなに私と二人きりになるのが嫌なのか?

 やっぱり嫌々なのか?嫌々だけど断り切れなかったから仮つきあいにしてくれたのか?

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 ぐぬうううう

 …

 ん?

 いや。待てよ?  それは考えすぎだな。 そんなタマじゃない。

 恐らく二人で行く勇気がまだ出ないだけだろう

 そしてここ断るのはマイナスイメージだ。ちっぽけな男だと思われちまう。
 
 ここで人間の大きさをアピールしておかないと…な。




財前「友達も一緒に行って楽しくやる…か。ふむふむ。なるほど。確かに一理あるね」

亜美「はい^^」

財前「ちなみに一緒に行く友達って誰なの?」

亜美「同じ大学の子ですよ」

財前「…」

亜美「^^」



 子…か。 子っていう呼び方が妙に気になるな…。





財前「亜美さん。まさかと思うけどその友達って…」

亜美「??」

財前「男じゃないよね?」

亜美「違いますw」


 よかった。男じゃなかったようだ。


財前「そ…そうだよねw 安心した。で。何人連れて行きたいの?」

亜美「一人ですよ」

財前「一人か…」

亜美「あ。ノリさんも連れて行ってダブルデートみたいにします?」

財前「ん? ダブルデート?」

亜美「はい^^」

財前「ノリ連れて行きたいの?」

亜美「できれば…」

財前「ああ。もしかしてノリとその友達をくっつけようとしてるのかい?」

亜美「そういうわけじゃないですけどノリさん最近寂しそうですし^^;」

財前「亜美さんはやさしいねえ。じゃあそういうことで来週の土日に鎌倉行こうか。」

亜美「土日で行くんですか?」

財前「日帰りじゃ厳しいかと思って」

亜美「う~ん…。まあ。 友達と一緒だしいいですよ^^」

財前「じゃあよろしくね~」

亜美「は~い。友達にも連絡しときま~す」





 よし。OK。ダブルデートになったのは想定外だったが、まあ連れて行くのはノリだしいいだろう。

 こっちはこっちで作戦を練るか。


 …


 そんなこんなで自分の研究室に帰り、早速ノリを誘う。



財前「お~い。ノリ」


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ノリ「お~う」





財前「お前来週の土日空いてる?」

ノリ「ん?来週の土日?」

財前「うん」



ノリ「空いてない。来週は俺の愛車クラブマンの調整兼ねて江ノ島までツーリングに行く予定だ。」

財前「ツーリングって一人で?」

ノリ「そうだよ」

財前「それキャンセルな。来週の土日は鎌倉に行くぞ」

ノリ「かまくら?」

財前「そう鎌倉」

ノリ「鎌倉って鎌倉市?」

財前「さあ… そういえば鎌倉ってどこにあるんだ?」

ノリ「神奈川だよ」

財前「なんだ。鎌倉って神奈川県なのか。大仏がそんなとこに…」

ノリ「有名だけどな~」

財前「でも神奈川なら近いな。」

ノリ「ていうかおまえと鎌倉なんかにツーリングに行ってもしょうがないから今回はパス」

財前「ツーリングじゃねえよ」

ノリ「ん?」


財前「亜美さんがそこに行きたいって言うから行くんだよ。」

ノリ「ああ。亜美さんと鎌倉に行くのね。まあせいぜいがんばって来いよ~w」

財前「おまえも行くんだよ」

ノリ「へ?」

財前「おまえも一緒に鎌倉に行くんだよ」

ノリ「なんでオレも行くのよww 関係ないでしょ」

財前「それが大アリなんだ」

ノリ「??!」

財前「聞いて驚くなよ? なんと俺たちはダブルデートに行くって事になってる。」

ノリ「だ…ダブルデート!? 」

財前「そうだ」

ノリ「いや。オレまだホッケーとつきあえてないんだけど… 彼女いないよオレ…」

財前「なんだおまえ…まだホッケー諦めてないのか…」

ノリ「うん」

財前「もうホッケーは諦めろ。な? 無理だ。あんな女忘れろ。 それより亜美さんがおまえに上物の女を紹介してくれてるって言ってるんだ」

ノリ「おぅ? 女の子紹介してくれるの?」

財前「うむ。これに乗らなきゃ損だぞ。」

ノリ「ほほう。 つまり亜美さんがオレにかわいい子紹介してくれるからダブルデートって事?」

財前「そうだ。それに1泊2日のスペシャルコースだぞ」

ノリ「ぬおおおお!? お泊りするのか」

財前「わかるかノリ。目の前の現実的な利を取るか(ダブルデート)。永遠に適わぬくだらん理想を追い求めるか(ホッケー女)。 答えは二つに一つだ」





ノリ「行く…よ。オレ行くよ」

財前「じゃあ来週の土日開けとけよ」

ノリ「オッケーww」



 これにて第一段階はクリア。あとは作戦を立てるだけである。

 ダブルデートで1泊2日。 となると当然宿泊がついてくるわけだ…が、亜美さんが友達を連れてくる以上は

 部屋A  亜美、亜美の友達
 部屋B  財前、ノリ、
 
 となるのが必然。鉄板。ここは揺るぎない。間違っても


 部屋A 財前、亜美
 部屋B ノリ、亜美友達

 
 とならないのは明白である。まあこの縛りがあるから亜美さんも1泊2日の旅行をOKしたってのもあるからしょうがないといえばしょうがないんだけれども…。

 だが一緒の部屋で寝るのは諦めるとしても、せっかく旅行に行く上に泊まるんだから何らかの成果がないと話にならない…が、亜美さんとは一応仮につきあってるという形になってるわけだからロマンチックに告白してもしょうがないから、非常に微妙。

 しかもこの事実は他人には隠すという条件付きだから亜美さんの友達に「空気読んで貰う」って作戦も使えない。

 う~む…。何をしたらいんだろう。この状況。簡単に友達来ることを了承しちゃったけどもやっぱりダブルデートはやめたほうが良かったかもしれない…。
 
 う~む…

 う~む……
 





 そんな中







ノリ「お~い」

財前「ん?」

ノリ「ああ。すまんすまん。そういえばさ。一緒に行く亜美さんの友達って誰なのか聞いてなかったよね」

財前「ああ…。実は誰か知らないんだよね。友達とは聞いてるけど」

ノリ「ええええ!? 誰か知らないって何よ」

財前「しょうがないだろ」

ノリ「しょうがなくないよw おまえ上物の女って言ったじゃんか。かわいい子なんだろうな?」

財前「ああ…なんとなくそう思ったから言っただけで保証はない」

ノリ「!? なんだよそれ。もし地雷だったらどうすんのよ」

財前「まさか地雷はないだろ。亜美さんの友達だぞ?」

ノリ「充分あり得る。信用できない」

財前「そんな事言われてもだな…」

ノリ「ブスなら行くのヤダ(`・д´・ ;)  それなら一人で江ノ島ツーリング行く方が良い。」

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ノリ「クラブマンの調子も見たいしさ」

財前「おいおい…」

ノリ「そもそもホッケーにダブルデート行ってることとかバレたらどうするの。オレにもリスクあるんだからさ。」

財前「その点は心配ない。ホッケーはおまえが誰と何をしようが眼中ない。 リスクは0だ0」

ノリ「あ~そういう事言うのね。 ならオレは行かない」

財前「わがままな奴め…」






財前「じゃあ確認しにいくか?」

ノリ「ん?」

財前「その子をだよ」

ノリ「…」


財前「亜美さんの友達ならほら。亜美さんが写メとか持ってるだろ。見せてもらえばいいじゃん」

ノリ「え~。なんかそういうのも恥ずかしいなあ」

財前「イチイチ面倒臭いやつだなお前は。 ほら。行こう」

ノリ「とりあえずおまえだけ見てきてよ…」

財前「お前が見なきゃしょうがないだろw おまえホッケーみたいなのが好みなんだろ?ならオレとは全然好みが違うだろうが」

ノリ「まあ…そうだけど」

財前「じゃあほら。行こう」

ノリ「…」





 …

 
 う~む。

 ノリは石橋を叩いて渡るタイプだって事を忘れていた。

 ということで私たちは謎の友達が誰かを知るために再び亜美さんも元へ行く事に。恐らくまだ実験中か何かだろう。

 …

 いた。

 幸い実験にはまだ入っていないようだ。





 


財前「亜美さ~ん。今大丈夫かな?」

亜美「??」

 
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財前「最近実験がんばってるねぇ。」

亜美「ねぇ…。あまり頻繁に実験室に入ってくるのはやめてほしいんだけど… 周り人の目もあるし^^;

財前「あ…ああ。ごめん;;





ノリ「亜美ちゃ~ん何の実験してるの?」

亜美「あ。ノリさん^^ お久しぶり」

ノリ「どうも~」 

亜美「ノリさんも鎌倉行けるんですか~? 来週」

ノリ「ん?え~と…。多分行けると思うよ」

亜美「多分??」

財前「多分ていうのはね。コイツは友達の顔を見て決め…」

亜美「!?」

ノリ「違う違うw。 ちょっと用事があるかもってだけだよ。 多分行けるから大丈夫だよ」

亜美「そうなんだ^^」

財前「…」

ノリ「…」

亜美「…」



 …



 少し会話が途切れたところでノリが私の背中をチクチク叩く。

 早く聞けという合図なんだろう…。テメエで勝手に聞けばいいのに…。





財前「亜美さん…。実は旅行の件なんだけど」

亜美「うん」

財前「友達の方は行けるって?」

亜美「あ。友達も行けるみたいです^^」

財前「おお。そうなんだw ノリ。良かったな」

ノリ「…」

財前「…」


ノリ「…」

財前「…」




財前「え~と…」



財前「あ。そうだ。その友達ってさ。どんな子なの?」

亜美「どんな子って何が?」

財前「え?いやいや。どんな感じの子なのかな~なんて気になったりして…ね」

亜美「良い子ですよ^^」

財前「良い子…良い子ね。なるほど。」

ノリ「…」



 良い子ってなんだよ… 全然イメージわからない



財前「なんていうか…例えば芸能人で言うと誰に似てる?」

亜美「なんでそんなこと聞くの?」

財前「え?いやいや。そういうの気になるタイプなんだよね…」

亜美「う~ん。誰に似てるって言われても…」



 くそ…ノリのためになんでこんな事聞かなきゃいけないんだろう。別に亜美さんの友達が誰に似てようがどうでもいいんだが…

 写真見れば一発なんだけど写メール見せてとは空気的になんか言いにくいんだよなあ…






亜美「松島奈々子に似てるって感じかなあ」

財前「!?」

ノリ「!?」



 ま…松島奈々子だと…

 相当かわいいじゃねえかそれ… 



ノリ「なるほど…」

財前「松嶋奈々子かぁ…」


 …



財前「…とまあそういう事らしい。ノリ君。そろそろ帰ろうか。もう充分だろう」

ノリ「…」




 しかし…

 ノリが動こうとしない。なんだコイツまだ写メールに拘ってるのか… 女友達の綺麗発言は信用できないと…。まあ実際そうかもしれないけどさすがに地雷はないと思うが…


 …

 そして相変わらず自分からは何も発言しないノリ。

 コイツ相当汚ねぇ。全部私に言わせる気か。写メ見せてって自分で言えばいいだろ。

 しょうがない奴だな…。




財前「松島奈々子に似てるって凄いなあ。そんな子が農大にいたとは驚きだよ」

亜美「^^」

財前「是非この目で見てみたいもんだ」

亜美「??」

財前「なあ?ノリ。見たいよな?」

ノリ「ま…まあ」

財前「亜美さん。一応ノリも男だしさ。一緒にデートする人の顔くらい見たいのかもよ」

亜美「ぇ?ああ。そういうことですか^^; そういうことなら写メありますよ」

財前「ぉ。そうなの?」




 そういって亜美さんは友達の写メールを俺たちに見せた…








 そこに写っていたのは…







 …





















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 ノリ「…」





















 




 







 その子は松島奈々子には似てなかった。

 しかし紛れもなく美女だった。



 亜美さんが写メを見せた数秒後

 ノリは私の手を力強く握った。
















 私だけの力でようやくこぎ着けた亜美さんとの初デート。そして私がすべて舞台を用意したダブルデート。


 しかし…

 これらはすべて




















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 これから始まるノリの甘い運命をお膳立てしただけに終わる


 






















 そんな事…この時は知る由もなかったのである

 
 







































今日の関連曲  甘い運命

 
 



テーマ: 心情・叙情
ジャンル: 小説・文学








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18

January February March April May June July August September October November December
2009(Wed) 02/18

大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路(66)

財前History … Comments(66)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第18話。
 回想1「一楽木工」から見ないと意味不明なので注意してください。

defined
09/10/23 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント --)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)

















 
 見せて貰おうか。












 
 今まで数々の男を地獄に落としてきたであろう


 d;fgjfodgjerogjerpgjersogjr

 魔性の断り文句…とやらを。













 …


 私は亜美さんのいる研究室のドアに手を掛け、

 ガラガラ

 そのまま躊躇無く開けた。 何かわからないが、まるで凍り付くような空気を感じた。 亜美さんはこっちを一目見た後、さっと目をそらす。

 この辺りはホッケーがノリにした行為と同じ。

 昨日告白した男が来たのに、本人を前にしていきなり目を逸らすとかホント帰りたくなる気分だ。

 ていうか帰りたい…もう。悲しくなってくる。

 しかしだ。
 
 帰れるわけがない。

 ここで帰ったらアホである。扉をガラガラって開けて、すぐガラガラって扉締めて帰るとか吉本新喜劇じゃないか。

 どちらにしても行くしかない…。 とりあえず亜美さんの座ってるところまで向かい、計画通り踊り場に誘う台詞を吐く。
 
財前「亜美さん。ちょっといいかな。話があるんだけど」

亜美「うん? 何?」

財前「何って…」

 
 おいおい。昨日私から告白されといて「え?何?」とかアホかコイツは。用件なんて200%わかってるだろ(笑)。トボケすぎだっつの。


財前「ちょっと二人で話したいからさ。こっち来てくれない?」

亜美「ごめんなさい。今忙しいんです」

財前「…」


 だいたいだ。人に対するリスペクトが足りなすぎないか?女は。自分が好きな男に対してはキャーキャー言って自己犠牲を惜しまない癖に、そうじゃない男にはまるでクソ扱い。最後くらい花を持たせてくれても良いじゃないか。

 曲がりなりにも私は片道40㎞の帰路を黙々とアッシー君(送り迎え)した存在なんだぜ? ガソリン代も私持ち。労力も私持ち。 感謝されるべき存在じゃないか。普通。

 謝礼金のひとつも貰ってもいいくらいだ。

 その私がちょっと二人で話をしたいって言ってるのに、今忙しいとかアホかコイツは。大学生の分際で忙しいとかあり得ない。誰もが研究ごっこして親のすね囓ってるだけだというのに。


財前「ごめん。3分もあれば終わるんだ。3分だけでいいから…。ね?」

亜美「…」

財前「わかった。2分でいい。2分で良いよ。」

亜美「…」

財前「じゃあ1分…」

亜美「ねぇ。ここじゃ駄目なの?」

財前「ここじゃちょっと…」

亜美「う~ん…」


  080201i093tu8yt589th.png


亜美「じゃあちょっとだけですよ」

財前「あ…ありがとう」



 そういうと亜美さんは席を立ってくれたが、この時私の腹わたが煮えくり返っていたのは言うまでもない。今頃言うのもどうかと思うけど、っていうか今頃気づく自分も自分だけど

 性格無茶苦茶悪くないか? この女。

 文化祭準備の頃… 踊り場で出会ったあの清純な亜美さんは別人だったのだろうか。

 今目の前にいるのがあのときと一緒の人間…とはとても思えないくらいの変わり様だ。

 …


 そして廊下の踊り場に来て貰った。


財前「ちょっと待っててね」

亜美「うん?」


 そう言って私は近くにある自動販売機でコーヒーを2本買った。


財前「はい」


 と言ってコーヒーを亜美さんに手渡す。
 


亜美「これ…いいの?」

財前「飲んでよ」

亜美「…」



亜美「それよりもう1分くらい経ちますけど…」

財前「ぇ…」


 そう言って感謝の気持ちすら態度に表すことなく、「ありがとう」の一言もなくコーヒーの蓋を開ける亜美さん。…が、ここでちょっと私は異変に気づく。

 おかしい…。何かがおかしい。普通コーヒーを貰ったら「ありがとう」くらいは社交辞令で言うはず。もしくは無理矢理にでもお金を払うか。

 でないと恩着せがましいというか、「コーヒー程度で恩を着せられたらたまらない」って思うはずなのだ。だからお礼だけはハッキリ言って、お互いの貸し借りをイーブンの五分にもっていくはずなのだが…

 っとそんな事を掘り下げて考えてる場合ではない。時間が…


財前「実は一言だけ欲しいだけなんだ」

亜美「うん?」

財前「昨日の返事を聞かせて貰おうと思って」

亜美「昨日の? ああ…」

財前「…」


亜美「あれ。本気?」

財前「本気だよ」

亜美「ぇ~。酔っぱらって勢いで言われたのかと思った」

財前「そんなことないよ」

亜美「ホントに私の事好きなんですか?」

財前「うん」

亜美「う~ん…。でも…」

財前「?」

亜美「あ。私も財前さんの事は好きですよ」



















財前「ん?」


































亜美「私も財前さんの事は好きですよ」

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 !?



 !!!!!!!!!!?











 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


















財前「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」

亜美「(*ノωノ).」

財前「ちょ…ちょっとまって。混乱してきた…。あれ?なんで…?」

亜美「昨日はびっくりして電話切っちゃいましたけど」

財前「はぁはぁ」

亜美「w」

財前「え~と。じゃあつまり…」

亜美「?」

財前「つきあってくれるってこと?」

亜美「あ。それは駄目です (`・ω・´)」















 は?



























財前「つきあってくれるってこと?」






亜美「ああ、それは駄目です」




 




















 !??!!?





















財前「え?」

亜美「ごめんなさい」


 ちょっと混乱…。


財前「え…え~と…」

亜美「…」

財前「あ。ああ…。なるほど。友達として好きって事ね。うんうん。OKOK。」

亜美「いえ。先輩としてです」

財前「あっはっは。なるほど。友達として好きじゃなくて、先輩として好きって事ね」

亜美「うん」

財前「なるほど…。え~と。ちょっとまって? それ友達として俺を見てないって事だよね?」

亜美「う~ん。どうなんでしょうね先輩と友達は違いますし」

財前「ははは;; は~…」





財前「ちなみに亜美さんは今気になってる人とかいるの?」

亜美「いません」

財前「ぬ!?」

亜美「…」

財前「だ…だったらさ。こうしない?」

亜美「え?」

財前「気になる男が現れるまで俺とつきあう」

亜美「え~…」

財前「だって気になってる人とかいないんでしょ?」

亜美「それはそうだけど」

財前「だったらさ。いいじゃん。気になってる人ができたらすぐ俺は去るから」

亜美「う~ん…」

財前「俺は短期間でも亜美さんと一緒なら満足なんだ」

亜美「ぇ~… う~ん…」










 …











 こ…これは!? 首の皮一枚つながったか?

 耐えたか?耐えたのか?財前!!

 ここまで来ればこっちのもの。完全に素人同士の告白合戦領域は超えたはず。

 ここから先は両思いであるとかそんなのは関係ない領域。

 どっちにしたってつきあえさえすればいいわけだ。 


 ここまで来れば後はナンパと一緒。
 
 交渉次第。

 ナンパ…   フフフ。

 そこは私の領域。 経験値的に絶対に負けるわけがない私のテリトリーだ。




亜美「でも財前さんはあと半年で卒業しちゃうじゃないですか」

財前「ん?」

亜美「それもちょっと引っかかるし…」

財前「つきあうって事を重く捉え過ぎだよ。ただ一緒に帰ったり、遊びに行ったりするだけだよ?」

亜美「それに関係がこじれたりするとショックだし…」

財前「心配ないよ。半年すれば俺は東京からいなくなるわけだし」

亜美「…」

財前「亜美さん東京ディズニーランドとか行ったことある?」

亜美「ないです」

財前「東京ドームは?」

亜美「ないです」

財前「ほらほら。せっかくの大学生なのに勿体ないよ」

亜美「…」

財前「思い出作らないとさ」

亜美「う~ん…」

財前「俺はただ、そこに一緒に遊びに行く仲になろうって言ってるだけなんだよ?」

亜美「はぁ…」

財前「当然何もしないし、手なんて出さないし」 (クックック…下半身は出すがな)

亜美「…」

財前「当然全部俺がお金出すし、送り迎えも全部するし」

亜美「…」

財前「移動の足にもなるよ。どこか行きたかったらいつでも呼びつけて貰って構わないし」

亜美「…」

財前「あと半年しか大学にいられないんだ;; ただ思い出作りたいだけ。ね?」 

亜美「う~ん…」

財前「別に恋人として俺を見て欲しいって言ってるわけじゃないんだから」












亜美「ちょっと考えさせて貰って良いですか?」

財前「いや。返事は今日じゃなきゃ困る」

亜美「そんな急に言われても…」

財前「じゃあとりあえず仮OKって事でどうかな」

亜美「仮OK?」

財前「とりあえず付き合っておくって事さ」

亜美「付き合うのは駄目ですよ」


財前「まあいいから聞いてよ。 だからね? どのタイミングでもいいから「やっぱりヤダ」って思った時点で言ってよ。それでスパッと去るし。それで終わりにしよう」

亜美「え~…。何ですかそれ」

財前「仮につきあうって感じ。つきあってるっていう縛りがないつきあい。亜美さんが駄目って思った瞬間に別れられるって事だよ」

亜美「そんなんでいいんですか?」

財前「全然いいよ」

亜美「じゃあ…嫌だと思ったらすぐに嫌だって言って分かれて良いんですね? それが明日かもしれませんよ?」

財前「うん」

亜美「…わかりました。じゃあ仮ということで」

財前「ありがとう」

亜美「ホントにつきあうってわけじゃないですよ?」

財前「わかってる」

亜美「絶対つきあってるなんて他言しないでください」

財前「しないよ。約束する」





 …


 そして亜美さんは研究室に複雑な表情をしながら戻っていった。



 …



 フ…フフフ… フフフフフフフ

 
 これは来たか? これは来たか?

 なんか良くわからないがとりあえずは…うまく行った。

 ここ数日間亜美さんが見せた摩訶不思議な行動と言動は未だにさっぱり理解できないが、まあそんなことはどうでもいい。そもそも女心なんてわかるわけがないのだから。

 しかし…

 やっぱ根は良い娘なのかな。
 

 つきあうという行為を重く捉えず

 軽くイメージしてくれた途端にガードが緩んだような気がする。

 
 うむ…


 昨夜から何か自分に武器はないか考えていたのだが、今思うと今回ポイントだったのは
 
 あと半年でいなくなる存在だということ
 

 という事だったような気がする。半年でいなくなる存在だけに関係がこじれても、後腐れがないって事だったんだろうか。

 まあ…

 「つきあえた」わけでも「恋人」になったわけでもないのだが…。


 仮づきあいであっても私は別に構わない。


 ちょっと気が緩んでくれればそれでいいだけなんだから。


 別に私を恋人として見て貰う必要はないし、好きになって貰う必要もない。極論を言えばデートして貰う必要すらない。

 私の願いは一点の曇りも無く

 ただひとつ。


 








 



 亜美さんを























 ガブリンチョしたいだけなのだ

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 とにかくヤリタイ。ヤリたくて仕方ない。それだけだ。


 まあ…こんなことを公の場でハッキリ書くのもどうかと思うが、しょうがない。これはしょうがない。本音なんだから。

 $E×さえできれば後は何もいらないし、それ以外に特に目的はない。


 …

 い…いや…ちょっと待て。
 
 何かこんな風に書くと「財前、変態すぎる」とか「財前さんてそんな人だったの?><」とか言われそうだから弁解させて欲しい。

 さっきから言っているがこれは私じゃなくて男の本音。本音の本音の奥底の本音を書いていると言うことを理解しろ。そりゃあな? 私だってリアルでこんな事は言わないよ?言うはずがない。

 リアルでは

財前「$E×? そんなのはオマケにすぎないね。ていうか別にそんなやりたくないし。大切なのはお互いを愛する心さ」

 って言うよ。私だって。わかるだろ?こんな本音を普通に言うわけがないだろ。

 これは普段表に出ることがない、男の心の奥底の本音を言ってると言うことをご理解願いたい。みんなね。他の男も皆そうなんだから。起源はそうなんだから。

 言わないだけ。わかるだろ? 私は敢えて言ってるだけ。

 そこを勘違いしないように…。

 恋愛もしたいんだぞ? そりゃ別に合体したいだけじゃない。でも恋愛をするにはまずは… 

 合体して安心しないとまともにつきあえないんだよ。わかるだろ?
 








 …



 というわけで

 もうハッキリとは書かないが、私の目的はただ一つ。それだけだ。もちろんヤレば終わりかと言えばそうじゃなく、これまでにも書いたように、ヤッテはじめて安心してつきあえるわけであり2,3回合体して初めて亜美さんと対等な存在になれるわけなのだ。

 とにかく1回合体しないことには、会話してるだけでムズムズしてくるし、平常心でいられない。とにかく2、3回やらせてくれれば落ち着くんだ。落ち着いてじっくりと愛を語り合う事もできるよ。それだけなんだから。願いは。

 まあそうなると、先ほどの約束の「亜美さんの気持ち次第で瞬時に別れる」という約束がネックになってくるのだが、ここは多分心配ない。 基本的に好きな男がいない亜美さんが無理に私と別れる必要性もなく、デート代から何から全部私が出すんだから金銭的な被害も皆無。

 この状況ならデートは3回くらいは可能なはずだ。そこまでは我慢してくれる。

 そして恐らく…だが別れを切り出されるとしたら3回目のデートの時。4回目とは考えにくい。ここは誰でも容易に想像がつくだろう。

 つまり

 亜美さんと合体するには2回目のデートの夜

 ここしかない。

 1回目で迫ると鬼畜と呼ばれて終わるし、3回目は3回目で迫ろうにも夜にナル前に別れを切り出されている可能性が高い。

 おわかりだろうか。
 

 2回前のデート。


 ここしかないのだ。

 
 こうなると問題はどうやってそのシチュエーションに持って行くか。これに尽きる。自分の下宿は以前に失敗しているので駄目。ホテルしかない。

 ではホテルに連れ込むにはどうすればいいのか。当然いきなりは無理だ。伏線を貼っておく必要がある。その伏線を2回目のデートで作り出すのは難しいから1回目のデートから臭わせておく必要がある。

 こうなると1回目のデートも決して様子見では終われないという答えが現れる。せめて、「次は○○に遊びに行こう」程度の事は言っておく必要があるのである。

 東京ディ▲ニーランドに行ければベストだが…。 あそこはいい。♂♀の合体という危険な要素をミッキーちゃんとミミーちゃんのかわいさで見事に打ち消してくれる。

 まさにメルヘン。まさにメイプル

 めいぷるるん


 ミッキーのような おとぎの国のキャラクターが味方してくれれば。


 自然に合体。

 どさくさに紛れて合体。

 
 なんて事が可能かもしれない。


 そして亜美さんとの合体こそが



 私にとって最高の









 メイプルストーリー
 

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 であることは間違いない。



 …だが、ディズニーランドに行っても普通にその日に帰ってこれるのが少し引っかかる。
 
 無理に泊まる必要性が見あたらない。

 帰られたりしたらそれこそ大損である。 

 そこがネックではある分…不安要素は尽きない。



 どちらにしてもこのメイプルストーリーだけは完結させねばならぬ。



 亜美さんの…





 あの足。あの太もも。あの豊満な胸。そして…あの悩ましい割れ目

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 よ…よだれが…

 …

 とにかくだ。

 あの「くびれ」を逃すなど。逃すなど考えられない。

 死んでも死にきれん…。

 嫌だ。そんなのは嫌だ。もしできなかったら切腹する。 まじで。

 ていうか鬱になる。鬱病になるから。まじで。精神崩壊だよ。ホント。


 だからプライドも何もかもを捨てて頭を下げて一時だけの仮づきあいを了承してもらったのだ。

 あそこでは書かなかったが…

 私はバイク乗りだぞ? バイク乗りは格好つけなんだ。 もちろん高いプライドもある。 それに先輩なんだぞ? 亜美さんにダサイ姿とかも見せてないんだぞ?。今まで

 それを全部捨てて

 プライドをかなぐり捨てて…わずかな可能性にしがみついたのだ。

 仮につきあってもらうという奴隷のような道を受け入れたのだ。

 先輩というプライドも捨て、これまでの積み上げてきた関係を壊してまでも

 亜美さんとのメイプルストーリーを成就したかったのだ。




 後悔はしていない。


 もうこれ以上書くと親子ネットとか携帯フィルターに引っかかるので自粛するが、

 男とはそうでなくてはならないのだ。そうだろ?


 何?変態?
 
 ほう…

 じゃあお前何か?

 お前女とつきあっても$E×しないんだな? しないんだな? 10年しなくても平気なんだな? そうなんだな?

 するなよ? 絶対。

 
 何?無理?
 
 ほらみろ。本音はそうじゃないか。

 

 素直になれよおぉ!!


 …

 っとまあまた心にもないことを書いてしまったようだ。

 言っておくが私の初体験は結構遅いんだぞ? わかってるのか? もしおまえが中学生でやってたとしたら、おまえは私の事を変態とは言えない。高校なら互角。わかったな。



 普段はかなり真面目な男なんだ。

 
 
 

 …







 
 なんて強がってはみるものの

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 いつまで経っても変わらない自分にちょっと嫌気がさすのも確か。
 
 高校時代からまったく成長してない。

 もうちょっとスマートに恋愛ができないものか。


 大学生活はあと半年しかないのに

 あとちょっとで社会人なのに

 こんなんでいいんだろうか。
 


 ふと…親の顔が脳裏に浮かぶ。

 「そういえば徳島にもしばらく帰ってないな…」 

 母ちゃんは元気だろうか。

 父ちゃんは元気だろうか

 
 一度実家に帰ってみようかな…


 …


 ん?待てよ… 徳島…。


 徳島…

 ( ゚д゚)ハッ!  そうか。徳島に亜美さんを…


 い…

 いや。それはない。それは無理だ。さすがに…。亜美さんが了承するわけがない。


 でも待てよ。 ん?

 そうか。旅行だ!! 

 旅行という手があったか。

 温泉でもいい。
 
 要はその日に帰ってこれない場所に行けばいいわけで…


 …


 なんという名案。なんという孔明。

 
 さっそく私はその事をつげに亜美さんの元へと向かった。彼女も女だ。どこか旅行に行きたいところは絶対あるはず。 

 だが…

 これがきっかけで事態は思いがけないベクトルへと発展する。

















 今日の一曲  Oasis - Wonderwall




                      
                                       








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16

January February March April May June July August September October November December
2009(Mon) 02/16

大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用?(42)

財前History … Comments(42)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)の第17弾。
 回想1「一楽木工」から見ないと意味不明なので注意してください。

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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
回想16…情けねぇ男二人の友情 
回想17…恋の脳内麻薬の作用と副作用?
回想18…何年経っても変われない男の…末路












ガチャッ



亜美「もしもし?」 

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 出た。亜美さんが出た。


 これは現実か?


 信じられない気持ちで一杯だった。

 なぜこんなことに…。 しかしこの声はまさしく亜美さん。

 まさしくこれは現実だ。

 それはわかっている。わかっているが…しかし

 こんな事はまったく予期していない。こんな時間に電話に出るとか全然想定してるわけないじゃないか。私の心境としては「今この瞬間が現実のものとは思えない…」というような感じだ。

 きっとこれは何かの間違いだろうと。これはきっと嘘だと。
 
 たった数秒の間だが

 脳裏に無数の焦りの感情、思いが飛び交う。



 そう。もはや私は平常心じゃない。


 理由もわかっている…。 






 知っての通り人間において恋というのは幻想である。そのメカニズムは脳内麻薬によるものと既に科学的に実証されている。

 人間の行動を支配する物質「ドーパミン」(快感の神経を興奮させる物質)

 もともと人間は快感を得るという目的を追従するために行動を起こすように遺伝子が組まれている。知らず知らずのうちに。そしてドーパミンは麻薬の一種なので当然快楽を伴う。

 ちなみにニュースでよく見る麻薬は脳内のドーパミンを直接増量させるもの。麻薬を直接吸えば、恋や快楽行動をしなくてもドーパミンが直接分泌される。だから人間は麻薬にはまると抜けられなくなる。

 男女を結び付けているのもこのドーパミンによるもの。自分の好きな女が現れると脳内麻薬がドロドロ分泌されてしまう。これが麻薬。だから気持ちいい。そしてこの快感を強く感じるためにその異性から抜けられなくなってしまう。

 だが残念ながらこの麻薬を一生分泌させ続けることは不可能。
  
 だから「どんなに激しい恋であろうといつしか終わる」のである。

 …誰もが思うだろう。


 ・ああ。ロミオ。なぜ脳内麻薬は一生分泌されないの?こんなに愛しているのに

 ・おおジュリエット。君は特別だ。こんなに好きな気持ちは今までに経験がない。絶対に僕たちの脳内麻薬は切れっこないさ。




 百年の恋も一瞬で冷める。 残念ながら大間違いである。

 どんなに好きであろうと恋は冷める。

 自然に分泌されるとは言っても麻薬は麻薬なのだ。麻薬。吸えば犯罪となる麻薬なのだ。脳内麻薬というのは強力過ぎて実は人間の脳神経を破壊する危険性がある。

 例えばその女性にずっと一生恋し続け、脳内麻薬を分泌し続けたとしよう。これは廃人になってしまうのだ。

 麻薬を受けすぎると快感状態がずっと続くため、体が「これは危険」と判断する。そして人間の自己防衛本能が働き、それをやめさせようとする。麻薬による快感を得ないように脳細胞を破壊していくのである。
 
 だってそうしないと廃人になってしまうのだから。

 つまり女性にずっと恋し続けて脳内麻薬を分泌し続けていると、そのうち脳神経が壊れていき、アホになってしまうのだ。まさに1、2、3でアホになるのと一緒。

 それゆえ恋愛感情には終わりがある。アホにならないために恋愛が終わる。

 そして言わばこれは人間の自己防衛機能ゆえの…人類が今まで栄えてきた進化の結晶とも言えるである。

 恋の麻薬が3~4年で切れるようになっている理由がこれだ。 



 まあこんな事を書いて何が言いたいかというと…
 


 普段ならば、そして普通の女ならば突然の電話であろうと私は簡単に対処できたろう。それこそ楽勝だ。一瞬でアドリブが利き、笑い話のひとつやギャグのふたつも言えたに違いない。

 しかし相手は亜美さん。

 声を聞いただけで体が硬直するし、脳内ドーパミンが洪水のようにドバドバである。
 
 脳がまともに働くわけがない。言わばアホになってるんだから。

 それをわかって欲しいわけである。 好きな子から話しかけられるとうまく受け答えができず、通常では考えられない返答をしてしまうのもこれが起因するわけである。

 ゆえに自分で調整する必要があるのだ。緊張しても、胸がドキドキしても、これは脳による麻薬の性だと。決して恋じゃないと。 でないと好きな女性とはまともに戦えやしない。






亜美「もしもし?」 

財前「あ…ど、どうも…」

亜美「な…に?」

財前「…」

亜美「…」


 まずい…。寝てたな。この声は…。確実に亜美さんは寝てた。

 しかしこの寝起きの声



 なんとかわいらしいんだ。



 う!? イカン。イカン。所詮これは脳内ドーパミンによる幻想。
 


財前「今までの事を謝ろうと思って」

亜美「今まで事?」

財前「いや…今までバイクで送ったりしなかったし…」

亜美「もういいよ。別にもう気にしてないし。。じゃあもう寝るから」

財前「あ。ちょっと待って;;」

亜美「何?」





 なんという魔性の女。この会話ひとつ取ってもあの美貌で彼氏がいなかった理由が伺える。

 常識からかけ離れた天然ボケ機能が半端ない。

 まず私は亜美さんより1個年上。学年もだ。 亜美さんはつい1ヶ月前まで私に対して敬語だったのに、今や完全にタメ語。 おかしい。恋人でもないのにこれは明らかにおかしいじゃないか。一体何がどうなって「タメ語」になったのか意味不明である。

 しかし「なんでおまえタメ語なんだよ」なんて言えるわけもなく、こちらとしてはスルーせざるを得ないのが辛いところ(笑)。掴み所がなさすぎて攻め手がない。

 これまでの数ヶ月の亜美さんの人間性を見るに辺り、もはや戦略やら作戦やらで落とすは不可能。すべて煙に巻かれるし、そもそも彼女が何考えてるか想像もつかないのだから。

 もはや残された手はひとつしかなかった。

 もう言うしかない。 ハッキリと。 それで相手の逃げ場をなくすしかない。

 まあ…
 
 こんな単純な答えしか出ない辺り、自分では冷静だと思いつつもやはり脳内麻薬で脳が正常に機能していないのだろう…。


 私はハッキリと言うことにした。


 好きだと。


 それに興味もあった。ハッキリそう言われたとして逃げ上手の亜美さんはどう切り抜けるのか。

 どんな女でも「好き」とハッキリ言われたらちょっと混乱する。そこでいきなり「え。無理^^」とか言う奴などいない。。。と思いたいところだが…







財前「え~とさ。実はね」

亜美「…」

財前「オレ亜美さんの事好きなんだ」



亜美「うん?」










































亜美「あの~ 酔ってる?」

財前「酔ってない」

亜美「正気?」

財前「正気だよw」




 ガチャ… 







 ツーツーツー









 




 え? え?



 き…切れた?





















 …
















 ちょ…待てよ!!(笑)。

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 おま…突然切るって何よ(笑)

 なんて野郎だ。告白されて都合悪くなったら切るとか無茶苦茶すぎるだろ…

 曲がりなりにも私はバイクで50㎞の距離を何度も家まで送り迎えした功労者だぞ? 送り迎えしたのも5回6回じゃないぜ?

 せめて「すいません;; 今後もお友達でいましょう」とか「お友達以上の関係には…」とかあるじゃん? あるじゃん?普通。

 しかもオレさ。先輩なんですけど?

 あ・な・たの先輩なんですが何か?

 人生の先輩なんですが。 

 いいか。「礼をもって礼で返す」それこそが人の道ってもんだろうが!!

 
 さすがに返事を期待して耳ダンボしてるときに

 ガチャ…

 とか、それかしらすぎだろ。


 あ~ キレタキレタ ぶちキレタ。

 オレはもう完全に頭にキタぜ?

 あの女とはもう二度と関わらねぇ。ここまでコケにされて黙ってられるかよ。 べ…別にいいし。

 ていうか彼女とか別にいらねえし。 ていうか欲しくないしね。そもそも。

 男友達の方がいいし。だって友情は永久だし。脳内麻薬かぶれの恋とか所詮幻想だし。





 …



 そして電話するために外に出ていた私はまた自分の部屋に戻った。

 ノリが不安げな顔でこっちを見てる

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ノリ「どうだった?」

財前「ああ。終わったよ」

ノリ「え?終わった?」

財前「あっけなく振られたし;;」

ノリ「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工 マジで?」

財前「あ。いや。厳密には振られてねぇな。そもそもあんなのに振られたとか納得いかねえ」

ノリ「んぇ?」

財前「ハッキリお断りしますとは言われてないから… 引き分けってとこだな」

ノリ「引き分け?」

財前「つまり勝敗つかずってとこだ」

ノリ「…」

財前「まあ再戦は一生ないがな」

ノリ「なんか悪いことしちゃったかなあ…」

財前「別にいいよ。で、おまえは?」

ノリ「ああ。ホッケーでなかったよ」

財前「そうか」

ノリ「ほい。まあ飲みなよ。今日はとことん付き合うし。」

財前「ちょっと小腹減ったよね。ラーメンでも行く?」

ノリ「行く行く!!」
 

 


 そう言って、農大通りへと出かける二人。

 道中。ノリが傷心の私を気遣って急に饒舌になってるのがなぜか心に痛かった。

 気遣ってくれるのはわかるが、「女は亜美さんだけじゃない」「そもそもあんな女とは付き合わない方が良かったよ」などなど、ありきたりな台詞ばかり。

 そんな言葉は一切慰めにもなりゃしない。


 そして…

 深夜2時を超えているのにもかかわらず

 ラーメン屋に来ている客が不思議と私の心を癒した。

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 サラリーマンが会社の愚痴をこぼしてる。「そもそもあの部長がですね…」「みんな出世の事しか考えてないからバラバラっすよ」「正しいと思うことができないんすよ!!」「なんでも手柄は全部あいつのもんかよ!って」

 農大生と思われる学生も愚痴をこぼしている。「そもそもあいつ陰口ばっかじゃね?」「あいつ自分一人じゃ何もできないくせに目立ちすぎ」「所詮自己満だよな。サークルなんて…」

 
 …

 何か

 みんな必死に生きている姿を見てちょっと癒される。

 まあ結局人間なんてその程度だ。今耳に入ってくる愚痴と、私が振られた傷心。さっきまで「自分が世界で一番不幸」のような感じになってしまっていたが、全然そんなことはない。

 一緒である。 会社でどうこう、サークルでどうこう、大学でどうこう、恋でどうこう 


 他人からしてみれば別にどうでもいいことであり、それが自分の思い通り行ったところで何か日本が変わるかと言えば全然変わらない。 所詮うまく行っても自己満足の範疇は超えないものばかりである。

 今日私に何があろうと






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 別に地球は普通に回っていくし、何も変わらない。

 ある意味死んだって変わらない。

 ということは私が今この場所で、このラーメン屋で

 「聞いて下さいよ!! 私今日ですね。酷いフラレ方を…」

 なんて自虐行為をしても、「そりゃ大変だねえ」とは言ってくれるものの、心の底ではそんなのはどうでもいいのである。その程度の問題なのだ。


 もちろん国家規模で何か一大事があれば地球にも影響があるのだろうが

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 銀河系からしてみればこれまた地球なんてちっぽけな存在であり

 別にどうということはないのである。

 非常に幼稚ではあるが
 
 なぜか

 そんなことを心で考えているとちょっと楽になってくるのが不思議だ。

 宇宙から見れば自分など鼻クソ程度の存在…。


 ああ。自分は間違えてたなと。確かにバイクで送り迎えを必死にしたり、今日は農大を往復して大変だったが、別に大した事じゃないじゃないか。バイクで送り迎えして体に何か害を受けたわけでもないし、今後の人生が絶望になったわけでもない。

 そもそもバイクで送り迎えした程度で「オレはこれだけやってるぞ!!」と勘違いし、恩を着せようとした事自体恥じゃないか。そして私がやった苦労など第三者から見れば「ど~でもいいですよ」程度。


 …そうだよな

 確かに私は亜美さんに振られたようなものだが


 ノリの言うように地球上に女は1人じゃない。

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 うむ。そうだな…

 なんの変哲もないありきたりな「女は亜美さんだけじゃないよ?」というノリの台詞も考えようによってはかなり深い言葉だな…。幼稚すぎだけど

 でもやはり過去の名言も深く追求すると非常に偉大だとわかる。


財前「ノリ…」

ノリ「ん?」

財前「深い…深いな。さっきの言葉」

ノリ「へ?」

財前「地球上に女は一人じゃない…か。深い。この言葉…深すぎるぜ!!」

ノリ「は?(・∀・;)」

財前「深い…深いぜ」

ノリ「…」




 

 振られた時に立ち直る方法は人それぞれ持っているとは思う。例えばカラオケを思いっきり歌うだとか、海に向かって「うぉぉぉぉぉ!!」って叫ぶだとか、高速を140㎞くらいでかっ飛ばすだとか、手が血まみれになるまで壁を殴るだとか。

 今回わかったが、ボロボロのサラリーマンなどが集まる古いお店などは結構いいかもしれない

 何か…良い意味で傷の舐め合いができるというか、自分より思い詰めてる人ばっかりで逆に勇気づけられる。

 ノリも周りの席の会話に耳ダンボな感じって事は、あいつも薄々気づいたんだろう

 ホッケーとは脈がないと。

 
 だからこそいきなりホッケーに電話するなんて言い出したんだろう。要は酔った勢いでトドメをさしてほしかったのだ。ホッケーに…。

 女は得てして「OK」意外の返事は直接言うのを避けたがるもの。自然消滅、空気読めが定番だ。

 かねがね私はそのことをノリに言い続けてきていたのでそれを薄々感じていたのかもしれない。


 …となるとあの電話ゲームを始めからノリはやろうって決めていたんだろうか。私が家に帰ってくる前から。だから私が家にいもしないのに家で待っていた。自分のケジメをつけるために。

 そして頃合いを見計らって、あたかも今思いついたかのように私に電話ゲームを持ちかけた。


 …

 う~む。
 
 とすると奴は相当な役者だと言える。

 
 ノリ…こいつ一見トボケてるようで実は頭の良い男かも。良い意味で私を利用しているし、自分のできないことを私を利用してうまくやってる。

 何しろ今このラーメン屋で、周囲の話に耳を傾けて黙って聞いてる時点でバカじゃない。うむ。こいつ結構これでいて骨があるな… 空気読めないバカならこの場でくだらん話を持ち出すんだろうからな。



財前「ノリ」

ノリ「ん?」

財前「おまえ今日オレん家に来たのさ。オレが呼んだからじゃないだろ。実は」

ノリ「え?おまえに呼ばれたから来たんだよw」

財前「なんか調子が良すぎるんだよなあ。酒用意してた事といい、電話ゲームを突然思いつく事といい…」

ノリ「まあ。お前が帰ってくるまでに色々と思うところはあったけどね」

財前「思うところ?」

ノリ「いろいろ迷惑かけた。スマンね」

財前「…。で?今日はこの後どうするの?」

ノリ「さすがに眠い。今日はお前の家に泊まるわ;;」



 なぜかわからないが、こいつは賢治とはやっぱり何か違う。大学が終わって社会人になってもずっとつきあっていける友だな…となんとなくこの時思った。

 (この数年後に私の結婚式にノリが来た等…未だにつきあいがある事を考えてもこの時の感じた思いは間違ってなかったという事かもしれない)















 そして夜が明けて


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 ノリと二人でバイクで大学に向かう。

 やはりバイクはいい。最高だ。 腹に響く近所迷惑なマフラーの爆音。太陽の光を全身に浴びながら自然を感じられる空気感。渋滞で動かない車を横目に路肩からスイスイと抜いていける利便性。己の腕一本でGと闘っているというこの感覚。

 恐らく車に負けているのは音響と空調だけだろう。

 
 実は私は昨夜のラーメン屋から帰宅後ある決意を纏めている。

 
 まだ返事を貰ってない。


 まだ亜美さんに昨夜の返事を貰ってない。


 もちろん今諦めればそれで終わりの話で深追いする必要もないのだが、こういうシチュエーションというのは滅多にあるものではない。今ここでスルーするのは簡単だが、将来

 この話を後輩や友にするときに

 「ああ。それで終わったけどね」

 では男が廃るというものだろう。

 それよりも「ああ。それで返事をキチンと聞いたんだぜ?そしたらさ」の方がよりドラマチックであり、自虐ネタとしてもさらなる深みを増す。

 そもそも私の大学生活なんてストーカー事件とリョウさんの性でネタみたいなものになってるのだから、今更失うものも無いし、今や振られ慣れて鍛えられているので亜美さんのどんな天然ボケ返答が来てもショックで鬱病になることもないだろう。

 そう。失うものは何もないのである。

 ここが私がノリとは決定的に違う強みだ。奴は大学生活がネタっぽくはないので、ノリのイメージからかけ離れたことはできない。そんなことをしたら「え?ノリ君てそんな人だったの?」と周りに思われ、多大なマイナス効果はあるのは確実。特にもし後輩に奴の事を好きな女がいた場合などは「それすら破談になる可能性」を秘めておりホッケーとこれ以上関わるのはリスクとリターンが合ってない。

 その点私は楽だ。よもやストーカー以下のレッテルを貼られることはあるまい。つまり亜美さんを執拗に追いかけ回しても「まあ。財前ならそんなもんだろ」で終わってしまう。いやむしろマイナスイメージが強すぎるがために「ほぇぇ。財前君ってストーカーだと思ってたけど、結構一途だったのね。ステキ(*ノωノ). 」なんてなってしまうかもしれない可能性すら秘めている。

 これはかなりの強みと言えるだろう。
 
  

 そんなことを考えながら程よく大学に到着し、私とノリはとりあえず自分の研究室へと向かう。そして研究室に入るとホッケー、賢治、原田、エリ、直子などいつもの面々が談笑している。

 ホッケーはこちらに少し視線を向けた後、ソッと目線を逸らす。

 恐らくノリがいたからだろう。

 ノリがそれを見たのかどうかは知らないが、ノリはいつもの如く研究室の端っこの机に座り、眠そうな顔をして自分の腕枕で寝たふり。まるで昨日何か大変な仕事を終わらせてきた苦労人のような雰囲気を醸し出す。

 まあ眠くないのはわかってる上に、昨日も大した事してないんだが(笑)。彼特有の恥ずかしさを隠す行為だろう。もちろんこれは昨夜一緒にいた私にしか判らないことなので他人はどう感じたかは知らない。

 しかし情けない奴だ。振られたからって別に空気読む必要ないのに。

 そもそも悪いのはノリ。おまえじゃないんだぞ。どっちかというと悪いのは答えをスルーしてるホッケーの方。負い目を感じるのはホッケーの方だ。

 勘違いも甚だしい。

 世に蔓延しているフッた方が上。フラレタ方が下なんて風潮が恨めしい。

 所詮脳内麻薬の弁が開くかどうかだけなのに。


 私はしばし状況を観察。

 …

 するとホッケーが突然席を立った。

 恐らく卒業論文のためだろう



ホッケー「よ~し。今日も農場に行って頑張ってくるぉ!!」

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 と言い残し自分の圃場(担当農場)へと向かった。


 チャンス!?


 よし。ここだ!!ノリ。 向かったのはホッケーは一人。


 ノリが動けるとすればここしかない。研究室で話は賢治や直子がいるので話を切り出せない。しかし農場ならば誰も邪魔者はいない。返事を聞くチャンスである。そして昨日の深夜で残っていた怪しいノリからの着信履歴。

 それを説明できるのも二人っきりの時だけ。

 自然に言えるのは今を逃せば後がない。

 しかし

 ノリ…


 は動かなかった。

 奴はホッケーが農場に出て行った後も

 ノリは眠っているフリであろうその体勢を解こうとはしなかった。


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 そんな眠いはずなんてないのに…。

 朝っぱらから机に顔をうずめる必要なんてないはずのに。

 昨日はそんなに酒を飲んでないのに…


 きっと奴の心の中では今、様々な葛藤と闘っているのであろう。「今行くべきか?」「行きたい…生きたいけど…」。だが奴は気づいていない。今の恋は麻薬によるものだと。

 3年後にはフラれた話など笑い話か酒のつまみになるだけだ。


 だがノリは動けない。そう。男としてのプライドが… 邪魔をするのである。

 追いかけるのは惨め。 そうノリは思っているに違いない。
 
 おい。ノリ。

 ホッケーは圃場に行くのに直子やエリを誘わなかった。わざわざ一人で行ったのはもしや?

 っていうプラス思考で乗り切れよ。と心の中でエールを送ったが


 

 ノリは完全に沈黙。 
 
 返事がない。ただの屍のようだ。








 さて… では次は私の番だな。
 
 私もホッケーと同じく

財前「圃場に行ってきやす」

 と言って研究室を後にした。  

 もちろん目的は圃場ではなく、亜美さんの所属する研究室。まあフロアは一緒だからここからほんの数十歩の所だ。

 窓越しに見ると研究室に亜美さんがいる。もちろん他の研究室の学生もいる。

 だがそんなの関係ない。

 入って挨拶をした後、

 「亜美さん。ちょっと良い?」

 と言うだけだ。それで終わる。苦しかったこの数ヶ月の何もかもが、それで終わるだろう。だがこれは全てが終わるという意味じゃない。ちゃんと昨夜用意してるのだ。私なりの起死回生の秘策を。

 うまく行けば付き合うことができるかもしれない。 実は結構は自信がある。

 この策を施してもうまく逃げられたら完敗だ。素直に負けを認める;;
 


 さあ亜美さん。


 これから言う私の告白をどう受ける?

 

 そして見せて貰おうか。

 


 今まで数々の男を地獄に落としてきたであろう


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 魔性の断り文句…とやらを。




























 今日の1曲   夢を信じて   「アニメ」ドラゴンクエストOP


 
 関連 デイジーが歌う夢を信じて



                                              素材 coco*








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2009(Tue) 02/10

大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情(67)

財前History … Comments(67)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第16弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。

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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
回想16…情けねぇ男二人の友情 
回想17…恋の脳内麻薬の作用と副作用?
回想18…何年経っても変われない男の…末路







 
 


 まだ間に合うか…


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 亜美さん、大学にいてくれ!!





 今頭にあるのはそれだけだった…



 …


 30分後…

 私は厚木キャンパスに到着した。

 バイクの鍵もそのままに 亜美さんの研究室に向かった

 もう辺りも暗くなり大学にはほとんど人の気配がない。

 私ははやる気持ちを抑えてバイクを駐輪場に駐めた。本来ならばその辺の校舎の近くにバイクを停車してBダッシュをかますところだが、バイクの場合そうもいかない。

 バイクはその辺に置いておくと盗まれる可能性があるのだ。もし亜美さんがいたとして「さあ一緒に帰ろう」となったときに肝心のバイクがなかったらそれこそ洒落にならない。

 これはバイク乗りとしては鉄則。これは現実なのだ。格好良いドラマの見過ぎは良くない。

 そして車輪止めはせずハンドルロックだけにしておいた。これも後を考えてのこと。せっかく亜美さんとメルヘンな状況でバイクに乗るのに、車輪止めを外す姿なんかを見せるのは激しくダサイ。

 鍵を回してすぐにブオオオオオと発進するのが格好いいわけである。

 このあたりは事前に気をきかしておく。

 フ…フフフ。

 冷静だ。こんな時でも私は常に冷静だ。

 館ひろしも真っ青である。

 

 バイクを駐輪場に置いた後、Bダッシュで研究棟の校舎へ。そして本来ならばエレベータを使うところだが、ここは階段を駆け上がるルートを選択。階段をダッシュするのは絵的に全然スマートじゃないが、先ほども言ったように私は常に冷静。

 急いでいるのにエレベータを使うとかそれこそドラマの見過ぎだ。
 
 階段で必死に駆け上がってきたという事実が女心をくすぐるわけだ。

 どこで誰に見られてるかわからないからな。



 しかし厚木キャンパスは酷い。農学学科と畜産学科は私の代から世田谷校舎から厚木校舎に移ったが、未だ世田谷校舎であれば舞い戻るのに30分もかかることはなかった。

 
 ここの利点は圃場があることくらい。

 なにしろ私の下宿は世田谷校舎から数分なんだから。

 本来なら亜美さんを確実にキャッチできたはずなのだが、活動拠点が厚木校舎に移った今はさすがに分が悪い。厚木ともなると下宿から最低1時間はかかる上、山の上にあるので戻るのも非常にダルイ。

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 帰り道にノリに電話した事で、この事実に気づいたのが不幸中の幸いだった。


 …


 が、やはりそうは問屋が卸さなかった。

 数階のフロアを駆け上がって亜美さん所属の研究室に到着したものの

 時既に遅し。

 研究室には鍵がかかっており、研究棟を見渡しても誰もいなかった。

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 くそ…

 おかしいな…

 時計を見るに現在時刻は20時前。

 亜美さんだけがいないならまだしも、この時間ならまだ研究生が何人か残っている時間帯のはず。まさか研究室自体が閉まることはないと思っていたのだが。 

 バスの最終発は22時なのに…。 


 
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 これでは亜美さんがいつ帰ったのか帰ってないのかがわからないではないか。

 聞く人がいなければそれを知るすべもない。

 う~む…

 …

 ん?待てよ…電話…。


 いや駄目だ。 直接電話なんてとんでもない。

 それに恐らく今は小田急線の電車の中だと推測できるので安易には出られない。


 これは終わった…か?

  
 明日謝る事にでもするか… 

 やることはやったしな… 一応… ていうかこんだけする奴はいないだろう。



 …



 いや。駄目だ!


 鉄は熱いうちに撃て! の精神だ


 そもそも私のこの「涙の帰還」行動は誰にも見られてない上、亜美さんも知らない。評価されようがない。巷でよくある自己満自演行動に過ぎないじゃないか。

 アブない。「オレは充分やってる」なんて安易な自虐思想に流されるところだった。そもそも他人の評価あってこその自虐行動

 考えろ…考えるんだ。

 何かあるはずだ。打つべき手が何かあるはず。


 

 …


















 意外と

 答えは簡単に出た。

 要はあれだ。

 亜美さんが今電車に乗って帰っているにしても、まだどこか大学に残っているにしても

 ゴールは同じ。ゴールは家だ。

 これは鉄板。 亜美さんの家の最寄り駅は成城学園前。


 つまり

 待っていればいいのである。成城学園前の駅で。


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 小田急線は直線で結ばれている線路だけに意外とスピードが速いが、今バイクで走れば恐らく間に合う。

 これは

 弁解は明日じゃだめ。今日じゃなきゃ駄目。そんな気がする故の決断。

 
 本厚木駅→成城学園前は電車で約45分。農大から本厚木駅はバスで10分。徒歩と待ち時間を入れると5分プラスで約1時間。

 亜美さんが18時前半のバスに乗って帰ったならアウト。間に合わない。しかし18時後半のバスに乗って帰ったとするとセーフ。間に合う。


 …
 

 なんとかなるかもしれない。 

 亜美さんに今日中に面会できるかもしれない。

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 私は早速バイクに跨り、成城学園前駅へと向かった。

 しかしそう簡単にはいかない。まず今だからこそ告白するが、私はバイクの運転が凄く下手だ。自分で自覚できるほど下手。時速100㎞くらい出すとかなり恐いし、とても平常心でいられない。

 乗った人はわかると思うけど、自動車と違って転けたら「死ぬ」ってわかるからね。

 自動車はフロントガラスと鉄塊に囲まれた安置に座って運転するので、スピードを出しても平常心でいられるが、バイクは無防備な体をむき出しにして走る上、スピードから来る風力というかGがモロに腕にかかってくるので、ハンドルを握ってるだけでも結構握力を使う。

 まあ言わば重量の重い自転車で100㎞くらいで走ってるっていう感覚とそんなに変わらないのである。「ああ…これ一歩間違えたら死ぬな」って事を意識しない人は皆無だと思う。

 実はあまりにも危険なのである。バイクという乗り物は。

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 だから気持ちは前に出ていたにしても「実際にそんな飛ばせるか?」っていうと答えはNO。

 あくまでも安全運転の範囲というか…自分の運転技術に合ったスピードでしか運転できないのである。

 コーナリングにしてもそう。

 相当な技術がなきゃ

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 鋭角にバイクを倒してコーナリングする事なんてできやしない。こうやって曲がるっていうイメージはあってもパンピー(一般人)はブレーキ踏んでスピード落として「ゆとりコーナリング」が常識。
 
 悲しいかな。これが現実なのよね。

 

 結局それほど早くは成城学園前駅に到着できなかったものの、電車で行くよりは早かった…という微妙な時間に到着。

 やはり漫画やドラマのようには行かない。
 
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 自分の中では 界王「素晴らしく早かったぞ悟空!!」 なんてイメージなんだけれども…。

 しかし良かった。
 
 恐らく近隣時刻に電車は到着してない。

 それは駅の出口にほとんど人がいないところを見ても明らかだ。


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 さて…

 亜美さんは既に到着して家に帰った後なのか、それともまだ小田急線に乗っているのか。

 2つに1つだが、どちらかによって天と地ほど違う展開を考えると胸が苦しくなる。

 …


 果たしてどうなのか。


 …

 私は待った。


 待ちに待った。




 そして



 ついに電車が到着!!



 来た。来た来た来た来た木滝滝田kちあkたい


 よしよしよしよしよしお


 さあ。亜美さんは乗っているか。

 亜美さんどこ?



 駅から人が出てくる。

 それらしき人はまだいない。





 どこだ…どこだ…

 






 …





 って…






 おい。



 
 これ…








 亜美さんがどうとかいう前に


















 …















 人多すぎだろ(笑)

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 おまえこんなの探せるわけネエよ。
 
 
 ていうかそれもそのはずである。9時前って事は通勤ラッシュまっただ中。成城学園前は結構大きい駅であり街なので1日で81,506人もの人が出入りするのだ。

 アホである。 だいたい徳島県の阿南市は人口が全部で76,707人しかいない。

 それ以上の人がこの小さい一駅で乗降するってどんだけよ(笑)。

 東京都の全人口が1200万人
 徳島県の全人口が80万人
 
 12倍か( ゚д゚ )  まあこうやって比べてみると判る気がする…。 


 …



 結論を言うと亜美さんを駅で発見することはできなかった。

 2便待ったにも関わらず姿を見ることは叶わなかった。

 まず人が多すぎて意味不明だったというのと、バイクから降りることができなかったという2点が痛い。これだけ人の多い駅前となるとバイクを置くところが無いから跨って探すしかなかった。

 こうなると亜美さんを探すにも自由にチョトチョロ動けないので限界がある。

 まあ…私がここに到着する前に帰ってた可能性も高かったのかもしれないが…。

 なんだかんだでツメが甘かった。


 うむ。さすがに諦めた。

 もう明日にしよう。家に帰られてたらどうしようもない。

 家に行くことも可能は可能だが、それはしたくない。またストーカーなんて言われたら全てが台無し。


 …



 私は再びバイクに跨り、経堂の下宿に帰ることにした。

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 まあ駄目なら駄目でしょうがないじゃないか。女なんて他にいくらでもいるって


 そんな

 心にもない言葉を何度も何度も…自分に言い聞かせながら。

 



 …





 そして自分の下宿に到着。

 この瞬間ドッと疲れが出る。
 
 辛い。ホント辛いわ。女性とつきあうって。

 ナンパなら一晩で目的達成だが、特定の彼女をGetしようと思うと本当に激しく体力を消耗する。
 
 そんな基本的な事を改めて認識した。

 思えばしばらく彼女を作ることもなく遊びほうけていたからなあ。

 ていうか良く考えると大学に入ってから彼女がいたことなんてほとんどなく、あるのはフラレタ経験ばっか。一歩間違えるとタダの馬鹿である。

 あ~後大学生活も1年ないし…挽回は無理だなあ。


 …

 ん? あれ?


 なぜか下宿の駐輪場にノリのバイクが駐めてある。 

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 あれ? ノリ来てるの?



 なぜ…




 ドアを開けてみると









  
 お~う!

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財前「おまえ勝手に人の部屋に入るなよ…」

ノリ「鍵あるところ知ってるから」

財前「そりゃわかるけど」



 確かに…。鍵は花壇の下。



財前「で?何しに来たの?」

ノリ「おまえが「今日飲もうぜ」って呼んだんじゃないかw」

財前「ぇ?」

ノリ「ほら。酒。買ってきたよ」

財前「ああそうなの?悪いね」


 そして私とノリは二人でこの世は語り明かすこととなった。明日を気にすることなく、男同士夜通しで語り合う。これも大学生の醍醐味か。


財前「今日さぁ。かくかくしかじかでさぁ」

ノリ「へぇぇ」

財前「結局亜美さん見つからなくてさぁ」

ノリ「ふ~ん」

財前「…」

ノリ「まあ気を落とすなって」

財前「ま…まあな」

ノリ「そんなことよりさ。オレとホッケーの話を聞いてくれよ」

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財前「ホッケー女?? おまえな…たまにはオレの相談にも乗れよな」

ノリ「ていうか相談に乗っても財前はオレの言うことをそのまま実行した試しがないじゃん」

財前「オレが今までどんだけお前の相談に親身になってのってきたやったと思ってるのよ」

ノリ「まあいいじゃん。 それよりホッケーなんだけどさ」

財前「…」

ノリ「おまえに言われたとおり食事に誘ったんだけど」

財前「ああ。そうらしいな」

ノリ「返事をまだくれないんだよね~。しかもなんか最近忙しいみたいでさ」


 なんとも困った話題である。この話題はホッケーに今日聞いたばっかり。私はレストランは予約しろとは言ったが、部屋を予約したまで相手に話せとは言ってない。

 それをこいつ…言っちゃってるからなあ。 可能性は限りなく低い。

 ていうか。もう既に振られてるわけだが。

 つまり


 おまえはもう… 死んでいる

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 なわけだが、ノリは鈍いからその辺に気づいていない。…困った奴だ。

 もちろん私もホッケーから直接返事を聞いてるわけではないが、話の感じからして絶望的なのは明らかである。 

 しかしそれを私からノリに言うわけにもいかない。

 100%確証があるわけでもないから…

 
ノリ「というわけでさあ。ホッケーが食事に来てくれたとして、その後はどうしたらいいのかなぁって」

財前「…」

 
 コイツ本当にのんきな奴だな。だからホッケーは来ないって…


財前「その前に食事に来てくれるかどうかを考えた方がいいんじゃないかなあ。うん」

ノリ「それじゃ話が終わっちゃうじゃん」

財前「あの…この話はさ。ホッケーの返事を聞いてからにした方がいいんじゃないかな~」

ノリ「とりあえずさ。食事の場では共通の話題で馴れ合って、その後にどうやって部屋に連れて行くかが問題なんだよね~」

財前「ソウダナ…( ゚_゚ )」

ノリ「それに最近さ~。あれよあれ。後輩の飛鳥っているじゃん?」

財前「うん」

ノリ「あいつもホッケーを狙ってるみたいで油断できない」

財前「へぇぇ…」


 …

 なんて因果で無意味な話が延々と続いた夜だった。

 ああ。無情すぎる…。ノリ。

 男とはなんと不毛な生き物なのだろうか…。

 特に今回のノリを見てそう感じる。

 成功する可能性のない恋に対して延々と作戦を今頃立てている。

 私から言わせるともう遅い。

 女を落とす作戦というのは出会った瞬間からコンタクトの度に始まっているわけであり、その後接触する度に駆け引きが行われる。少なくとも私はそうであると思っている。

 これはナンパを繰り返してきたからこそ、そう思うのだと思うが、会った瞬間から試合開始なのである。つまりその女を一目見ただけで美人かどうかを判断し

 この娘… はじまったな…

 となるわけだ。アプローチ行動開始は会った瞬間だ。


 だが友を見ているとそうでない者が非常に多い。ノリもそうだがそもそも彼らは女と会った瞬間に

 はじまらない。

 アプローチが始まらない。ほとんどの場合、見知らぬ女とはいきなり恋が始まらないのである。研究室が一緒、サークルが一緒、クラスが一緒。ここが前提。

 ここである程度関わったり、遠くから感じている内にその娘に徐々に惹かれてくる。

 そしてそれまでは友達上のつきあいを行い、下心も出さず、ある日…突然に告白するという流れ。

 まあ結婚相手を探すならこのアプローチが最善だが

 学生時代のようにただ$e×をやりたいだけのような発情の盛りは

 お。あの子良いな → ヤル
 
 の流れが最良なわけで、面倒なプロセスはできるだけ踏みたくないというのが私の本音。

 
 ある意味昆虫や虫のレベルと変わらないが… 

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 どっちにしても、これまでまったくホッケーにアプローチもせず、気にするそぶりも見せず、いきなり告白…なんてノリや友のような行動はまったく理解が出来ない。
 
 駆け引きとかまったくないじゃないか。

 …

 まあこんな事ね。人には言えないけれども。。。


 そんなことを思いながらノリの話を聞いているのと、ついさっき亜美さんに会えなかった、傷つけてしまった?、そして帰路往復で疲れた…という状況も重なりノリの話にまったく親身になれなかった。

 これにノリも気づいたのか


ノリ「お前全然オレの話聞いてないな?」

財前「そんなことナイヨ…」

ノリ「わかるよ。おまえの言いたいことはわかる」

財前「ぇ?」

ノリ「男ならチマチマするなって事だろ?」

財前「いやいや。おまえは充分やってると思うよ?」

ノリ「よし!! 決めたぞおぉぉぉ!!」

財前「!?」


 駄目だ。完全に酔っぱらってる。


 しかし、事態はとんでもない方向へ発展する。



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ノリ「おまえは今日亜美さんに会えなくて言いたいことを言えなかったんだろ?」

財前「まぁな」

ノリ「オレはオレでホッケーに返事を貰えなかった」

財前「うん」

ノリ「もう決めちゃおうぜ。楽になろう」

財前「ん?」

ノリ「俺たちさ。今日決めちゃうんだよ」

財前「…何を?」

ノリ「今日。白黒ハッキリさせるんだ!!」

財前「!?」

ノリ「今日決めちゃうんだ。 おい財前。

財前「ん…」

ノリ「今から






























 亜美さんに電話しろ


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財前「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」

ノリ「男を見せよう!」

財前「無茶言うなよw だいたい今何時だと思って…」

ノリ「オレもホッケーに電話する!!」

財前「!?」

ノリ「イチ、ニのサンで同時に電話かけようぜ」

財前「いや…この時間に電話は迷惑だよ。だって0時超えてるんだぜ?」

ノリ「おまえいつも ”四の五の考えずスパッとやるのが漢だ!” とか言ってるじゃん」

財前「…」

ノリ「今こそ漢を見せる時だと思わない?」

財前「おい。いいかノリ。オレはそういう事をしてストーカー呼ばわりをだな」

ノリ「別にいいじゃん!!」

財前「よかねぇよww」


 パネエ こいつ。

 酒が入って強気になってるのと、返事を待たされる苦しみに業を煮やして

 赤信号みんなで渡れば恐くない

 に持って行きやがった。なんて迷惑な…

 
 しかしノリのような奴は実は酒が入ると止められない。もともと高校時代DQN(元不良)。シラフ時ならまだしも、酔っぱらって本能むき出しの時に下手に刺激すると暴力振るいかねないからな…。
 
 こんな事で男同士の喧嘩はできれば避けたい。

 別に同じ女を取り合ってるわけでもないのに…。

 しかもここは私の下宿。どっちかというと壁に穴が空いたりして被害を被るのは私なので圧倒的に不利なのだ。

 なんでこんな流れになったんだろう…
 

 私は本日の自分のあまりの不運さを呪いながら

 渋々ノリの要求を承諾。

 
 フフフ。まあ楽勝だ。ここで差が出るのがオツムの差という奴よ。

 二人で同時に電話をかけるわけだ。そして話す。っていう行為の真似をすればいい。

 つまり亜美さんには電話せず、他の奴に電話して適当にくっちゃべって誤魔化せばいいだけ。酔っぱらってるノリはそれに気づかないだろう。

 クックック…

 やはり世の中頭脳。 オツムがものを言うのである。

 自爆はノリだけで充分。

 そもそも私とノリとでは状況が全然違うのだ。 


 ノリ → 既にほぼフラれてる。電話しても結局一緒。
 財前 → 明日会って気持ちを伝えれば元の鞘の可能性が高い。


 圧倒的に私が不利じゃないか。なんで成功間近の状態なのに危ない橋を踏まねばならぬ。

 予防と是正は違うと言いたい。

 

 






財前「OKOK。やろうじゃないか」

ノリ「よ~し」

財前「じゃあ合図してよ。同時に電話しよう」

ノリ「よし。じゃあ行くよ~ イチ~ ニー 」

財前「…」



 クックック… ハ~ハッハッハッハ


 私が他の奴に電話かけるとも知らず馬鹿な奴だ。



 そして運命の3…



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ノリ「あ。ちょっとまって;;」

財前「何!?」

ノリ「ド…┣¨キ┣¨キしてきた…」

財前「ちゃんとやれよテメエww」

ノリ「あ~凄く胸が苦しい;;」

財前「馬鹿野郎。勇気を出して押せ。だいたいオレはホントに電話しちまうところだっただろうが!!」(大嘘)

ノリ「ごめんごめん;;」

財前「この弱虫野郎が」

ノリ「やけに強気だね…おまえ」

財前「ふん。オレはやると決めたらやる男だからな」

ノリ「うう…;;」

財前「おまえ口だけで全っ然大したことねえな。見損なったよ」

ノリ「…」






ノリ「あ~でもやっぱりドキドキしてとてもボタン押せないや…」

財前「へっ! おまえがそんな雑魚だとは思わなかったな」

ノリ「あ。そうだ!!」

財前「なんだよ」

ノリ「絶対かけれる方法を考えついたよ」

財前「あ?てめえがボタン押せばいいだけだろ」



ノリ「つまりね? お互いの携帯を交換するんだよ」

財前「な…なに!?」

ノリ「でね。オレは財前の電話で亜美さんにかける。財前はオレの電話でホッケーにかける」

財前「…」

ノリ「で相手が出たらすぐに携帯交換して話すのさ。そしたらもう逃げ場ないし。オレもそれなら…勇気とか関係ないし」





 …














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 ちょ… まて… 私の携帯電話をノリに貸して、ノリが亜美さんに電話かけて

 亜美さんが出たら私にすぐに代わるだと!?

 



 バ…馬鹿な。



 っておまえ…それって






















 そんな馬鹿なぁぁぁぁ!!
 
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 これでは本当に亜美さんに電話してしまうではないか。


 駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ


 馬鹿野郎。つきあいきれるかよ。言ったはずだ。すでに敗戦確定のノリと私とは状況が違うと。

 自ら自爆するとかそんな馬鹿なことができるわけがない。



ノリ「じゃあおまえの携帯貸して」

財前「なぁ。やっぱりやめないか…こんなこと」

ノリ「ェェ(゚Д゚)ェェェ おまえさっきまでやる気満々だったじゃん」

財前「やっぱりおかしいと思うんだ…こんなこと」

ノリ「それはないぞ~ オレの事散々 雑魚とか弱虫とか言っておいてさ~」

財前「だってもう深夜の1時回ってるしさ。きっと寝てると思うんだよね。亜美さん」

ノリ「ホッケーだって同じだよ」

財前「いや。ホッケーは体育会系。あいつは起きてる… あんな奴と亜美さんを一緒にしないでくれ…」

ノリ「なんか調子狂うなあ…」





ノリ「まあとりあえず貸せよ」

財前「あっ」


 そういって私の携帯をノリが奪った。

 …

 …

 なんかもう… なんか…どうでも良くなってきた。

 だいたい深夜1時だし…眠いし… あんまり頭も働かないというか…

 そしてノリが私に自分の携帯電話を渡す


ノリ「はい。それがホッケーの番号」

財前「…」

ノリ「じゃあ行くよ~? イチ…ニィー 」


 …



財前「待て!! 待て待て待て!!!」

ノリ「なんだよw」

財前「ふ~…ふ~…は~…  く…苦しい…胸が」

ノリ「おまえ急にヘタレになったねww」

財前「ちょっとトイレ行ってきていい?」

ノリ「我慢しろよ。もうこれ以上遅くなるとかけられなくなるから、やるよ?」

財前「ちょ…待てって;; いいか。良く聞け。 とりあえずオレの話を聞くんだ」

ノリ「はいポチッ」



 …




 トゥルルルルルr…




 …


財前「ぇ…? ぉまえ… もしかして亜美さんにかけてる?」

ノリ「うん」

財前「3,2,1でかけるんじゃなかったのかよww」

ノリ「もう面倒だからかけちゃったよ(^ω^)」

財前「て…てめえ!! 」


 脳裏によぎる亜美さんのシルエット


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 絶対怒るよ。これ絶対怒るって。

 あんな事言った後に深夜に電話とか。


 ああああああああぁぁぁl!!


 気が動転した私もとっさにノリの携帯電話のボタンを押す。

 これによりホッケーへの呼び出し音が鳴り響く。

 
 くそぉぉ!! こうなりゃノリ!! おまえも道連れだ!! 


 出ろ! 出ろ! ホッケー。

 

 ってコイツの恋は既に終わってるんだったか…。 

























 そして…























 ガチャッ





 亜美「もしもし?」


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 財前…  


 一世一代の大勝負が始まった。

















































 今日の関連曲 「とんねるず」  情けねえ    
 (オリコンチャート最高3位 販売枚数74万枚)
  
 ちっぽけなしあわせに魂を売り飛ばし AH- 生き急ぐ AH- 人の群れ
 偽りの微笑に後悔はないのかい? AH- ツバ吐いて AH- 捨てた夢
 みんな時代のせいだと 言い訳なんかするなよ 人生の傍観者たちを俺は許さないだろう

 情けねえ 自由が泣いている ウォオ ウ ウォオ 情けねえ しょっぱい血を流し ウォウォウォ
 お似合いだぜ おまえにゃ口を閉ざしお休み 鎖つつながれた小犬のように

 ウォウ ウォウこの国を ウォウ ウォウ 滅ぼすなよ



  



                                                素材 coco*








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2008(Wed) 07/30

大学時代回想15 帰れない者達(97)

財前History … Comments(97)

 この記事は管理人の大学時代の回想記(実話)です。
 回想1 「一楽木工」から見ないと意味がわからない箇所がある点はご容赦ください。

defined
09/10/23 大学時代回想20 かたはらいたし 激震の鎌倉 (コメント --)
09/10/23 大学時代回想19 甘い運命をお膳立てしましょう (コメント80)
09/02/18 大学時代回想18 何年経っても変われない男の…末路  (コメント63)
09/02/16 大学時代回想17 恋の脳内麻薬の作用と副作用? (コメント41)
09/02/10 大学時代回想16 情けねぇ男二人の友情 (コメント67)
08/07/30 大学時代回想15 帰れない者達 (コメント96)
08/07/25 大学時代回想14 マグナム砲の覚醒 (コメント62)
08/07/20 大学時代回想13 友情と恋愛(ノリ編)  (コメント49)
08/07/18 大学時代回想12 動き始めた思惑 (コメント68)
08/03/25 大学時代回想11 無駄が必然に変わった日 (コメント69)
08/03/13 大学時代回想10 阿鼻叫喚の魅力 (コメント71)
08/03/11 大学時代回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭 (コメント33)
07/12/03 大学時代回想8 友情と恋愛 (コメント91)
07/11/27 大学時代回想7 研究室所属 (コメント57)
07/11/22 大学時代回想6 社会人の鏡 (コメント59)
07/11/19 大学時代回想5 バイク免許所得の先に… (コメント49)
07/11/13 大学時代回想4 ストーカー財前  (コメント192)
05/10/04 大学時代回想3 リリカの再来  (コメント11)
05/09/17 大学時代回想2 4月応援団  (コメント13)
05/09/16 高校時代回想1 一楽木工  (コメント24)















 回想15は普通のお話です^^ ご安心ください


























 あの後…

 リョウさんと共にバイクで帰路に着き、途中で別れた。

 これで私は少し考えることができる。

 なぜならリョウさんが帰ったからだ。つまりリョウさんが予定していたことをすべて消化したということになる。リョウさんの目的は達成されたのだ。

 問題はここから。私はこれからなぜリョウさんがこんな事をしてくれたのか

 を考えなければならない。通常聞けばすぐわかることだが、彼はそんな事言わない。

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 う~む

 壮絶な体験をさせてもらい、その資金まで提供してくれたリョウさんだけど…

 一体私に何がしたかったのだろうか。 いきなり家に来たと思いきや、目的地も告げずあんな所に連れて行くなんて常識を逸している。影からあたふたする私の反応を楽しむような「いたずら」を好むタイプでもない。

 では

 ただリョウさん自身が風俗に行きたかっただけだろうか。

 いや…それはないだろう。行きたいなら一人で堂々と行ったはずだ。わざわざ私を連れていく義理もない。つまり今回は何らかの理由で「財前をわざわざ連れて行った」という事になる。

 確かにいい経験をさせてくれたとは思うが…相変わらずの「黙して語らず」でやることはエゲツない。後でこちらが色々と考えないと彼の真意がわからないのが辛いところだ。

 だが…実は理由を考える必要などなかった。

 もうすでにわかっていたのだ。自分の気持ちの変化に。

 私の心理状況は亜美さんの事で悩んでた、つい数時間前とは明らかに違っている。何か…吹っ切れたと言うべきか、胸につっかえていた物が取れたというか。スッと気持が楽になった。

 これは事実だった。

 理由はわからない。でもその理由をいくら考えようとしてもわからない。

 まあそういうものである…。

 
 いや。別に、出してスッキリしたとかそういう事ではない。ひとつ思うのは

 何か…リョウさんとあの場所に行き、ロシアの女性とかかわった後から、

 凄く今までの事がちっぽけな事に思えたのだ。

 愛だの恋だので悩むことが。

 良く良く考えると私は恋愛をしたいんじゃないじゃない。 結局ヤリたいだけなのだ。いや今までを思い返してみてもヤリたいだけだったのだ。

 リョウさんとナンパしてた頃もそうだった。特定の彼女を持たず、その日であった女性と関係を持つ。当然あとくされもなにもない一夜だけの関わりである。リョウさんと出会ってからずっとそうしてきた。

 それがリョウさんと疎遠になり、大学生活、いや研究室生活に没頭し出してから歯車が少しづつ狂い出していたのだ。

 特定の彼女を欲し、周りに流され自分も特定の彼女が欲しいと思った。

 いやというより周りはみんなそうしてたから。特定の彼女を作ってたから。彼女と時間を共有することを重要視してたから。

 ナンパなんてする奴は周りに皆無だった。

 だから思ったのだ。流されたのだ。私もそうしたいと。


 真面目な恋愛 > 一晩限りの恋愛

 
 世間的に見ても明らかにこうだから。研究室や普通の大学生との関係が濃くなり、リョウさんのような特異な存在との関係が薄れたことで「普通こうじゃなきゃならない」という言わば先入観に囚われてしまっていたのだ。

 そう。他多数がしてることは「普通」。

 普通なのだ。つまり誰もが望み、誰もが行うこと。
 
 だから人前で堂々と経験談を話せるし、何ら罪悪感に苛まれることもない。だって皆やってることだから。

 …

 少しづつ絡まっていた糸が自分の中で解けてきた。


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 そうだ!!
 

 そもそも私の人格形成は高校時代の後期に行われたものじゃないか。一楽木工とにアルバイトに行った時に暴走族の兄ちゃんにナンパのイロハを教えて貰った。
 
 それがすべての始まりだ。

 遠目から女性を見て、授業中に好きな子と目が合うと喜んでた程度の青臭い自分が…

 覚醒したのは、あの一楽木工の暴走族との出会いがきっかけだったのだ。

 世間も何も知らないあの頃の私の心は真っ白のキャンパスのように清く美しかった。それがあの暴走族との出会いにより漆黒のキャンパスへと瞬時に変わってしまった。

 東京の大学に合格した。憧れの花の都 東京

 そこに夢を求めたのも私を狂わせた一つの原因かもしれない。

 私には家がある。実家がある。財前家の血筋、先代が代々、子に受け継いできた土地がある。東京にいられるのはわずか4年でしかない。絶対に長男として徳島に帰ってこなければならない。たとえ就きたい仕事が徳島になくても、徳島のどこかの会社には就職しなければならない。

 それが後継ぎとして親に育てられた長男の宿命なのだ。

 ゆえにこの4年は言わば好き放題できる人生最大のバカンス。

 教育とは恐ろしいものだ。幼いころから口をすっぱくして親から刷り込まれた長男としての自覚はグッサリと胸に沁みついてるのだから。
 
 つまり私にとって東京にいる4年間は腰掛けでしかないが、東京で就職する者にとっての4年間は腰掛けではない。将来の人間関係を作る基盤作りの期間でもある(農大の大多数)

 ここにナンパという要素がカッチリとハマるのがおわかりになるだろう。 

 4年間どう過ごすのが得策か。

 特定の女と長期間、深く恋愛するのか、できるだけ多くの女性と薄く関わるのか

 高校時代当時

 私が選択したのは後者だった。

 だからこそ、あんな無茶なリョウさんを兄と慕う事ができ、これまで着いてこれたのだろう。徳島でリョウさんと出会っていたら…恐らく着いていけなかったはずだ。

 これは周りにだれも知ってるものがいない東京だからこそ生まれた絆なのだ

 何人もの女性と関われたのもリョウさんのおかげ、バイクという存在を身近にしてくれたのもリョウさんのおかげ、世間を知れたのもリョウさんのおかげ、

 そのリョウさんと出会えたのは一楽木工暴走族のおかげ
 

 次々と繋がる人間関係

 しかし悪友ばかり…。

 そうか。

 よくよく考えると自分の人格に多大な影響を与えたのは

 世間一般的に良識者と言われている存在ではなく…

 世間一般からは














 非常識者と呼ばれる二人だった


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 この二人に育てられたに等しい私が、普通の人と同じように恋愛をしようと考えた方が愚かだったのだ。恐らく知らず知らずのうちに危険なオーラを纏っていたのだろう。

 素人に振られ続けたのも恐らくそれが原因だ。

 チズエさんに近づいただけでストーカー扱いされたのも

 よく考えるとあながち間違ってはいない。そういう危険な雰囲気を醸し出していのただろう。私本人が。

  
 


 なんという。なんという事だろう。

 大学生活もあと半年で終わるであろう時期ににこんな大切な事に気づくとは。

 まだまだ自分は子供という認識でいたが、良く考えると成人してる。

 もう人格は完全に形成されていたのだ。

 
 まさか…リョウさんはそれを気づいていた敢えてあそこに連れて行ったのか!? 

 …

 いや。それはないだろう。自分でも3年もかかってようやく気付いたことだ。赤の他人のリョウさんがそんな私の内面状況など知る由もない。だが、彼が何かを背中で語ろうとしたのもまた事実。

 何か…勘のようなものが働いたのかもしれない。

 彼は私のまだ知らない様々な事を知っているのだから…。


 あの風俗の女… あれは確かにプロだった。そして需要があるからあそこで商売ができる。つまり誰かはああいう存在を欲しているのだ。

 あのテクニック。タダ者ではない。

 少なくとも私は彼女に対しなんら不快感を覚えることはなかった。顧客満足度に関しては充分合格点を与えられる。

 これぞプロではないか。

 風俗といえば聞こえは悪いが、言い方を変えればお客のために最高のサービスを提供する職業だ。職種が違えど目的は同じ。
 
 恐らく身内は悲しむだろうが、一般社会の人間に迷惑をかけているわけでもない。むしろ貢献していると言えるだろう。あれでいくらの報酬を得られるかはわからない。

 だが日本で永住する気がないのは日本語が話せないことからも明らか。

 お金ができたら国に帰り、静かに暮らすつもりなのだろう。いや親に仕送りしてるということもあり得る。

 となると

 親の金で大学に行き

 自分のためだけにアルバイトをし 

 自分の欲しいものを買うためだけにお金を使い

 何ら世に貢献しない研究を名目に置き、研究ごっこをしている
 


 我ら学生よりもよっぽど立派ではないか。

 
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 そうだ。税金は払ってるんだろうか?

 所得税とかそういうのはあの職業に発生するのだろうか?

 それを払っているとしたらお手上げだ。文句のつけどころがない。


 牛鉄のアルバイトで出会った社会人の鏡「外村」さんと同じではないか…。

 

 …




 …








 不思議な事に人間の思考というものは一度紐解けると次から次へと解けていく。

 人間同じ環境下にいると周りが見えなくなる。隣の飯が美味しく見える。

 私はナンパばかりしていたから、普通に恋愛している友が羨ましかった。ナンパなど所詮社会のはぐれ者がするものだと思いながらやっていた。そしてようやく研究室に入って素人の女性と関係を持てる機会を得た。しかし…私にさきほどの事を気づかせてくれたのは美味しく思えた素人の女性ではない。皮肉なことに風俗の女性だった。そしてこれはひと晩限りの「つきあい」。つまりナンパの感覚に等しい。

 私が亜美さんとかかわり出して何を得たか。研究室で何を得たか。

 …

 何も得てはいない。


 
 結局最後に残ったのは大事にしなければならないのは

 今までリョウさんと共にやってきた行動だったということに気づいた。

 そしてこれは特異。普通に大学生活を送っていてはほんの少しカジルことしかできない要素だ。それに思う存分どっぷり浸かれた私は

 ラッキーだったと言うべきなのだろう。

 この経験値は社会人になっても武器になる…。私はこの当時なぜかそう思った。

 
 今日はちょっと考えすぎて疲れたな…

 思いながらその日は床についた。
 









 そして夜が明けて




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 翌日…


 通常通り何食わぬ顔で研究室に顔を出した私。いつもどおり研究室ではくだらない会話が幅を利かせている。

 「ねぇ昨日テレビさぁ~」
 「今日あの店行く?」
 「あと2か月で卒論まとめねえとなぁ」
 「明日実験だから今日準備しとけよな」



 社会人でもない、親の脛かじりなのに何かするべき義務、責務を持ってるかのような発言。リョウさんなら絶対に口に出さない発言ばかり。

 違う。違うぞ。おまえら。

 おまえらは今何かをしなければならないんじゃない。

 1年後。そう。

 社会に出てからだ。

 そこで真価が問われる。今大学でやってる卒業論文でよい成績を収めたとしても

 社会に出て何もできなければ何の意味も為さない。覚悟はできてるのか?

 …

 フッ まあいい。 私も昨日まではああいう雰囲気に呑まれてたんだからな。  


 マグナム砲に加え、精神的にも覚醒した今の私に怖いものはないのだ。

 ハ~ハッハッハ

 まあとりあえず「ニュー財前」誕生を祝してホッケーにでも話しかけてやるか。





財前「よう。ホッケー」


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ホッケー「何? 何か用?」

 
 ぐ… この野郎。最近ちょっとモテてるからって調子に乗ってるな…

 っと イカンイカン

 悟りを開いた私にはこんな小娘の戯言など何も感じないんだった。



財前「いや。別になんでもない」

ホッケー「何よそれ!」

財前「挨拶しただけだろ」

ホッケー「それとさ。気安くホッケーって呼ばないでくれる?」

財前「え?」

ホッケー「そんな呼び方してるのアンタだけなんですけど」

財前「まあいいじゃないか。大学1年からのつきあいだろ?」

ホッケー「その男友達みたいな扱いやめてくれる? それに私には友美って名前がちゃんとあるんですけど?」

財前「じゃあ友美ちゃんって呼ぼうか?」

ホッケー「気色悪~」

財前「何が気色悪いんだよ」

ホッケー「そうやって何人の女の子の名前を呼んできたわけ?」

財前「フッ 昔の話だな。 これからの俺は今までとは違うんだ」

ホッケー「へぇ~。何が違うわけ?」

財前「悟ったのさ」

ホッケー「何を?」

財前「女を悟った」

ホッケー「は? 馬っ鹿じゃないのww」

財前「勘違いするなよ? 女にうつつを抜かすのを悟ったと言ってるんだ」

ホッケー「ええ? もう女遊びはやめるってこと」

財前「そういう事だ」

ホッケー「へぇ~… でもなんで急に? あ。誰かにだまされたんでしょ」 

財前「アホか。それはおまえ昨日 ロシアの…」

ホッケー「ロシア??」


財前「!? 別に…なんでもないよ」

ホッケー「ぁゃしぃ」

財前「まあとにかく昔と同じ眼で俺をいつまでも見るな。今はもうあの頃の俺とは違うんだから」

ホッケー「ふ~ん。そっかぁ。 それだったら今度チズエ誘ってご飯でも一緒に食べてみる?」

財前「何!? チズエさんと?」

ホッケー「うん 誘ってあげるよ」

財前「おおおお。ホッケーできるようになったじゃないかおまえ。よし。今日でもいいぞ」

ホッケー「ウッソ ピョ~ン。 …誘うわけないでしょ。 やっぱり昔と変わってないじゃん」

財前「なんだと!?」

ホッケー「あははは」



 くそう。ダメだコイツ…。

 まだ誘って1日やそこいらでは素人の女にすら勝てんのか…。

 その上ホッケーは4年生になってちょっと色っぽくなっており、何かわからないけど「かわいい」からさらにタチが悪い。

 しかし…

 次の瞬間ホッケーが神妙な顔になって私にささやいた。 


ホッケー「ちょっと財前こっちきて…

財前「ん?なんだ」

ホッケー「いいから

財前「…」


 そう言って廊下に出るホッケー。 

 ?? 

 一体なんだろうか?


 


ホッケー「あのさ…」


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注) 12話でネタバレしてますが、まだこの時点でノリは後輩とはつきあっていません


ホッケー「ノリ君の事なんだけど…」

財前「うん」

ホッケー「交際を申し込まれたの (m´・ω・`)m」

財前「へ、へぇ~… そうなんだ…」


 ほぅ… ノリはうまくやったようだな。感心感心。


ホッケー「財前はノリ君から何も聞いてない?」

財前「し…知らないなぁ…」

ドキドキ

財前「交際申し込まれたって…告白されたの?」

ホッケー「新宿のホテルに誘われちゃった」


 ぶっw どうやらあいつ俺の言う通りにしたようだな。

 そうか。新宿のホテルのあのレストランを予約しやがったか。


財前「新宿のホテルか~ あそこいいレストランあるからねぇ」

ホッケー「そうなの?」

財前「ああ。だって俺もそこ行ったことあるぜ?」

ホッケー「あ…そう…」

財前「いいじゃないか。飯くらいつきあってやれば」

ホッケー「うん。ご飯くらいならいいんだけど…」

財前「おお!? その気あるの?」

ホッケー「そういうんじゃなくて、誘われたのはホテルなの」

財前「そりゃあそうだろうなあ。だってホテル内のレストランだし」

ホッケー「ううん。違うの。ノリ君ね。部屋も予約したからって言うんだよ?」

財前「何!?」

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ホッケー「部屋ってさ…。これってノリ君どういうつもりなの?って思って…」

財前「「部屋ってまさか泊まる部屋?」

ホッケー「うん」





 … 
















 




 …














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 ちょ… 待てよ(笑)












 あのバカ!! 泊まる部屋まで予約してどうするんだよ!!

 しかもそれを言うなんてなんて初歩的なミスを…

 まったくフォローするこっちの気にもなれよ



財前「いや。それは違うな。それは泊まる部屋じゃない。」

ホッケー「ていうか誰が入れ知恵したのかはわかってるけどね」

財前「多分それはレストランのね。食べるための個室を予約したって事なのさ。そこで泊まろうなんてあいつは考えちゃあいない。」

ホッケー「私も初めはそう思ったよ。でもレストランは予約してあるって言った後に部屋もって言ってたから…」

財前「…。  ま、まあ勘違いさ。気にするな」

ホッケー「気にするよww」

財前「なんだ。話はそれだけか? なら話は終わりだ。ノリは泊まる部屋なんか予約しちゃいない。予約したのはレストランの個室だ。いいな」

ホッケー「だから~。アンタが言ったんでしょ?」

財前「え?何を」

ホッケー「とぼけてもわかってるの。 アンタの入れ知恵って事は」

財前「フッ 何をバカなことを。この件に関して俺は何も知らない」

ホッケー「は~…」

財前「なにか証拠でもあるのか証拠でも」

ホッケー「だって告白するの時に部屋予約するバカとかアンタくらいなもんでしょ」

財前「失礼な事を言うな(笑)」

ホッケー「それにノリ君の交友関係みてもそういうタイプの友達はいなさそうだし」

財前「ほう…良く調べてるじゃないか」

ホッケー「まあ別にいいけどね。じゃあとりあえず返事しといてくれる?ノリ君に」

財前「何!? 俺が?」

ホッケー「アンタが入れ知恵したんだから当然でしょ」

財前「だから俺は何も言ってないと何度も…」

ホッケー「ノリ君にはこう返事しておいて。わたしは…」

財前「やめろ!!


ホッケー「!?」

財前「何でノリに直接言ってあげないんだよ。おれに言われても困るんだ」

ホッケー「友達でしょ?」

財前「いいか?もしおまえがノリを断ろうとしてる場合はだ。 そうやってな。人づてに返事したりするから女性不審になる男が出たり、その後の関係が悪くなったりするんだぞ? わかってるのか?おまえは」 

ホッケー「何よそれ」

財前「とにかくノリは直接言ったんだろ? じゃあノリに直接返事するのが筋だ」

ホッケー「…わかったわよ。何よ偉そうに。ノリ君にエッチなこと入れ知恵しておいてさ~」

財前「だから!!」


  
 

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 …とここでホッケーは目をひんむいて研究室に帰って行った。

 なるほど。

 直接返事できないとか意外とかわいいとこもあるじゃないか。まあOKかNGかはわからんが…

 しかしノリ…。

 まさかホテルの部屋まで予約してるとは思わなかった。しかもそれを相手に言うとか…。

 う~む。これは

 告白してみると意外にホッケーの反応が良かったから、大丈夫そうと思って言ったんだろうか?


 どちらにしても部屋まで取れとは私は言ってない。

 やはり… 等身大以上の事をしようとすると綻びが生まれるか。

 うむ。やはり人はイメージ通りに行動しないといけないな。

 そしてホッケーは私の入れ知恵と思ったか…。不本意だがやはり他人から私はそういう風に思われているようだ…

 昨日の悟りがまた信憑性を帯びてきた。

 まあ結果についてはそのうちノリから言ってくるだろう。ホッケーもあの調子じゃ今日明日に直接返事するのは無理だろうねえ。


 …



 







  そして放課後

 
 いつもなら亜美さんの研究室に亜美さんを迎えに行く時間だが、今日は行かなかった。いや。というより明日も行かない。

 もはや私は昨日悟ったのだ。

 このまま無駄に馴れ合いを続けるなど私らしくもない。女が欲しい時はまたナンパに出ればいいだけの話。そう。それが俺流だったのだから。

  1年前の自分に戻るのだ。


 



 …


 そして亜美さんを誘わず一人で帰る日が4日続いたある日のこと
 

 いつものように一人で帰ろうとすると
















 なんとバイクの前に亜美さんが立っていた。
 
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 … 一体なぜ?


亜美「財前くん…」

財前「や…やぁ」

亜美「最近誘ってくれないね」

財前「ああ…ちょっとここんところ忙しくて…」 

亜美「今日は?送ってくれないの?」

財前「忙しいんだ」

亜美「…」

財前「…」



 フッ さすが悟りを開いた私。

 渋いな。渋すぎるぜこの間

 あとはバイクに乗って

 「風が…呼んでる…」 と言い

 ブオオオオォォォ

 とかっ飛ばせば、もう最高に格好良すぎる。これだ。これぞ生まれ変わった「ニュー財前」よ。


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 しかし…

 亜美さんから出た言葉は意外な言葉だった。



 …





亜美「あの日のこと怒ってるの?」

財前「ぇ…」







 !?


 !?!?!??!?!?!?

 あの日の事ってまさか

 あの亜美さんに抱きついてヤロうとした時の事?



 ちょっと待て

 な…なんだと!?

 「あの日のこと怒ってるの?」って

 まさか亜美さん。

 私があの時、亜美さんとヤロウとして拒否されたから凹んでると思ってるのか?


 ちょ… なにその評価。それただのエロ男じゃん!!

 私の事をそんなガキだと思ってたのか?


 違う。違うよ。断じて違う。

 そんな単純な事で怒るわけないでしょ。私は昨日リョウさんの背中を見て女づきあいを悟ってだね…


 …

 ああああああ;;

 いつもこうだ。
 
 なんで私は他人から見るとそんな変態みたいにイメージされるんだ。

 ヤルだけが全てじゃないって顔してるだろ?今は。

  くそう… 説明するしかないか。言葉を多く発するほど男は価値が下がるんだが…。



財前「いやいや。 ハッキリ言って全然怒ってないよ」

亜美「じゃあなんで私を避けるの?;;」

財前「え? 避けてないよ;;」

亜美「嘘ばっかり。もういいよ」

財前「あっ…」






 そう言って亜美さんは走って校舎の方に走って行ってしまった。
 
 なんて勝手な女だ。待ってればアッシー君(送り迎え奴隷)の私がいつでも迎えに来るとでも思っていたのか?
 
 フッ… 甘いな。

 悟りを開いた私にはもはやそんな手は通用しない。

 まあしかし

 これで亜美さんも私が迎えに来る事を期待することもないだろう。卒業まであと半年。どうやら彼女を作るという計画はここで完全に途絶えたようだ。
 
 まあこれも一種の失恋。

 そして青春だろう。

 
 …

 妙にすがすがしい気分だった。

 ひとつの…大きい何かが私の中から消えた。

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 こんな日は家に帰って飲もう。

 私はバイクに跨り、亜美さんと一緒に帰っていた頃の思い出を走馬灯のように思い出しながらバイクを走らせた。

 ふと…途中ノリの事を思い出し、どうせ飲むならノリと飲もうと思い、バイクを止めて電話。


 プルオプルルルルル  ガチャ





ノリ「よぅ」

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財前「ノリ。今日暇か?」

ノリ「ん?暇だよ?」

財前「じゃあさ。今から家に来いよ。おれもあと30分くらいしたら帰るからさ」

ノリ「どっか行くの?」

財前「いや。家で飲もうかなって思って」

ノリ「そうか~。なんで飲むかわかるぞ~ ムフフ」

財前「ん?」

ノリ「亜美さんといい事あったんだろ?」

財前「え?何が?」

ノリ「またまたぁ~。とぼけて~」

財前「いい事あったというか、今日怒らせたみたいだからもう関わることもないと思うよ?」

ノリ「ええええええ!?」

財前「ついさっきの話だけどね」

ノリ「なんでケンカするのよ!!」

財前「なんでってそりゃ俺の気が変わったから?」

ノリ「え?もう好きじゃなくなっちゃったの?」

財前「そうじゃないけど。ただもう送り迎えするだけの関係は御免だなって」

ノリ「おまえアホだねえ」

財前「は? おいおい。おまえの方がアホだろ。今日な。ホッケーに…」

ノリ「2日前だっけ?亜美ちゃんずっと待ってたんだぜ?」

財前「ん? 待ってた?」

ノリ「いやおまえが研究室に迎えにいくの」

財前「へぇ」

ノリ「たまにチラチラこっちの研究室のぞきにきてさあ。あれ夜遅くまでいたんじゃないかなあ」

財前「な…なに!?」

ノリ「あんなのおまえをずっと待ってるの見え見えじゃん。」

財前「…」

ノリ「一応俺が『もう帰ったよ』って言っておいたけど…」

財前「ま…またあとで電話する」


 
 ガチャ





 …




 …



 バ…バカな。



 …




 そんなバカな。

 もうどんなに鈍感な男だってわかる。
 

 なんてことを…
 

 亜美さんは…  私が迎えに来るのを… ずっと待ってたのか…。ここ数日…。

 は!?

 そうか。だから今日わざわざバイクの前にいたんだ。 そうか!!
 
 あれは偶然じゃなく… 亜美さんの意思で…

 



 
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 …





 私は真っ青な顔で大学に引き返した。

 自分の馬鹿さ加減にうんざりした。

 ここまで来ると自分がいったい何だかわからなくなってくる。 

 何が悟っただ…。 何が…

 人とはこういうものなのだろうか。失敗するごとに冒頭のような余計な事を考え、成長した様な錯覚を覚える。実際自分は何も変わってないのに。

 悟っただと?

 おい財前。

 貴様はリョウさんに連れられて風俗に行っただけじゃないか。

 それだけでわかったような口を…

 女一人の気持ちすら満足に理解してやれない大馬鹿野郎じゃないか。

 くそう…


 なんでこんな事に…


 知らず知らずのうちにバイクのスピードは上がる。

 亜美さんが電車に乗ってたら終わりだ。…亜美さん。まだ大学にいてくれ。頼む。

 そしてふと思った。

 よくあるドラマの光景だ。これは。 男は大概こういう場面でバイク事故を起こす。

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 うむ。

 こういう時こそ安全に運転しなければならない。

 フッ…。トレンディードラマもたまには役に立つな…。




















 
 30分後…


 私は厚木キャンパスに到着した。

 バイクの鍵もそのままに 亜美さんの研究室に向かった

 
 あの夜…

 絡まった糸がほどけたんじゃない…。



 もともと亜美さんと私の糸は絡まってなどいなかったのだ。


 

 
 時計の針はもう7時を超えている。研究室に人がいる可能性は極めて低い。



 しかし…

 まだ間に合うか…


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 亜美さん、大学にいてくれ!!





 今頭にあるのはそれだけだった…






 …






 




 今日の関連曲 … 中島みゆき    糸   






テーマ: ダメ男
ジャンル: 恋愛








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2008(Fri) 07/25

大学時代回想14 マグナム砲の覚醒(60)

財前History … Comments(60)

この記事は管理人の大学時代の回想記の第13弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
 










 (注) 回想14は一部「週刊少年ジャンプ」を超えた表現が含まれているので未成年は注意してみてね


















 ノリの悩みにつきあって数日。 

 私は焦っていた。

 いや。焦らされていた。

 はじめは「ほぅほぅ なるほど。ノリ頑張れよ」という感じだったが、よくよく考えてみると「おまえも頑張れよ」と自分にも言われているような気がしてならないのだ。

 実際そうである。

 確かに亜美さんとの関係は「知り合い」から「一緒に帰る仲」になった。もちろんバイクに乗せて帰るのでボディタッチも毎日のように行われている。もはや手をつないで歩いているも同然だ。

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 しかし、これはあくまでも状況がそうさせているだけであり、亜美さんが彼女という存在になったわけでも亜美さんが私の事を彼氏と認めてくれているわけでもない。
 
 そう。よく考えてみると私と亜美さんは所詮はバイクで一緒に帰っているだけなのだ。

 そしてさらに良く考えてみると

 ただのアッシー君(交通機関の奴隷)としてうまく利用されているだけかもしれないのだ。

 いやまて。

 夕飯もよく奢るので、ミツグ君(金を貢ぐ奴隷)としても利用されているのかもしれない。

 つまりノリの方が圧倒的に状況はいいかもしれないのである。

 第一狙った女に関してはナンパ以外での敗北率が異常に高い私。今回が過去と比べて例外ではないとすれば、結果はすでに見えたも同然ではないか。この恋はこのまま終わるというのが確率的には高いという計算が導かれる。

 最近そんな不安が襲ってくる。

 フラれるならフラれるでいい。でもせめて一発ヤラせてほしい。

 ああ。

 どうすればいいんだ。つい最近まで楽勝っぽい楽観思考だったのに一度マイナス思考に転じるとどんどん悪い方向に思考が流れて行ってしまう。

 もはや亜美さんは手の届かない遠い所に行ってしまったような感覚すら覚える。

 ど…どうすれば。

 …



 はっ!?






 そうだ。こんな時いつも兄貴が助けてくれてたじゃないか。よしリョウさんに相談しよう。


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 時計を見るともう20時。リョウさんも仕事が終わっているはずだ。


 さっそくリョウさんに電話。
 

 …
 
 プルルル ガチャ


リョウ「…」

財前「どうもリョウさん…久しぶりです」

リョウ「どうした」

財前「え~と実は…」

 しまった…。瞬時に私はそう思った。思いつきで電話したまでは良かったものの、リョウさんみたく器の大きい人に恋の相談なんかできるはずがない。第一そんなことに興味がない人なのだ。女など町に繰り出せばいくらでもヤレたこの人に相談しても次元が違う答えが返ってくるのが明白だ。

 しかし世間話をできるような相手でもない。

 …とりあえずちょっとだけ話して切ろうと思った。考えなしの行動をしてしまうのも考えものである。



財前「え~とですね。実はですね…」

リョウ「…」

財前「どうしてもモノにしたい素人女性がいまして…。その…」

リョウ「そうか」

財前「しかし何かこう…何ていうんでしょう。え~と。よくわからないというかなんというか…」

リョウ「あのクラブにいる女か?」

財前「え?いえいえ。ナンパじゃないですよ。普通の大学生です」

リョウ「…」

財前「すいません。リョウさん。もう社会人なのにこんな話してもアレですよね。」

リョウ「ん…」

財前「やっぱ素人はあれなんですかねえ」

リョウ「ほぅ」

財前「あ!? だ…大丈夫です。リョウさんと話してちょっと落ち着きました。」

リョウ「…」

財前「え~と…。ではそういう事でございまして、リョウさんも仕事頑張ってください~ では」


 ああああああ。私はなんてバカなんだ。もともと無口なリョウさんに相談しても何も返ってくるわけないじゃないか。いつも背中で語ってきた人なのに…。

 でも。なんか。リョウさんと久しぶりに話してると(話してないが…)、亜美さんのことなんてどうでもいい事のように思えてきた。

 やっぱこの人は人間のデカサが違うわ。電話越しからも威圧感がすごいし、些細な事なんて世界のほんのミクロの出来事のような気がしてくる。

 …

 そう思って電話を切ろうとした時だった。

















リョウ「待て」









財前「…!?」

リョウ「おまえまだあの下宿に住んでるのか」

財前「は…。あ…ああ。まだ住んでますよ」

リョウ「出られるか?」

財前「え?どこにです?」

リョウ「わかった。今から行くから準備しておけ」

 ガチャ… ツーツー

財前「え!?ちょ…」


 …

 !?


 ちょ… ど…どういうことだ。

 待て待て。待て。考えろ。財前。会話をおもいだせ。


リョウ「出られるか?」

財前「どこにです?」

リョウ「わかった今から行くから準備しておけ」

 
 …

 相変わらずよくわからん人だ…。

 う~む。でもこれはこれからリョウさんが家に来るって事で…「出られるか?」って言うのはどこかに行くって事なんだろうか。

 ていうか私は今家にいるとは言ってない。もしいなかったらどうするつもりなんだろう。しかも今日予定が空いてるかどうかも確認せずに…。
 

 というより


 リョウさん昔と全然変わってねえじゃねぇか(笑)。


 リョウさんは昔からいつもこれだった。誘われる方が気を使って家で待機してたり、先に予定があってもリョウさんに無理矢理合わせたりしてた。というより彼にはそうさせてしまう何かがあるわけだけども…。

 いつも突然、その瞬間に予定が決まってしまうのである。


 困ったなあ…。飲みにでも行くんだろうか?



 …




 ドドドドドドド

 …

 20分くらいしたところでリョウさんがバイクで家にやってきた。 

 ていうか何この改造バイク。ホントに社会人なんてマトモにやれてるんだろうか? この人は。

 でも聞けない。口が裂けても聞けない。「リョウさんまだ仕事続けられてるんですか?」などとは…。


リョウ「おい。早くバイクを出せ。」


 
 そう言ってリョウさんはバイクに跨りたばこを吸いながら待ってる。

 う~む。「ちょっとツーリングにでも行こうぜ」って事なんだろうか? 横浜にでも行くのかな…。答えは返ってこないとは思うが一応聞いてみる。


財前「海にでも行くんですか?」
  
リョウ「そうだ」


 ん? な…な~んだ。海に行くのか。そうか~ リョウさん私が失恋したと思って慰めてくれようとしてるんだろうか。そうだな。波の音を聞きながら砂浜で心を落ち着けるのも悪くない話だ。

 そんなことを考えながら私はバイクのシートを手早く取っ払いリョウさんの後についていく。


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 …
 
 相変わらずリョウさんはスピード出しすぎ。危ないなんてものじゃない。

 昼ならいいんだが…。
 
 意外と知られていないが夜のツーリングでスピードを出すのは危ない。バイクの場合、ちょっとした段差でバランスを失うし、道路状況、アスファルトの状況が悪くてもタイヤを取られてバランスを崩してしまう。石などを踏んでしまおうものなら死を覚悟しなければならない時もあるのだ。
 
 それゆえ視界が悪く、道路状況や細かい状況が見づらい夜の道でバイクに乗るのは非常に危険なのである。本当に精神を研ぎ澄まして常に緊張してないと命はないと直感的に感じる。

 この感覚は、バランスを崩すことの皆無であろう4輪の自動車では絶対に味わえない。

 車に乗って80キロ出しても死のイメージはつきまとわない。フロントガラスで大事な情報がすべてカットされてしまうからだ。風速の体感、風の音、感覚。箱の中ではすべてがカットされる。

 だがフロントガラスのないバイクは風速、風の音がモロに操縦者にぶち当たる。60キロも出せば自ずと死というものを意識してしまう。
 
 要は簡単なのだ。

 「あ~このスピードだと転んだら死ぬだろうな」

 こう感じるのが。

 だからすべてを忘れられるのかもしれない。実際リョウさんのあとを着いていく内に亜美さんの事などもはやどうでも良くなっていた。バイクで時速100キロも出している世界でいるとすごくちっぽけな事のように思えるのだ。

 当然である。

 その時私は死と向き合っているのだから。

 言い過ぎかもしれないが、実際はそう。時速100キロでバイクを運転しているということは、言い換えれば首つり自殺を今まさにしようとしている状況とそれほど変わらないのだから。

 冥界に足を踏み入れているのとほぼ同意。

 もし今ハンドルを急に右か左に切ってみたとしたら私は死ぬわけだから。

 …

 もしかするとリョウさんはこれを教えたかったのであろうか。私に。 そんな小せえことで悩んでどうするんだと。こう言いたかったのだろうか。


 やはり背中で語る人は違う…。言葉とは違う重みがある。


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 そしてやはり。

 私はリョウさんに出会えて良かったのだ。


 …


 そして

 途中ちょっと目的地がおかしいことに気づく。

 というより横浜に向かっているのは確かなようだけど。どこだ?ここは…

 リョウさんはバイクのスピードを緩め、街路の端にバイクを停車させた。 どうやらこの辺が目的地らしいがはて? 昔行ってたクラブでもなければナンパスポットでもない。

 ここは何か…見知らぬ地域なのだ。


リョウ「おい」

財前「は…」


 リョウさんが私を呼ぶ。私がリョウさんに近づくと何か紙切れを渡された。

 こ…これは?














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 諭吉…。それも3枚も。

 ん?あと何かある。こ…これは…コンドーム…。


財前「リョウさん これは…」

リョウ「社会人になると素人狙いは足がつくからな。おまえもこういう所を覚えておけ」

財前「はぁ…」

リョウ「じゃあおまえそこに入れ」

財前「え?」

リョウ「じゃあな」

財前「ちょ…ちょっと待ってくださいよ;;」

リョウ「それ3枚渡せばあとは黙ってればいいんだよ。じゃあな」

財前「やめてください。1人にしないで;;」

リョウ「心配するな。ここにはその筋のプロしかいない」

財前「だから怖いんですよ…」

リョウ「後な。そのゴムは危なくなったら使え。特注のゴムだ」

財前「特注…」

リョウ「じゃあな」

財前「ていうかリョウさん。まさかここは…」






























 風俗!? 

 
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 なんてこった。何なんだこの人は。海に行くとか言っておいて、連れて来たのは風俗かよ(笑)。

 しかもただの風俗じゃねえ。

 店舗型じゃないぞ。これは。

 明らかに裏。路地裏だもんだってここ。
 
 だって普通に女の人が下着で立ってるもん。家の前で。ありなの?これ。法律的に。

 しかもなんでゴム(コンドーム)まで渡すのよ。それに特注って何? なんかヤバいゴムなの?これ。


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 横浜ってこんな危ないところだったのか…


 ていうかもうリョウさん中に入っちゃったよ。

 おいおい…

 おま… こんな露骨なとこ初めてくる私を連れてきておいてアドバイスは


リョウ「諭吉3枚女に渡して後は黙ってろ」


 とかありえないだろ(笑)。
 
 説明になってないじゃないか。やっちゃいけないこととかあるはずだろ。あんたヤクザに目つけられたらどうすんのよ。

 システムの説明書とかないの?。


 普通1時間制とか2時間制とか、本番ありとかなしとかあるんじゃないの?

 それに何ここ。女の人普通に下着で待ってるだけと思ってたら、どんどんこっちにアプローチしてくるし…。

 気に入った子とあの小屋みたいなとこに入ってよろしくやるんだろうか。

 部屋の中にヤクザとかいて有り金全部取られるとかいうオチじゃないだろうな…。それに病気持ちとか絶対いるぞこれ…。 でもリョウさんはもう入ってるしなあ…。特に異常なさそうだし…。

 でもあの人はもともとヤクザみたいなもんだからなぁ。カタギの私を一緒にするなっての。


 しかし悩んだところであとの祭り。

 何しろ頼みの綱のリョウさんはすでに小屋の中に入ってしまい、今いないのである。つまり今頼れるのは己のみ。まさかリョウさんから3万円貰ってるのに帰るわけにもいかない。

 フゥ…

 
 私は腹を決めた。
 
 小屋の数は20数個。その入口に女が一人また一人と立ってる。 あのスタイルのいい金髪はロシア人か? あれはフィリピンだな… これは… 日本人か? いや… 中国人だろうか。

 正直どこに入っていいかわからない。

 ていうかこれ普通に本番ありなんじゃないの? つまりSE○普通にするってことでしょ? これって…3万円で足りるんだろうか…。 不安になってきた。

 待て待て考えるんだ。財前。きっと何かいい策があるはずだ。何か…

 なんて思うものの、ほぼ下着姿の女が腰を振り、色眼遣いをしながらこっちを見てくるのでまともな考えなど浮かびやしない。

 そのうち

女「私のとこにおいでよ」

 と女から近付いてきてガッチリ腕をキープされそのまま小屋に連れ込まれてしまう。

 …


 な…なんだこの部屋は…。

 何か異様に香水臭い。中は3畳程度の広さになっており、紫のライトがポツッとついているだけ。恐らく他の小屋も同じ構造なんだろうが、こんなところが東京にあるとは…

 私は辺りを見渡した。それはそうである。ヤクザがいるかもしれない。ヤッテル最中に財布とかバイクのキーとか取られるかもしれない。

 考えてもみろ。

 こんなとこで財布を盗まれようが、何をされようが、警察になんて行けるわけないじゃないか。「あの…私はここで財布を取られました;;」なんて言おうものなら恥さらしもいいところだ。

 つまり。

 前述したように


 頼れるのは己だけ。自分の身は自分で守らなければならないのだ。

女「お兄さんこっち」


 そういって女は服を脱ぎ、シャワー室へ私を手招きする。

 危険だ。服を脱ぐのは危険だ。財布が入ってるんだ。そうだ。金庫みたいなものはないんだろうか。財布を守りながら一戦やらかすことは不可能だろう。

 私は聞いた


財前「金庫はどこにあるの?」

女「??」


 女は反応せず、何を言っているの?といった感じのきょとんとした顔をしている。

 というよりこの日本語で通じないということは





 …













 コイツ日本人じゃないな?










 








 間違いない。この女。ガイジンだ。

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 ていうか見ればわかるけども…。

 薄暗いからよく確認できないっていうのもある。
 

 しかしなんということだろうか。

 リョウさんに電話をしたがためにこの修羅場。思えばアレが間違いだった。やるんじゃなかったよ。ホント…。

 でもこれって普通に商売してるわけだから…てことは警察からも目をつけられてないって事なんでしょ? てことは合法?

 良くわからないが、まあバレタとしても大学を退学になるなんてことはないよな…。あと半年で卒業で就職も決まってるのにこんなとこで全部台無しは困る。

 よし。とりあえず後でヤクザが出てきても絶対に本名は言わないようにしよう。佐藤…とでも言っておくか…。

 私は財布をジャケットの裏ポケットに入れ、ボタンを閉めた。これならすぐに財布の中身を盗むことは不可能だ。それにシャワーと言っても風呂場じゃない。一人入れるかどうかのスペースというか電話ボックスくらいの大きさなので私のジャケットを誰かが盗もうとしてもすぐに対応できる。

 よし…。 ここはもう腹を決めよう。 

 私は何をしていいのかわからないので女に流れを任せ、シャワーを浴びる。

 恐怖以外の何物でもない。日本語はどうもわからないようだから交渉も通用しないし…。

 ここまでである程度わかった情報がある。

 女のシャワー速度や機敏さを見る限りでは、非常にゆっくりとしている。つまりここは1時間制の店ではない。恐らく90分~120分コースだろう。

 もしくは男が果てれば終わりか。

 そのどちらかである。

 そしてもうひとつ。

 女は私が渡した3万円を自分の財布に入れた。これは誰かに雇われているとかそういうことではないことを意味する。おそらくリベート制なのだろう。この小屋か場所を自分で借りているのだ。1日いくらかで場所を借り、男とヤッてお金を直接貰い、その取り分から支払うのだ。

 つまり。

 ヤクザが噛んでいたとしても

 金さえ払っていれば直接踏み込んでくることはない。

 リョウさんはこれを言っていたのだ。


 3万円払って黙ってろ。


 つまりこれは3万円先に払えば金に関するトラブルは消える。そして騒ぎを起こさず大人しくしていれば商売を邪魔することもないので無難に終わるということ。

 リョウさんの言ってることは確かに的を得ている。

 
 だが…  

 そうはイカの金太郎飴。 
 
 ヤクザ、女、ピンク、風俗。

 最初にイメージしたこれら単語などちっぽけなものでしかないことを私は知る。男として大切な「威厳」「プライド」これを私はここで失うことになる。

 これは屈辱と呼ぶに相応しかった。

 ロシア人かヨーロッパ人かわからないこの豊満な女性。


 恐ろしいほどのSE○ テクニックを持っていたのである。本来は男性上位であるはずの性行為。というより今までの経験の中で男に勝ってしまう女性など一人もいなかった。

 どれほど気の強い女でも性行為では男性になびくのが当然なのだ。

 もちろんテクニックが貧弱、マグナム砲が貧弱な生殖能力の乏しい男に女を屈伏させる事は不可能だろう。というよりこういう奴は女に見放される。

 それはわかっている。

 だから私はAVの帝王である「加藤鷹」のビデオを何度も見直して学習し、SE○のテクニックを学んだのだ。もちろん実際には彼のようには行かないが、女性の体のメカニズムを知ってると知ってないとでは大きな違いがある。

 己の気持ちよさを追求する一人よがりの性行為は次をもたらさない。

 そして数々のナンパで女を屈伏させてきた私は絶対の自信を持っていたのだ。

 女を喜ばせることに対して。

 亜美さんとまずヤッテおく必要があると言ったのもそのためだ。

 













 しかしだ。

 恐ろしい女がこの世にはいるものである。

 いや、さすがプロというべきか。


 このロシア女には


 ・加藤鷹直伝のGスポット擦りテクニックがまったく通用しない。

 ・ならばと「必殺舌の舞」を駆使しようとしたが、体臭が臭くて舌の舞を使えない。

 
 しかもだ。

 体格が日本人から比べるとかけ離れているほどガッチリしているというかパワフルなので、腰の振り方が半端じゃない。なんなんだこの人種は。

 この腰の振りの高速さはまさに残像拳。いや残影拳。

 私の自慢のマグナム砲もこれには悲鳴をあげるしかなく、まったく良いところなくあの世へ。

 なんなんだこれは。
 

 これでは私が女ではないか。完全に征服されているではないか。

 なんたる屈辱。

 もちろんマグナム砲は温存し、手や舌で攻めるならまだ勝ち目もあろうが、手でするのは文化的に合わないらしく払いのけられ、臭くて舌は近づけられない。

 ではマグナム砲で屈伏させるしかないのだが、あの残影拳の威力は半端ない。

 早すぎる上に摩擦力が凄すぎる。




 しかもあの押さえつけるパワー。

 まるで熊である。 

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 マグナム砲の損傷ダメージが酷いのでこっちがダメージを受ける位置を変えようとしてもビクとも動きやしなかった。

 それほど恐ろしい腕力なのだ。

 これは日本では感じた事のない圧力。

 というより日本人の女性でこれほどの迫力をもった女性はバレーの選手くらいだろう。

 …

 終わった。

 なんて笑えるんだろうか。素人の亜美さんには手のひらで転がされ、プロの女性には完膚なきまでに叩きのめされた。

 なんてちっぽけな存在なんだ私は。

 
 そしてなんて奥深いんだ。社会は。

 私はナンパしてヤレればこれが最高峰の遊びであり、これぞ男としての技術のひとつとして今まで認知してきた。

 それがどうだ。

 世界は広い。

 見ろ。この女を。

 私から3万円をむしり取り、その上プライドをズタズタに引き裂き、完全に征服してしまった。


 これがプロなのか。


 これがその筋の世界なのか。

 
 社会に出るということはこういうことなのか。


 金を得るということはこういうことなのか。







 そうなのだ。私など所詮は大学生。社会に出たわけでもなんでもない。バイトしてるだけで社会人気取りの野郎もいるが、今ハッキリとわかった。

 甘い。

 甘すぎる。

 この女を見ろ。まさにプロだ。
 

 これがプロなのだ。これが金をもらうに値する仕事なのだ。素人なんか普通じゃ絶対適いやしない。その誇りを持っている。


 これか…


 これなのかリョウさん。私に教えたかったことは。


 確かに甘かった。亜美さんの考えてることがわからないとか、そういうことでチマチマ悩んでしまっていたが、どうでもいいことじゃないかそんなことは。

 そうか。そういえば…最近研究室、大学という小さい殻に閉じこもっていた。

 つまりこれにより知らず知らずのうちに視野が狭くなり、思考も浸食されていたのだ。

 今気づいた。


 大学生活があと半年だからどうこうじゃない。 ノリの考えが正しいとかどうこうじゃない。


 大学生活ありきで考えている事自体が甘かった。


 こう考えなければならなかったのだ。

 そう













 …














 社会人になるまであと半年しかないのだ!!


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 ああ。


 リョウさん。

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 そういうことだったのか。だからこんなとこに私を連れてきたのか

 それに諭吉を3枚もくれて…。








 …





 ん?


 あれ?



 待てよ…



 そういえば諭吉3枚だけじゃなくゴムを…


リョウ「後な。そのゴムは危なくなったら使え。特注のゴムだ」


 そう言ってたような…。

 ロシア人女性が用意してくれたものをマグナム砲に装着していた私はそれを思い出し、ジャケットのポケットをまさぐる。

 あった。リョウさんがくれたゴムだ。

 開けてみると黒い色という以外は何の変哲もない代物。

 なんなんだろう。これは。

 でもわざわざくれるって事は何かあるに違いない。

 そもそもナンパする時も、女をハントしにいくときも、今までリョウさんが私にゴムをくれたことなんて一度もない。そう考えるとこの行動は不自然なのだ。
 
 私は半信半疑でそのゴムをマグナム砲に装備させた。

 …

 別に何もない。普通だ。


 実は終わってから数十分が経過していたが、ロシア人の女が私を部屋から出す雰囲気もないので、ベッドに横たわっていたのだが、その間に私のマグナム砲は修復が完了。
 
 すでに24ミリ砲弾もセットされている状態だ。


 つまり、ここはやはり時間制なのだ。


 となればこのまま寝ていてももったいない。それに寝てしまうと財布が危ない。私はもう一度チャレンジすることにした。このロシア女に。 もう勝とうとは思ってないが、何かまた感じるものがあるはずなのだ。

 そして…

 戦いが始まって間もなくして私はある異変に気づく。

 なんと私のマグナム砲が以前のようにダメージを受けない。

 いや。というより何も感じないのだ。

 これは…


 まさか。








 …































 このゴムまさか!?


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 わかった。わかったよリョウさん…。


 まったくなんて人だ。

 
 このゴム…

 
 通常のゴムの3倍以上厚い。


 そう厚いのだ。ゴムの素材が。


 最近流行りは薄いゴムだ。薄い場合、快感がそのままくるのでそれは気持ちいいし、モロに衝撃も来るだろう。しかしながら自分のマグナム砲も同時にダメージを受けるという欠点がある。

 しかしどうだ。この厚いゴム。

 ロシアの残影拳もなんのその。何も感じない。しかもこちらの攻撃の破壊力が破滅的にUPする事を忘れてはならない。薄いゴムの場合はこちらが攻撃する場合にこちらもダメージを受ける。

 まさにもろ刃の剣だ。

 しかしだ。

 このゴムならそういう事がない。はがねに覆われているようだ。このはがねの装甲はこちらの攻撃力を倍増させる。まさにバイキルトがかかっているのと同じ。攻撃力2倍なのだ。

 そう。

 私のマグナム砲は


 リョウさんのくれた神器により


 「ひのきの棒」から「はがねの剣に」進化したのだ。


 そしてその厚い装甲得た姿はまさに


 「かわの鎧」から「はがねの鎧」に進化したようなもの。


 さしものロシアの熊もバイキルトにはがねの剣、そしてはがねの鎧で覆われた私のマグナム砲により完全に沈んだ。

 当たり前である。いくらクマといえど、装甲で覆われてない部分は無防備。ルカニがかかっているようなものだ。

 勝てるわけがなかろう クックック…




 そうか。やはりそういうことか。

 何事もやはり経験。

 そしてなんという逆転の発想。

 世が薄いゴムと進んでいる時代に敢えて厚いゴム、それも特注の厚いゴムを注文しているリョウさん。タダものじゃねえぜ。

 こういうためのものなのか。

 どこで売ってるんだろう…。それを聞かねば。

 …



 耳を澄ますとリョウさんの声がした。どうやらリョウさんが出てきたようだ。…ということは私の制限時間もあと数分ということ。

 私はぐったりとしたクマを尻目に服を着こみ、リョウさんから貰ったゴムを外した。

 
 フッ  これに懲りたなら黙ってロシアに帰るんだな。
 



 まあはがねの剣は元のように「ひのきの棒」に戻ってしまったが、もう今までのような私じゃない。

 裏の世界を知り、深みを知った自分がいる。
 
 
 そうかこれが社会への第一歩か。


 そしてもう吹っ切れた。


 もはや亜美さんとつきあえようが、振られようが変わらない。今後はまた違った形で亜美さんと接しられるはずだ。別に彼女がいるわけじゃない。風俗に行こうと責められる筋合いはないからね


 クックック


 そして


 大事なのは4月。社会人になってからだ。そこまでの準備もしないといけない。

  






 …




 とりあえず… 今日はリョウさんと一緒にいよう。





 




 …





                   次話  帰れない者達


                                                素材 coco*

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January February March April May June July August September October November December
2008(Sun) 07/20

大学時代 回想13 友情と恋愛(ノリ編)(49)

財前History … Comments(49)

この記事は管理人の大学時代の回想記の第13弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
 






















ノリ「おれ…」

財前「うむ」

















ノリ「ホッケー女の事が好きなんだよね」


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財前「なに!? ホッケーだと!?」












ノリ「うん」

財前「ホッケー…」

ノリ「4年生になった夏頃から気になっててさあ」

財前「あいつ最近やたらモテテるな…」

ノリ「毎日ホッケーの事ばかり考えてるよ」

財前「みんな外見に騙されているんだ…」

ノリ「聞いてる? おまえホッケーさんと仲いいじゃんか~。ちょっと手伝ってよ」

財前「手伝うって…よりによってアイツか…」

ノリ「?? なんかまずいのか?」

財前「おまえというより俺がまずいんだよね…」

ノリ「ん?どういうことよ」

財前「俺にはチズエさんの件があってさ。ホッケーには負い目があるんだよ」

ノリ「でも実際ストーカーはしてないんでしょ」

財前「それはそうだけども…」






 ノリがホッケーを好きな事には驚いた。もちろん何とか協力してあげたい。しかし私が協力する場合ホッケーというのに問題がある。
 
 ホッケーと言えば言わずとも知れたチズエさん一味の大将格。大学1年で私がチズエさんにアプローチした際にあろうことか勝手に私をストーカーと勘違いし、大学内に広め、そしてチズエさんとの恋を無茶苦茶にした張本人である。

 もちろん大学3年生で一緒の研究室になってからいろいろ親密になり、私の性格も分かって貰えてきている。ゆえに徐々にストーカー疑惑は薄れてきているはずだ。もしかすると今は私が本当にストーカーをしていたとは思ってないかも知れない。

 だが普通の目では私を見ていないはずだ。

 いつも何かと突っかかってくるし、私を絶対に見下しているので素直に話を聞いてすら貰えない。

 そんな状態の私とホッケー。そしてその私の親友であるノリ。私とつるんでる時点でノリも同格扱いのはず。そんなノリとの交際をホッケーが受諾するだろうか?

 これは難問だ。

 それにホッケーはモテル。1~3年まではただの芋っぽい女だったが、4年生になって部活を制限しだした辺りからかなり色っぽくなった。研究室内の男も数人彼女も魅力に取り憑かれ交際を迫ったことがあるほどだ。(もちろんフラれているが…)

 チズエさん一味は色っぽくて美人が多い。こういう子達と3年も一緒にいて自然とファッション、髪型に影響を受けたのだろう。今や芋女の面影すらない。

 だが…

 人間そんな早急に変われるのは外見だけである。

 成人をすぎた年齢で性格まで変える事はほぼ不可能だ。

 つまり男を見下す勝ち気な性格と、積極的で好戦的なスタイルは一切変わってはいない。得てしてこういうタイプの女性はノリの様なおっとりとしたスロータイプの男を好きになることは少ない。人間的に自分よりも優れた男じゃないと認めないだろう。

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 そう考えてしまうから難しい。今、親友としてノリに言える最高の言葉は




 ホッケーは諦めて手の届きそうな女に鞍替えし、その女とよろしくやる






 これである。

 いや。まだ大学生活が1年以上残っているなら「当たって砕けろ」の精神でアタックしてみるのも得策だ。しかし大学生活はあと半年しかない。

 たった半年しかないのである。

 ノリとホッケーの関係はお世辞にもいいとは言えない。

 ホッケーにこれからアプローチしてデートに誘うまで行くに恐らく数ヶ月は要する。そしてそれだけ時間をかけてもしフラれた場合。

 もうノリに残された大学生活はない。

 彼は私のようなタイプとは違う。私のように一目で女性に惚れてすぐ本気一直線モードになれるようなタイプではないのだ。現にホッケーとは1年半も研究室で一緒にいながら、告白しようと思い立ったのが今だ。

 出会ってから告白しようと決意するまで…なんと500日以上もかかっているのである。

 というよりも…これが普通なのかもしれないが。

 まあ研究室が一緒でずっと同じ蓆の行動してたので、ノリの存在も性格もホッケーがよくわかっているのは幸いかもしれない。1から根回しをする必要はないけども…。

 明日告白しても違和感はないかもしれない

 しかしこんなことをノリに言うわけにもいかないし…

 …


財前「う~む… ていうかノリ。おまえホッケーの事がそんなに好きなのか?あれだったらコンパとかでさ。他の女をいくらでも紹介してやるぞ?」

ノリ「いや。本気なのよ」

財前「…」

ノリ「けど自分の立場もわかってるよ。多分駄目だよね…」

財前「奴は今天狗だぞ? おまえが告白したら4人目じゃない?研究室で告白する奴」

ノリ「そうなの?」

財前「あり得ないモテ率だ…」

ノリ「綺麗になったよね」

財前「うむ。一発ヤラせてもらいたいくらいだな」

ノリ「おいww」





財前「しかしなあホッケーみたいな旬なタイプをどうやって攻略すればいいか全然思いつかんよ…」

ノリ「攻略方法は決めてるよ」

財前「なに!? ほ…ほぅ…。どうする気だ」

ノリ「公園に呼び出して告白する」

財前「…ぇ?」

ノリ「男は当たって砕けろだよ」

財前「で?それから?」

ノリ「ん?それだけだよ」

財前「戦法ってそれだけかよ(笑)」

ノリ「俺も男だ。やるときはやる」

財前「いや。それはわかるが、攻略法を聞いてるんだよ。戦い方ってものがあるだろう」

ノリ「だから当たって砕けろでいきなり告白するのよ」

財前「いや…ちょっと待て。だからな。それは戦法じゃない」

ノリ「??」


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財前「まったくおまえは女の事を何もわかってないな。いいか?」

ノリ「@@;」

財前「おまえな。そんなドラマみたいな話はないんだよ。おまえはホッケーの事でいつも頭が一杯だからいきなり告白でOKと思ってるんだろうが、ホッケーはそうじゃないかもしれないんだぞ? おまえの事なんて全然眼中にないかもしれないんだぞ?

ノリ「うん」

財前「そんな状態でいきなり告白しても何ら光明は見いだせない」

ノリ「うん」

財前「まずはホッケーの意識をこっちに向かせないと」

ノリ「どうやって?」

財前「俺はあなたの事が好きですっていうのを暗にわからせないとな」

ノリ「言えばわかるでしょ」

財前「いいか?急に恋なんかには落ちないんだ。電車の中、家そして普段の時間でもおまえのイメージが脳に出てくるようじゃないと。まずはそこからなんだ」

ノリ「え~ なんか面倒だなぁ。ハッキリ言っちゃえばいいじゃん」

財前「ハッキリ言うとそれで終わりだぞ? その時点で終了するんだぞ?友達関係も終わるんだぞ?」

ノリ「それでいいよ。俺は白黒ハッキリさせる男」

財前「…。あのな。2択じゃないんだぞ。50%の確率で成功するなんて事じゃないのよ?これは」

ノリ「わかってるよ」

財前「まずだ。いきなり告白するののに公園というのが間違ってる」

ノリ「なんで!?」

財前「そんなんで成功するのはジャニーズ野郎だけだ」

ノリ「…」

財前「ギャップをうまく使うとどうかな」

ノリ「ギャップ?@@:」

財前「ノリは六本木や新宿の高級レストランとかそういう所いかないだろ?」

ノリ「いかないね」

財前「そこにホッケーを誘うのさ」

ノリ「ええ!? 高そうだな…」

財前「1万5千円くらいだよ」

ノリ「二人で?」

財前「一人に決まってんだろ」

ノリ「高けぇw」

財前「そこにスーツを着て行くんだ」

ノリ「それは財前がやってることじゃないの? 俺はスーツとか着ないんだけど」

財前「そのギャップがいいんじゃないか」

ノリ「!?」

財前「ノリがスーツ着て高級レストランに行くなんて想像つかないわけさ。みんな」

ノリ「うん」

財前「だからいいわけよ。ホッケーからしたらな。こう思うわけさ」

ノリ「うん」

財前「え。。。ノリ君がこんなとこにこんな格好で誘ってくるなんて… もしかして私のこと大事に思ってる…ていうか好きなの!?」

ノリ「…」

財前「え~やだぁ(*´Д`*)  ぽっ…」

ノリ「…」

財前「これにより告白せずしておまえの気持ちを伝えられるわけだ」

ノリ「ほほう」

財前「そして高級ホテルのレストランという非現実な所だけに女の思考回路も緩くなる」

ノリ「うむ」

財前「そこで一気に告白。畳みかけるわけだ。もちろん返事は後日でいいと言っておく」

ノリ「うん」

財前「次の日以降、ホッケーはおまえを意識するようになる。するとおまえのように家に帰ってもノリの事を思ってしまうわけだ」

ノリ「うむ」

財前「少なくとも公園で言うよりは成功率は上がる。」

ノリ「な…なるほどぉ。でもそんな簡単に行くかねぇ」

財前「ノリみたいな奴が普段ないことをするとな?女はグラっとくるんだよ」

ノリ「ほほぅ」

財前「自分のためだけにわざわざしてくれたって恩義にも感じる」

ノリ「そうか!」

財前「ちなみにコレは俺がやっても何ら意味がない」

ノリ「なんで?」

財前「女は ”いつもこんなとこ連れ込んでるのね財前は…やっぱり変態!” と思われて終わる」

ノリ「ぶお」

財前「つまりおまえだからこそ意味が成す戦法。自分のイメージをうまく有効活用しなければならん。わかるね?」

ノリ「わかったわかった。で?クリスマスかな?やっぱり」

財前「バカ野郎。ホッケーはモテルんだぞ。クリスマスは誰か他の男に誘われるかもしれんだろ」

ノリ「;;」

財前「ゆえに先手必勝。来週くらいで良いんじゃないか?」

ノリ「そう考えると時間がないね。 あ。でもスーツがない;;」

財前「しょうがないな… 俺のを貸すよ」







ゴソゴソ…











財前「ほら。これ」

ノリ「ちょww 紫のネクタイとかww」

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財前「普段着るとおかしいけど、新宿や六本木ならなんら違和感がないから心配するな。」

ノリ「そういうもんかねぇ」

財前「これにベージュのスラックスだな。」

ノリ「…」

財前「じゃあこれ持って帰れよ。踵で裾を踏むなよな。これ高いんだから」

ノリ「わかった」




 現実的に

 女は男が思っている以上に「非現実的」な世界に弱い。公園、学校などは現実的な場所である。ここだと普段の自分のテリトリーなので冷静な判断を下すことができる。脳内ドーパミンが噴出しにくいわけだ。

 恋とは必然でもなければ現実でもない。これは脳内麻薬から起きる現象ということが科学によって証明されている。つまり恋してるということは平常心ではないのである。「100年の恋も冷める」という古い言葉があるけども、これはあることがきっかけで脳内麻薬の分泌が止ってしまう事が原因。

 つまりノリとホッケーのようにホッケー側にノリに対する恋の脳内麻薬が一切分泌されてないパターンの場合、まずはホッケーの脳を刺激しないと何も始まらないのである。

 それゆえの非現実的な高級レストラン。農大生は普段立ち寄らない新宿、六本木。そしてあり得ないノリのスーツ姿なのである。

 これによりホッケーの脳は刺激されるはずだ。ここで間違って脳内麻薬の毛穴が開いてくれれば…

 ホッケーは自分の意志とは反して恋に落ちてしまうんじゃないかという戦法。

 まあ成功する保証はないけれど、利には敵っているはず。

 一般的にも金銭力のあるオヤジがスナックやクラブの若い女を虜にしてしまうのは恐らくこういう技を巧みに使ってるからだと思う。だから金のない若い男に夜の女はなかなか回ってこない。




ノリ「いやあ。今日来て良かったよ。 どう?まだ飲めるかい?」

財前「え?」

 時計を見るともう深夜の3時を回っている… 
 
財前「まあ…いいけど」

ノリ「じゃあちょっとこのワイン貰うよ?」

 そういってノリは私が亜美さんと飲んでいたワインを掴み、グラスに注ごうとしたが…


財前「おい!!待て!!」

ノリ「@@;」

財前「バカ野郎。それは亜美さんが飲んでたグラスじゃないか。 貸せ!! コラ」


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ノリ「え?ああ。ごめんごめん。じゃあグラス洗ってから飲むよ」

財前「バ…バカ!! やめろコラ!! 洗うな」

ノリ「へ? @@;」

財前「亜美さんが口をつけたグラスだぞ?これは」

ノリ「あ…ああ」

財前「それは洗わずに取っておく」

ノリ「変態www」

財前「いずれキスするんだから同じ事だ」




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ノリ「…」


 断っておくが、別に亜美さんが飲んだグラスを後で舐め回したとか、しゃぶったとかそういうために洗わずに取っておこうとしたのではない。そこまで変態じゃない。誓ってもいい。

 ただ、亜美さんが飲んだグラスでノリが飲むというのがちょっと許せなかったというだけ…。

 …


 結局ノリとはその日の朝まで飲んでしまった。

 いや。というより飲むしかなかった。

 …

 なぜならノリと私のお互いが予感していたからだ。わかっていたからだ。この恋は敵わぬ恋だと。それはノリ本人もこの時点でわかっていたに違いない。

 そういう雰囲気だったし、今日私の家に来たのもこういう相談をしたのも、それは協力を仰ごうとしたのではなく、ただ誰かと話したかったからだろう。ではなぜ告白を急ぐのかというとそれは楽になりたいからなのだ。
 
 ずっと片想いの状態をノリは何百日も続けてきたのだ。

 この想いを残して卒業したら一生悔いが残る。ゆえに今の時期にケジメをつけておきたかったのだろう。それに片想いの女性がいるときにクリスマスを何もせずに一人で過ごすというのは非常に辛いものがある。その子の事を思い浮かべながら胸が苦しくなるけれど、だからと言って告白する勇気もない。

 いや。告白する勇気がないわけではない。告白して…振られたとき…。今までの関係は壊れてしまう。それを壊す勇気がないのである。

 だが今の時期。ノリが言ったように卒業というゴールがある今は違う。例え恋破れても、半年後には全てが終わる。卒業して全てを白紙に戻すことができる。こう考えると今告白するのがベスト。

 答えはわかっているが、白黒ハッキリつけて残りの大学生を解放された状態で過ごす。

 ノリの狙いはそこにあるのだろう。

 ゆえに私の言ったことをホントに実践するかどうかはわからない。ノリ自身にそれをやる気があるのかどうかすらもわからない。

 なぜなら

 前述したように、ノリは「ホッケーと付き合いたい」という意志よりも、「白黒ハッキリつけたい」という意志の方が強いから。彼はそういう男なのである。

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 恋愛と友情どちらが大事か。


 言うまでもなく友情だ。

 
 以前の賢治の話がそうだった。  彼は私と同じ研究室のエコ班だ。同じ研究をし、同じ卒業論文を書く言わば同志。一心同体のはずだ。一緒にいる時間もノリと比べても多い。

 その賢治が同じエコ班である直子に告白しようとしたとき。奴は私に相談すらしなかった。エコ班は4人だ。私、賢治、直子、エリ。賢治は直子に告白した。それはいい。だが

 もし私が直子の事を好きだったら奴はどうするつもりだったのか。そうは考えなかったのか。

 一言私に言うのが筋ではないのか。

 しかもあろうことか賢治は直子との恋が破れたとき。何事もないように酔いつぶれ、直子とエリに連れられて誰も起きてない深夜に私の下宿にやってきた。直子もエリも何事もないように私の下宿に連れてきた。

 まるで私が賢治を泊めてあげるのが義務かのように。

 賢治も「何かあっても財前の下宿が近くにあるから泊めてくれるだろ」的な感じだったに違いない。これは完全に自分の事しか考えていない。

 まあこれくらいのことなら別に怒りはしないが、こういう風な事が起こっているのは、未だに賢治からあの時泊めたことにかんする謝礼もなく、直子に告白したという事実を私に隠し続けていることだ。

 普通の奴がすることならしれたことだが、信頼する友達にこんな事をされたらたまったものではない。失望も想像を絶する大きさだ。

 もちろん賢治も普段はこういう思考ではないかもしれない。

 だが恋が絡めば人間はこうなる。というよりこうなってしまう人間がいる。

 賢治は普段は良い奴だ。頭もキレル。私も嫌いじゃない。だがそれ以降私が賢治を信頼した事はない。分かり合おうと思わない。古い考えだが義理と人情を知らない奴を信用することはできない。


 その点、ノリのなんと気持ち良いことか。
 

 ノリがなぜわざわざ私の家に来たのか。

 家も決して近くないのに。

 ノリは筋を通したのだ。自分に対する筋と私に対する筋を。ホッケー以外なら彼は私に相談しなかったかもしれない。そういう奴だ。恐らく考えられる理由は3つ。

 まずひとつはホッケーと私は大学1年生以来のつきあいであり、チズエの件で私をストーカー呼ばわりした張本人。もし彼女にできたとしてもいきなり私に「つきあってるんだ」とは口が裂けても言えない。それに「実は告白しててね」なんて事も言えない。絶対に事前に言っておく必要がある。

 そう筋を通してくれた。

 もう一つは確証はないが、研究室の奴から何らかの噂を聞いたかだ。実はホッケーと私の事で研究室内で一時噂になったことがある。「ホッケーは財前の事が好き」もしくは「財前はホッケーの事が好き」。 長い知り合いなので、他の奴らとはちょっと違う雰囲気をお互いが醸し出していたのだろう。それでそんな噂が立った。

 確かにホッケーは美人になった。私もそれを認める発言をしたことも多々ある。そしてホッケーは研究室の奴らからの告白をことごとく断っている。これには何か理由があると考えるのが普通だ。
 
 二人にそういう噂が立つのも言わば必然かもしれない。

 まあ正直ホッケーはいい女だ。

 だがホッケーとよろしくやる事は絶対にできない。チズエさんを好きになった以上その一味であるホッケーとつきあうなど男として言語道断。男としての株が下がるし、何か大切なものを失うだろう。これはこちらといても筋を通さないと行けないのだ。

 ノリは勘が鋭い。そういうことを察知して私に相談したのかもしれない。

 …

 最後の一つはノリは普通に恋の相談をしたかっただけ…。

 というパターンだが、まあこれはない。


 …

 そう。

 人間的に信用できる友達か否か。実はこんな日常的な事でも垣間見ることができる。ノリは間違いなく信用できる男臭い奴だ。いざというときに必ず頼りになる。
 
 それを証拠にノリとは社会人なった未だに交友関係は続いている。

 そして未だにノリが私に一目を置いてくれてるのは、ノリが大学3年生の中盤辺りで研究室を辞めようとした時の事を恩義に感じてくれてるのだろう。あの時誰もノリを止めなかった。

 研究室の奴は誰もノリを本気で止めなかった。

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 理系の大学で研究室を辞めるというのは言わば大学を辞めるというのと同意であり、そうおいそれと承諾できるものではない。それに大学で人生が決まるわけではない。研究室で真面目にしたからといって、高い立場に着いたからといって人生にプラスになるとも限らない。
 
 とりあえず所属して卒業単位、卒業論文単位をいただく。

 将来のために。就職するために。

 それだけの存在でしかない。他のあれこれは所詮おまけのようなものなのである。
 
 それをノリに必死に説得し、今ノリは研究室に所属しているのである。あの時、無責任にノリを引き留めようとした私に対し研究室の奴らは言った。「人の人生に介入するな。おまえ責任持てるの?」。

 東京の奴だからこんな事が言えるのか?

 人の人生に責任など持てるわけがない。私が引き留めようとしたのは事実だが、それを決めるのはあくまでもノリ。だが間違っていることは間違っているとハッキリ言ってやらないと。いや。お互いに言い合えるような仲じゃないと友達である意味がない。

 何よりノリが研究室からいなくなったら寂しいじゃないか。

 実際ノリも良かったはずだ。あの時私の言う事を聞いて研究室を辞めなくて。今研究室に所属していて良かったと思っているはずだ。

 そしてノリはホッケーとの関係に終止符を打つという最後の仕事をしようとしている。

 結果がわかっていても…
  


 彼は明日にでもホッケーを誘うだろう。そして決行するはずだ。今日の作戦を。

 デートに来てくれれば…勝機はある。













 だが。10日後…。


 気づくとホッケーとノリとの距離が微妙に開いていた。

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 ノリはあの翌日に言った。ホッケーに。ちゃんと誘ったのだ。

 ノリは「結果は言わないでおくw」と言っていたが、ノリとホッケーの距離を見る限り…

 こんなの結果を聞かなくてもどうなったか明白じゃないか。

 恐らく

 「飯を食いに行こう」と言った時点で断られたんだろう。

   
 しかし…。これは後の話でも書くが、ノリはこの後、奇跡的に彼女を作ることに成功する。もちろん相手はホッケーではない。

 彼の事をキチンとわかってくれてずっと見てくれていた子が… 同じ校内にいたのだ。

 ノリがホッケーに振られたという事実とノリの悲しい哀愁を女の勘で察知し、同調し、女の方から歩み寄ったと考えられる。
 (というよりノリは次の子にすぐ告白できるような精神状態じゃなかったが…)


 まさに一寸先は闇じゃなくて災い転じて福と成す。

 まあ言いにくいのだがつまり…


 …



 別に普通に公園で告白しててもハッピーエンドという結果は一緒だったわけで。 


 むしろ私の言ったような小細工をしてホッケー女に迫った場合、バッドエンドで終わる可能性もあった。ノリのやり方の方が正しかったのかもしれない。というか男らしいよ…。こっちの方がね…。結果論だけれども。

 この点はノリに後で多いに突っ込まれた。

 どうせ彼女ができるなら、やはり小細工は労せず男して公園に誘って堂々と告白するべきだった。

 と何十回も言われた。実際してないのに…。




 しかし

 その子との初デートの時、ノリは私が貸したスーツを着て、高級レストランに行ったらしい。そして痛く相手に感激されたとか。 

 それみろ。

 その上、ノリは「彼女に寺尾聡に似てるって言われたけどそれ誰?」なんて聞いてきたが、それはおまえがどうこうじゃなくて、高級レストラン。そして非現実的なロマンチックな世界に彼女が酔っていた証拠じゃないか。だからそういう台詞が出たのだ。

 彼女の脳内ドーパミンによりノリが寺尾聡に見えたのだ。いや。この場合普通はキムタクとかそういうのを思い浮かべるはずなんだけども…


 まあいい。


 この場合、あのときホッケー女を落とす戦法を一緒に考えてないと、ノリがこういう行動をする事もなかったわけで…


 やっぱりどっちが良かったとも正しかったとも言えない。というかこの場合、私はノリの彼女にそしてノリに感謝されるべきではないのか(笑)。いや。これは後の話でも書くが、私は感謝されるべきだ。やはり。

 
 絶対。


 …


 複雑に絡み合う線。

 前向きな考動はその後やはり何らかのプラスの作用として訪れるのかもしれない。ノリのように。

 


















 これだから人生はわからない。







































  今日の1曲   寺尾聡 ルビーの指輪




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January February March April May June July August September October November December
2008(Fri) 07/18

大学時代 回想12 動き始めた思惑(67)

財前History … Comments(67)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第12弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



 この記事は管理人の大学時代の回想記の第13弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
 





















 バイクに亜美さんを乗せて厚木から世田谷まで帰った翌日から

 亜美さんの私への接し方が明らかに変わった。

 大学に行っても「散歩でもする?」「お昼一緒に食べる?」と一言言えば当然のように同行してくれた。暗黙の了解といったものがそこには確かに存在していた。

 1週間もすると周りの研究室員の友達からは

友達A「おまえ味見だけするつもりならやめろよな。あの子の研究室隣なんだぞ」

友達B「遊び?」


 こんなことを言われだしたが、こんな奴らは無視である。こいつらは何もわかっていない。

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 私は「愛の告白」をしたわけでもなく、それに近い言葉を発したわけでもない。

 ただバイクで一緒に帰った。それだけだ。しかしその後の行動はもはやカップルと呼んでもなんら不思議ではない様相を呈していたというのは事実かもしれない。

 しかしこれで気づいたことがある。そう。告白をしてないのにこの状況になったということが一つのヒントになった。 


 実はこのとき一種の悟りのようなものを感じたのだ。 

 そういえば…よくよく考えてみと、私はハッキリと女性に告白するとほぼ100%の確率でフラれている。

 告白とはつまり「僕とつきあってくれませんか?」という言葉だ。

 逆に言うと告白しなければ女性ハントの成功率は異常に高い。というかナンパだから告白しないのが当然だけども…。

 自分データ分析によるとこの結果は明らか。

 まだまだ20歳そこらの青二才の私は未来への希望があまりにも大きく、失敗しても何も痛手はない。それゆえ分析能力が皆無というかする必要がない。

 しかし大学卒業が近くに迫った時に思い返してみるとまさしくこの法則が当てはまっているのである。
 
 もちろんこれは人によって違うとは思うけれど、私の場合、まず友達になって色々相手のことを見てから「つきあう」「カップル」になる、という工程が踏めない。こんな龍著なことは我慢ができないからだ。そもそもきれいな女性は一目見れば瞬時にして惚れてしまう。

 そう。瞬時に惚れてしまうのだ。

 何かあってもすぐ嫌いになるなんて事はあり得ない自信がある。となればもう答えは決まってるじゃないか。

 まずその子とヤル(SE○する)。これしか脳内の考えはないだろう。

 かわいい→好き→ヤリたい

 これ以外に何があるんだろうと思ってしまう。

 しかしだ。今の世の中はこれが常識ではない。特に夢見る学生なんかにはその様相が顕著。

 皆プロセスを踏みたがる。というより踏まないと軽い男、軽い女と思われる。

 例を言うと、まず友達になって…いろいろ交錯して…タイミングをみて…相手の様子を窺って…ご飯に誘って…デートに誘って…

 そして告白。

 通常的に大学にいる普通の女なんかはこのプロセスを踏まないと絶対に落ちない。

 なぜなら

 一晩会っただけで、少し知り合っただけで、ベッドを共にしたり、カップルになるのは「不純」という何か罪悪感みたいなものがあるからだろう。それにいきなり体を迫るような男は遊び人の確率が高いので警戒してしまうところもあるはず。

 しかしだ!!

 私はすぐに体を求めるが遊び人なんかじゃない。

 いや…周りからは否定されるが、皆本質を見誤ってる。私がナンパやその辺の女と見境なしにヤッていたのは独身…というか彼女が居ないからやっていたこと。彼女が居た時にこんなことはしていない。つまり誰も悲しむ人はいないのだ。

 え? 「女性は一晩で捨てられたら悲しむんじゃない?」だって?

 この大バカ野郎。

 無理矢理レイプしたわけじゃない。お互い同意の上でやったことなのだ。

 そう。相手も同意しているのだ。これが重要。

 彼女のいない身でどの女とヤろうと、何人とヤロウとまったく関係がないじゃないか。そう彼女がいなければ同意の上であれば誰と関係を持とうと咎められる筋合いはないのだ。


 もちろんケジメはしっかりしているつもりだ。

 彼女がいるとした場合、私は二股する事など絶対にありえない。

 ここをほとんどの奴がわかっていない。人間の表面しか見ていない。内部で鼓動している誠実な心臓部分をわかってないのだ。

 フリーの状態と彼女がいる状態は分けて考えなければフェアじゃない。

 フリーでもフリーでなくても初志貫徹なんて趣味はない。


 しかし…

 さっきの話に戻すが、こういう考えが告白すると100%フラれるという悪しき過去を作ってしまった。どうしても会う→ヤルということしか考えられないので、友達からどのように恋人までステップアップしていくのかというマニュアルが私にはない。つきあうという行為自体がそもそもヤリたいからであり、

 お互いの心の補完など華から求めてはいないのだ。

 ここが素人の女の子に振られる要因だろう。


 しかしだからといって正直言うとどうしていいのかわからない。

 その前に体目当てみたいなことを思われて断られてしまう。実際そうだけどそうじゃない部分もあるのに…。

 当たってはいるけど、それはとりあえずヤリたいというだけで、その後はちゃんとするのに…。

 難しい難問だ。

 一体友達からどういったプロセスを踏んで恋人に昇格すれいいのだろうか。

 単純に考えてみると、「付き合う」「カップル」なんて境目はむちゃくちゃ簡単なことのはず。










男「つきあってください」

女「はい」

 …

 カップルと友達の境目は。たったこれだけのことじゃないか。たった11文字の攻防でしかない。

 お互いが好意を持ってればそれで終わりのはずなのに、それに加えて面倒なプロセスを踏まないといけないので、どうしてもその段階で失敗してしまう。

 悟ったというのはそのこと。

 そう。告白してフラれるのであれば、ハッキリと告白しなければいいのである。ボカせばいいのだ。

 告白して断られると100が0になってしまう。大概の場合友達関係を維持する事すら厳しい。

 つまり「あれ?これって付き合ってるんだよね?」 これしかない。
 
 …


 …


 前置きが長くなったけれどこんなことをちょっと当時悟った。

 基本的にナンパスタイルで周りからも軽い男とみられる私が取るべき道はハッキリと本音を言わないボカシスタイルだったのだ。

 ああ。なんでこんなことに大学4年にもなって気づくんだ。これを大学1年生で気づいていれば…

 チズエさんの時にこちょこちょ行動に迷うこともなかったろうし。アプローチの仕方も違う方式が取れたろう。いや。もしかするとつきあえてたかもしれないぞ?チズエさんと。 

 もしチズエさんと当時つきあえていたらまた違った大学生活、健全な大学生活を送ったんだろうなあ。下宿で飯を作ってくれて…そのあと

 二人でなかよく ポチャポチャおふろ
 
 あったかい ふとんで ねむるんだろな
 
 ぼくもかえろ おうちへかえろ♪                          日本昔話「にんげんていいな」

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 …
 
 という感じでまっすぐ大学から家に帰ったに違いない。

 しかしそれだとチズエさん漬けの日々だったはずでリョウさんとも会ってないだろうし、これまで出会ったナンパ女達とも会えなかったろう。

 
 そう思うとどちらがどちらだったとも言えない微妙な感じではあるが…

 ただ今考えるべきなのは亜美さんのこと。今こんなにいい状態なのにハッキリ告白してフラれるなんて洒落にならない。それに相手もハッキリ言われても困ることもあるだろう。

 カップルとハッキリわかると周りに対しても恥ずかしくなるし、行動もなにか制限というかお互いに縛りあって息苦しくなる可能性がある。

 となるとだ。

 この状態のままヤッテしまうのがベストということにならないか?

 え?ならない?

 いや。なるはずだ。このままベッドインがベストなのだ。

 というかヤラないと駄目だ。

 誰もが経験があるはず。今はまだ亜美さんと付き合ってはいないが、お互い気を許しあってる状況。 この状況だと二人でいる時間は当然多くなるんだけど

 どうしても視線が亜美さんの尻や股間、胸に集中してしまう。

 特に亜美さんの尻はヤバい。

 ふっくらとしていて肉付きが良く形が最高にいい。というかエロい。というか今すぐにでも「しゃぶり」つきたい。犬になりたい

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 いや。別にこれはエロイわけではない。男として当然の感情なのだ。胸を張って言える。女の尻を見てしゃぶりつきたい以外の感情は浮かばない。
 
 もちろんエロの誘惑はそれだけじゃない。

 足もヤバい。太すぎず細すぎないムッチリとしたふくろはぎ。

 背が高くちょっとぽっちゃり系の亜美さんに、このふくろはぎのパーツは殺人級にエロい。

 ていうかその上の太ももとかあまりにフェロモンすぎてまともに見れない。

 見たらどうしても太ももの先の陰部を想像しちゃって自分の息子がいきりたってしまう。

 胸もヤバい。

 結構膨らんでるけど「パット入れてるのかなあ」とか「実際はどんな形してるのかなあ」なんてことをどうしても想像してしまう。

 いや。違う。女性読者に対してこれだけは言っておく。これは私がエロいとかそういうことじゃない。決して鬼畜なわけでもない。

 これこそが男なのだ。

 これは男なら綺麗な女性を見た時に誰もが感じてしまうことであり、全然普通のことなのだ。これがまとも。こういう感情があるから人間は遺伝子を後世に残せてこれたのだ。

 女性を見てこういうことを何も想像しない奴はちょっとおかしいんじゃないか?とすら思ってしまう。

 そう。













 表面上のつきあいなどガラクタに過ぎん、男の美学は全てエロに結晶しているのだ

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 女性陣はここで待て

 ここから先は男しか入れない聖域なのだ


 


 



 そうだ。男たちよ。

 亜美さんの胸の膨らみがパットによるものなのか天然なのか、それすら我々の科学力ではわからないのだ

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 これでわかったはずだ。

 なぜ早い段階でSE○しておく必要があるのか。

 ヤッテないと尻や胸ばかりに意識が行ってしまって落ち着かないのだ。気になってしょうがないんだ。ミニスカートとか薄着とか着て来られたら会話に集中できない。理性が抑えられなくて逆にストレスが溜まってしまうのだ。

 でもヤルとそうではなくなる。もう「見えた」というか「見た」というか亜美さんの体に対して一種の免疫のようなものができるので、尻や胸に意識がそれほどはいかなくなる。

 そう。ここからなのだ。男が本領を発揮するのは。

 エロに焦点が行かなくなり、相手を曇りのない眼で見ることができるようになる。

 このとき初めて難しい話や様々な話題の話に瞬時に切り返すことが可能となる。

 エロに意識が行ってる内はどうしても「ホテルに行く」ための誘導質問、誘導発言が多くなりまともな会話はできないのである。

 とりあえずヤル。というかSE○して自分の印をつける。

 ただのエロイ行動と思われがちな性行為も、それ以降女性と対等に渡り合えるようになる美徳なのだ。
 
 エロにはこれほどまでに重要な意味があるのだ。

 私は早急に亜美さんのボディにタッチしなければならないのだ。


 そして

 これこそが青春じゃないか。

 私にとって青春という漢字を「女尻」と書き換えても何ら違和感はない。







 この件に関しては誰も否定をすることは不可能であろう。  

 事実アメリカの超エリートビジネスマンはある程度の地位になるとペニスを手術で性行為不能にすると聞いたことがある。これはなぜか。かの超エリートサラリーマンでも性欲を抑制することは不可能だからである。大手企業の高い地位に昇るとあの手この手で足を引っ張る連中が出てくる。その場合主に使われるのは女性工作員だ。間違って関係を持ってしまうとそれをネタに金やら地位やらを脅かされてしまう。そして仕事に集中もできない。

 それゆえペニスを矯正し性行為としての使用を不能にするのだ。仕事にそして妻に忠誠を誓うために。

 かなり理にかなった行動ではあると思う。そしてこの行動は男はどこまでいってもエロで自制が効かないという証明でもある。

 

 さて…

 そうはいっても亜美さんとヤルというのは非常に骨が折れる行動である。

 何しろ彼女は男性経験がほとんどないらしいので、たとえ一緒に寝たとしても空気を読んでもらうということは期待できないだろう。つまりいきなり最後まで通しでやるのは駄目だ。嫌いにならないためにも

 馴らしていく必要がある。ハッキリと単語は書くと少年ジャンプの表現を逸脱するので書かないが…つまり挿入はしないということだ。

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 これしかない。


 

 そして今は幸いながら11月後半。

 12月24日はクリスマスなので1か月待っていれば黙っていてもできるとは思うけど、このままだと亜美さんが刺激的すぎて身が持たない。

 やはり決行は早いうちがいいだろう。
 

 つい1週間前までは「次会うのは初詣でいいです^^」「11月12月は忙しいので会うの無理です^^」(参照記事)なんて言ってた亜美さんも今や毎日私のバイクに跨って帰る日々。

 当然帰り道で飯も食うのでもはや毎日デートしてるのも一緒。

 正直言って11月に会うとか、別の日でデートするとかはもはやどうでもいい事項となっていた。あとはタイミングを見て私の下宿に連れてくるだけの段階なのである。
 
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 もはや残されてるのは最後のピースだけなのだが…
 
 これがうまくいかない。

 天然なのか、拒んでいるのか、最後の最後で亜美さん非常にガードが固い。バイクで帰ってるときに

財前「明日授業早いの?」

亜美「明日は講義ないよ」

財前「じゃあ家寄ってく?」

亜美「いいけど見たいドラマがあるので9時には帰るよ^^」

  ぐ…9時までだとベッドインできない。 

 
財前「テレビなら俺の家にもあるから観れるよ?」

亜美「いつもお母さんと一緒に観てあげてるから^^」
 
財前「…」


 …返しようがない。

 とにかく以前から掴みどころのない子というかなんというか。ハッキリ断ってるんだけど理由がスッキリしない。男を生殺し状態にさせるのが非常にうまい子だ。

 ホントにこの子とデキルんだろうか? まったくそういう雰囲気がない子だけに怪しくなってくる。 


 フッ…  そうか。 そうやっていつまでも逃げるわけですか。


 なるほど。


 クックック…




 しからば














































 酔わせるしかない (゜3゜)

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 もはやこれしかない。

 古来より人間は酒の力によって道を切り開いてきた。ビジネス、譲歩、協議そして親交。人と人とのつきあいに酒の力は不可欠。判断力が鈍り気持がオープンになる。

 だが酒の力に頼って迫ったりすると、後で取り返しがつかないのでうまく使う必要がある。

 女性と酒を飲む場合に押さえておくべき基本事項は2つ。 

 居酒屋に行かないこととビールを1杯以上飲ませないこと。

 これだ。

 まず居酒屋だが、居酒屋はコンパ、合コンのイメージが強く、人の目もあるし騒がしい。確実にいい雰囲気にはならない。つまり一線を越えるには2件目に行く必要があるのだが、2件目に行くような子はもはや何も言わなくてもその後もスムーズに進むわけで…

 まだ落ちてない子の場合は2件目は確実に入店拒否される。戦う前に男は敗れてしまう。食べ物も頼みやすいので酒にも酔いにくい。なぜなら酒を飲まなくても食べ物があるので酒の量をを誤魔化すことが可能なのだ。つまり居酒屋に何時間いても実はあまり酔っていないという事例も多い。バーのようなところなら2時間もいれば確実に酔う。なぜならバーでは酒がメインなので食べ物で酒の量は誤魔化せないのだ。

 ビールをあまり飲ませてはいけない理由はビールが臭いから。正直言うとビールを飲むと口臭は確実に臭くなる。というよりそういうイメージがある。カクテルなどは香料でうまい具合にアルコールの臭さはカモフラージュされているが、ビールの匂いはモロ。自分自身の口臭すら感じるほどだ。

 つまりビールを飲みすぎると女性は男性と積極するのに消極的になってしまう。女性にとって自分からアルコール臭がするのは許せない。これは相手の男性を想っていれば思っているほど顕著になるに違いない。

 まあ間違えてるかもしれないけどもこれはリョウさんが実践していたことだからまず間違いはないはず。

 だから酒はあくまでもカモフラージュとしてあくまでも「ついで」「オプション」として女性に認識させなくてはならない。酒を前面に押し出してはいけないわけだ。

 では今回の私のケースの場合はどうするか。

 実はナンパのときのような攻撃は使えない。

 あれはホテルに行くことが前提だから使えるわけであり、当然ながら酔うとバイクは飲酒運転になるので帰れない。バイクを運転しなければならない私が亜美さんと居酒屋に行き、自ら酒を飲むとどうなるか。

 見え見えすぎではないか。帰らないことが。

 ゆえに自分の下宿で飲ますしかない。これなら私が飲んでも違和感はない。

 ここまでは下宿にさえ連れてこればできる。


 問題は次だ。

 次に考えるべきはどう飲ますかだ。 これが重要。

 自分だけ飲んで女は飲まないとかそんなバカな話はない。

 しかしこれが難しい。如何に下宿ゆえ私が酒を飲んでも違和感がないとは言っても、亜美さんがお酒を飲まなくてはいけないという理由はない。この場合亜美さんは別にウーロン茶でもいいわけだ。

 飲ますには何か別の力を借りる必要がある。

 よってひとつ工作する必要がでてくる。

 亜美さんが酒を飲まざるを得ない状況を作る必要があるのだ。

 しかし、この状況。あるアイテムをもってすれば簡単に作ることができる。クリスマスならシャンパン。正月なら日本酒というように、「これには普通お酒ですよね」なんて違和感無い状況をいつでも作れるアイテム。


 それは









 …





















 ケーキ

 
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 家で夕飯を食べる時にお酒が出てきても飲む義理はないが

 ケーキが机に綺麗に置かれた状態でワインが出てきたら「飲もうかな?」というKY的な雰囲気になる…はずだ。なにしろウェディングケーキ、クリスマスケーキ、バースデーケーキとケーキはいつでもパーティの主役だからね。

 …
 

 決行の日は翌日すぐにやってきた。亜美さんが逃げられない口実も準備。
 
 そしていつものようにバイクでの帰り道…。




 
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財前「ねぇ亜美さん。今日は飯を俺の家で食べない?」

亜美「ううん ガストでいいよ^^」

財前「いや…今日はガストはちょっと。特別な日なんだよね。今日は」

亜美「??」

財前「誕生日なんだ」

亜美「え?財前くんの?」

財前「いや。バイクの」 (大嘘)

亜美「^^;」

財前「毎年バイクの購入日はいつも一人で祝ってるんだけど…」

亜美「うん」

財前「亜美ちゃんは最近結構これに乗ってるし、一緒にどうかなあと思って」

亜美「確かにお世話になってるね。このバイクには」

財前「ちゃんとケーキも用意してあるからさ」  
 
亜美「!?  へぇ~。本格的だね^^;」

財前「じゃあ決まりね」

亜美「^^;」




 …


 返事がなかったのでOKということにした。

 そのままバイクで私の家に直行。


 ついに淡く…淡く、燃え上がる夜が始まろうとしていた。


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 すぐさま私は軽い炒め物で料理を準備。腹が起きると酒の量が減るので、必要最小限の量だ。

 それを二人で少し摘まんだあとに

 いよいよケーキの登場。

 そしてさりげなく度がきついワインとグラスを二つ準備。
 
 大学から家に帰り着いたのが9時半なので既に時間は10時を超えている。

 小田急線の終電は12時50分。これに乗れなければ亜美さんは帰ることが不可能だ。そして私もワインを飲むので送ることも不可能。

 となると必然的に泊まるしかないわけだ。

 私の下宿から小田急線の経堂駅までは歩いて10分。12時30分にはここを出ないと間に合わない。

 終電の時間が終わってから仕掛けるなんていうのはイメージが悪い。

 チャンスは12時。

 ここでお触りタイムに持っていけば知らぬうちに終電時間は過ぎる。

 そう。決行は12:00分。 そこしかない。 と自分に言い聞かせ…

 亜美さんのグラスにワインをゆっくりと注ぐ。あくまでも主役はケーキと偽造したバイクの誕生日。ワイン、アルコールに対する防御意識は薄れているはずだ。

 …


 と案の定

 亜美さんはワインを注がれても反応しない。当たり前といった表情だ。


 しめた。第一の関門が開いた。クックック…

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 第二関門は飲ませることだが、こんなものは乾杯とでも言えば飲まざるを得ない。 

 実際…


財前「じゃあ乾杯」

亜美「乾杯^^」


 そしてすぐにバイクの昔話を亜美さんに切り出し、考える隙を与えない。乾いたケーキを口に入れる毎に水分としてワインを口に含む亜美さん。

 もう3杯目である。亜美さんほろ酔いで非常に気持ちよさそう。

 これは… 落ちた。
 
 あとはさらに何杯か飲ませて12:00を待つだけ。ここでお触りタイムに突入ですべてが終わる。

 フフフ。

 亜美さん。いよいよ君も年貢の納め時というわけだ。

 心配ない。心配ないよ亜美さん。 後始末はキッチリとつける。

 そして12時5分前。

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 亜美さんは顔を赤らめたまに「う~ん」なんて息を吐いている。座っている体制も大分崩れてきた。

 もはや迷うまい。 もうここで決めるしかない。

 私はゆっくりと亜美さんの元に近寄り


財前「大丈夫?」

亜美「あ~ちょっと気持ちよくなっちゃった^^;」

財前「飲みすぎた?」

亜美「どうだろ」

 
 そして腕を亜美さんの肩に回す。回して接触した後はゆっくり握力を加えていく。ゆっくり。ゆっくりだ。
 
 …


 …



 亜美さんの拒否反応は














 ない。







 来た。ついに来たかここまで。

 こちらも心臓の鼓動がバクバクだ。

 割れものを触るようだぜまったく。経験人数の多いナンパ女、ひと晩限りの女とは訳が違う。今後もずっとつきあっていかなくてはならない存在であり、私はいつまでも紳士で居続けなければならない。

 マイナスイメージはご法度だ。

 次にやるべき行動は顔を近づけること。半径10㎝まで顔の接近が許されれば次の段階に進める。

 私はゆっくりと顔を亜美さんの元に…近づ…け
 

亜美「財前くん!」

財前「⊂⊃。Д。) え!?」

亜美「なんだか私…」

財前「うん」

亜美「帰るの面倒になっちゃった…」

財前「なっ!?なにぃ!?」




 バ…バカな。なんだこの大胆発言は。つまりそれは私の家に自らの意思で泊まるって事に…








亜美「でも今日は帰るね^^」































財前「ああああああぁぁぁあぁっぁぁぁぁぁ」

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 バ…バカな。こんなに酔ってるのにちゃんと終電の時間を気にしていただと!?

 どういうことだ…。こんなパターンは今までになかったぞ。

 普通終電の時間など気にしないはずなのだ。だってまだ終電までには30分以上ある。急ぐような時間じゃない。なぜ今このタイミングで言う必要があるんだ。

 いや。言えるんだ。

 普通は12時15分くらいに言うはずじゃないか。

 だからこそ12時から作戦を決行したのに…



亜美「今日はごめんねぇ。また今度ね」

財前「な…」


 
 ダメだ。この女。完全に私の行動を見透かしている…。

 そうとしか思えない。

 今ハッキリとわかった。

 なんだこの断りタイミングの孔明さは。孔明すぎてとっさに対策なんて打てるわけないじゃないか。


 今までの…そう。どちらともとれない発言、生殺しのような返答、ハッキリしない言動… 恐らく天然ではない。すべて計算済みというわけか。

 だが、私に好意がないのであれば家でケーキも食うことはなかったろうし、バイクにも跨らないだろう。

 今日… おあづけしたのも何か後に考えがあってのことだな…。

 そうか亜美さん。

 男性経験が少ないなんて嘘だね?
 
 そうか。


 今まで手のひらで転がされていたのは












 私だったのか…












 なんてバカなんだ。よもや素人の女にここまでやられてしまうとは…。この財前一生の不覚;;


 もういい…。あとの進行はもう亜美さんに任せる。もう私は前面には立たない。上下関係がハッキリしたね…。というか今ハッキリさせたんだね…亜美さん。










 …



 結局私は亜美さんを経堂駅まで歩いて送って行った。


亜美「こうしてお酒飲んで一緒にお散歩するのもいいよね^^」

財前「…」


 まったくなんて魔性の女だ。この発言も巧妙に裏付けされた計算発言なんだろ? じゃあ。一体いつヤラせてくれるのよ…亜美さん。

 

 …




 次の日は土曜日だったこともあり、私は大学に行くこと…というか研究室をサボった。知れたこと。亜美さんが大学に来ないからね。今日は。
 
 別にいいのだ。

 しかしどうも気色悪い。あの巧妙な逃げ方は明らかに素人レベルの為せる業ではない。 


 私は電話でノリを下宿に呼び出し相談することにした。

 意外とこいつは人間観察力が高いからね。

  









 …






 愛車のクラブマンに跨りノリはすぐにやってきた。







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ノリ「お~う。昨日どうだったの?」

財前「ああ。それがね… こうこうこうで…こうで」

ノリ「な~んだ。全然進んでるじゃん。何を悩む必要があるんだよ」

財前「ま…まあそうなんだけど、何か…こうひっかかってね」

ノリ「そこまで行ってるならもう時間の問題だね。おまえが急ぎすぎてるだけなんだよ。馬鹿だなぁ」

財前「…」

ノリ「そんなことよりさ。おまえがうまくいったんなら今度は俺に協力してくれない?」

財前「ん?何よ。恋の相談か?」

ノリ「そうなんだ。だってあと半年で卒業だろ? 今やっておかないと卒業しちゃうから」

財前「そうだな~。そういえば今じゃないともう後がないな」

ノリ「2月からつきあってもたった1か月しかつきあえないんだぜ?」

財前「うん。確かにそうだ。そういう季節だな」

ノリ「だから俺もちょっと告ろうと思ってさ」

財前「ほぅ。どいつだ。」

ノリ「実はさ」

財前「うん」

ノリ「おれ…」

財前「うむ」



































ノリ「ホッケー女の事が好きなんだよね」





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 今日の1曲   「日本昔話」 にんげんていいな


 


 →第13話 友情と恋愛 ノリ編



テーマ: 男と女
ジャンル: 恋愛








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January February March April May June July August September October November December
2008(Tue) 03/25

大学時代 回想11 無駄が必然に変わった日(69)

財前History … Comments(69)

この記事は管理人の大学時代の回想記の第13弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12…動き出した思惑
回想13…友情と恋愛 (ノリ編)
回想14…マグナム砲の覚醒
回想15…帰れない者達
 











 







財前「亜美ちゃん…。 よく聞いて」

亜美「はい?」

財前「11月中に一緒に遊びに行っておきたいんだ。なぜだかわかる?」

亜美「ぇ。なんでですか?」

財前「亜美ちゃんと…クリスマスを一緒に過ごしたいからだよ」

亜美「^^;」





 …






 

亜美「う~ん。でも…」

財前「…」

亜美「…」

財前「食事だけでもいいよ?」

亜美「私あまり外食しないんです ^^;」

財前「ぇ…」

亜美「 ^^;」



 これは… 終わったか _| ̄|○

 さすがにここまでそっけない返事を返されるとこちらとしても攻めようがない。 しかし何か胸にひっかかるようなものがあった。

 「彼氏作ったことがないんです」「男の人と初詣に行ってみたいです」「外食はしないので^^;」

 ちょっと矛盾してないだろうか。発言が。

 男から外食を誘われたときに「外食しないので」と断れるのはかなりのプロだ。一部の隙もない。ここまでストレートに普通は切り返さない。こんなにハッキリ言わなくても断る術はいくらでもあるはず。

 そこを敢えてこういう風にいうという事はかなりの強者なわけだが、そんな強者が

 「彼氏作ったことがないんです;;」「男の人と初詣に行ってみたいです」

 こんな無防備な発言をするだろうか?

 こちらはさっきの発言とは質が全然違う。無防備もいいところである。

 これが悩ませる。本気で断っているのか、はたまた正直に発言しているだけなのか、一体全体何を考えているのかさっぱりわからない。

 だが逃すわけにはいかない。 もう私には後がないのだ。

 もう無理だ。もういない。考えてみればわかる。もう大学3年生の後期。卒業単位はだいたい取り終わってるので4年生からは大半の学生が授業には出ない。研究論文が簡単な課題の学生は最悪、大学に来ない。

 つまり… ノーチャンスということだ。亜美さんみたいな美人に会う可能性はほぼ0。

 ナンパったってもう無理だ。リョウさんがいない今たった1人で一体何ができるというのか。さすがに限界がある。今必要なのは安心できる彼女なのである。

 もちろんアルバイトを始めればその先で…なんて事も考えられるが、そう何人もスタッフがいるアルバイト先があるとも思えず、現実的にかわいい彼女が見つかる可能性は低いだろう。

 つまり。

 亜美さんを逃すと財前はノーチャンス

 大学卒業まで彼女はいないままである。卒業は1年半も後の話だが、状況を考慮するとこういう結論が出てしまうのだ。

 大学生活でクリスマスはあと2回しか過ごせない。


 大学1年生のクリスマスはストーカー呼ばわりで終了。
 大学2年生のクリスマスはリョウさんに拉致られて終了。

 もう散々である。

 だからあと2回残ったクリスマスに私は夢を持っているのだ。


 けどだ!! ここで亜美さんを逃すと

 3年、4年共にロンリーウルフで終了してしまうわけである。

 男で集まってやけ鍋する光景が目に浮かぶようだ;;
 
 これは1人の女にフラレルなんて簡単な話ではない。あと1年半。そう。あと1年半の運命が決まってしまうのだ。振られる事だけは絶対に避けなければならない。土下座してでもデートには来て貰わなくてはならないのだ。

 こんなことが一瞬の間に走馬燈のように頭をよぎる。 


 さて…ここからどうしようかな… 亜美さんにどう切り出せば…

 …


 すると…

 そこにノリがパネルをもってやってきた。そうか…もうそんな時間か。じゃあそろそろこの踊り場で作業が始まってしまうな…。 今日はもうこの話は無理か…。




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ノリ「あれぇ? 怪しいなあ。二人っきり何やってるのかなぁ?」

亜美「^^;」

財前「…」

ノリ「まあいいけどw  あ。そうだそうだ。財前」

財前「ん…」

ノリ「ドラックスターのキー貸してよ」

財前「え?… ああ。どこ行くの?」

ノリ「ちょっと弁当買ってくる」

財前「弁当??」

ノリ「もう文化祭近いでしょ。今日は遅くなりそうだから」

財前「そうか」

ノリ「それと気晴らしも兼ねてかな~」

財前「まあ…いいけど。おまえ乗り方荒いからなあ…。あんまりギアに負担かけないでよ?」

ノリ「OK~」


 そう言ってノリにキーを渡す。

 実はあまり人に自分のバイクのキー貸すのは好きじゃないんだけど(転けられたら最悪)、ノリは自分でもクラブマンていうバイク乗ってるし、転かすことはないと思うので特別扱い。

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 やっぱりアメリカンバイクは気持ちいいからねえ。通勤やラッシュ時には図体がデカイので向かないけど、のんびり気分転換で農村を走るには最高のバイクなのである。
 
 そしてノリが去った後… 亜美さんが意外な事を質問する。

 そう。亜美さんとの仲を繋いだのは作戦やデートではなく…バイクだったのだ。


亜美「あの…」

財前「??」

亜美「財前先輩ってバイク乗ってるんですか…?」

財前「え? ああ」

亜美「どんなやつですか?」

財前「おっきいやつだよ」

亜美「そうなんですか~」

財前「うん」

亜美「…」

財前「?」






















 亜美「今度乗せて貰っていいですか?」 


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財前「ぇ…」





















 工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工


 なんだと!?

 ば…バイクに乗りたいだって!?


 え…ええええ?
 
 ちょ…

 私は始めから亜美さんはバイクなんて興味あるタイプじゃないと思いこんでいたので、まったく気にしてなかったが、そうか。バイクという最大の武器を使えば良かったのか。

 あ~ なんで私はこんな初歩的な事に気がつかなかったんだ!!

 なるほど! しかしこの子… 何考えてるんだろうなあ。バイク乗るって事は俺に抱きつくって事なんだよ? 意味わかってるんだろうか…。







財前「い…いいよ?」

亜美「わーい^^」

財前「じゃあさ。今日家までバイクで送っていこうか?」

亜美「いいんですか?」

財前「いいよ」

亜美「結構遠いですよ?」

財前「どこなの?」

亜美「成城学園前です^^;」

財前「全然ラジャー」


 なんだ成城学園前に家があったのか。OKOK。まあ…厚木からなら1時間ちょっとってとこだろ。

 むしろこういう時は遠いくらいが都合がいい。


 よし… そうと決まれば話は早い。


財前「あ。ちょっと研究室戻るね」

亜美「はい」




 こうしちゃいられない。用意をしないと。

 フフフ。

 幸い丁度ノリが私のバイクで弁当屋に行ってるからな。あんな汚いバイクに乗せるわけにはいかないだろう。

 さっそくノリの携帯に電話。

 プルルルルルルルッルルルルルッルル

 ガチャッ



ノリ「あぁ?」

財前「おぅノリ」

ノリ「ん?どうした」

財前「もう弁当買ったか?」

ノリ「まだに決まってるでしょw これからバイク乗って行くとこだよ」

財前「なんだ。まだ出てないの?」

ノリ「ヤニ吸ってたわ」

財前「ああ。ごめんなんだけどさ」

ノリ「ん?」



























財前「俺のバイクついでに洗車してきて」 








ノリ「はぁぁぁぁぁあぁ!?」

財前「弁当代おごってやるから」

ノリ「なんで俺が洗車しなきゃいけないんだよ」

財前「そこをなんとか…頼むよ;;」

ノリ「おまえさ…バイクは多少汚れてるぐらいがナウイって言ってなかった?」

財前「まあそう言うなって」

ノリ「洗車は寒いから嫌だ」

財前「頼む!! 俺の未来がかかってるんだ;;」

ノリ「ええ? どうしたんだよ…一体…」

財前「実はね。ちょっと亜美さんをそれに乗せることになっちゃってさ」

ノリ「ぇえ!? マジで?」

財前「うん」

ノリ「もしかして今日??」

財前「そうだ」

ノリ「う~む…。まあ… そういうことならしょうがないなあ…」

財前「いいか? 後部座席周辺はピカピカに頼む。亜美さんが乗った時にもし服に汚れとかついたら2度と乗ってくれないかもだから;;」

ノリ「なるほどな~。じゃあ弁当代はお前持ちね」

 
 ガチャ ツーツー

 …


 これでよし…と。

 

 その後に踊り場に戻ったら、そろそろ作業開始の時間になったらしく、他研究室の奴らも踊り場に出てきていた。 つまりもう亜美さんと深い話はできない。

 ノリが不在のため、蔬菜学研究室の作業班は私しかいないという状況だが、こっちは亜美さんをどうやってバイクに乗せてどうやってデートの話を取り付けるかの作戦練りに必死。

 パネル作業しながら考える。

 さて… どうするべきか。

 まあ二人乗りって事はだな。当然運転手にしがみつかないと吹っ飛んでしまうわけだ。てことはだな。亜美さんは私に抱きつくわけだよね。

 ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ


 だ…抱きつくとか…。

 !?

 おい待て待て…。こんなとこで思考停止は駄目だ。こっから先なんだよ。こっから先を考えなきゃいかん。え~とだな。よし。抱きつく所からだ。

 とりあえず抱きつくって事はだ。亜美さんの胸の厚みが…


  ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ


 …待て。こっからだと言うのに! こっからどうするかだろうが。まだバイクに乗っかった所までしか考えてないぞ。 だから亜美さんが私に抱きついてだな。

 ん?待てよ… 抱きつくっていってもどういう風に抱きつくのかな~

 手は?手はどこに… 待てよ… 顔とか俺の背中にくっつけちゃったりしちゃう?やっぱ


  ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ


 だ…駄目だ…。 どうしてもそっちの事に頭が言って作戦が… 練れん…。どうしても抱きつかれる所を想像しただけで思考が機能不全に陥ってしまう_| ̄|○

 やっぱさ。 デートのOKすら貰ってないのに








 これはまずいんじゃないか? 道徳的に。

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 あり得ないだろ(笑)。普通。完全にもうカップルだよこれ? 

 まあ亜美さんは多分こういう風に抱きつく状況になるって事をわかってないんだろうなあ。

 しかしだ。もし

 抱きつくのが嫌だとして他にしがみつくっていっても腰のベルトしかない。これはこれで女性は恥ずかしいはず。というより日常生活で男のズボンのベルトあたりを握るって言う事自体があり得ないからね。

 こうなると


 080201i093tu8yt589th.png




 亜美ビジョン

 

 ①「バイクに二人乗り^^」
      ↓
 ②「ああ。風圧で危ないわ。どこかにしがみつかないと^^」
      ↓
 ③どこにしがみつけば… 
      ↓
 ④でも抱きつくのは失礼だよね… どうしよう…
      ↓
 ⑤財前「腰のベルトにしがみつけばいいよ」 
      ↓
 ⑥「え。腰のベルト??」
      ↓
 ⑦ちょ…こんなとこ触るとか… ドキドキ
      ↓
 ⑧何? この胸のときめき まさか…恋、恋なのね~


 うはっwwwww  おk。





 フフフ…  女だって所詮は同じ人間。そう私と思考回路は変わらないはずなのだ。



 =====○)д`);.・;゛;ブッ

 

 …


 なんという逆転満塁ホームラン。


 あ~。早く作業終わんねえかな~。どうでもいいよ。もうパネルとか。第一、俺はハーブ栽培班なわけでパネルとか偽善でやってるだけ。どうだっていいんだよね。元々。こんなの。所詮ホッケーとか他のパネル班の奴らの怠慢。
 
 そんなこんなでノリが帰還。


 首尾を聞くと 

 ノリ 「おう。バッチリよwww」

 との返答。完璧である。

 そして時間も過ぎて…夜の7時が回る。

 踊り場作業も片付けに入り、いよいよ亜美さんとのLOVEツーリングに出発できる時がやってきた。

 後片付けして研究室に戻ると「文化祭まであと3日なので~ みんな…(ry」なんて感じでホッケー女がみんなを集めて話し合いみたいなのをしていたが、

 華麗にスルー。

 完全スルー。 

 第一私にはそんなこと聞く義理もないのだから。 

 


 そして亜美さんを迎えに亜美さんの研究室前まで趣く。 うん。やっぱりこの子はいい子だ。私を待たせないようにちゃんと帰る準備して待っててくれた。

 やはりな。これこれ。さすが亜美さん。その辺でナンパする女とはやはり格が違う。


 そして駐車場に足を進め…







財前「はい。ヘルメット」

亜美「うわぁ。大きいですね~」

財前「フフフ」

亜美「どこに座るんですか?これ」

財前「え?ここだよここ」

亜美「!?」


080402ie0it09tugerhgergh.jpg


亜美「結構狭いですね…」

財前「これでも普通のバイクに比べると大分楽だと思うよ?」

亜美「^^;」


 亜美さんは後部シートに座ったが、やはりというべきかあまりに無防備に座っている…。違うよ違う。そんな座り方じゃ走り出したら落ちちゃうよ?

財前「亜美さんそれじゃ危ないよ。どこか捕まらないと」

亜美「ですよね…^^;」

財前「とりあえず ほら。 ここに捕まるといいよ」

亜美「…」








08045yiutjeiogherioherg.jpg


財前「じゃあ落ちないようにね…」

亜美「^^;」





 …









 …












 正直言ってバイクの免許取ってこれほど良かったと思ったことはなかった。バイク車体と免許合わせて頭が痛くなるくらいの金がかかったけど、それらもすべてリョウさんやこの亜美さんへの布石だったと考えると案外安かったのかもしれない。

 バイクに乗ってしまうと、マフラーの音が結構うるさいので正直言って会話は無理だ。

 お互いがお互いに景色を見ながら


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 1時間以上走行することになる。

 それも体と体が接触したままで…。

 恋人でもない男女がこんな風になる状況というのは… バイク以外はあり得ないんじゃなかろうか?


 確かに異性の体に触るのは始めは抵抗があるかもしれない。だが…一度体験してしまえば免疫ができるし、実際的に男の体に長時間触る機会なんて彼氏以外にはあり得ないはずなのだ。

 ただ二人乗りするだけ。これだけでなぜか女性にとって違う存在になるのだろうか。

 人間といえど所詮は動物。いくら理性があろうとも…
 

 説明できない何かがバイクには存在する。
  

 

 …



 この日から私と亜美さんは毎日一緒にバイクで帰るようになった。

 この場合… もはや形式だった告白をする必要もなく、面頭向かってデートに誘う必要もない。

 行きたいところがあればそのままバイクでどこかに行けばいいだけだし、実際この状況はデートとしているのと一緒なのである。

 俗に言う… お互い「これってつきあってるのかな…」と認識しているような状況と言うべきか。


 …

 

 今考えると、バイクがなかったら私は亜美さんとはつきあえなかったと思う。やっぱね…。ギター部辞めてまで免許取ったし、バイトで稼いだ100万も払った甲斐もあったというもの。

 無駄使いではなかったのだ。ギター部も辞めて正解だったのだ。


 それがなければ今はない。

 
 …


 それと今だから言うけど、亜美さん乗せた状態で事故しなくてホント良かった…。






























                                   回想12…動き出した思惑





テーマ: 心と体にいいことはじめよう!
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January February March April May June July August September October November December
2008(Thu) 03/13

大学時代 回想10 阿鼻叫喚の魅力(71)

財前History … Comments(71)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第10弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。


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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開













 




 
 踊り場モテモテ計画の失敗を糧に生まれ変わった別の計画によって発生した新たな可能性。

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 彼女の名前は亜美。

 チズエさん以来… はじめて真面目に付き合いたいと感じた女性でもあった。

 研究室で目にしただけで、まだ話をしたこともなく、接点もない。性格を知ってるわけでもない。だけど素直に彼女にしたいと思った。もちろん軽々しい気持ちではない。確実に惚れている。他の女の子なんて今は考えられない。

 一瞬で女に惚れるなんて確かに嘘っぽい。しかし。

 これは周りにいる男友達からも言われる事だが、私にはひとつの特技があった。

 それがこれなのだ。 一目で会った女性に瞬時に惚れることができる特技(好みであれば)。これはできるというよりも「自分にそう暗示にかけることができるようになった」と言ったほうがわかりやすいかもしれない。

 これは言わば数知れないナンパ経験によって身についた術だ。ナンパする場合、軽い気持ちで行っても成功率は低い。私とリョウさんのやっていたナンパはクラブでのナンパだったので、町で行う数打ちゃ当たる方式のゲリラ式ナンパとは少し趣向が違うのだ。

 言わばコンパ形式の一発勝負である。

 狙った子に振られたらその日はもうそれで終わり。次の子を次々と狙えるわけではない。

 こういった場合、女性をその気にさせるのは非常に難しい。通常女性は非常に警戒心が高く、男に対する臨戦態勢も整ってはいない。その気にさせるには気持ちをほぐして安心させてあげるしかない。

 これはDNAに由来するものだと勉強した。

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 男の場合…性行為に及んでも意識が薄くなることもなく精神的にも普通だ。もし外敵が来てもすぐに逃げられるし対応が可能だ。これは昔で言う周りが敵だらけの時代からの刷り込み。

 男性はすぐに体を求めたがるし、臨戦態勢をとるのも早い。できるだけ早く女性と性行為に及ぼうと考える。早くしないと外敵が来てしまうからだ。つまり性行為に迅速に及べる用に精神構造が作られている。女性に比べるとすぐに好き好きアドレナリンが脳から出るようになってるのだ。

 反面

 女性はその行為に及んだ場合、非常にもろい存在となる。意識が薄れているので外敵や何か突発的な危険が迫った場合はすぐに逃げられない。何より腰がすぐに立たない。性行為中にもし外敵に襲われた場合、餌食になるのは女性なのは明白である。

 ゆえに女性は性行為に及ぶ場合…安全な場所と確認できてからでないとその気にならない。ボロいホテルや繁華街でのホテル選定がNGなのはこのためだ。

 もちろんホテルに行ってしまえば逃げ場はない。ゆえにホテルに行くことを恐く感じる。この場合安全を確認するには男性を信用するしかない。

 このように女性はそう簡単に性行為に及ぶ気持ちにならないような感じにDNAが記憶しているのである。これは♀の防衛本能がそうなっているから自然の摂理。

 男は外敵を恐れ早く性行為をするような感じの精神DNAを持っているが、逆に女性は周りに外敵がいないと確認してからでないとそういう気にならないようなメカニズムなのだ。

 うまく補完するようにできているわけだ。

 これもナンパ成功率UPのために本を読みあさったり、経験で実際に学習した。一見無駄な知識のようだが、こういう基本事項を知らねば話にならない。応用が利かないのだ。

 今は時代が平和なので、いきなり臨戦態勢女性も例外としているが、多くの場合は先ほどのセオリーが当てはまると断言できる。

 こうなると

 初対面の女性をその気にさせるには、「自分は敵ではない、安心できる存在だ」と認識させるのが先決なのである。まず基本はそれありき。ゆえにいきなり目立った行為をすると墓穴を掘ることになる。まずはゆっくりと様子を伺い、次にゆっくりゆっくりと心をほぐしていくしかない。

 失礼な事を言ったり、なれなれしいのはNG。また視界外からいきなり声をかけたり、突っ込みなどで体にタッチするのも避けなければならない。

 しかしあまりに無関心を装うと逆に向こうの興味を引けないので成功率が下がる。

 ここが難しいところだ。リョウさんみたいに黙っててもサマになる男は黙ってればいいわけだが、私はそういうタイプではない。

 この場合、これを補完するために必要なのが、瞬時に相手に惚れる事なのである。

 惚れていれば、おちらが特に強い行動に出なくても、女性は感性が鋭いのでそれになんとなく気づいてくれる。こうなると強くアプローチをして墓穴を掘ることなく、安全にステップを進めることができる。惚れられて嫌になる人間は少ないからだ。多少の安心感を与えられる。

 女性は男性よりも優れた嗅覚を持っており、男性が女性に惚れたときに分泌するホルモンを嗅ぎつけることができるとも言われている。浮気がすぐばれたりするのはこれも原因。男性には臭えないが女性には臭える匂いは確かに存在するのだ。だからこそ男がもし他の女と接触していた場合、彼女は瞬時にこれを臭いで察知できる。男には気づかない臭いの場合、これを逃れる術はない。


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 まあ簡単に言うとかなり繊細な行動が必要なのである。声をかければ誰かついてくるなんて言ってる奴はAVの見過ぎ。

 以上の事を考慮しつつナンパは1~2時間の間に口説きを成立せなければならない。


 けど大学の場合は違う。その時間は腐るほどあるのだ。

 なんたって踊り場での作業は文化祭までつづく…。つまり1ヶ月以上の期間がある。

 まあ長ければいいというものではなく、長いとダレテきたりして相手の気持ちが冷める場合もあるから難しいんだが…。

 実際にナンパの成功率は上がったものの、実際に普通の恋愛をするとなると私はチズエ以降は連敗続き。つきあったにしてもすぐフラれていた。

 正直言って恋愛をするのが非常に下手なのである…。

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 女性を一度落としてしまうと、その子に対するケアにまったく気が回らない。これはまあ釣ったサカナに餌をやらないというアレだけど、やろうと思っても中々できないんだからしょうがない。

 もちろんこれは数年経って社会人になった今も変わっていないのだが… つきあってからの女性の扱い方がうまくなっても将来役に立つとも思えないので勉強する気はない。結婚すればこんなのは無意味なのだから。

 むしろ結婚してからも必要なのは… 口説きじゃないかな? 深くは言えないけど… 両思いになってからの恋愛のかけひきなんてまったく不必要なのである。



 …




 …





 
 
 とりあえず、踊り場で知り合いになった他研修室の奴らに亜美さんを踊り場作業に連れてきて貰い、一緒に作業をするように頼んだ。

 亜美さんが踊り場で他研究室のパネル作業をはじめたところで、私とノリが踊り場にパネルを持って出向く。まあはじめは存在を知って貰えばそれでいいだろう的考えだ。

 これを数日繰り返した。

 そして次はパネル作業開始から1時間くらいしたら、ジュースを他研究室の作業者の分も買ってきて、配るようにした。当然ながら受け取らない奴など存在しない。

 これを繰り返すとどうなるかというと、今度は向こうの研究室班が気を遣って私とノリの分のジュースをついでに買ってきてくるようになるわけである。

 もちろん亜美さんがジュースを買ってくるわけがない。そういう事するのは女性の指示により男が担当するだろうから。でもそれでいいのである。

 ジュースを買ってきてくれたら、こちらから「ありがと~」と出向けばいいだけなのだから。これでごく自然に接点が持てる。

 これにより最大の課題である女性のDNAに刷り込まれてるであろう外敵への警戒心が少し解けるわけだ。

 だが…

 驚くべき事に…

 私たちが数日、向こうの研究室班にジュースを提供した後… 私とノリにジュースのお返しを持ってきたのは

















 亜美さんだった。



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 バ…バカな。

 おかしい。行動生理学上…いやDNAの構造上…女性がこんな行動を取るわけがない。

 他研究室班ではこういう状況になるはずなのだ。まず「ジュース買ってくる。なにかいる?」と男が言う。そこで女性が「あ。○○買ってきて~。あ。それとね。あっちの研究室の人からいつもジュース貰うからついでに買ってきてあげれば?」となり、それを男性がパシリするわけだ。

 こちらは初対面に近いんだぞ? 女性が買ってくるなど… あり得ない。


財前「おい…ノリ。なんでだ…なんで亜美さんが買ってくるんだ?」

ノリ「え?そりゃあこっちがいつも買ってあげてるからでしょ」


 ダメだ…こいつは何もわかってない。私は先ほどのDNA理論をノリに説明。

財前「…というわけだ。わかるか?」

ノリ「へぇ… おまえ…いつもそんな事かんがえてんの?」

財前「だからあり得ないと言ってるんだよ」

ノリ「狩猟民族のDNAとか言ってもさ… だいたい今は現代だよ?」

財前「いや。だからな? 先天的なDNAはずっと続いてるものであって…」

ノリ「深く考えすぎだよw」

財前「あのなぁ…おまえそんなんだからホッケーを落とせなかったんだよ」

ノリ「そうかなあ…」



 さらに驚くべき事に、その後毎日に近い感じで亜美さんはこちらにジュースを買ってきた。ノリは

ノリ「あの子やさしいね~」

 なんて軽い感じだが、そんなはずがない。これにはは何か裏がある。何か…

 しかもだ。何回かジュースを買い合ったりしているうちに、次は亜美さんが

 
亜美「ねぇ。良ければパネル作り手伝いましょうか~」


 なんて言ってきた。

 ば…バカな。そんなバカなバカなバカなバカな。

 なんだこれは。DNAの法則に完全に反しているじゃないか。

 だがノリはそれがうれしかったらしく、早速亜美さんと談笑を始める。もちろんノリは私が亜美さんを好きなのを知ってるし、信頼できる友達なので私のために談笑してくれてるわけだが… こいつはバカだからストレートすぎるのがネック。なんと雑談している中でこんな恐ろしいことを聞き出した。

ノリ「亜美さんて彼氏いるの?」

財前「!? ちょ… おま…」

 このカバ野郎が!! 警戒心があるときにそんな事聞いたらブチ壊しだろうが!!

 ああああああ。なんでこの野郎はこんなにバカなんだ。


 と思ったらなんと亜美さん…


















 亜美「いないよ^^;」 


 80310rtijigjeijgeroigj99yu9ugegu.jpg

 



















 




財前「ぇ!?」

ノリ「そうかあw いないようには見えないけどな~」

亜美「え~。そうですか?」

財前「…」

ノリ「でも最近までいたでしょ?」

財前「!? おま… なんてことを」

亜美「え? なんでそう思うんですか?」

ノリ「なんとなく~」


 そして…次の瞬間驚くべき言葉を私は耳にする。





























亜美「私 まだ彼氏作ったことないんです;;」 



























財前「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ノリ「うっそ~!? そうなんだ」

財前「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

亜美「うん。大学入ってもバイトばっかしてましたし」

ノリ「へぇ~」

亜美「あ。呼ばれたから行きますね~」

ノリ「はい~」

財前「…」




 








 な…  なんだと!?

 
 彼氏が今まで一人もいなかった。そう言ったよな?

 なぜだ… なぜだなぜだなぜだなぜだ… だいたい近くで見ても無茶苦茶美人じゃないか。

 こんな子に彼氏が今まで一人もいなかった?

 ば…馬鹿な。嘘じゃないのか?これは。

 私は完全にパニックになってしまった。







ノリ「なんだよ~おまえ。全然話してないじゃんか」

財前「ごめん;;」

ノリ「俺がせっかく雰囲気作ってヤッタのに」

財前「ぁぁ…」

ノリ「彼氏いないんだって~。 良かったなw」

財前「…」

ノリ「今度は話せるようにがんばれよなw」



 情けないんだけどどうしようもない。好きなこの前でそんなに積極的にはなれないよ…。

 しかしな~

 ノリは今で言う完全なKYの会話だが。亜美さんもそれに乗ってさらに「KY返し」とか相当の強者。

 だいたい今のご時世に大学生にもなって「彼氏一人もいなかった」なんてカミングアウトする奴がどこにいるというのだ。

 例えいなかったとしてもだ。「秘密ww」とか「1人かな~」とか普通言うはずなのだ。

 ホントの事をいう必要性がどこにあるというのだ。

 男が童貞の事実を自然に隠すように女性も恋愛経験がないって事実は隠すのが普通じゃないのか?

 これはやはり嘘なのか。そして巧妙な罠なのか。



 そして… 亜美さんといるうちに事実がなんとなくわかってくる。

 その事実を知ったのは亜美さんの存在を知って3週間程たった後だった。亜美さんと話しているうちにわかったが、彼女は決してお姉さんタイプではなく、まったく清純。

 本当にバイトしかしてない。そして世の中の表とか裏をあんまり知らない…。

 かと言ってお嬢様でもなく、ただ世間を知らない子って事だった。

 まあ考えてみればそうである。農大は基本的に理系。普通女性は文系が多いし、農学を学びたいと思う女性にはこういう純粋な子が多いのかもしれない。

 実際リョウさんとナンパばかりしてたので、農大の女性のことをあまり気にかけてなかったからなあ…。現実は確かにこうなのかもしれない。

 思えばそうだ。

 あの活発なホッケー女ですら「踊り場は人目があるから恥ずかしい」と言って踊り場の作業にはあまり顔を出さない。反面亜美さんは誘われるとなんの躊躇もなく踊り場にやってきて今や踊り場に居座っている。

 これは気が強いのではなく… ただ無邪気なだけなのか…。

 この子には女性特有の警戒心というものがないのだろうか?

 だが…

 ひとつ問題が生じている。 果たして… 20数年間、恋愛をしたこともなく無邪気で線純なこの子をデートに誘えるのかという問題である。
 
 残念ながら私のこれまで作り上げてきたマニュアルにこういう経験はゼロ…。

 というよりだ。たとえ二人きりのデートに誘ったとしても、それをデートとこの子は認識するのだろうか?ただの踊り場仲間って感じでしか思われないんじゃないのか?

 その不安が頭をよぎった。 はっ。 こういう場合…もしかしたらノリとかが頼りになるのでは?


財前「なあノリ」

ノリ「ん?」

財前「亜美さんはどうやってデートに誘えばいいんだろうな」

ノリ「男なら黙って告白でしょ」

財前「そ…そうか」


 
 …


 なにこの答え。普段ならボケ、カスのように罵るところだが、今回に限っては一理ある。

 確かにこの展開…。四の五の考えずにストレートにアタックしたほうが案外うまく行くかもしれない。

 

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 私は何晩も悩んだ。どうすべきかと。一体どうすりゃいいんだと。だがもう文化祭まであと1週間を切っている。文化祭が始まるって事は…パネルが完成してるって事だ。つまり踊り場での楽しい作業もあと数日で終わる。

 それってつまり亜美さんとの接点がほとんどなくなるって事なのだ。

 タイムリミットは多く見積もっても…  あと4日。

 もう後がない。

 となると… もう…  やるしかない。

 

 私は翌日に告白することに決めた。いや…「好きです。つきあってください」なんていう告白ではない。そんな事言って「ごめんなさい」って言われたら終わり。

 ここはデートに誘うということでワンクッション置く方が懸命だ。これなら断られても次がある。

 よし…。明日言ってみよう…。












 …







 そして決行当日。







 いつものように亜美さんが踊り場で作業をしている。

 幸いなことにまだ他研究室のやつらは誰もいない。お…OK。私はパネルを準備することなくすぐさま亜美さんの下に擦り寄り交渉を開始。

 







財前「やあ。亜美さん」





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亜美「あ。財前先輩~。あれ?今日はパネルしないんですか?」

財前「もちろんやるよ」

亜美「私のとこはあと3日で仕上げないと:;」

財前「そ…そうなんだ;;」

亜美「みんな遅いなあ」

財前「そうだね…」

亜美「う~ん」

財前「どうしたの?」

亜美「 って字はパネルで作りにくいです;;」

財前「はは…」




 だ…だめだ。この子… 話題がそっち方面に行かないというか… いつも雑談地獄で終わる。 

 よし。こんなんじゃラチがあかない。 ここは… 一刀両断で空気を壊すしかない。



 …






 
財前「ねえ亜美さん。文化祭終わったらさ。どこか遊びに行かない?」

亜美「ええ!? どこへですか~?」

財前「OKしてくれたら考える」

亜美「う~ん…。じゃあ…OK」


 !?


 @@: えええええええ!? ちょ… そんな簡単にOKしていいのか?



財前「ど…どこか行きたいところとかある?」

亜美「そうですねぇ~」

財前「…」

亜美「一緒に初詣に行ってみたいです^^」

財前「は…初詣!?」

亜美「はい」

財前「いや…でも今10月だよ?」

亜美「1月でいいですよ?」

財前「い…1月とか…」

亜美「^^」

財前「お…OK…。じゃあ1月に初詣に行くとして… 11月と12月は忙しいのかな?」

亜美「バイトがあるので…」

財前「…。  でも毎日あるわけじゃないよね?」

亜美「はい」

財前「11月で空いてる日ないかな」

亜美「う~ん。バイトない日ゎ 車の教習所があるので…」

財前「…」

 
 まてまて。これは振られたって事なのか? だいたい今10月なのに「初詣に行きたい」ってどんな断り方だよ(笑)。 

 明らかにKYしろという空気。

 つまり、「あんたには気がないのよ。ハッキリ言いたくないから空気読んで諦めて」って言っているのと同意なのである。


 あああ。このまま返事聞かずに去ると生殺しにされるな…。嫌ならハッキリ言ってくれればいいのに。女性の80%が男にKY求めて断る気質だからな~。

 でもなるほどな~。一見無邪気で清楚だが肝心な部分のガードが恐ろしく固い。…だから男が寄り付けなかったのか。

 こうなったら… こっちも強硬手段に出るしかない。








財前「亜美ちゃん…。 よく聞いて」

亜美「はい?」

財前「11月中に一緒に遊びに行っておきたいんだ。なぜだかわかる?」

亜美「ぇ。なんでですか?」

財前「亜美ちゃんと…クリスマスを一緒に過ごしたいからだよ」

亜美「^^;」





 …








 さあ… ここまでハッキリ言ったらわかるだろう…。


 吉と出るか凶と出るか…

















 
                     素材 coco*

テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学








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January February March April May June July August September October November December
2008(Tue) 03/11

大学時代 回想9 ホッケー女のイメチェン文化祭(34)

財前History … Comments(34)

 

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第9弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



 undefined
回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開





 







 
 研究室に入って…早半年。今や10月である。大学3年の4月から研究室で研究活動をしてきたわけだが、段々と大学の研究室の意味合いがわかってきた。

 研究は大変だぞ、究室は忙しいよ、3年生になったらそんなに遊べない。 


 先輩からそういう話は聞いていた。とにかく大学は3年生から忙しくなるよと。

 しかし実際はどうだ。

 研究? 研究室活動? なんだそれは。

 私にとってはまったく今までと同じである…。 研究など名ばかりで子供だましに等しい。

 
 大学に入学してから1年~2年生の間は「大学は遊ぶところ」という意味合いがもの凄く強かった。周りや友達を見ても勉強をしている学生も見当たらなかった。

 

 …が

 確かに研究室所属になると一部の学生だが研究活動に感化され、研究室に毎日行ったり、研究に没頭したりしてる事はある。そりゃあ授業に適当に出て、テスト前にちょろちょろっと暗記するだけの頃よりはマシかも知れない。

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 でもそれが一体何の意味を持っているのかはかなり疑問だ。研究っていうのはまだ世に出ていない事を解明、調査するためにするもの。農大研究室でもそういう新しい研究課題が学生に与えられたが、学生自身が勉強してないから今までの歴史を知らない。

 たとえば野菜の生理学の研究として

 【トマトときゅうりの栽培環境の未来】

 というものに取り組んだとしよう。1~2年生ほとんど勉強してない奴がだ。当然トマトときゅうりの歴史など知ってはいない。トマトときゅうりの論文が今まで数え切れないほど出されているが、それも全部読んでいるはずもない(第一論文ってだいたい英語だし…)
 
 そんなひよっこに一体何ができるのか、今思うと非常に疑問。

 今でこそ言うが私の会社は畜産系動物を扱っているが、世界に何百社という会社があるのに未だに病気はあるし、未だに未知の部分は多いし、未だにうまくいってない。 

 利益を追求して、生活がかかっているのでそりゃあ本気だ。なんとしても成績を出さなければならないけど、生産性が改善されているのはほんのわずかなのである。

 それで? 毎日研究室に行って、卒業するまでの2年たらずで大学生に一体何ができるの?


 すぐにこの結論に達する上、会社に入ってトマトがどうやらとかきゅうりがどうたらとかいう特殊な知識が役に立つとも思えない。

 というわけで私の場合は、研究論文は書くにしても、卒業論文に本気で取り組むことはなかった。友達や周りの奴らが「あ~研究室忙しいわ」「研究がむずいわ~」なんて言ってもどこ吹く風。
 
 だってわかっていたんだから。そんなことしても無意味って事を…。

 実際に卒業した今その答えは出ている。

 友達の中で大学の研究活動が社会に出て役に立ったという回答は0 (研究職になった子は別よ?)

 そう…0なのである。
  
 でも研究室の仲間は社会人になってもつきあっていく場合があるから、人付き合いは大切だけどもね。あくまでも仕事で役にたったかどうかの話。

 だが…不覚にも私も4月からの半年は「研究」などという高貴な言葉に騙され、「俺は研究をやっている!!凄いぜ」なんて意識で過ごしてしまった;;

 一生の不覚。 まあ半年でこの洗脳から開放されたという点ではラッキーだったかもしれない。周りは信者のように卒業まで「研究、研究」で研究ごっこしてたからね…。真面目すぎるのも問題である。

 ではなぜ私が大学からの研究室至上主義の洗脳から逃れられたのか。







 
 
 それは兄貴のおかげ。 そう… リョウさんのおかげだった。

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 リョウさんは私が大学3年生になった時点で劇的に変わった。 なぜ変わったかというと…

 就職したのだ。

 はじめリョウさんからこの話を聞いたときはびっくり仰天。信じられなかった。

 つい 「やっぱヤクザっすか?」 って言いかけたほどだ。

 言ってしまっていたらタダでは済まなかっただろうけど…。(聞いたらキチンとした仕事でした)
 
 つまりこうだ。

 身近な存在が社会人になったことで目が覚めたわけである。まあこんな事言うのもなんだけどリョウさんは学歴とか無いに等しくて、ハッキリ言って勉強に関して言えば頭は最強に悪い。   

 不等式とか三角関数なんて単語を聞いただけで瞬時に機嫌を損ねるだろう。

 そのくせプライドは人一倍高く、かなり無口だ。そして短気…。

 そんな男が社会人になったわけである。そりゃあ厳しい。

 しかし… 歳月が経つにつれてリョウさんは変わっていった。今までほとんど要件以外はあまり口走らなかったのに、世間話や仕事の話をするようになった。ナンパも数えるほどしか一緒に行かなくなった。

 なんか。端から見て充実してるというか… なんというか…。

 充実してるって事は仕事もうまくいっているという事である。話を聞いていてもそれはわかった。

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 まあ先天的に他の人にはないオーラがあるからね。勉強はできないけど、色んな事に頭はキレるし、容姿がいい。社会にでてもデキル男という事だったのだろう。

 この時思ったわけだ。リョウさんの持つオーラ、容姿、頭のキレなんてものは簡単に得られる物ではなく、生まれつき?与えられた物…。逆に勉強なんかは…研究室の研究も一緒で知識なんかは仕事で必要になった時に勉強すれば得ようと思えば得られるわけだ。
 
 兄貴のこの成長っぷりに付き人の私は非常に焦った。  

 ついていけなくなってきたのだ。無理もない。「責任ある社会人」と「にわか大学生」ではすでに立っている土俵が違ったわけである。

 この時今まで自分が生きてきた道をはじめて恐いと思った。


 親の言われるまま大学に行き、好き放題遊び、とってつけたような研究に意義を感じていた私と、

 たった1人で好き勝手生きて、遊びの表も裏も知り尽くしているリョウさん

 当然の事ながらこの2人が社会にでて真面目に仕事をしたと想定した場合。やはり人間的魅力という点で圧倒的に自分が劣るであろうことは容易に想像がつく。もう自分も大学3年生である。あと数年で社会人だ。そろそろ社会を考えなくてはならない時期に来ていた。

 でもどうすることもできない。今更後戻りはできないからね。

 ただ… なぜか目が覚めた。研究室なんかで馴れ合っていてもリョウさんには敵わない。

 

 

 あれから数年経った今ね…答えを言っちゃうとね。実際リョウさんと自分を比べてどうなのかなんて事はわからないです。目標としてましたが比べる意味がなくなってしまった。リョウさん結婚しちゃってるし、お互い普通の社会人だからね。(笑)。比べること自体が不可能なんですね。たま~にリョウさんと東京で会ったときに飲めればもうそれでいいや…みたいな感じです。今は。

 感性の鋭い大学生時代だからこそ感じられたのでしょう。

 でも実際今の自分があるのは全部リョウさんのおかげなんだろうな~と思って多大なる感謝をしてますから。別に何を教えてくれたわけでもないんですけど、こういう人にはついていくだけでいいんですよね。それだけで自分も変わっていくというかね。

 
 
 では今何をすべきなのか。

 答えは明白。要は社会人になって武器となるような事を身につければいいのだ。いや、というよりも社会人になって役にたつような経験をしておけばいいのだ。

 結論。




 遊べるだけ遊ぶ。



 これしかない。大学生の武器は勉強でも研究でも授業でもなんでもなく、暇ということ。つまり?今のうちに遊ぶだけ遊んでおくことで社会人になってから「遊びたい…」という気持ちになることを避けるわけだ。

 なんか親に言うと怒られそうな結論だけど(笑)… これはこれで将来のためなんだからしょうがない。後ろめたい気持ちなんかで遊ぶくらいなら堂々とサボって遊ぶ方が有意義に決まってる。

 タイムリミットはあと1年半。



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 よっしゃ。遊んで遊んで遊び尽くすぜ!! 





 …




 私はこの日から変わった。

 ほとんど研究室には行かなくなった。とは言っても研究材料がトマトとキュウリということで枯らすわけにはいかないので当番の水やりだけは行かなくてはならず…中途半端は否めない。

 大体相当格好悪い。研究とか無駄とわかってるけど、枯れると皆に迷惑をかけるので非情になりきれない。結局「遊ぶぜ~」なんて悪ぶって言ってても水やりだけ行くのはダサイ。

 リョウさんならどうしたろうか?

 水やりなんてまったく行かず、完全にほったらかしだったろう。

 
 …


 あ~駄目だ。そこまではできないわ。自分には…。


 それになんかね…

 やっぱり…

 リョウさんがいない状態で遊びに行ってもつまらないというか… 寂しいんだよなあ。

 夜はリョウさん…たまに飲みに来てくれるけど、そっちの方が遊びに行くより楽しい…。   
 
 
 …



 おわかりだろうか? やはり人間には格というものが存在し、影響されて背伸びしたところで届かないものは届かないのだ。私とリョウさんとでは格そのものが違うということだろう。
 

 なんというか。思春期というものはこういうつまらん事を考えて良く悩むものなんだろう。これが深みにはまると鬱なんかになるのだろうか。  

 …

 ああ。そういえば自分…ストーカーなんだった。 


 まあどうでもいいか…


 …




 
 
 そんな感じでどっちつかずの大学生活を送っていた時、ひとつの転機が訪れた。 

 それこそが文化祭。農大では文化祭は野菜や畜産の影響もあって収穫祭と呼ばれる年に1度のイベントだ。
 
 私の所属する蔬菜学研究室もこの収穫祭には出し物展示と露店を出す事になっており、9月頃からいろいろと何をするか?だの何を売るか?だのを話し合い、準備を進めるのである。
 
 まあだいたい容易に想像はついていたが…最近は話し合いとなるとホッケー女の独壇場である。皆が意見を出さないのをいいことに仕切りまくるのだ。

 なぜ仕切るかというと実際ホッケー女は研究室に入ったのを機にホッケー部活動を制限しており、昔のような体育会系の女という感じではない。髪にはパーマがかかり、化粧も濃くなっている。かなりイメージ的に良くなった。

 それにボーイッシュな短髪を前はしていたから気がつかなかったが、もともと顔の作りが良かったのだろう。今のような色気づいた髪型だと確かに美人と言わざるを得ない状況だ。



 それによって惚れる男が研究室内に続出。実際研究室の私の友達ノリはホッケーに告白して撃墜した(笑)。そして他何人かにもホッケーは告白されたんだろう。それもあってか最近はやけに自信家であり、よもや研究室内の男はみんな私が好きなんじゃないの?的高圧的態度を取る。

 確かに美人にはなったと思う。かわいければ多少のわがまなは許されることもある。


 でも肝心の性格が変わってないわけだが…。


 それに私は騙されんがな。ボディが甘いんだよおまえはボディが。そんな体じゃそそらんわ。



 そんなホッケー女が文化祭準備を仕切りだす。

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ホッケー女「私たち蔬菜学研究室はハーブを栽培して売りたいと思いま~~すヾ(*゚▽゚)ノ 」
 
幹事・カネダ「ええ!?」   

研究室男「なんでハーブとかわざわざ栽培するの? それって売れるの?」

ホッケー「いいじゃん。いい臭いするし、いま流行ってるんだよ? 絶対売れるよ~ ね~ いいでしょ~?」

研究室男「う~ん」

ホッケー「は~い。みんな?文句あるんなら代替案出してくださ~い」

研究室男「…」

カネダ「…」

ホッケー「ないの~? あのさ~…代替案ないんだったらこれで決まりだよ?」

研究室男「まあ…いいかな?」

カネダ「…」


 カネダは我が研究室の幹事。一番偉いんだからこういう所で前に出て行かないといけないんだがホッケー女が凄すぎて全然存在感がない(笑)。まあ私も副幹事だが、私は他研究室との交流とか担当だからね。別に話し合いなど参加しなくてもいいのだ。



ホッケー「では他に案はないみたいなのでハーブに決定~」

研究室一同「エェ━━━━━( ゚Å゚;)━━━━━!!?」



 …

 いつもこんな具合である。まあ私はこういうのは嫌いじゃない。確かに代替意見がない奴に発言権など本来ないのだから。早く決まってむしろいいくらいだ。

 しかしこれだけなら良かったが…

 この後のように

 私にまで被害が及ぶとなれば別だ。


ホッケー女「じゃあハーブ栽培の実務担当と、展示会要のパネル作成班に分けます~」

研究室員「!?」

ホッケー「栽培担当は卒論研究でも野菜栽培してるエコハウス班のメンバーがいいんじゃない?」


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財前「はぁぁ?」

賢治「ええ!?」

直子「!?」

エリ「!?」



*注  エコハウス班は財前、賢治、直子、エリの計4人しかいない。研究室は約20名近くいるんだが…




財前「おいホッケー」

ホッケー「何よ」

財前「おまえ最近調子乗りすぎじゃないのか?」

ホッケー「なにがよ」

財前「なんで俺たち4人だけがそんなことやらなきゃいけないんだよ。勝手にきめんな」

ホッケー「トマトとキュウリに毎日水やりしてるでしょ? ついでにハーブにも水をやって貰えればいいだけでしょ?」

賢治「…」

財前「駄目だ駄目だ」

ホッケー「なんでよ~」

財前「忙しいんだ」

ホッケー「へぇ~ またストーカーに性を出してるのぉ~?」

財前「ぐ…」





財前「いいか? トマトとキュウリで全50本以上あるんだぞ? それ水やるだけで相当疲れるんだよ?」

ホッケー「だからそのついでにやってくれればいいじゃない」

財前「ついでに…だと!? いいか。ついでというのはな… 」

ホッケー「…」


財前「ん?」

ホッケー「?」





私はある事を閃いた。



財前「( ゚д゚)ハッ!」

ホッケー「!?」

財前「フ…フフフ…そうか。 いい案がある」

ホッケー「なになに?」

財前「ハーブをエコハウスで栽培するだろ?それはOKだ。場所を提供しよう。でな?水やりは研究室みんなで持ち回りでやればいいと思うんだ」

ホッケー「うんうん」

財前「…でだ。 逆にな?ハーブに水やってくれた人がね。ついでにトマトとキュウリにも水をやっといてくれないかな~」

賢治「ちょw」

カネダ「ふざけるなww」



ホッケー「( ゚Д゚)ハァァ!? あんたたちの卒論材料でしょ?トマトは」

財前「いやいやタダでとは言わない。 その代わりと言ってはなんだけど、研究で使わないキュウリとトマトは食べてもいいからさ」

賢治「!?」

直子「!? だめだよ財前君~。大事な研究材料なのに~;;」

エリ「先生怒るよ?」



財前「研究で計測するのはサンプリングで数本だろ? 他の茎は保険みたいなものじゃないか」

エリ「…」

財前「大丈夫だって。先生に黙ってりゃわかりゃしないよ」



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ホッケー「はいはい。もういいです。財前の発言は却下~。」

財前「なんでおまえが仕切るんだよ…」


ホッケー「誰も仕切らないからよ」

財前「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」

ホッケー「別にいいじゃん。仕切っても」

財前「あのな…仕切るなら幹事のカネダが妥当だぞ?」



 …ホッケー女は私の発言を華麗にスルー。


ホッケー「はい~~ では決まり~。やっぱりハーブへの水やりはエコハウス班でいいかな?」

財前「だからなんでそうなるんだよw」

ホッケー「あんたには聞いてないのよ。賢治君は~? エリさんは?直子ちゃんもどう?」

直子「私はいいけど…」

賢治「うん。まあトマトとキュウリに水あげるついでだし…」

エリ「うん…」

ホッケー「じゃあ決まりね。」

財前「…」



 チッ…  賢治は直子さんには逆らえないからなあ。惚れた方は弱いってやつか。

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 これぞ理想と現実。水やりなんかやらなくて遊ぶぜ~なんて息巻いてても… 結局はこうなってしまうわけである。周りがそういうのを許してくれない。

 それにしてもホッケー女にただの一度も口論で勝ったことがないというのも問題だけど…。

 …
 
 そういうわけでホッケー女の暴挙により逃げようと思っていた収穫祭準備に結局どっぷり浸かってしまわざるを得ない状況になってしまった私。それも毎日だ。ハーブの水遣りやら株分けやら薬やりなどの作業は毎日に近い感じであるのだ。しかもこれは売り物。

 枯らせては駄目とかそういう次元ではなく、少々枯らせるのも売り物にならなくなるので駄目なのだ。(普通少々枯らせるくらいはその葉を剥けばなんとかなるのだが…葉が少ないと売り物としてはNG)
  
 なんでこんな花屋みたいな面倒な作業をしなきゃならないのだと思っても後の祭り。

 今更もう遅いのである。あの時やはり本気になってホッケー野郎と戦うべきだったのだ。

 しかもエコハウス班としては栽培担当というのがまたネックになった。研究室には20数名いるわけだが、農場に出るには結構時間がかかる。

 わざわざ農場に来るやつなんていない。

 でもエコハウス班は研究野菜に水をやるために農場に行く。

 となると結局「もうエコ班が全部やれば?」的な流れになってしまった。

 4名しかいないのに!! そして後の16名は展示会用のパネル作りを研究室でやるわけだ。

 でもここで不公平が生じる。何度も言うが農場にはわざわざ用もなく来るやつはいない。しかしだ。研究室で行うパネル作りはどうだろう。
 
 私がハーブの水遣りや株分けに疲れて、研究室に戻ったとしよう。するとみんな研究室でパネル作りをしている。

 ここで問題なのは、私はすでに仕事が終わっているわけだ。「ハーブを作る。維持する」という仕事は終わって研究室に帰ってくるわけだ。わかるだろうか。私の仕事はハーブ担当。パネルはしなくてもいいはずなんだ。
 

 逆に研究室でパネル作りしている奴らは「今まさに仕事している」わけだ。

 当然ハーブの仕事が終わって帰ろうと思い、荷物を取りに研究室に戻ると皆が作業しているわけであり…なんかパネル作りも手伝わざる得ない空気になっているわけだ。

 常識で考えると私はパネルなど作らなくていいので帰っていいわけだ。だって自分の仕事はもう終わってるんだから。

 エコハウス班(4名) ←ハーブの仕事を終えた   (任務終了)
 パネル班(16名)   ←パネルの仕事が終わってない (任務遂行中)

 この差は大きい。要は16人もいるし、パネル作りなんて時間問わずいつでもできるわけだからダラダラしてるだけなのだ。奴らはサボってるだけ。それなのに

財前「じゃあ帰るから~」

ホッケー「ちょっと~ みんなこんなにパネル作り頑張ってるのに自分だけ帰るの?」

財前「はぁぁぁ!? 俺はおまえらがやらないハーブ担当だろうが。パネルは担当してねえよ」

ホッケー「うっわ~ 酷い;; みんな聞いた?」

研究室員「(メ¬_¬)ジロッ」

財前「い…いや… 冗談だよ冗談w」

 
 …


 おかしい。これは明らかにおかしい。

 明らかに仕事が多いぞ~? 他の奴に比べて。 私は「ハーブ+パネル」、他の奴は「パネル」。

 不公平だろw

 まあそんな自論が空気的に通るわけもなく… 結局パネル作りも手伝うことになるわけだ…。 

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 そんなある日のこと。ハーブ栽培に加えてパネル作り手伝いも始めた私だったが、さすがにエコハウス班も含めて20名以上が研究室を使うと作業スペースも狭くなってきた。

 そのことを先生に言うと「じゃあ広場の踊り場を使わせてくれるよう事務局に言ってみる」と言ってくれて、なんと広場の踊り場を使わせてくれることになった。

 踊り場…

 こ…これは?

 おわかりだろうか?広場の踊り場というのは6つの研究室がエレベーターを使うために通る場所で、非常に通行の多い場所だ。逆に言うと、そこで作業してると農学部の他の研究室員の目に留まることになる。

 なんたる幸運。なんたる運命。

 ここで作業できるのは美味しすぎる。

 だって普段は会わない他の研究室員の目に止まるって事はだ。いいか?



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 ①踊り場で財前がパネル作成作業をする。
          ↓
 ②他の研究室員は「誰???」と興味を持つ
          ↓ 
 ③毎日踊り場で作業している私を目にしているとそのうち気になってくる
          ↓
 ④他研究室員の間で「あの踊り場でいつも作業してる人だれ?」という噂がたつ
          ↓
 ⑤誰か女が私に惚れる可能性が出てくる。 さらに ストーカー事件を知ってる人は「あれ?あの人って実はいい人なんじゃ…」と思い始める
          ↓
 ⑥もしかしたらチズエさんも通りすがるかもしれない
          ↓
 ⑦毎日せっせと誠実に文化祭準備をする財前を見てチズエは「え?財前君て実はいい人?」と思い始める
          ↓
 ⑧うは モテモテwwww おkwwww  となる



 まさに逆転満塁ホームラン。

 ここにきて運が回ってきたということだろう。研究室の奴らは「踊り場で作業するのはみんなに見られるし恥ずかしい」というムッツリ野郎が多かったので、すんなり私が踊り場担当をゲット。

 クックック…  ハ~ハッハッハッハ

 やはりその程度かね君たち。 馬鹿なやつらだ。

 小さい殻に閉じ籠もってちゃ何もできないぜ?

 その際、一応研究室内で深い仲にあった男友達ノリも踊り場担当を志願した。なんでも私がいなくなると彼はしゃべる相手がいなくなってしまうらしい…。
 
 そして早速本日より踊り場での作業開始。作業は発砲スチロールで文字の形に切ってパネルに貼
る作業が主なだけに意外と面倒だが、通り行く美人ちゃんやかわいこちゃんがそれを忘れさせてくれた。

 しかし、これを数週間続けてみたものの、モテル気配はまったくなし。

 それどころか声をかけてくるのは男ばっかりで、顔見知りばかり。

知り合いA「おまえww ストーカーだからこんなとこに追い出されてるのか?」

知り合いB「おまえww ここでもハグレ者かよww」

 なんて罵声が飛び交ったのがいけなかったのだろう…。恐らくそういう噂がまた立ってしまい、女性は接触を避けたのかもしれない…。

 ぐ… ここにきて1年の時のストーカー事件で有名になったことが仇になるとは…。

 あの事件さえなければ… 私は存在を知られることなく… 今の真実の姿だけを見て貰えたのに…。

 チズエさんもたまに踊り場を通ったが、当然完全スルー。目が合うこともなかった。

 声をかけてきた唯一の女は…

 ホッケーだった。


 こいつは何なんだ一体。「どう?進んでる~?」だの「あ。そこもっと綺麗に貼らないと~」だの糞うるさい。おまえと話したいんだったらわざわざこんな踊り場で作業せず研究室でするっつ~の。



 そんな日が数週間続いたときだった。

 ついに苦労が報われる時がやってきた。


 なんと。他研究室の収穫祭班が、踊り場で作業を始めたのだ。恐らく、私とノリがここで作業をしているのを見て、自分たちもここでやろうと思ったのだろう。他の研究室も同じように作業スペースが足りないのだ。

 他研究室ながら同じ踊り場で作業する同志はすぐに顔見知りになり、すぐに友達になった。

 こうなると…次なる目的が出てくる。 先ほどの「踊り場モテモテ計画」は見事に失敗に終わったが、今度は違う。

 つまりこうだ。


 ①そいつらに「なあなあ。おまえの研究室でかわいい子だれ?」と聞く
           ↓
 ②聞いた子を実際に見に行って品定め
           ↓
 ③かわいい場合は、そいつらに「そのかわいこちゃんを踊り場に連れてきて~」と一緒に作業させるように頼む
           ↓
 ④一緒に作業している間、もし私をストーカーと思ってる場合はそいつらに誤解を解かせる。知らない場合は談笑して仲良くなる。
          ↓
 ⑤あれ?財前君てやっぱりストーカーなんかじゃなくていい人なのね~ となる。
          ↓
 ⑤そのうちそのかわい子ちゃんだけ踊り場で作業する日もやってくる
          ↓
 ⑥精神学上証明されている「一緒に目的が同じ作業をすると異性に惚れやすい」という要素が発生
          ↓
 ⑥両思いの確率UP。二人きりのデートに誘う
          ↓
 ⑦うはww おkwww

 

 これだ。

 


 まさに盤石の計画。


 そして、その時はやってくる。聞き込みによると、どうも最近農学部研究室棟で話題になってる美女がいるらしい。早速どさくさに紛れて他研究室に紛れ込み品定め。




 …



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 …




 ちょ… 何この子 かわいすぎる(笑) 






 ほ…ほほぅ。 それにお姉さん系じゃないかぁ。 な…なるほど…。中々いいんじゃないかあ?


 これはかわいい。 すさまじく美人だ。 でかしたぞ~。
 
 ん?

 でもこんな子が同学年にいたっけ?

 と思ってたら後輩だという話だ。なるほど~。どおりで見たこと無いわけだ。

 そして最強な事に後輩なので私のストーカー事件を知らない。


 フ… フフフフフフフ

 そうか。なんでこんな事に気がつかなかったのだろう。そうだったのだ。同学年で私をストーカーと認識してる女を説得するよりも(←何度も言うがこれは勘違いであり、実際にストーカーなんかはしてない)、はじめから何も知らない後輩を狙えばそれで良かったのである(笑)。

 そうだよ。何も同年代だけ見ることはないじゃないか。若くてピチピチした後輩の方がお肌の張りもいいしな。


 あ~。なんでこんな簡単な事に気がつかなかったんだ!! 


 まさに灯台もと暗し。



 決めた。 明日あの子に接触し…  毒牙にかける。  
  

 








 



                     素材 coco*








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03

January February March April May June July August September October November December
2007(Mon) 12/03

大学時代 回想8 友情と恋愛(90)

財前History … Comments(90)

この記事は管理人の大学時代の回想記の第8弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開








 今回の回想はしんみり系。ギャグなしの重い系です。すいません…。













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 結局ホッケー女にしてやられ…踏んだり蹴ったりの私…。 駄目だあいつ…かなり手強い。

 なんかもう勝てる気がしなくなってきた。


 …


 まあそれは終わった事。とりあえずは話し合いにより来年の蔬菜学研究室の体勢は


 幹事   カネダ
 副幹事  財前


 に決まり、研究室の活動が開始されることとなる。

 だが、ここに… 私事でないけれど、涙涙の物語が誕生する。

 研究室に所属すると卒論を書くための実験をする事になるが、これは当然1人ではできない。基本的に2人一組、もしくは4人一組のコンビで卒業論文を書く。
 
 つまり2人で同じ実験をし、協力しあって一つの卒業論文(卒論)を書くのである。

 私のパートナーとなったのは賢治という男。結構オシャレな好青年である。今後2人で協力して卒業論文を書いていくことになるはずだったのだが、私たちの卒業論文実験は教授が今から力を入れていくプロジェクトと関連しており、結構大事な実験という理由で急遽4人体勢となった。

 もしかしたら教授は私と賢治では力不足と感じたのかもしれない。

 そして2名の増員には女性が2名選ばれることとなった。

 2名の女性の名は直子さんとエリさん。両方…結構かわいらしい。

 私たちは4名で、きゅうりとトマトを栽培した。しかしこれは卒業論文実験であり、教授が力を入れる実験なので、ただ栽培するだけじゃない。

 なんと暖房光熱費0での栽培なのである。まったくの自然状態での栽培。しかも冬だ。

 野菜をハウス栽培する場合、暖房がないと冬は越せない。寒さの影響で収穫量が落ちるし、糖分や成長率にも影響する。

 適正な温度を維持してないときゅうり、トマトは栽培できない。


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 もちろん適正温度を維持するには必ず暖房装置が必要なわけだが、暖めるのには暖房費がかかり、バカにならない金額がかかる。…が当然なくせれば利益率はあがる…。

 ということで栽培をエコ(無暖房)でできないか?というのが実験の趣旨。つまり環境問題を考えて無暖房でやってしまおうというわけだ。 しかし冬はハウス内が3℃以下に落ち込むこともあるので無暖房ではとてもトマト、キュウリの適正温度である15℃~20℃は維持できない。

 ではどうするかというと…

 暖房の代わりに水を使うのである。水の余熱を利用するのだ。

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 仕組みはこうだ。ペットボトルに水を満杯に入れて、それを500個用意する。そしてそのペットボトルを断熱材に囲まれた場所に保管しておく。昼間の太陽でペットボトルの温度は上がるので熱を持つ。そして当然夜になると太陽はなくなるのでペットボトルも冷たくなる。

 これは熱をどこかに放出しているからだ。この熱はただ大気に逃げていってる。

 ゆえにこのペットボトルの水から放出される熱をうまく取り込み、その熱をハウス暖房として利用しようというわけだ。

 ちなみにこれは循環型ビニールハウス栽培プロジェクトの初期プロジェクト。

 5ヶ年計画なので、私たちはその1年目を担当することになる。

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 1年目の目標はペットボトルの水の熱放射を有効に活用できるような構造のハウスを造る事。ペットボトルの熱を貯めておく場所は工夫しなければならない。

 当然外気に触れる壁や天井の熱伝導率をどれだけ減らせるか、どれだえ隙間をなくせるか?というのも課題だ。そしてペットボトルの余熱でどれくらいのカロリーが賄えるのかも調査する。

 とにかく1年目はこの水が焦点となる。これを私たちが調べたら、次は後輩に引き継ぐ。恐らく2年目はハウス自体の構造をさらに探求することになる。断熱材やバイオマスといった素材を使用し、如何に熱を逃さないハウスを作り上げるかが課題になる。

 最終的にどうなるかというと、光熱費の節約という所に収まる。

 水の余熱だけで無暖房栽培など不可能なのははじめからわかっている。要は水の余熱を最大限に使うハウスを造る探求し、採取的には数十万円単位の暖房費を節約できればそれで成功だ。

 つまり「暖房は使いますが、このエコハウスを使えば暖房費はこれだけ安くできます」で教授論文は完成。これが5年後に発表できれば教授としてはそれでOK。

 私たちの代ではプロジェクトは終わらない気の長い実験。

 でも今考えるとこれ… 太陽発電で暖房すりゃ終わりだったような気もするなぁ(笑)。初期投資はかかるけど。まあその辺は所詮は農大と言ったところか。

 そして今現在農業会の話題になってないところを見ると… 結局最終的にあの実験は失敗したんだろう(笑)。だが当時は希望ある未来へのECO実験だった。

 
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 もう一度メンバーを説明。このエコハウス論文のメンバーは

 ①オシャレな色男        賢治くん
 ②キュートでかわいい     直子さん
 ③まぁまぁ美人         エリさん
 ④誰もが知ってるストーカー  財前くん
 
 でやることになっている。男2 女2だ。

 
 ちなみに栽培というと何が一番重要なのかわかりますでしょうか。

 無論言うまでもなく水やりです。これができてないと枯れます。これで枯らせるのは問題外です。事故でもなんでもなくサボリと見なされますから。水をやり忘れてトマトきゅうりを枯らせた場合、卒業論文の単位は貰えないでしょう…。

 次に重要なのは栽培温度15~20℃を維持することですが、これはエコハウスという特性上…暖房を使えないので維持は無理です。故にペットボトルの余熱だけでは寒すぎて枯れてしまった…という場合は致し方ない。そういう実験なんだから。卒業論文の単位は貰えるはず。つまり温度管理はしなくてもいい。

 こうなると誰が水をやるのか。当番制になります。

 例えば月曜日は賢治くんが水やり。火曜日は直子さん。水曜日はエリさん。木金土日は財前くんといった形ですね。
 
 あれ?なんかおかしいような…。まあいいでしょう。


 さてこういうグループだと当然ある出来事が発生します。
  

 私は前にも書きましたよね? いいですか? 覚えてますか?


 もう一度言いましょう。

 人間は同じグループ(組織)で目標が同じだとした場合。

 仲間意識、目標の共有という事項が脳を刺激し、ドーパミンが出るのです。そしてそれは恋へと発展するわけです。ええ。そうです。

 町中やコンパで会っても「お互い興味がない」で終わってる二人だとしても

 同じグループ内で目標を共有している場合は、「好き(*´Д`*)」という感情が非常に芽生えやすいのです。

 この事実は人間の生理学上、そして心理学上で証明されています。


 私の周りの友も大概がこのからくりで恋に落ち、やがてお互いの目標が違ったものになった瞬間に二人の心がズレ始め破局を迎える例が多い。

 環境が引き金となって交際したカップルは同時に環境の変化に脆いのです。


 もうおわかりですね? そう。エコハウス班の仲間は恋に落ちるわけです。

 私? いえいえ私は関係ないです。

 グループ内で恋愛などヘドが出ると前にも言ったでしょう。私はそういうの嫌いなんです。



 さて… そういうわけで…話を戻します。








 …時が進むにつれ

 研究室内では我がエコハウス班のキュートでかわいい直子さんがジリジリと魅力を増しきた。これはエコハウス班での話ではなく、研究室全体での話だ。彼女は天然ボケの上、声がアニメ声、顔がかわいいと三拍子揃った女性だが決して高嶺の花ではない。

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 手頃な感じで誰でも手が届きそうないい女。こうなると人気が出ないわけがない。

 非常に男ウケが良かったのだ。

 今思うと何か初音ミクを彷彿とさせる声だった。そして知り合えば知り合う程どんどん魅力が上がってくるタイプの女性に分類される。

 そして… 案の定…同じ研究室であり、しかも同じ目標を持つエコハウス班の賢治が直子さんに惚れる流れとなっていく。4人1組のエコハウス班にもかかわらず、賢治と直子さんは二人で独特の空気に包まれていた。

 多分両思いだったと思う。

 もちろん賢治自身は「直子さんが好き」とは言い出さない。私は彼に協力しようと思い、何度も酒の場や農作業中に聞いたが彼は感心のないフリをした。

 う~ん。言ってくれれば協力してやるのに。賢治は意外とプライドが高いんだろうか?

 しょうがないので直子さんの好きそうな事や、今何に興味持ってるかなどをさりげなく会話に交えてやることにした。 

 「直子さんはね~今こういう事やってるらしいよ~」「直子さんはね~」

 気付け賢治。おまえら両思いだって。今こそアタックのチャンスだぞ。時を逃すと… 私と同じ運命に…

 チズエさんの件もあったので人ごととも思えない。 


 うまく影で彼をサポートしてたつもりだった。しかし賢治はそうは取らなかったらしい。彼は私を自分の恋のライバルになるとでも恐れたのか、決して弱音を晒さない。

 それはある日の会話の事


賢治「なぁ財前」

財前「ん?」

賢治「おまえ直子さんの事どう思う?」



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財前「え? あ…ああ。  かわいいと思うよ」

賢治「そうか」

財前「??。 おまえはどう思う?」

賢治「俺もかわいいとは思うよ」

財前「おまえは直子さんと友達以上の関係になりたいと思うか?」

賢治「別に。 おまえはどうなんだよ」

財前「俺は別に」

賢治「そうか。まあ別にそんな言葉…真に受けないけど」

財前「おまえ何か勘違いしてないか?」

賢治「もういいよ」



 おわかりだろうか。これは賢治が私に探りを入れた事を意味する。彼は私が直子さんを狙ってると勘違いしていたに違いない

 だが私も「そんなことはない」と主張するのもどうかと思うので、敢えて言わなかった。

 そして…そのまま時は流れて行った…


 …


 エコハウス班として賢治、直子さん、エリさんと一緒に作業をするようになって数ヶ月が経った。賢治と直子さんは相変わらず友達として良好な仲を維持しており、賢治が告白すれば直子さんは即OKするんじゃないか?と思わせるほど一緒にいる時間がながくなっており、既に相思相愛は疑いようがない。


 植物への水やりも農作業も私は賢治と直子さんとはある程度距離を置き、彼らを見守った。彼らがつきあえば気兼ねなく話ができそうだからね。

 今あんまり直子さんに私が話しかけると賢治が気にする。
 
 
 賢治は恐らく機会を伺っているだけだろう。後はタイミングだけだろうから。告白するのはもう時間の問題だ。


 後はきっかけだけ。




 …



 と研究室内の仲間も思っていたはずだ。





 だが…



 だが…





 世の中残酷だ。






 なんと




 直子さんは…



 時を同じくして…



 研究室内のある男と交際を始めた。
 


















 つまり直子さんに彼氏ができたのだ。



 それも…




 突然である。



 それも…あろうことか



 私と賢治と同じ研究室内の仲間にさらわれた。


 
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 まさに敵は内にありの典型。賢治は監視され、虎視眈々と隙を伺われていたんだろう。それを突かれた形。まさに奇襲。



 直子さんは賢治がトロトロしてる隙に…強引に交際を求められ、OKしたんだろう。直子さんも賢治の本心は知らなかっただろうから、賢治とつきあえる確証がなかった。

 ゆえに身近で確実な男を選んだ。アプローチしてきたんだ。OKとさえいえば彼氏誕生。

 
 


 …



 彼女は意外と押しに弱かったのだ。



 まさに電光石火。



 別に無理矢理というわけではなく直子さんにも考えがあっての事だったのかもしれない。もしかすると、かなり親密になってるにも関わらず動き出さなかった賢治を見て「結局友達以上には見られてないのね」と見切りをつけたのかもしれない。
 

 だが… 噂はすぐに広まった。


 直子さんに彼氏できる!!



 この事実が 賢治の耳に入って以降


 賢治の顔から笑顔が消えた。


 実習中も無気力。何をやるにもマイナス思考で「意味ねぇ」「おもしろくねぇ」「うぜぇ」「ムカツク」などの感情表現が多くなっていた。 

 「てめえがトロトロしてるからだろ」と言ってやりたくもなったが、賢治は誰にも直子さんへの思いは打ち明けておらず、「自分が直子さんの事を好きだったという事実は誰も知らない」と思っているので(いや…もう周りから見てたらわかってるんだけど) 私も言うに言えない。

 せいぜい「最近元気ないな。どうした?」と聞ける程度だ。



 この場合…


 なぜ賢治に元気がないのかをハッキリと認識できるのは直子さんのみ。そりゃそうである。自分が男とつきあいだした瞬間に賢治があの調子だ。

 どんなに感度の鈍い女でもわかる。

 皮肉な事に直子さんは他の男とつきあうことで初めて「賢治は実は自分を愛していた」事に気づいたわけだ。だがもう後戻りはできない。


 なぜならつきあってる男は研究室内の仲間。

 この男と別れて賢治とつきあうなど同研究室内でできるわけがないのである。こんなことをすると「酷い女」になってしまう。

 賢治もバカな奴だ。私に相談してさえすれば直子さんとは確実につきあえていたというのに。 人に頼らず自分の力だけでなんとかしようというのが間違いだった。

 物事は全て結果だ。人に頼ろうともどんな手段を使おうとも


 結果を出した奴が勝ち。


 賢治はなまじ格好いい容姿を持っていただけに自分の力を過信した。


 今回の出来事はまさにそれを証明する形となった。


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 賢治はエコハウス班の仲間として直子さんと親密になり、つきあう確信が持てるまで告白を待った。賢治と直子さんの仲に入れないと判断した同研究室の男は確信を持たず、当たって砕けろで直子さんに好き好きアタック。直子さんは賢治といい関係になることで恋に積極的になっており…

 不確実な果実ではなく目の前の餌に食いついた。

 まさに心理マジック。


 いつの間にか断崖絶壁に追い詰められていたのは賢治の方だったわけだ。


 …

  
 賢治が研究室に来る生き甲斐は直子さんだった。直子さんが全てだったはずだ。彼女がいたから彼は楽しくエコハウス班としての活動ができ、未来への希望に満ちていたのだ。

 となると頼れるのは同じエコハウス班で頑張ってきた私だけのはずだが、彼は決して私に本意を打ち明けようとはしなかった。

 もしかすると妙なライバル心があったのかもしれない。背丈も180程度で同等。容姿も似ていて、性格も多少は似てる部分がある。着てる服もモード系で多少は似てたから…

 相談するのが嫌だったのだろう。

 「仲は良いけど財前に頼るのは絶対に嫌」という感じだったに違いない。実際そう感じられる彼の行動は何度も目にした。

 何を無駄な意識をしているのやら…。

 まったく、どこまでもプライド高き男である。恋愛だけに集中し周りが見えていない。男は…こうなっては駄目だというのに…。


 
 
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 そして…時が経つにつれ、直子さんと研究室内の男は交際を堂々と行うようになり、研究室でイチャツク場面も増えてきた。これが慣れた光景になってくると、もうみんな「ひゅーひゅー熱いねえ」などと突っ込む事も減り、スルーされる。

 賢治は気にしていたろうが…。
 

 だがすでに直子さんと研究室の男が愛し合ってるのは誰もが知ってる周知の事実となり…賢治は出る幕がなくなっていた。今更賢治も…

 
 いつしか私も賢治と直子さんとの関係を意識しなくなり、昔の普通の友達…に戻ったかのように思っていた。少なくとも直子さんはそうだったんじゃなかろうか?


 …


 そんなある日の事。 とんでもない事態が起こる。


 研究室で有志で飲み会のイベントが催された。

 だが私は行かなかった。

 その日はリョウさんと夜のクラブに行く約束をしていたからだ。

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 リョウさんは未だに私にとって絶対的な兄貴分であり、リョウさんの約束を研究室の飲み会なんて名目ではキャンセルできない。


 まあ結局…性欲を満たしたかったというのもあるけど…。研究室では既に仲間もできており、何度も仲間と飲んだりして交友を深めているので、天秤にかけるとやはりナンパして女の胸で寝る方を選ぶ。


 だが不幸な事にその日のクラブにはめぼしい女がおらず、リョウさんは早々に見切りをつけて1人帰ってしまった。私は一応粘ってみたものの、結局折り合いが合わずにナンパ失敗。

 1人で家に帰宅することとなった。 深夜の12時を回った頃だったと思う。


 今日はついてねぇ… 
 

 と思いながら下宿に帰ったが、下半身の寂しさと極度の精神興奮状態のため寝れない。冷蔵庫にあった缶ビールを数本空けた。それでも足りなかったので日本酒を引っ張りだしてヤケ酒をしていた…


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 っとその時だった。





 







 ピンポーン ピンポーン ピン…



 私の家のベルが鳴った。



 …



 来客者である。




 誰だ?こんな遅くに



 ん?もしかして。さっきナンパしようとした女が気が変わって私をつけてきたんだろうか?そうだとしたらラッキーだ(笑)


 もちろん世の中そんなに甘くない。




 ドアを開けてみると…




 目の前に…立っていたのは確かに女だがナンパした女ではなかった。 そこには目を疑う人間が立っていた。







 賢治である。


 

 しかも賢治だけじゃない。私の下宿の前に立っていたのは3人。




 そう…





 エコハウス班の3人だ。






 賢治、直子、エリの3人だ。


 何事だ!?と思い様子を見てみると? どうも雰囲気が怪しい。


 賢治は直子さんの肩にもたれ掛かって今にも落ちそう…。しかも酔っぱらって泣いている。直子さんも今にも泣きそうな顔。そしてエリさんは申し訳なさそうな顔。


 賢治が泣いてるって…










 一体何があったんだ!?

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 なんなんだこの状況は。なぜ直子さんの肩に賢治がもたれ掛かっているんだ!! それになんでみんな泣いてるんだ!? というかエリさんまで…

 どうなってる…  


 理由を聞こうとした瞬間、直子さんが申し訳なさそうに話し出した。



直子「ごめん財前君…。賢治をここに泊めてあげてくれない?」

財前「え?どうしたの?」

直子「理由は言えないの。いいでしょ?」

財前「理由が言えない?なぜ。。。」

直子「…」

財前「同じエコハウス班なのに」

直子「それはそうだけど」

エリ「財前君。直子に事情は聞かないであげて。お願い」

財前「うん?エリさん… どういうことなんだい?」

エリ「何も聞かずに泊めてあげて;;」

財前「はぁ!? 意味がわからんよ」


 
 私はナンパ失敗で気が立っていたこともあり素直に「うん」とは言えなかった。この状況を目の当たりにさせて「何も聞くな」とは虫が良すぎるだろう。そりゃ良い気分はしないって。

 なぜ。なぜ賢治がアンタの肩に寄り添ってるんだよ。

 二股か? 貴様。

 てめえ今まで散々私の事をナンパ晒し野郎とか言っておいてそれはないぞ。

 
 まあ今日は一人だから泊められるけど…こんなんじゃ泊めたくない。


 そういう私の気持ちを察知してか直子さんが再度話し出す。

直子「とにかくお願い」

財前「いや…だから。なんで賢治がそんなになってるの?」

直子「酔いつぶれちゃって」

財前「なぜ。賢治はそんなに酒飲まないはず」

直子「…」



直子「まあ…もし賢治君が話せば話だけでも聞いて貰っていいけど」

財前「そんな酔っぱらい状態の賢治が話を?」

直子「…」

エリ「友達なのに泊められないの?」

財前「泊めるのはいいけど、その背景によっては駄目だ。ここに泊まるのは賢治の本意じゃないかもしれんし」

直子「なんで?」

財前「さあ」





 わかるだろうか? この時の私の気持ちが。

 別に賢治を泊めるのは全然構わない。まったく問題ない。第一私の家は溜り場なので友達が毎日のように泊まりに来る。だが今日の場合は状況が違う。

 まず賢治だ。確かに友達だ。だが彼は私の下宿に一度も泊まりに来たことがない。以前に私は彼を直子さんの件で何度も酒に誘った。家で飲み明かそうと。相談に乗ると。

 だが彼は全て拒否してきた。「直子さんの件で話し合う事なんてないぞ?」ととぼけていたのだ。

 泊まりに来るのであればそれは彼自身の意志であって欲しかった。

 この場合、賢治は酔いつぶれているので彼の真意がわからない。今まで何度誘っても来なかったんだ。私の家で泊まりたくないと賢治は思っている可能性もある。

 それを女に言わすなど言語道断。

 それにだ。ドアの前に立っている直子、エリ、賢治はエコハウス班の仲間だ。この仲間は私を含め4人しかいない。


 エコハウス班は4人で一緒にやってきたはずだろう? 今私の下宿の前にいるのはその4人だ。

 
 他には誰もいない。


 それなのに「理由は言えない」「何も聞くな」とは何だ。誰も他に盗み聞きするやつなどいないじゃないか。

 言っておくがこれは「賢治は直子さんを好きだったんでしょ?」などというヤボな事を聞きたいのではない。そんなことは周知の事実だ。今更どうでもいい。

 あきらめ切れなくて賢二が今頃アプローチしたのか?それとも二股状態だったのか?
 
 このレベルの…何か私には知りようのないことが裏で発生していた匂いがプンプンする。こいつら…何か隠してるな?
 

 まあ…何も言ってくれないというのは私のキャラ、つまり何でもネタにしてべらべらしゃべる癖を警戒したとも考えられるが…それでもこれは酷い。確かに私は研究室の副幹事として色々とふざけた事をしてきたが、それは全て研究室内を盛り上げるためであり、もちろん多少の演技も入ってる。 
 
 まさか私が本当に根っからのお調子者だと勘違いしたのか?このアマ2人は。

 そうだとしたら信じられないほど人を見る目がない。おまえらは盛り上げ役をやったことがあるのか。周りを盛り上げるためにどれだけ自分を犠牲にすると思っている。代りにやってみればいい。苦労がわかるから。真面目な事言うよりも難しいんだよ。こっちのほうが。頭使うんだ。気も使う。

 言っていいことと悪いことくらいはわきまえるさ。


 それとも私の下宿が男の溜り場で、そして鍵をよく友達に預けたりしてる事を知ってるから「財前とこならすぐ泊まれる」とでも思ったのか?

 残念ながら… それは大まかな部分での正解ではあるが、表面上の結果を見ているに過ぎない。大切な事を忘れている。私の家が周りにはただの溜り場下宿と見えるのはわかるが、それは仲間だからこそ許されているのだ。酒を飲み、皆で楽しみたいと思えば、誰かが場所を提供するしかない。

 だから提供しているのだ。自分の家を。 皆で楽しむためだ。

 おまえらはそうじゃないだろう。仲間意識がないのであれば自分らだけでなんとかするべきだ。幼稚な恋愛ごっこの尻ぬぐいなどまっぴらごめんである。


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 まぁ…。 だいたい察しはついてる。事情はこうだろう。


 今日は研究室で飲み会があった。賢治と直子とエリも出席した。1次会は数十人でワイワイと進み、終了した。その後賢治は直子が諦めきれず、2次会に直子を誘った。2人じゃ気まずいのでエコハウス班の仲間のエリも誘った。これで対外的にはエコハウス班での2次会と写る。

 そして賢治が直子さんが彼氏ができても諦めきれず…奪おうとしたか、もしくは直子さんが研究室の男とどっぷりラブラブしてる現実を直視できず、絶望してやりきれなくなり…本人に思いをぶつけたのだのではなかろうか。

 直子は自分にも負い目があることを理解しており、賢治の扱いに困った。エリも同様だろう。それで切り上げるに切り上げられず終電の12時までグタグタと飲んでしまった。しかし賢治は電車がないと帰れない。でも自分の家には賢治を泊めたくない… となると財前の家に放り込むしかない。




 まあこんなとこだろう。

 バレバレじゃねえかこいつら。それを何も聞くなとか俺を舐めてるだろ。


 …



 言っておくがこの件に関して私は以前に何度も賢治に救いの手をさしのべているが、彼は全て拒否してきた。こうなったのは賢治の自業自得。そして賢治の気持ちを知りながらも研究室の男と突然交際を始めた直子の自業自得。

 衝突するのはわかるはずだ。なぜ直子は賢治に何か言葉をかけて諦めさせてやらない。放置してるからこういうことになる。


 終いにはもうどうしようもなくなり尻ぬぐいを私に託したわけか。
 

 
 …


 本来ならば… やってあげたいところだがずっと3人で秘密を共有してたのだから3人で終わらせればいい。

 なぜ最後になって私を巻き込むのか理解不能。私に内緒の何かがあるのなら…一番連れて来ちゃ行けない場所はエコハウス班で一緒にがんばってきた私の家のはず。

 まさに裏切り。

 残念ながら気が進まない。こんな無責任で自分勝手な奴らの尻ぬぐいなどする気はない。 


 だが…


 まあバカに空気を読めと言ってもそれは酷な話だろう。元々この程度の奴らだったのだ。




 ここは









 賭けてみるか…。 賢治に。









 ここは泊めてやろう。






 そしてもし賢治が私に今回の件のいきさつをすべて話せば…






 許そうじゃないか。






 賢治を男と認めよう。見直そう。



 今までの事はチャラにしよう。今日の事ももういい。




 賢治も大学生だ。事情を何も話されなかった私が何も言わずに泊めてやったという事実を知れば…心苦しくなって私には話すかもしれない。



 …



財前「わかった。賢治をおいていきなよ。後はなんとかする」

直子「ありがとう。じゃあよろしくね」

財前「ああ。ちょっと」

直子「何?」

財前「賢治に何か言っておくことはない?」

直子「え? 特には…」

財前「じゃあ何で賢治が泣いてるんだ?」

直子「飲み過ぎたんじゃないかな」

財前「…」

直子「…」

財前「…」

直子「じゃあ帰るね」


財前「本当に賢治をこのまま置いていっていいのか?」

直子「何が?w」

財前「…」

直子「…」



 女と男の関係などこんなものだ。男同士ならこんなことは絶対にない。得てして女は彼氏、恋愛を過剰に意識するため、その対象外となった男の運命は…


 いくら仲が良かったとしても。 彼氏ができたら用済みなのだ。


 そこに友情はない。


 最後の尻ぬぐいさえ役目を逃げる。




 だから私はリョウさんとナンパを続ける。 今回の事で再認識した。特定の女とだけ一緒に居ても…何も得るものはない。それよりも今はたくさんの女と経験を積み、確かなものが欲しい。
 






 


 結局…




 賢治はその夜。貸した布団にくるまってメソメソ泣いているだけで何も話してはくれなかった。

 隣で何も聞かずに我慢して寝てた私の気持ちを彼はわかったのだろうか?


 おまえにとって卒論のパートナーとはそんなものか。友情とはそんなものだったのか。

 友情より女を取るのか? それもいいだろう。

 しかしだ。 お前の信じた女はさっき容赦なくお前を捨てて行ったぞ。そしてそんなお前を今かくまっているのは… いったい誰だ? 

 友情と恋愛

 最後に信じられるのはどっちかわかったろう。泣いてないで今の現実を直視してみろ。今私がおまえに何を期待してるか考えてみろ。

 

 


 言わなくても彼は理解してくれると信じていた。



 
 
 だが









 結局…
 

 賢治はその日はおろか卒業するまでこの話はしてくれなかった。それどころか今日泊めた礼すら私に言わなかった。



 「女に生きた男」は女によって殺された。女もいいが、友情を忘れてはいけない。 


 泊めただけで礼をして欲しいわけではないけれど、状況が状況だ。せめて一言くらいはあってもいいだろう。4人のエコハウス班で…3人だけの隠し事。

 終わったと思ってた直子さんと賢治。実は影でいろいろあったんだろう。真相は知らないが、隠すなら最後まで隠し通せよ。私の家に連れて来ちゃだめだろう…。最後で逃げるなよ…。


 まさに3人は裸の王様。

 
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 どんだけキングなのよ 君達。


 親しき仲にも礼儀ありとは… こういう極限状態の時こそ必要なのかもしれない。そしてこういう極限状態の時こそ、人の本性が見れる。

 彼らの取った行動は決して悪事ではない。しかし信用を完全に失った。
 



 が…研究室で起こったグループ恋愛はこれだけに止まらず… 


 






















 次回 ホッケー女のイメチェン文化祭







 


 今日の関連曲

 裸の王様(キング)   (LOVE PSYCHEDELICO)

 





 PS

 如何だったでしょう。暗く重い話。今回は自分が中心ではなく、賢治が中心。だから暗くなったとも言えますが実際あった話をそのまま書いただけです。まあ今回の件はリアルでも相当暗かったんです…。私は直接はどうこう関係ないんですが

 賢治の事だけに自分の時のように心理描写ができないんで
 
 ネタにはなかなかできない(笑)。

 こういうことでいろいろ経験できたことはありがたいんですが、やはり一般的な恋愛というのはあまり人間の成長には繋がらないのかもしれませんねぇ。しょーもない事でごちゃごちゃしすぎてる。ナンパしてた方がよっぽど将来の役にたつような気がする。なんてことを大学時代に思いました。

 どうせ結婚したら1人の女とずっとつきあっていくわけだから


 ねぇ(笑) そんときだけでいいんじゃなかと



 …


 もちろんこの考えは社会的には間違ってるわけですけどね。


 あとですね。非公開コメントでXBOXの質問を良く受けますが、それは以前の記事で全部対応できます。ブログ右メニューのカテゴリーでXBOXを押したら答えはありますよ。


 最後に誤字ご指摘ありがとうございました。
   








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January February March April May June July August September October November December
2007(Tue) 11/27

大学時代 回想7 研究室所属(57)

財前History … Comments(57)

 この記事は管理人の大学時代の回想記の第7弾。
 回想1「一楽木工」 ~ を見ないと意味不明なので注意してください。



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回想1…一楽木工 
回想2…応援団
回想3…リリカ再来
 
回想4…ストーカー財前
回想5…バイク免許取得の先に
回想6…社会人の鏡
回想7…研究室所属 

回想8…友情と恋愛 
回想9…ホッケー女のイメチェン文化祭 
回想10…阿鼻叫喚の魅力
回想11…無駄が必然に変わった日
回想12… 近日公開










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 牛鉄を辞めた事で…

 大学には適当に遊びに行き、家に帰った後も遊ぶだけでイイという生活に突入した私。

 大学では相変わらずチズエさんとは一言も口を聞けず(というよりあれ以降完全スルーされてる)、ホッケー女とはたまに目が合った時に睨み付けられる。

 だが1年前とは状況は違ってる事がひとつあった。  

 言わゆる懐(フトコロ)の深さである。  今の私ならホッケー女やチズエなどに屈するはずがない。


 どういう事かというと、今の私は1年前の「東京に出てきた右も左も知らない田舎から出てきた雑魚」とは違うのである。リョウさんとの出歩き、金澤君コンパ、そして牛鉄でのバイトなどの様々な特殊体験を経て既に東京というものに馴染んできていた。

 以前のように何か新しい事がある度に「うぉぉ東京すげぇ!!」「ぬぉ!!標準語」「ぐお!何このファッション」、「ちょ…人多すぎだろ」 …とまあ日々が旅行気分。

 この1年は決して「生活している」という感じはなくあくまでも「旅行に来ている」なんていう仮想世界にでも来た気分だった。それになんと言っても徳島の友達が誰1人いないので私を知ってる者がいないというのもそれに拍車をかけた気がする。

 これは例えば私が徳島で「ウンコ漏らしの財前」と呼ばれていたとしても、東京に来たらそれは誰も知らないのでそう呼ばれる事はない。(例えばだぞ?例えば)
 
 つまり新しく生まれ変わる事ができる事を意味する。

 しかし逆に言うと、全ての人間関係を1から構築する必要があるので、自分の人間性や過去も踏まえて出会う人間全てに時間をかけて理解して貰う必要があるので別の意味で大変だ。過去の話をしても自分以外立証できる人もいないし、嘘くさく感じられる事も多いのであまり大きな話もできず、話題もはじめは選ぶ必要があるのである。

 1年前はそういう状態だったと言える。 

 まずここに根付く事、自分を知って貰う事、東京のルールを知る事に必死で、どうも窮屈だったのである。

 しかし… 今はどうだろうか?


 今はある程度東京の町も知り、私を知る友達もたくさんいる。もうそんなに無理して増やさなくてもいい状態。性格や人柄、歴史背景も認知されてきたので話をしても笑い話やネタ話をしやすい土壌ができている。それにリョウさんのおかげで普通にしてたら行けない所や体験できない事も知っている。つまりもう東京の人と対峙しても何ら憶する事はないのである。

 機は満ちた。

 今なら行けるはずだ。

 もう1年前の自分ではない。
 
 今こそチズエさんのハート奪還に出陣すべきなのだ。


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 実は私は牛鉄のアルバイトを始めてからチズエさんの事を未だに気にしている事を周りには一言も言ってない。もう「チズエなど関係ない」とスルーしてるフリをしていた。そりゃそうである。あんなときに足掻いても無駄。むしろ「今も諦めずに財前はチズエを狙ってる」なんて学内に広まったらストーカー事件も加味されて大変な事になってしまう。

 皆が忘れるのを待っていたのだ。

 

 機が熟すのを待っていたのだ。 



 まさか皆、まだ私がチズエの事を諦めてなくて、これから出陣するなどとは夢にも思ってはいないだろう(笑)。

 
 さて…

 ではどうハートを奪回するかだが、これは作戦を練らなくてはならない。

 昔は1人でする必要があったので「ストーカー扱い」で終了した。

 だが今の私には学科内にちゃんと仲間がいるのだ。彼らに協力して貰えば間違えてもストーカーにはならない。早速いつものように下宿に遊びに来ていた奴らにこの事を告げる。
 
 この時下宿に遊びに来ていたのはタカシとワコウ、そして最近知り合ったノリ君。


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財前「…と。こういうわけだ。協力してくれ」

タカシ「はぁ?」

ノリ「…」

ワコウ「おまえまだ諦めてなかったんかw」

タカシ「悪いことは言わないからもうやめといた方がええぞ」

ワコウ「ホンマ軽い男なんやら一途な男なんやらわからん奴っちゃなあ」

ノリ「…」

タカシ「すまんけど協力は無理や。チズエの件に関わったらワイらまで変な問題に巻き込まれる」

財前「ええ!?」

ワコウ「ワイも無理や。今やワイは学科内で「仏のワコウ」と呼ばれてるんやぞ? 評判上々なんや。ストーカー絡みの事件には関わりたぁない」

財前「ちょっと待ってよ。おまえらは俺がストーカーじゃないこと知ってるじゃないか」

ワコウ「リスクがありすぎるわ。だいたいチズエとかもうどうでもエエやんけ。やめといたら?」

タカシ「ワイもそこがわからんわ。そんなムキになるような女か?」

ワコウ「まあレベル的には中の上の下ってとこやな」


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ノリ「…」

財前「いやいや…農大で一番かわいいだろ! あの子は」

ワコウ「それはない」

タカシ「だいたいちょっと不振な男見ただけでストーカーなんて騒ぐか?普通。自意識過剰すぎやろ」

ワコウ「まあ財前をストーカーと断定してネタにした所は評価できるけどな」

タカシ「うむ。 ネタとしてはウケた部類に入る」

ノリ「…」

財前「おまえらな! 今日話し合う目的は悪口を言うためじゃないんだぞ」

ワコウ「だいたいおまえはコケにされたんやぞ?その相手にまた告白とかアホすぎやろ」 

財前「嫌よ嫌よも好きのうちという言葉もある」

ワコウ「アカン。こいつドラマの見過ぎや」



 そんなバカ話が繰り広げられている中… その日は妙に大人しかったノリが発した一言でその場全員が凍り付くこととなる。

 今でも忘れもしない。ノリの一言


ノリ「ちょっといいかな」

財前「ん?」

タカシ「なんやノリ」

ノリ「聞いてると財前がチズエちゃんにアタックするって事みたいだけど、そうなの?」

財前「そうだよ」

ノリ「え?マジで? だってチズエちゃんて彼氏いるよ?」

財前「ぇ…」

タカシ「!?」

ワコウ「!?」



















財前「工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工」
















財前「ちょっと待てノリ!! そりゃマジか? 初耳だぞ」

ノリ「いやだってそいつ俺のダチ(友達)だし」

財前「なんだと! おまえのダチ?」

ノリ「俺財前ストーカーの件は噂で知ってたけど、それギャグだと聞いてたからさ。ということはチズエちゃんの事好きだったってのもギャグだと思ってたけど…そこはマジなのね…」

財前「どうも噂に尾ひれがついたりして変な方向に言ってるな… それよりノリ! 誰だ。そいつは。おまえの友達なんだろ?名前は?」

ノリ「ああ。オサムだよ」

財前「オサム… 農大か?それとも他大学か?」

ノリ「農大だよ。しかも俺らと同じ学科」

財前「ちくしょう! なんだそいつ! どうやってあの内気な子に近づいたんだ」

ノリ「スキーサークルで出会ってそのままらしいね」

財前「何!?スキーサークルだと!? チズエさんスキーサークルだったのか!!  ノリ!!なんでそれを早く言ってくれなかったんだ。俺も入ったのに!!!」

ノリ「いや…そんなこと言われてもさ… 財前と知り合ったの最近だし…」



ワコウ「おいタカシ。ウィニングイレブンしてようぜ。もう話は終わりだろ」

タカシ「OK」


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財前「くそう…。でもそいつ格好いいんだろうな…。チズエさんとつきあうくらいだから…」

ノリ「う~ん。あんまり格好よくないけどね… モテるタイプでもないし」

財前「おまえは見る目がないんだよ! チズエさんがつきあう男が不細工なわけないだろう」

ノリ「そうかなぁ。まあチズエちゃんがモテルのはわかるんだけども」

財前「そうだろ?そうだろ? で? そのオサムって野郎はどういう奴だ。詳しく教えろ」

ノリ「え…。どういう奴って言われても…」

財前「どこに住んでるんだ」

ノリ「大学近くの下宿」

財前「ちくしょう。野郎!! 自分の部屋でチズエさんとズッコンバッコンやり放題ってわけか!!」

ノリ「ちょ…」

財前「背は?背は高いのか?」

ノリ「低いね」

財前「何!? じゃあ頭か?頭がいいのか?」

ノリ「別に普通じゃない?真面目だけど」

財前「何?頭も普通? じゃあ面白いって事か。そいつ。話術がありやがるんだな?」

ノリ「う~ん。別に大して面白くないね」

財前「何だと! …。 おいおいノリ。どうなってんだ。そいつ特徴らしきものがないじゃないか」

ノリ「そりゃそうさ。だって普通だもんw」

財前「じゃあ特技は何だ。なんか特技があるだろそいつ」

ノリ「ないね」

財前「ない!?  おいおい嘘つくなコラ。なんでそんな野郎とチズエさんがつきあえるんだよ!!」

ノリ「そんなこと僕に言われても…」
 
財前「なんか特徴があるだろ。思い出してくれ。 …ん? まさかそいつ親が金持ちか?」

ノリ「…違うと思うけどw」

財前「じゃあ高級車持ってるとか?」

ノリ「持ってないね。チャリ通学だよ。あいつ」

財前「…」

ノリ「…」

財前「…」

ノリ「ど…どうしたの?」

財前「って事は… 夜の方が凄いのかな…」

ノリ「それもないと思うよw」

ワコウ「アホ」



 なんなんだコイツは。

 まったくオサムって奴は掴めない野郎だぜ…。「普通」って事しか特徴出ないじゃないか…

 私はその他様々な事をノリに聞くが有効な情報は聞けず… 聞けど聞けど何もとりとめない「普通」が返って来るのみ…。

 
 たまりかねたのかゲームに夢中のワコウとタカシが口を挟む。


ワコウ「おい財前。ただその二人のフィーリングが合っただけやろ。おまえチズエ買いかぶりすぎやねん」

タカシ「スキーゲレンデは不細工な奴でも格好良く見えたりするし。そんなところやろ。」


財前「なるほど… スキー場で惑わしやがったのか」

ノリ「あとは…花屋でバイトしてるよ」

財前「何!? 花屋だと?」

ノリ「ごめん。これも普通でしょ…」

財前「バカ野郎ノリ!! それは普通じゃない。男が花屋でバイトとか明らかにナルシスと野郎だ。」

ノリ「それは酷いよ」

財前「駄目だ… 闘志が…萎えた」

ノリ「?」

財前「なんか…花屋でバイトしてる男の姿想像したらさ…。 闘志が萎えてきた…」

ノリ「えぇ!?」

財前「なんか…ファイトが沸かないというか… なんというか… そいつ「なよってる男」じゃないの?」

ノリ「まあどちらかというと普段はなよなよしてポォーとしてるね」


 それを横耳で聞いたワコウとタカシが何故か吹く。


ワコウ「ぶっwwww なよなよしてポォーとしてるってそれチズエもやんけww お似合いカップルやなw」

タカシ「そりゃ駄目だ財前。おまえとタイプが正反対w 出る幕ないわww」



財前「…」

ノリ「あんま悪く言うなよな~。僕はオサムと友達なんだから」

財前「わかってるって。 よし。ノリ。そいつと明日話をさせてくれ」

ノリ「ぇ…?」

財前「話がしたい」

ノリ「駄目駄目。変な事言う気でしょ?困るよそれは」

財前「いやいや。そんな事はしないよ」

ノリ「だいたい財前とオサムは性格的に合わないよ」

財前「そうでもないと思うよ?」

ノリ「とにかくそれは駄目だよ。僕一応チズエちゃんとも知り合いだから… 財前を紹介はキツイ」

財前「…」



 ノリの言い分はこうだ。私をオサムさんに紹介することにより、チズエさんが嫌がるんじゃ無かろうか?。そしてそれがきっかけでオサムさんと私が万が一、万が一仲の良い友達になってしまった場合…チズエさんがそのことを気にしてノリと衝突し、二人の仲がおかしくなってしまうんじゃなかろうかと

 もちろん推測に過ぎないが…。

 オサムさんと私の接触はデメリットしかないとノリは言いたいのだ。


 だが私からするとノリの考えは浅はか。まず第一に私はオサムと仲良くする気はさらさら無い上、そんなもめ事を起こすような事を今更私がするわけがない。この部分はよく考えて欲しかった。

 私はただ確認したいだけなのだ。チズエさんがつきあった男というものを。
 
 これは譲れない部分だった。2年近く脳裏から消えなかった女を射止めた男だ。

 ノリが言うような「ごく普通の男」なわけがないじゃないか。

 …


 そして最終的にこの日の内にノリを説得。明日オサムさんを紹介して貰う運びとなった。なんてことはない。同じ学科なのだから同じ教室で同じ授業を受けるわけである。授業後にちょっと紹介して貰うだけ。ちょっと…。

 この日は夜遅くまでタカシとワコウが酒を飲み、私とノリは話し込んでいたので結局私の下宿に皆が止ることになった。

 
 …

 
 

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 日付が変わった。ガサガサうるさい音で起きると…

 
 ノリか…


 やはりノリは真面目だ。既に大学に行く準備が整えようとガサガサと忙しそう。タカシとワコウは淫らな姿で熟睡中。起こして「大学に行くぞ」と言っても無駄だろう。恐らく起ない。元々こいつらは気が向いたときのみに大学に行くタイプだから(笑)。
 
 まあノリに昨日の話を聞かなければ私も同じように寝てただろうから人の事は言えないが…。

 私は数分で身支度し、ノリと共に大学に出発。そして教室に入り、ノリと隣同士の席に座った。さあ。今日来てるんだろうか?奴は…オサムは…。

財前「ノリ。どいつだ」

ノリ「ほら。あそこの短髪の奴」

財前「ん? え~と あれか? あのシマシマの服の…」

ノリ「そうだよ。あれがオサム」

財前「…」



 ちょ…


 恐るべき事態である。なんとオサムという男…。

















 激しく普通すぎる件について!! 

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なんなんだコイツ。限りなく一般人に近い。

ノリも表現に困るわけだ。私としてもなんとも言いようがない。なんの特徴もなく、雰囲気というかそういうもの自体がない… まるで空気のようだ…。

 わたしはこの瞬間話さずしてすべてを理解した。人間第一印象を見れば大抵の事は当たる。(根が悪人とかそういう特殊な人以外は)

 つまりこれはこういう事だ。チズエさんが彼とつきあって好き合ってるというのは事実だろう。それもこの男の雰囲気を見た場合、告白できるようなタイプには見えない…。
 
 これどうやってつきあう所までもっていったんだ?

 チズエさんからアプローチした可能性すらあるぞ。

 でも決め手が何かくらいはわかる。

 ズバリ「やさしさ」と「普通さ」だ。彼はそれが武器なんだろう。

 まず「普通さ」だが、これは男友達としては何の魅力もないものの、女性からすると意外と重要な要素かもしれない。この分類の人間はまず集団の中で目立たないし、激しい行動もしない。ということであまり浮気の心配がないのだ。

 この場合、つきあっていてもあまり問題が起こることもなく、口論もさほど起きにくい。女性からすると腰を降ろして自分のペースでゆっくりとつきあえるのだろう。

 チズエさんはどちらかというと「のほほんタイプ」だけに… 確かにタイプ的には合う。

 次は「やさしさ」だ。問題のオサムさんだが、やさしいタイプでまず間違いがない。自分よりも他人を気づかうタイプなのでやさしいというより「気を遣う」から結果的にやさしいと感じられるタイプだろう。

 そして我慢強く、清潔で、悪いこともしなさそうだ…。


 この瞬間私は素直に敗北を認めた。

 こううタイプをチズエさんが好むとしたら私では絶対無理だ。このタイプの人間と戦える気がしない(笑)。絶対に真似は不可能だし私の場合、ネタを作って何ぼ、何か面白い事して何ぼとかいう体質が染みついており、今更変えることなどできようもないのだ。

 ノリに謝ろう…。


財前「ノリ…」

ノリ「ん?」

財前「いいやもう。充分わかったから俺帰るわ」

ノリ「へ… 一応話しておけば?せっかくだし」

財前「いや~ けど何を話していいのやらわからないし、話してもスカされそうだからいいや」
 
ノリ「昨日聞きたい事一杯あるような事言ってたじゃんw」

財前「…」



 結局今度は逆にノリに説得される運びとなり、オサムさんを紹介して貰うことに(笑)。いやホントもういいんだけど…。花屋のバイトだろ?花の話とか別に進んでしたかないんだが…。

 そんな事思いながらノリについて行ってオサムさんの席へ。好都合だったのは今日チズエさんの姿が見えないことだが…


ノリ「よぉオサム」

オサム「やぁ。ノリ君」

ノリ「この前はありがとうね」

オサム「こちらこそ」

ノリ「最近どう?」

オサム「え?普通だよ」

ノリ「そうかw」

オサム「ノリは?」

ノリ「普通かな」

オサム「そうかw」





 な…なんなんだこの会話は… どうやって入れと… これじゃ微笑む事すらできないんだが…。 私が黙っていたので空気を察知してかさらにノリが続ける。





ノリ「彼女は今日来てないの?」

オサム「うん」

ノリ「ふぅ~ん」

オサム「…」

ノリ「…」

オサム「じゃあまたね」

ノリ「!? あ。ちょっと待って」

オサム「え?」

ノリ「あのさ。コイツ。財前て言うんだ。君と話したかったって」


 ちょ… 何その下手な紹介。もっと自然にやってくれよ!!


オサム「え?」

財前「ハ…ハロー…」

オサム「何か?」

財前「ぇ? え…え~と。 」


 おいおい。ノリ…ほったらかしかよ。話題があるわけないだろ!!とりあえず…


財前「花屋でバイトしてるんだってね?」

オサム「うん」

財前「実は俺花好きでね。最近どういう花が売れ筋なのかなぁと思って」(大嘘)

オサム「花好きなの?」

財前「もちろんさ」

オサム「う~ん。ごめん。花屋でバイトしてるけどたまたま採用されたから行ってるだけで…花の事はよくわからないんだ」

財前「な…何!?」

オサム「でも男で花が好きなんて珍しいね」

財前「…」

オサム「僕のバイトしてる花屋に詳しい人いるから良ければ今度来てみるといいよ」


 ちょ… 全然興味ないんだが…


財前「あ…そうなの…。ち…近くなのかな…その花屋」

オサム「下北沢さ」

財前「はは。下北沢か…」


 …


 行くわけないだろう…


 そんなとりとめないどうでもいい会話をちょっとした後にオサムは去って行った。聞きたくもない花屋の住所も受け取ってしまったが… まあ… 聞いた以上は一回は行っておかないと駄目だろうか…。まあ下北沢には良く行くから洒落で行ってやってもいいが。

 
財前「ノリ…」

ノリ「ん?」

財前「もういいや。ありがとう」

ノリ「?」


 知っての通りこのタイプの男は毒がないので女性との付き合いは長く持ちやすい。2年~3年は持つ。だって別れる理由が「マンネリ」以外にないんだから。

 激しい系の男ならつけいる隙もあったが、オサムさんの場合は付けいる隙がない。 

 そういうファイトが沸かないというかなんというか…。




 そんな中、何か…鋭い視線をヒシヒシと感じるのでちょっと確認してみると…。





















 ホッケー女だった。
 
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財前「まずい… おいノリ。帰るぞ」

ノリ「ん?何がまずいの?」

財前「ホッケーが見てるんだよ。あいつにいろいろ詮索されると面倒なんだ」

ノリ「ホッケー?ホッケーって何さ」

財前「ほら。あのホッケー部に入ってる女だよ」

ノリ「ちょ… 財前。あの娘と知り合い?」

財前「まあ…知り合いって程でもないんだけど…」

ノリ「あの娘かわいいよね」
































財前「な…何…?」 










ノリ「もし良かったら紹介してよ」

財前「ちょ… おま… 駄目だ駄目だ」

ノリ「なんでさ。僕はオサムを紹介してやったじゃないか」

財前「いや…これとそれとは話が違ってだな。 まあ帰ったら詳しく話すよ…」

ノリ「?」


 

 …その後下宿に帰ってノリには「ストーカー事件」の一部始終の事情を説明。これにて彼もわかってくれた。だが… どうやらノリはホッケー女を学校でちょくちょく見ている内にちょっと気になる存在になってるらしい。好きというわけではなく、今惚れつつある状態…という事だろう。

 しかし大学のような環境ではきっかけもない上、接点がホッケー部に入るしかないという状況ではどうしようもない(笑)。

 まあこの協力者に関しては他を当たって貰う事になった。





 そして…これが引き金となり…今回の表題の「研究室所属」へと繋がっていき…そこで…。


 それは後述。


 大学では大学3年から全員が「研究室」に所属しなければならない。 なぜなら東京農業大学農学科は「卒業論文」が農業実習と結合されており、研究室で農作物の実習をしながら成分を分析し、そのデータを元に卒業論文を書かなければ卒業ができないのである。

 3年生の間は4年生の補佐をする身。そして4年生で自分の実験を始める。

 この研究室は同じ農学科に複数あり、例えば花卉学研究室、蔬菜学研究室、果菜学研究室、人間科学研究室、社会農業研究室など多岐に及ぶ。

 つまり1~2年時は250名が一緒になって授業や行動をしていたが、3年からは本格的にこの中で分離され、約30名ずつくらいの団体が8つ、9つ出来るということである。

 感覚的には中学~高校の「クラス分け」と想像して貰うとしっくりくると思う。

 それで、3年生で研究室は一体どこに所属するのか。それを決めるのが2年生の後期に当たる今なのである。ちなみに見学なんてものはなく、ほとんどの学生が名前だけで研究室を決める。米がしたいとか、花がしたいとか、果物がしたいとか農業の未来を思考したいとか、目的さえあればどこの研究室に所属するかは自ずと決まるからだ。

 一番人気があったのは花を学ぶ花卉学研究室。

 そんな中私は蔬菜学研究室(野菜学)を選んだ。

 当然だ。私はこの当時、将来日本に食糧危機が来るのを予想し東京農大に入った。つまり食料の栽培方法やノウハウ、ホントの所を学ぶためだ。

 花など贅沢な時代だからこそ受け入れられているものであり食料的にはなんの役にもたたない。なぜこの研究室が一番人気なのか理解不能。果樹は…まあ許せるが、野菜と果物。どちらが食糧難の時に重要かといわれればこれは当然野菜となるのは明白。

 それに果物はなかな